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第5章 首都圏解放戦線
068 まだまだ追いつけない
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俺は、自衛隊の輸送トラックに便乗して移動していた。
すでに2日は移動しており、道の舗装が痛んでいるのが目で見ても良く分かる。
輸送トラックは傷んだ舗装路の凸凹のギャップを拾ってしまい、速度が出せないでいた。
それに地域によっては、今だ解放されていない場所が多く残っている為、戦闘によってせっかく再舗装してもすぐに傷んでしまう。
だから、そういった場所では舗装などは直さずに手つかずとなっていた。
俺としては、解放して回ってあげたいのはやまやまだったが、自分の目的の為には心を鬼にするしかなかった。
ただ助かったのは、移動中の戦闘は同行している自衛官が行ってくれたことだ。
比較的若い隊員が、レベル上げの為という名目で積極的に戦闘をこなしてくれている。
では、何故レベル上げを必死に行っているのか。
それには、きちんとした理由がある。
そう、俺のスキル【スキルクリエイター】が関係している。
スキルレベルが5まで上がった際に、その内容が変化したのだ。
——————
スキルクリエイター:自他のレベルを生贄に、対象の人物に新たなスキルを創造できる。ただし、創造するにはその分の代価が必要。対象の人物のレベルが0になる場合は創造できない。
必要レベル減少率……スキルレベル×10%
——————
つまり、自分以外の人間にも、スキルを創造することが可能になったのだ。
しかも、レベルが5になったことにより、今までの半分で済む。
何ともチートなスキルへと変貌を遂げていた。
自衛隊員のほとんどが希望したスキルは、スキル【魔銃作成】とスキル【魔弾作成】だった。
理由は、〝使い慣れた武器〟の方が戦いやすいそうだ。
そしてスキルの性能は以下の通り。
——————
魔銃作成:自身のSPを使って、魔法の銃を作成。維持時間 スキルレベル×10分。SP:1~。※作成した魔銃により射程・命中精度・威力が変化。
魔弾作成:自身のSPを使って、任意の魔弾を作成。魔銃と連動して使用。魔弾の性能は任意で変更可能。SP:1~。※作成した魔弾により射程・命中精度・威力が変化。
——————
などという、ふざけた性能だ。
本来は、それぞれ50レベル必要になるが、50%低減の効果で25レベル消費で創造可能となったのだ。
若手の隊員は、こぞってこのスキルを習得していった。
おかげで、代わる代わる戦闘に出て、レベル上げに勤しんでいた。
しかもこの副次効果として、ボーナスポイントをまたもらえるということが知れ渡り、それもあって、ひっきりなしに俺の元へ隊員が訪れたのだった。
「神宮寺隊長。このスキルの話はここだけの話にしてくださいね。さすがに広まりすぎると手に負えなくなりますから。」
「申し訳ない。部下にもきつく厳命しておきます。しかし不思議なスキルですね。隊員の戦力が一気に跳ね上がりましたよ。」
確かにその効果は絶大だった。
最初は、ほとんどの自衛官がしょぼい魔銃しか作成できずにいた。
しかし、ある時を境にこの魔銃の効率のいい運用方法が編み出された。
それはスキル【SP自動回復】との併用だ。
SP回復量が魔弾作成時のSP使用速度よりも上回り始めると、乱射しても問題なく使えるようになるのだ。
もし切れたとしても、一度後ろに下がり、SPの回復を図ると、すぐに戦線復帰が可能になる。
それを利用して、3マンセルを3チームで1小隊として運用するようになった。
自衛隊員は『魔銃三段構えの陣』などと冗談めかして話をしていた。
うん、織田信長公だね。
そして隊長の神宮寺さんは、これを攻略に活かせるのではないかと考えているようだった。
あくまでも対モンスター戦に限ったことになるのだが、運用としては適切なのではないかと思案を重ねていたようだった。
何度か俺も相談を受けたが、俺の戦い方があまりにも特殊過ぎて参考にならないだろうなと思わざるを得なかった。
さらにそれから2日が過ぎ、目的の〝首都圏解放戦線〟の前線基地へと到着した。
前線基地だけあって、そこは高いコンクリートの塀に覆われていた。
その塀もかなりの厚さで出来ており、高さも20m以上ありそうだ。
これならモンスターが来ても何とか耐えられるかもしれない。
それに、この一帯のダンジョンは既に踏破済みで、中立地帯化は済んでいるそうだ。
俺は自衛隊のトラックを降りると、探索者が集まる宿舎へと足を運んだ。
もしかしたらカイリ達に会えるのではないかと、淡い期待を抱いて。
しかし、そこにはカイリ達の姿は見受けられず、周りの探索者に確認するもその所在は判明しなかった。
俺は時間を持て余してしまい、何をするわけでもなく前線基地をぶらついていた。
そこには一つのコミュニティーが出来上がっており、飯屋に鍛冶屋、魔道具店なのだ立ち並んでいた。
そんな中、ふと一軒の鍛冶屋の軒先に並んでいた武具に目が行った。
どこかで見たことがあるようなデザインだったが、それよりもその素材が気になったのだ。
手甲を一つ持ち上げると、見た目に反してものすごく軽かった。
そして軽い割に、かなりしっかりとした造りとなっていた。
明らかにただの金属ではないと思えるほどだ。
やはり中が気になった俺は店舗を覗いてみることにした。
「ごめんください。」
「はいいらっしゃい。何かお探しですか……ってケント君じゃないか?!」
俺に話しかけたのは『スミスクラン』代表で、鍛冶師の新藤さんだった。
何を隠そう、今俺が使用している武具の製作者でもある。
だからこそ、軒先の武具が気になったのだと理解した。
「いや~なつかしいねぇ~。悠斗さんは元気かい?」
「お久しぶりです。父は今あの街の自衛隊駐屯地の顔役になってます。」
「そうかそうか。元気なんだね?それはよかった。本当によかった……」
新藤さんに話を伺うと、スタンピート当時『スミスクラン』の会合であの街を離れていたようだった。
会合は宮城県で行われており、スタンピートの勢いはそれなりに激しいものだったようだ。
そのおかげで新藤さんは左足を失い、魔道具師の手によって義足を制作してもらっていた。
その後、仙台駐屯地に避難し、解放戦線の鍛冶師として乞われ現在に至ったとのことだった。
「そうだ新藤さん。カイリ達はここに居ますか?」
「カイリちゃんたちだね。そりゃ残念だ。ちょうど入れ違いだったな。彼女たちはAランクに昇格して、昨日ここを発って【富士の樹海ダンジョン】に向かっているはずだ。」
「そうですか……」
せっかく追いついたと思ったのに、すでにカイリ達は先に進んでいたんだな。
それはそうか、あの日約束を交わしたんだから。
『任されました。それと、私たちは追いつかれないように全力で走りますから。覚悟していてください!!』
虹花のその言葉通り、先へ先へと進んでいた。
せっかくここまで来たのに……
「焦るな。」
ポンと新藤さんが俺の肩を叩いた。
それは優しさにあふれているが力強い手だった。
俺の顔が強張っていくのを見て、現実に戻してくれたのだ。
「焦ることはないよ。君は君だ。君らしく強くなればいい。だろ?」
「……そう……ですね。うん、そうです。俺は俺ですから。」
どうやら俺は、カイリたちの成長に焦りを覚えてしまったらしい。
俺の特性上、なかなか追いつけないのは仕方がないことなのに。
「そうだ新藤さん。装備の点検お願いしてもいいですか。大分無理をさせてしまったみたいで。」
「わかった、ここに出してもらえるかい?」
俺は、新藤さんに指示された場所に、装備品一式を取り出した。
防具は大分くたびれており、補修に補修を重ねたのが良く分かる品物だ。
「こいつはすごいな。あれから大分改修を重ねたんじゃないのかい?あの当時扱ってなかった素材とかも使われている。こりゃもう別物といってもいいくらいだよ。」
「そうですね。自衛隊から許可をもらってBランクダンジョンにも潜ってましたから。そこで出た素材を使って、新藤さんのお弟子さんに改修してもらってました。」
新藤さんは、手に取った変わり果てた自作の装備品を、まじまじと眺めていた。
そしてブツブツと、ああでもないこうでもないと呟いていたのだった。
しばらく装備品を見ていた新藤さんは、俺に向き直り査定結果を教えてくれた。
「こいつはもう寿命といってもいいだろうね。これ以上は酷使することは難しい。こいつを改修するくらいだったら新造することをお勧めするよ。」
すでに2日は移動しており、道の舗装が痛んでいるのが目で見ても良く分かる。
輸送トラックは傷んだ舗装路の凸凹のギャップを拾ってしまい、速度が出せないでいた。
それに地域によっては、今だ解放されていない場所が多く残っている為、戦闘によってせっかく再舗装してもすぐに傷んでしまう。
だから、そういった場所では舗装などは直さずに手つかずとなっていた。
俺としては、解放して回ってあげたいのはやまやまだったが、自分の目的の為には心を鬼にするしかなかった。
ただ助かったのは、移動中の戦闘は同行している自衛官が行ってくれたことだ。
比較的若い隊員が、レベル上げの為という名目で積極的に戦闘をこなしてくれている。
では、何故レベル上げを必死に行っているのか。
それには、きちんとした理由がある。
そう、俺のスキル【スキルクリエイター】が関係している。
スキルレベルが5まで上がった際に、その内容が変化したのだ。
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スキルクリエイター:自他のレベルを生贄に、対象の人物に新たなスキルを創造できる。ただし、創造するにはその分の代価が必要。対象の人物のレベルが0になる場合は創造できない。
必要レベル減少率……スキルレベル×10%
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つまり、自分以外の人間にも、スキルを創造することが可能になったのだ。
しかも、レベルが5になったことにより、今までの半分で済む。
何ともチートなスキルへと変貌を遂げていた。
自衛隊員のほとんどが希望したスキルは、スキル【魔銃作成】とスキル【魔弾作成】だった。
理由は、〝使い慣れた武器〟の方が戦いやすいそうだ。
そしてスキルの性能は以下の通り。
——————
魔銃作成:自身のSPを使って、魔法の銃を作成。維持時間 スキルレベル×10分。SP:1~。※作成した魔銃により射程・命中精度・威力が変化。
魔弾作成:自身のSPを使って、任意の魔弾を作成。魔銃と連動して使用。魔弾の性能は任意で変更可能。SP:1~。※作成した魔弾により射程・命中精度・威力が変化。
——————
などという、ふざけた性能だ。
本来は、それぞれ50レベル必要になるが、50%低減の効果で25レベル消費で創造可能となったのだ。
若手の隊員は、こぞってこのスキルを習得していった。
おかげで、代わる代わる戦闘に出て、レベル上げに勤しんでいた。
しかもこの副次効果として、ボーナスポイントをまたもらえるということが知れ渡り、それもあって、ひっきりなしに俺の元へ隊員が訪れたのだった。
「神宮寺隊長。このスキルの話はここだけの話にしてくださいね。さすがに広まりすぎると手に負えなくなりますから。」
「申し訳ない。部下にもきつく厳命しておきます。しかし不思議なスキルですね。隊員の戦力が一気に跳ね上がりましたよ。」
確かにその効果は絶大だった。
最初は、ほとんどの自衛官がしょぼい魔銃しか作成できずにいた。
しかし、ある時を境にこの魔銃の効率のいい運用方法が編み出された。
それはスキル【SP自動回復】との併用だ。
SP回復量が魔弾作成時のSP使用速度よりも上回り始めると、乱射しても問題なく使えるようになるのだ。
もし切れたとしても、一度後ろに下がり、SPの回復を図ると、すぐに戦線復帰が可能になる。
それを利用して、3マンセルを3チームで1小隊として運用するようになった。
自衛隊員は『魔銃三段構えの陣』などと冗談めかして話をしていた。
うん、織田信長公だね。
そして隊長の神宮寺さんは、これを攻略に活かせるのではないかと考えているようだった。
あくまでも対モンスター戦に限ったことになるのだが、運用としては適切なのではないかと思案を重ねていたようだった。
何度か俺も相談を受けたが、俺の戦い方があまりにも特殊過ぎて参考にならないだろうなと思わざるを得なかった。
さらにそれから2日が過ぎ、目的の〝首都圏解放戦線〟の前線基地へと到着した。
前線基地だけあって、そこは高いコンクリートの塀に覆われていた。
その塀もかなりの厚さで出来ており、高さも20m以上ありそうだ。
これならモンスターが来ても何とか耐えられるかもしれない。
それに、この一帯のダンジョンは既に踏破済みで、中立地帯化は済んでいるそうだ。
俺は自衛隊のトラックを降りると、探索者が集まる宿舎へと足を運んだ。
もしかしたらカイリ達に会えるのではないかと、淡い期待を抱いて。
しかし、そこにはカイリ達の姿は見受けられず、周りの探索者に確認するもその所在は判明しなかった。
俺は時間を持て余してしまい、何をするわけでもなく前線基地をぶらついていた。
そこには一つのコミュニティーが出来上がっており、飯屋に鍛冶屋、魔道具店なのだ立ち並んでいた。
そんな中、ふと一軒の鍛冶屋の軒先に並んでいた武具に目が行った。
どこかで見たことがあるようなデザインだったが、それよりもその素材が気になったのだ。
手甲を一つ持ち上げると、見た目に反してものすごく軽かった。
そして軽い割に、かなりしっかりとした造りとなっていた。
明らかにただの金属ではないと思えるほどだ。
やはり中が気になった俺は店舗を覗いてみることにした。
「ごめんください。」
「はいいらっしゃい。何かお探しですか……ってケント君じゃないか?!」
俺に話しかけたのは『スミスクラン』代表で、鍛冶師の新藤さんだった。
何を隠そう、今俺が使用している武具の製作者でもある。
だからこそ、軒先の武具が気になったのだと理解した。
「いや~なつかしいねぇ~。悠斗さんは元気かい?」
「お久しぶりです。父は今あの街の自衛隊駐屯地の顔役になってます。」
「そうかそうか。元気なんだね?それはよかった。本当によかった……」
新藤さんに話を伺うと、スタンピート当時『スミスクラン』の会合であの街を離れていたようだった。
会合は宮城県で行われており、スタンピートの勢いはそれなりに激しいものだったようだ。
そのおかげで新藤さんは左足を失い、魔道具師の手によって義足を制作してもらっていた。
その後、仙台駐屯地に避難し、解放戦線の鍛冶師として乞われ現在に至ったとのことだった。
「そうだ新藤さん。カイリ達はここに居ますか?」
「カイリちゃんたちだね。そりゃ残念だ。ちょうど入れ違いだったな。彼女たちはAランクに昇格して、昨日ここを発って【富士の樹海ダンジョン】に向かっているはずだ。」
「そうですか……」
せっかく追いついたと思ったのに、すでにカイリ達は先に進んでいたんだな。
それはそうか、あの日約束を交わしたんだから。
『任されました。それと、私たちは追いつかれないように全力で走りますから。覚悟していてください!!』
虹花のその言葉通り、先へ先へと進んでいた。
せっかくここまで来たのに……
「焦るな。」
ポンと新藤さんが俺の肩を叩いた。
それは優しさにあふれているが力強い手だった。
俺の顔が強張っていくのを見て、現実に戻してくれたのだ。
「焦ることはないよ。君は君だ。君らしく強くなればいい。だろ?」
「……そう……ですね。うん、そうです。俺は俺ですから。」
どうやら俺は、カイリたちの成長に焦りを覚えてしまったらしい。
俺の特性上、なかなか追いつけないのは仕方がないことなのに。
「そうだ新藤さん。装備の点検お願いしてもいいですか。大分無理をさせてしまったみたいで。」
「わかった、ここに出してもらえるかい?」
俺は、新藤さんに指示された場所に、装備品一式を取り出した。
防具は大分くたびれており、補修に補修を重ねたのが良く分かる品物だ。
「こいつはすごいな。あれから大分改修を重ねたんじゃないのかい?あの当時扱ってなかった素材とかも使われている。こりゃもう別物といってもいいくらいだよ。」
「そうですね。自衛隊から許可をもらってBランクダンジョンにも潜ってましたから。そこで出た素材を使って、新藤さんのお弟子さんに改修してもらってました。」
新藤さんは、手に取った変わり果てた自作の装備品を、まじまじと眺めていた。
そしてブツブツと、ああでもないこうでもないと呟いていたのだった。
しばらく装備品を見ていた新藤さんは、俺に向き直り査定結果を教えてくれた。
「こいつはもう寿命といってもいいだろうね。これ以上は酷使することは難しい。こいつを改修するくらいだったら新造することをお勧めするよ。」
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