最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

069 新装備の準備

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 俺は、今まで一緒に戦ってきた相棒にそっと手を置いた。
 自分自身でも、刀身に無理をさせているのを自覚していた。
 それに、最近では自分で何とかしていたが、刃筋にブレも生じて来ていた。
 だが、それでも此処まで共に歩んできてくれた相棒を、手放すことへの罪悪感を感じてしまっていた。

 俺は、相棒をどうしたらいいか迷っていた。
 考えれば考えるほど答えが出てこなかった。
 だけど、これから先を考えれば答え何てとっくに出ていた。
 だから俺は新藤さんに改めて依頼をすることに決めた。

「こいつを楽にしてやってください。そして、こいつの使えるパーツと、このレッサードラゴンの素材使って、俺の相棒を蘇らせてください。」

 素材として、解体されたドラゴン種の皮や牙、鱗に爪などをインベントリから取り出した。
 さすがに数が多かったのか、新藤さんも驚きを隠せずにいた。
 個人で所有するには量が多かったかな。

「それにしてもこの素材の量。かなりのものだね。武器だけじゃなく、防具も作れるけどどうする?」
「じゃあ、こいつらも置いていきますので、お願いしてもいいですか?」

 俺は、こちらも共に歩んできた防具類を新藤さんに手渡した。
 新藤さんはそれを大事に受け取りケースに入れていた。
 ケースにラベルが張られ、素材とともに奥の工場へと運ばれていった。

 しばらくすると、新藤さんが戻ってきて今後についての話し合いとなった。

「それじゃあ、今預かって物を元に制作を進めていくとして、何か希望とかあるかな?」
「じゃあ、店の前に有った金属装備ありますよね?あれってまだありますか?」

 俺は店先に展示していた装備について新藤さんと話し合った。
 最初ただの金属の鋼材製かと思ったが、そのあまりの軽さに驚きを隠せなかった。
 だからこそ、その強度についての確認も行った。
 何より、金銭面での話を確認したかった。

「そうだね、あれはここではさほど貴重な金属ではないよ。魔鋼材って呼ばれているけど、要はダンジョン産の金属なんだ。」

 俺はついつい首をかしげてしまった。
 前に居た街でもダンジョンから金属はよく取れていた。
 生活に必要な金属もちゃんと取れることから、探索者の良い小遣い稼ぎになっていたのだ。
 しかし、その金属たちともどうも違う様に見えたのだ。

「正直これがどんな鋼材かは、わかっていないんだ。ただ、関東圏のダンジョンからは豊富に取れてね。今はその正体を研究中ってところだね。スキル【鍛冶】を持ってると扱えるから、そのまま使ってはいるけど……」
「値段的にはいくらくらいになりますか?」
「そうだねぇ~。外にあるやつで一式100万ってとこかな。まぁ、それよりは使う量が少ないし、素材持ち込みだから20万くらいかな?」

 俺は値段を聞いてから少し考え込んでいた。
 決して払えないわけではないし、無理をする額でもなかった。

「わかりました。じゃあ、あまりの素材は新藤さんに提供します。ほかの探索者に使用してあげてください。」
「良いのかい?この量だとあと10人くらいは行けると思うけど……」

 新藤さんは、俺の提案に困惑の色を隠せずいた。
 それはそうだろう、劣化とはいえドラゴンの素材なんだから。
 だけど、俺にも打算が無いわけではなかった。
 
「それでこの場所が守れるなら安いものですよ。」

 そう、俺の知っている人が少しでも安全になるなら安いものだから。
 
「よし分かった。残りの素材を俺が買い取る。君には規定の買い取り額を支払うことにするよ。君に甘えていたら、探索者としての示しがつかないからね。彼らは彼らで努力をしないとだめだから。」

 俺としては金銭的に困っているわけでもなかったので、買取については正直あまり興味がなかった。
 むしろ一日でも早くダンジョンに潜りたいと思っているほどだ。

 俺は逸る気持ちを押さえながら、新藤さんの査定を待っていた。
 全て調べ終えた新藤さんは、一枚の紙を差し出してきた。

 装備品制作依頼料と査定金額。
 そして差引額が記載されていたが、俺は驚いてしまった。
 そこに書かれていたのは俺への支払額が1000万円オーバーだったからだ。

「これ高すぎません?」
「これでも安い方だよ?傷も少ないって言うか。逆鱗すら傷ついてない。うまい事鱗の隙間に滑り込ませた証拠だ。しかも、他に傷が無いことからここ一点で倒したってことだろ?これは本当にCランクのソロの戦いじゃないよ。」

 新藤さんの分析に、俺は驚きを隠せずにいた。
 ソロ活動していることは伝えていたが、どう倒したかまでは伝えていなかったからだ。
 新藤さんは素材の傷だけで、どんな戦い方で倒したかをシミュレートしてしまったのだ。

「どうしてわかるんですか?」
「そりゃね。毎日素材を扱っていれば、これくらいはわかるようになるさ。それにしても見事なもんだよ。」

 俺は、新藤さんの職人としての技量に、高い信頼を覚えた。

 新藤さんは、さっそく作業に取り掛かってくれた。
 俺の気持ちを察してくれたんだと思う。
 俺の採寸から始まり、身長体重は言うに及ばず、腕の長さ、重心、筋肉量まで確認していったのだ。
 あらかた採寸しを得ると、新藤さんが店の奥から何本かの剣を持ってきた。
 それは飾りつけなどをしていない、無骨と言っていいほどの剣だった。
 ただ、それぞれに特徴があり剣の見本的なもののように見えた。
 そして、最後に剣の模型を素振りすることになった。
 素振りをして思ったが、そのすべてが長さや形だけでなく重心も変えてあった。
 俺は言われるがまま、順にその剣を振り回していく。
 新藤さんは俺の動きを観察し、最適な長さとバランスを確認していたようだった。

「よし、もういいよ。じゃあ、ケント君にはこの辺があってそうだね。もう一回振ってみてくれるかな。」

 新藤さんに渡された物は、おそらくブロードソードと呼ばれる分類の剣だった。
 刃渡りで言えば約70~80センチと、相手を両断するには少し心もとない長さだ。
 しかし、俺の戦闘スタイルからすれば最適解のように思えた。

「ケント君はバッサリと切り払うっていうより、一撃離脱を繰り返すスタイルでしょ?それと陰からざっくりかな?この剣だったら両方問題なくこなせるはずだよ。」
「なるほど、少し実戦形式で動いていいですか?」
「じゃあ、ここじゃ狭いから自衛隊の訓練場でやってみよう。」

 俺は新藤さんの案内で、駐屯地内の訓練場へやってきた。
 そこでは自衛官も訓練を行っており、俺と一緒ににこちらに移ってき隊員たちも交ざっていた。

 俺は訓練所の端の一角を借りて、テストを再開した。
 周囲を確認し、徐々に集中力を高めていく。
 俺が気を張り詰めていくと、周囲に居た自衛官も何事かと思い手を止めてしまっていた。
 上官もその空気に飲み込まれたのか、手を止めた部下たちを注意するそぶりもなかった。
 俺は目を開くと、おもむろに剣を構える。
 俗にいう正眼の構えではなく、下段にぶらりと下げ、ゆらゆらと揺らす独特の構えだ。

「【結界】【結界】【結界】【結界】【結界】【結界】!!」

 俺の声と共に、空中に薄い足場が広がっていく。
 そこに規則性が無く、見る人によってはただやみくもに並べられているようにも見えだろう。
 俺は躊躇することもなく地面を蹴って、足場の結界に飛び移る。
 足場の結界を移動するにつれて、見守っていた者達にもその結界の配置の意味が分かってきた。
 俺がイメージしたのは10mを超えるドラゴンだ。
 自分が倒した最後のドラゴンをイメージし、最適化された位置に結界を配置していたのだ。
 俺はドラゴンのイメージをさらに強くして、徐々に移動速度を上げていく。
 俺の視界に入る景色は、徐々にその色が褪せていくように思えた。
 そして軽く周囲を見ると、周りにいた自衛官たちがスローモーションのように見える。
 だけど俺は、それに構わずまだ加速を続けていく。
 最終的には周りがほぼ止まって見えるまでに加速していたみたいだった。

「【気配遮断】【魔力遮断】【消音】!!」

 スキルの声だけを残して、俺はその空間から姿を消した。
 この結果を予測していなかった者たちは焦った。
 どこにもその姿を見ることができなかったからだ。
 もし死角に入られたらと想像すると、うすら寒さを感じさせ身震いをする自衛官もいたほどだ。

ズザァ~~~~~!!

 突如、激しい音と共に結界群の中心付近の地面が砂埃を上げた。
 
 やっぱりこの動きは消耗が激しいな。
 それに地面が付いてこれないから、着地すると滑るし。
 その点も装備で何とか出来るといいんだけどな。

「ケント君……君は規格外すぎるよ。正直そのスピードを目で追うことが出来なかった。気が付いたら砂ぼこりを上げて立ち尽くす君の姿が見えた。つまり、人の限界を超えた動きをしたってことだろうね。」

 新藤さんの少しあきれたような表情を見て、少しやり過ぎたのかと思ってしまった。
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