最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

074 多田野キレる

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 俺たちは、区画の端のスペースに荷物を降ろし、下草を刈る作業に取り掛かった。
 俺は面倒だからと、風魔法で下草を刈り出した。
 それを見たタケシ君は、ただただ呆れるばかりだった。
 まさかこんなことに魔法を使うとは、思ってもいなかったみたいだ。
 あらかた下草を刈り終わると、テント設営を開始。
 2人とも慣れた物で、あっという間にテントを建ててしまった。
 特にタケシ君の設営速度は、さすがといえばいいのだろうか。
 俺が30分かかったテントを、20分もかからないで設営を完了させたのだ。

「さすがタケシ君だね。こんなに差が開くとは思ってもみなかったよ。」
「俺は慣れてますからね。このくらいだったら問題ないですよ。本当はもっと簡易のでもよかったんですが、神宮寺准尉から半ば強制的に渡されたんですよ。中村さんがテント持って無かった時用にって。」

 さすが自衛官と言っていいのか?用意周到だな。
 頼りになるね、ほんと。
 俺たちがテント設営も終わり、荷物を運び入れていると、数人の集団がやってきた。
 まあ、いかにもそうですという態度だった。

「おう!!ここに何勝手にテント建ててんだ?!俺たち【ボルテージ】の縄張りだぞ?!」

 そう言ってやってきた男性は、身長は大体180センチ強で、筋肉隆々の筋肉だるまだった。
 筋肉のせいか、さらに一回りはでかく見えるほどに盛り上がっていた。

「それは知りませんでした。先ほど着いたばかりだったものでね。というより、ここは自衛隊の管理地域のはずでは?」

 俺は大人の対応で、至極当然の質問を投げかけた。
 まあ、言葉の端々に侮蔑の意味合いを混ぜてはいるけど。
 するとどうだ、予想通り男性はすぐに激高してしまった。
 なんとも堪え性がないようで。
 男は見る間に顔を真っ赤に上気させ、体から湯気が出てるのでは?と錯覚させてしまいそうだった。

「黙れこのチビが!!ここは俺がルールだ!!わかったらさっさとショバ代寄越しやがれ!!」

 うん、だめだこいつら。
 力量さが理解できない分類の人間だ……
 すると俺の横で静かに怒りをあらわにした人物がいた。
 タケシ君だ。
 さすがに今は民間人と同じ格好をしていた為、相手もわかっていなかったようだ。
 自衛官の敷地内で自衛官にカツアゲを行うとどうなるのか……

「君たちは【ボルテージ】のメンバーで良いですね?」

 タケシ君は俺以外に悟らせないように、静かに心を燃え上がらせているようだった。
 静かに冷静に怒りを隠して話を聞き出そうとしていた。

「そうだ!!俺様が【ボルテージ】の馬場だ!!良~く覚えとけ!!」
「そうですか。わかりました。上にはその様に報告させていただきます。自衛隊敷地内での犯罪行為は禁止されているはずですよね?それを破るとは……情けない。」

 タケシ君の対応に違和感を覚えた【ボルテージ】のメンバーだったが、馬場だけはそうは行かなかった。
 自分が舐められていると錯覚していただろうか、さらに俺たちに突っかかってくる意思を示すくらいに目が血走っていた。
 タケシ君としては自衛官として、至極当然のことを言っただけなのに。
 馬場はさらに怒りのボルテージを上昇させ、口からは泡が吹き出そうな勢いだった。

「おいこらチビ!!さっきから何ごちゃごちゃうるせぇ事言ってやがんだ!!てめぇらは黙って俺に金を差し出してればいいんだよ!!別に物納でもいいぞ?てめぇらが手に入れた素材の半分で許してやるよ!!どうだ安いだろ!?あ?なんか言ったらどうなんだ、この腰抜け野郎!!」

 馬場の罵声は留まることを知らなかった。
 ただ、【ボルテージ】の面々少々違っていたようだった。
 一枚岩とは言えない関係か?

『上司に報告する』

 暗に発したタケシ君のセリフが、彼が自衛官であることに感づかせたようだ。
 さすがにこれ以上はまずいと判断したのか、【ボルテージ】のメンバーの一人が、馬場を止めに入った。

「馬場さん……さすがにまずいって。ここは引きましょう?」
「うるせぇ!!俺に意見すんじゃねぇよ!!ここはな、舐められたら終わりの世界なんだよ!!」
 
 しかし馬場は、ブレーキが壊れた暴走機関車の様に、意味の分からないことを叫び続けている。
 タケシ君は聞くに堪えないと、スキルを発動した。

「【魔銃作成】」

 タケシ君の一言でその場の空気が一変した。
 馬場の周囲に、金属の筒が20本ほど出現したのだ。
 その先端はすべて馬場に向かっており、その景色は一種異様なものになった。
 馬場は一瞬何があったか分からなかったようで、周囲を確認し、金属棒が取り囲んでいるのを理解した。

「なんだこの金属棒は?こんなんで俺を倒せるとでも思ってんのか?俺はこの地区の最強の戦士!!馬場だぞ⁉」
「うるさい黙れ。」

 タケシ君は静かにそう言うと、1つの金属の筒から弾丸を射出した。
 その弾丸は馬場の頬を掠め、地面にめり込み小さな爆発を起こした。
 射出した弾丸は爆発系無属性弾丸の【バーストブレッド】と呼称されている弾丸だ。

 その爆発を見た馬場は困惑して見えた。
 自分を取り囲む金属の筒はすべて、【砲身】であることを理解したようだった。
 そしてその砲身から先ほど射出された弾丸は、小規模爆発を起こしている。
 これがもし自分に当たったら……
 それが想像できないようでは彼はこれから先、探索者人生にピリオドを打つことになる。

 どうやら最低限の知能を持ち得ていたようで、ガクガクと手足を震わせて後ずさっていく馬場。
 その様子を見ていた【ボルテージ】のメンバーも大慌てで、タケシ君に向かって謝罪をしてきた。
 しかし、タケシ君は一向に許そうとする気配は無かった。

「あなた方がやった行為は犯罪行為です。探索者法に基づく場合、探索許可証ライセンスカードはく奪すらあり得ることです。これに懲りたら二度と道を踏み外さないでください。良いですね!!」

 タケシ君はあくまでも、力づくの警告を与えるつもりだったようだ。
 別に殺してしまおうと思えるほどの事は、今回はなかった。
 タケシ君が放っておいても、俺が対処をするつもりだった。
 俺が対処した場合どうなっていたか……
 それは今考えても仕方がないか。

 タケシ君は警告を終えると、周囲に浮かぶ砲身をすべてキャンセルした。
 緊張から一気に解放されたように、馬場は地面へへたり込んだ。
 呼吸も肩で息をするように乱れ、顔面蒼白で、今生きていることに安堵しているようにも見えた。
 
 馬場はどうやら腰が抜けてしまったようで、うまく立つことができずにいた。
 ずるずると這いずりながら、タケシ君から距離を取ろうと藻掻いているが、うまく進まない。
 恐怖から逃れたい一心で、無我夢中で地面を這いずっていた。
 その様子を見ていた【ボルテージ】のメンバーは、どこか冷めた表情を見せていた。
 おそらくだけど、馬場の探索者としての能力による強制的独裁状態のパーティーだったんだろうな。
 その馬場が情けない姿を晒したのだから、メンバーから距離を置かれるのは至極当然の結果のように思えた。

 【ボルテージ】のメンバーはタケシ君にに一礼すると、馬場をそのままにして自陣へと戻っていった。
 その様子を見た馬場は、半泣きになりながらも仲間の後を追う様にずるずると這いずって、自陣へ戻っていくのだった。

「なんだったんだろうな?」
「なんだったんでしょうね?」

 俺たちは何事もなかったかのように、野営準備を再開したのだった。
 無駄に疲れたな……

「では明日からはダンジョン攻略に向けて、活動開始ですね。」
「そうだね。まずはここのダンジョンの特性を確認して、新装備の実践テストしてから本格始動かな?でもここはある程度ダンジョン攻略進んでるんだろ?」

 タケシ君は夕食の片づけをしならが、明日の予定の確認をしていた。
 俺としてもはやる気持ちはあるが、命を落としては元も子もないので、慎重に慎重を重ねるつもりでいた。

「では、朝一で探索者ギルドの第29駐留部隊出張所に顔を出して情報収拾。その後に探索開始でいいですね?」
「あぁ、それで行こう。」

 俺たちは食事を片付けると、各々のテントへともぐりこんだ。
 明日からの本格始動を前に、最後の自由な休息となるのだった。
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