最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

086 予想外のモンスター

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「やっぱりそうくるよ……な!!」

 俺は空中から飛び降りる形で、ディフェンダーに向けて剣を振り下ろした。
 ディフェンダーも来ることを予測していたようで、上方に盾を構えて受け止めて見せた。

「だったらこれでどうだ!!」

 俺がディフェンダーに向けて連続で攻撃を仕掛けていると、俺の死角に回り込むようにしてナイトが接近してきた。
 俺が対処できないと踏んでの行動だろうな。

「【結界】」

 俺は、すぐさまナイトに向けて結界を複数枚張りなおす。
 隙を伺って飛び掛かってきたナイトの顔面に見事ヒットし、ナイトはもんどりうって倒れ込んでしまった。

 旨い事ナイトとディフェンダーが、俺に食いついてくれた。
 どうやら、ナイトのプライドを刺激してしまったらしい。
 思いっきり殺気が漏れていた。

 俺は、それをお構いなしに次の行動に移った。
 俺への攻撃を仕掛けるために、ナイトとディフェンダーが後衛から離れてくれていた。
 その隙を逃すほど俺は甘くはない。

 俺は一気に加速すると、ゴブリンの後衛組に攻撃を仕掛ける。
 それに焦ったナイトとディフェンダーもつられて俺の方へ駆け出した。

 よし釣れた!!

 俺はゴブリンたちとの距離を測り、一撃離脱を繰り返す。
 ゴブリンたちは、たまらず陣形を整え始めていた。
 そしてついには、後衛を守るためにその陣形は密集形態に変わっていた。

——————

 多田野はその陣形状態を見て、ケントが何をするつもりか理解した。
 おそらく一気に倒しきった場合を知りたいのだろうと。
 多田野もそれに答えようと武装を変える。
 現在待機中の全ての砲身を一度キャンセルし、新たな砲身を作り出す。
 6連装ミサイルランチャ―を6門。
 多田野が扱える限界量だ。
 多田野の作り出したミサイルランチャーは、タダのミサイルランチャーではない。
 スキル【魔銃作成】によって作り出され、ミサイルはスキル【魔弾作成】によって作り出される。
 つまり多田野次第で、いくらでも撃ち出せるということだ。

——————
 
 タケシ君は俺の意図を理解したようで、戦闘準備を始めた。
 しかも、きちんと牽制射撃はしてくれる有能っぷり。
 何とかタケシ君の砲撃範囲に収まってくれた。
 
 タケシ君に視線を送ると、小さくOKの合図をしてくれた。
 というわけで、準備は完了かな?

 俺はいまだ動き続けるゴブリンたちの足元に、ばれないように【結界】を配置した。
 俺が一気に近づくと、マジシャンとヒーラーを守るように後退するゴブリンたち。
 
「足元注意。」

 横目で多田野がやろうとしていることを察したケントは、5匹の足元に瞬時に【結界】を展開する。
 動こうとした5匹は足元に急に出現した障害物に足を取られ、つんのめって地面とキスをすることになった。
 それを確認する前にその場から俺は離脱した。

 次の瞬間。

 パシュ~ン、パシュ~ンっという気の抜けた発射音が連続で響き渡った。
 少しの静寂の後、さっきまで俺が居た場所は火の海と化した。
 それでも容赦なく撃ち込まれるミサイル群に、ゴブリン達も成す術が無かったようだ。

 タケシ君が撃ち込みを止めると、そこには何も残っていなかった。
 そう、何もだ。

 綺麗に魔法陣が消え去っていたのだ。
 ただ、消えたのはマジシャンとヒーラーが出現した2つのみだが。
 これは嬉しい誤算だった。
 何かのはずみで、魔法陣が消えてしまったようだった。
 これは紛れもない事実。
 俺は心の中で歓喜した。
 おそらくこれが、このボス部屋の正しい攻略方法だからだ。

 タケシ君は一気呵成に攻め立てた。
 ジェネラルもまた群れのリーダーだった。
 ジェネラルは大声で叫んだ。
 その叫びにつられて、ワンテンポ早く召喚されたゴブリン達。
 しかし、それでもミサイル群をどうこうすることも出来ずに、魔法陣と共に消滅してしまった。

「ギュギョギョギョギャ!!!!」

 怒りを増して叫ぶジェネラル。
 これで何とかなると思い、一瞬気を抜いていた。

ざくり……

 タケシ君の足が突如として切り裂かれたのだ。
 いつ誰にどうやって!!
 タケシ君は今の状況を理解できないでいるようだった。
 今現在ジェネラルは剣を振っていない。
 スキルも発動した形跡も見られない。
 ならなぜ……

 すぐに手持ちのポーションで傷を回復したタケシ君は、周辺警戒を行った。
 だがそこには何もいなかった。

 俺もまた正体不明の攻撃に、少しだけ焦りを感じていた。
 もし今の攻撃が首元に来ていたら、一瞬にしてアウトだ。

 見えない敵、見えない攻撃……

 ただ見えないというだけどこれほどまでに恐ろしい相手へと変貌するとは。
 ってあれ?
 んだ?
 俺たち探索者の様に、こいつらは縛られていないはずでは?

 俺は慌てて周囲の魔素の流れを確認した。
 ヒーラーたちを倒した魔素は……
 上か?!

「タケシ君上だ!!魔法陣がもう一個!!」
「くそ!!やられた!!」

 タケシ君は叫ぶと同時に、展開中のミサイルランチャーを天井に向けて、全弾射出しようと試みた。
 しかしその攻撃も未遂で終わってしまった。

「ぐわぁ!!」

 タケシ君は太ももを切り裂かれ一瞬バランスを崩してしまう。
 それほど深くはないだろうけど、隙を作りには十分すぎる。
 そしてその攻撃を受けた瞬間に俺が見たものは……

「ゴブリンアサシンか!!」

 そう、不可視の攻撃を仕掛けていたのは、天井に設置された魔法陣から出現したゴブリンアサシンだった。
 ジェネラルの派手な演出も、全ては天井のゴブリンアサシンの魔法陣から俺たちの注意をそらすためだった。
 ジェネラルはその隙に、天井の魔法陣からアサシンを呼び出して潜ませていた。
 決定的なスキを突くために。
 その決定的な隙とは、残り5匹の眷属が倒された瞬間……
 俺たちはまんまとジェネラルの策に引っ掛かってしまったみたいだ。

 攻撃した後すぐに姿を消そうとしたアサシンに、俺は特攻を仕掛けた。
 手にした盾を使い盛大に吹き飛ばす。
 吹き飛ばされたアサシンは空中で態勢を整えて、きれいに着地した。
 
 タケシ君は俺とアサシンのやり取りの最中に、すぐにポーションを傷口にぶっかけて問題はなさそうだった。
 その間ジェネラルはその場を動かなかった。
 もしかしたら、その場から動けなかったのかもしれない。
 考えてみればあの場所に来てからジェネラルはほとんど動いていない。
 何かしらの制約があるのかもしれないが、今はアサシンをどうにかしないといけないな。

 アサシンは着地後すぐにその姿を消した。
 スキル【気配遮断】よりも優れた効果の様だった。
 何せ俺たちのみている目の前でその姿を消して見せたんだから。

 タケシ君は再度【ミサイルランチャー】を魔法陣に向けて発射した。
 しかも切れたせいかその数がさっきの比ではなかった。

 これに焦ったのか、アサシンは姿を現しタケシ君に攻撃を仕掛けてきた。
 だけどタケシ君は焦った様子はなく、薄っすらと笑みを浮かべていた。

「そう来ると思ってたよ。」

 タケシ君がそう言うと、ミサイルの一部がジェネラルとアサシンに向かって飛翔した。
 それに慌てたジェネラルとアサシンは、すべての行動をキャンセルして回避行動を始めた。

 俺はタケシ君が作った隙を見逃さずにアサシンに斬りかかる。
 タケシ君の放ったミサイルは俺をことごとく避けてアサシンに命中させた。
 何発かを回避したアサシンだったが、ついにその時が訪れる。
 俺はアサシンの足元に気付かれないように結界を展開した。
 それに気づくとなくアサシンは見事にバランスを崩してくれた。
 一瞬体勢が崩されかけたアサシンは、無防備に姿を晒してしまった。
 そこに狙いすましたかのように、タケシ君がライフルで見事に心臓部分を撃ち抜いてくれた。

 見事に撃ち抜かれた心臓部分を手で触り、そのまま消えていくアサシン。
 その表情には悔しさが見て取れた……
 気のせいだよな?

 残されたジェネラルは……
 それでもまだ余裕の表情を浮かべていた。

「あいつはさすがに倒せる自信はありませんよ……」

 タケシ君の言葉は、今の現状を鮮明に物語っていた。
 度重なる魔弾の使用で、SPが切れかけたのか息も絶え絶えだった。
 その状況を見て、俺はこの戦いを終わらせることを決めた。

「わかった。ジェネラルは俺がもらう。」

 俺はそう言うと、ジェネラルに向けて左手を突き出した。

「【レベルドレイン】」

 無情な宣告がボス部屋に響き渡る。
 ジェネラルは何が起こるのかわからず、まだニヤニヤとうすら笑みを浮かべている。

 そして俺が突き出した左手を握りしめる。

ドサリ……
 
 ジェネラルはそのまま前のめりで倒れこんだ。
 そしてぴくりとも動かず、ただ静かに横たわっている。
 ほんの一瞬の出来事だ。
 俺からしたら当たり前すぎる結果だった。
 それだけこのスキルは異常すぎるから。
 次第にジェネラルの身体は消えてゆき、そこにはドロップアイテムだけが残されていたのだ。

「ケントさん……。そのスキル、チートじゃないですか……」
「ん?まぁ、そうだね。動かれると面倒臭いけど、ああやって止まっている奴はもろに鴨だからね。」

 呆れ顔のタケシ君と共に、ジェネラルが居た場所へ移動していた。
 床に散らばるドロップアイテムを集め、ボス部屋中央でその確認を行っていた。

「ケントさん、意外と豊作じゃないですか?」
「そうだね。おそらく魔法陣もモンスターだったんだと思うよ。そうじゃないと数が合わないから。」

 タケシ君の手には大きな魔石が1つと、中小の魔石が13個集められていた。
 ジェネラルとナイト、ディフェンダーにヒーラーとマジシャン、最後にアサシンの計7匹。
 ヒーラーとマジシャンは2回倒しているが、次が出現する前に魔法陣を壊してしまったからおそらく1匹分しか出てこなかったのだろうね。
 つまり魔法陣自体がゴブリンを生み出すモンスターだったみたいだ。
 完全に初見殺しだよな。
 魔法陣を壊せるって知らなければ、ずっと戦い続ける羽目になるんだから。

「こんなモンスター見たことなかったですよ……。こいつが増えたらと思うと、いい気持ちはしないですね。」
「まったくだ……」
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