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第5章 首都圏解放戦線
089 強くなるための決断
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「タケシ君。そこで一つ提案があるんだけど、良いかな?」
「何です?」
俺はタケシ君に、一つの提案をしようと思った。
するとタケシ君は、いきなり正座をして、何やら神妙な面持ちになってしまった。
別にそこまで大事な話ではないんだけどね。
「ココのダンジョンをどう思う?俺的にはレベル上げに最適だと思うんだけど?」
俺の質問にタケシ君はきょとんとしてしまった。
まぁ、提案と言っておきながら質問をしたんだから当然と言えば当然かな。
「そうですね、僕としてもちょどいいと言えばちょうどいいですね。ケントさんのスキルを行使してもらうとすれば、レベルが下がったとしても何とかなるレベルだと思います。」
このダンジョンは上層部では比較的弱いゴブリン種が階を進めるごとにその数を増やしていく。
更に第11層以降はその上位種となり、棲み分けがはっきりしていた。
自身のレベル帯を考えながら進める事を考えると最適と言える。
タケシ君が肯定してくれたことで俺は話を進めることにした。
「じゃあ、ここのダンジョンでレベル上げをしていきたいと思う。今俺たちが居るのは20階層。おそらくこの先に進むには少し力不足に思える。パーティーメンバーが他に居るならたぶん進めるだろうけど、俺たちだけでは無理がありそうだ。」
今回のフロアボスと戦ってみて、タケシ君は実力不足とはいいがたかった。
だけど、このままではいずれ立ち行かなくなることは明白だった。
ならばこの先の事を考えれば、今は力をつける段階だと思った。
だからこそのこの提案なのだ。
「正直な話、今のまま進んだとしても、おそらく次の第20層台でストップする可能性が高いかな。俺一人なら【レベルドレイン】で何とでもなるんだけど、2人となるとさすがに厳しい。二人ともハイド系で隠れるって手段で進んだとしても、ボス戦で苦戦が必至だ。」
俺自身、自分で言っておきながら実力不足は否めなかった。
レベルドレインを使わないと攻略が出来ないと言っているようなものだからだ。
レベルドレインとて万能じゃない。
もしかすると、レジストする敵も出現するかもしれない。
それに、動く相手には物凄く使いにくい。
しかもハイド系で隠れたとしても、レベルドレインを発動した段階で見つかる可能性が高い。
正直ソロの限界でもあった。
だからこそのタケシ君なのだ。
タケシ君ならピンポイントの攻撃から面制圧、果ては極地制圧まで可能だ。
俺の問題点を一気に解消してくれる、頼れるパートナーだ。
「そこでだ、今あるスキルを強化していきたいと思う。俺のレベルが現状70台まで来たから、全スキルをそこまで上げたい。タケシ君のスキルレベルも同様だね。」
「あれ?でも問題も有りませんか?確かスキルクリエーターで得たスキルって習得レベル以下になると使用不可になるんですよね?前回俺がそれでかなり迷惑かけてしまいましたから。」
タケシ君もペナルティーについては、やっぱり気にはしていたようだった。
でも裏技もあるから俺は気にしていなかったりするんだよね。
「おそらくレベルダウンペナルティーを気にしてるんだと思うけど、その辺は大丈夫だよ。それ以下にするつもりもないし。それに今持ってるスキルはほとんど40以下の習得レベルだからね。レベルを41以上に保てば問題無いよ。最悪、レベルドレインは対象外だから、それで一気にレベルを上げればいいし。むしろその方が早かったりもする。」
「ケントさん……、やっぱりそのスキルは異常すぎますよ。普通はこんな簡単に力をつけるなんてありえませんからね。しかも生贄に捧げているのは生命の経験値ですからね。事情を知らない人が聞いたら卒倒しますよ。」
タケシ君は、若干呆れ顔だったけど、否定はしなかった。
それだけ、このスキルクリエイターを知る者にとっては、魅力的ともいえるのかもしれない。
まあ、その分だけリスクを背負わなくてはいけないけど。
それからの俺たちの行動は迅速だった。
第20層のボス部屋のキャンプ地を撤収し、一度地上へと戻った。
これから長期間潜る事を考えて、装備品のメンテナンスや食料等の準備を行っていく。
その辺は手慣れたもので、集められるだけの物資を根こそぎ集めていった。
ついでにと、第29駐留部隊駐屯地へ戻った際に、探索者証をギルドへ渡した。
どこで手に入れたか聞かれたので、【ゴブリンダンジョン】の第20層のボス部屋のキャンプ地で拾ったと伝えた。
ただ、自分たちが襲われた事は、面倒になるのが分かり切っていたので伏せたが。
それから二日かけて装備品のメンテナンスを行った。
タケシ君の伝手で自衛隊拠点の作業室の一室を借りる事が出来たのはありがたい。
俺たちは、それぞれの作業台に向かって黙々と作業をしていた。
タケシ君の前には、自身のメインウェポンである【P220自動式9mm拳銃】が2丁並んでいた。
普通の銃ではなくなり魔道具と化したその武器は、通常の拳銃とは異なる部品が多数使用されている。
それを一つ一つ慎重に確認し、くたびれている部品については新しく新造したりしていた。
俺自身では簡単なメンテナンスしか出来無いが、それでも愛着のある装備達であるために念入りに磨き上げていた。
静かな作業室にカチャカチャと響く作業音。
作業に没頭していると無駄に考えなくて済むのはありがたいね。
やはり焦る気持ちはぬぐえないから。
そして全ての準備が完了してところで、スキルについて話し合った。
タケシ君は、やはりこのままハイド系と戦闘制圧力の強化を進めていきたいらしい。
先日の冒険者との一戦で、自身の戦闘系技能とハイド系の相性の良さを実感したらしく、もともとの制圧力よりも優先していきたいと話していた。
俺はもともと、ソロで戦うことを前提としてスキルを構成してきたが、タケシ君との共闘を考えると、だいぶ無駄が発生してくる。
特に制圧力については、タケシ君に任せた方が絶対に有用だった。
なので俺は、面的制圧力を切り捨てて、一点突破を目指したスキル構成にすることにした。
ただし、タケシ君は魔法系を苦手としているので、その辺は俺が補うと言う事で話が付いた。
それからというもの、俺たちはゴブリンダンジョンをメイン拠点にして潜り続けた。
たまに自衛隊員が俺たちの安否確認に訪れるものの、結果として問題無しと戻っていった。
それだけ俺たちの戦闘力は上昇していたみたいだ。
潜り始めてからどのくらいたったときだろうか。
第10層のボス部屋も、ほとんど苦労することなく攻略できるようになっていた。
あれほど苦労した第20層のボスも同様だ。
俺たちからしたら、二つのボス部屋はただのセーフティーゾーンと化していた。
ちなみに、この二つの階層のボス部屋を行き来する理由も存在していた。
タケシ君の装備だ。
可能性ではあったけど、ハイド系の装備品が他に手に入るかもと淡い期待を抱いていた。
そしてそれは見事に的中し、結果としてタケシ君は全力で中二病と化してしまった。
タケシ君としては不本意だったみたいだけど、その装備の有用性に何も言えなくなっていた。
そして最近は慣れてきたのか、言動にも若干の香ばしさが見え隠れする時があった。
もしかして……セット装備で精神汚染されるって隠し要素ないよな?
そして新たに手に入れた装備がこれだ。
——————
必滅の眼帯:左目を覆う様に装着する眼帯。装着すると左目が隠れるが、見えていない訳では無い。スキル【ホークアイ】【夜目】【遠視】が自動付与される。
黒衣:見た目通り真っ黒な上下セットの衣服。見た目に反して【打撃耐性】【斬撃耐性】【魔法耐性】が付与されている。
死神の皮鎧:赤黒く色づいた皮鎧。スキル【透明化】が付与されている。
——————
「ケントさん……。俺はどこへ行くんでしょうね……」
遠い目をしたタケシ君が、ボソリと虚空へ向けて呟いていた。
俺はその言葉に、明確に答えるすべはなかった。
いや、答える事が出来なかった。
タケシ君が身に付けた新たな戦闘スタイルは、文字通り〝死神〟である。
姿を現したら最後、そのものの死がもたらされる……中二病のポーズと共に。
後に、タケシ君の戦闘を見た自衛隊員が付けた二つ名は〝黒衣の死神〟であったが、タケシ君が断固として拒否したのはまた別の話。
「何です?」
俺はタケシ君に、一つの提案をしようと思った。
するとタケシ君は、いきなり正座をして、何やら神妙な面持ちになってしまった。
別にそこまで大事な話ではないんだけどね。
「ココのダンジョンをどう思う?俺的にはレベル上げに最適だと思うんだけど?」
俺の質問にタケシ君はきょとんとしてしまった。
まぁ、提案と言っておきながら質問をしたんだから当然と言えば当然かな。
「そうですね、僕としてもちょどいいと言えばちょうどいいですね。ケントさんのスキルを行使してもらうとすれば、レベルが下がったとしても何とかなるレベルだと思います。」
このダンジョンは上層部では比較的弱いゴブリン種が階を進めるごとにその数を増やしていく。
更に第11層以降はその上位種となり、棲み分けがはっきりしていた。
自身のレベル帯を考えながら進める事を考えると最適と言える。
タケシ君が肯定してくれたことで俺は話を進めることにした。
「じゃあ、ここのダンジョンでレベル上げをしていきたいと思う。今俺たちが居るのは20階層。おそらくこの先に進むには少し力不足に思える。パーティーメンバーが他に居るならたぶん進めるだろうけど、俺たちだけでは無理がありそうだ。」
今回のフロアボスと戦ってみて、タケシ君は実力不足とはいいがたかった。
だけど、このままではいずれ立ち行かなくなることは明白だった。
ならばこの先の事を考えれば、今は力をつける段階だと思った。
だからこそのこの提案なのだ。
「正直な話、今のまま進んだとしても、おそらく次の第20層台でストップする可能性が高いかな。俺一人なら【レベルドレイン】で何とでもなるんだけど、2人となるとさすがに厳しい。二人ともハイド系で隠れるって手段で進んだとしても、ボス戦で苦戦が必至だ。」
俺自身、自分で言っておきながら実力不足は否めなかった。
レベルドレインを使わないと攻略が出来ないと言っているようなものだからだ。
レベルドレインとて万能じゃない。
もしかすると、レジストする敵も出現するかもしれない。
それに、動く相手には物凄く使いにくい。
しかもハイド系で隠れたとしても、レベルドレインを発動した段階で見つかる可能性が高い。
正直ソロの限界でもあった。
だからこそのタケシ君なのだ。
タケシ君ならピンポイントの攻撃から面制圧、果ては極地制圧まで可能だ。
俺の問題点を一気に解消してくれる、頼れるパートナーだ。
「そこでだ、今あるスキルを強化していきたいと思う。俺のレベルが現状70台まで来たから、全スキルをそこまで上げたい。タケシ君のスキルレベルも同様だね。」
「あれ?でも問題も有りませんか?確かスキルクリエーターで得たスキルって習得レベル以下になると使用不可になるんですよね?前回俺がそれでかなり迷惑かけてしまいましたから。」
タケシ君もペナルティーについては、やっぱり気にはしていたようだった。
でも裏技もあるから俺は気にしていなかったりするんだよね。
「おそらくレベルダウンペナルティーを気にしてるんだと思うけど、その辺は大丈夫だよ。それ以下にするつもりもないし。それに今持ってるスキルはほとんど40以下の習得レベルだからね。レベルを41以上に保てば問題無いよ。最悪、レベルドレインは対象外だから、それで一気にレベルを上げればいいし。むしろその方が早かったりもする。」
「ケントさん……、やっぱりそのスキルは異常すぎますよ。普通はこんな簡単に力をつけるなんてありえませんからね。しかも生贄に捧げているのは生命の経験値ですからね。事情を知らない人が聞いたら卒倒しますよ。」
タケシ君は、若干呆れ顔だったけど、否定はしなかった。
それだけ、このスキルクリエイターを知る者にとっては、魅力的ともいえるのかもしれない。
まあ、その分だけリスクを背負わなくてはいけないけど。
それからの俺たちの行動は迅速だった。
第20層のボス部屋のキャンプ地を撤収し、一度地上へと戻った。
これから長期間潜る事を考えて、装備品のメンテナンスや食料等の準備を行っていく。
その辺は手慣れたもので、集められるだけの物資を根こそぎ集めていった。
ついでにと、第29駐留部隊駐屯地へ戻った際に、探索者証をギルドへ渡した。
どこで手に入れたか聞かれたので、【ゴブリンダンジョン】の第20層のボス部屋のキャンプ地で拾ったと伝えた。
ただ、自分たちが襲われた事は、面倒になるのが分かり切っていたので伏せたが。
それから二日かけて装備品のメンテナンスを行った。
タケシ君の伝手で自衛隊拠点の作業室の一室を借りる事が出来たのはありがたい。
俺たちは、それぞれの作業台に向かって黙々と作業をしていた。
タケシ君の前には、自身のメインウェポンである【P220自動式9mm拳銃】が2丁並んでいた。
普通の銃ではなくなり魔道具と化したその武器は、通常の拳銃とは異なる部品が多数使用されている。
それを一つ一つ慎重に確認し、くたびれている部品については新しく新造したりしていた。
俺自身では簡単なメンテナンスしか出来無いが、それでも愛着のある装備達であるために念入りに磨き上げていた。
静かな作業室にカチャカチャと響く作業音。
作業に没頭していると無駄に考えなくて済むのはありがたいね。
やはり焦る気持ちはぬぐえないから。
そして全ての準備が完了してところで、スキルについて話し合った。
タケシ君は、やはりこのままハイド系と戦闘制圧力の強化を進めていきたいらしい。
先日の冒険者との一戦で、自身の戦闘系技能とハイド系の相性の良さを実感したらしく、もともとの制圧力よりも優先していきたいと話していた。
俺はもともと、ソロで戦うことを前提としてスキルを構成してきたが、タケシ君との共闘を考えると、だいぶ無駄が発生してくる。
特に制圧力については、タケシ君に任せた方が絶対に有用だった。
なので俺は、面的制圧力を切り捨てて、一点突破を目指したスキル構成にすることにした。
ただし、タケシ君は魔法系を苦手としているので、その辺は俺が補うと言う事で話が付いた。
それからというもの、俺たちはゴブリンダンジョンをメイン拠点にして潜り続けた。
たまに自衛隊員が俺たちの安否確認に訪れるものの、結果として問題無しと戻っていった。
それだけ俺たちの戦闘力は上昇していたみたいだ。
潜り始めてからどのくらいたったときだろうか。
第10層のボス部屋も、ほとんど苦労することなく攻略できるようになっていた。
あれほど苦労した第20層のボスも同様だ。
俺たちからしたら、二つのボス部屋はただのセーフティーゾーンと化していた。
ちなみに、この二つの階層のボス部屋を行き来する理由も存在していた。
タケシ君の装備だ。
可能性ではあったけど、ハイド系の装備品が他に手に入るかもと淡い期待を抱いていた。
そしてそれは見事に的中し、結果としてタケシ君は全力で中二病と化してしまった。
タケシ君としては不本意だったみたいだけど、その装備の有用性に何も言えなくなっていた。
そして最近は慣れてきたのか、言動にも若干の香ばしさが見え隠れする時があった。
もしかして……セット装備で精神汚染されるって隠し要素ないよな?
そして新たに手に入れた装備がこれだ。
——————
必滅の眼帯:左目を覆う様に装着する眼帯。装着すると左目が隠れるが、見えていない訳では無い。スキル【ホークアイ】【夜目】【遠視】が自動付与される。
黒衣:見た目通り真っ黒な上下セットの衣服。見た目に反して【打撃耐性】【斬撃耐性】【魔法耐性】が付与されている。
死神の皮鎧:赤黒く色づいた皮鎧。スキル【透明化】が付与されている。
——————
「ケントさん……。俺はどこへ行くんでしょうね……」
遠い目をしたタケシ君が、ボソリと虚空へ向けて呟いていた。
俺はその言葉に、明確に答えるすべはなかった。
いや、答える事が出来なかった。
タケシ君が身に付けた新たな戦闘スタイルは、文字通り〝死神〟である。
姿を現したら最後、そのものの死がもたらされる……中二病のポーズと共に。
後に、タケシ君の戦闘を見た自衛隊員が付けた二つ名は〝黒衣の死神〟であったが、タケシ君が断固として拒否したのはまた別の話。
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