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第5章 首都圏解放戦線
091 第21層の真実
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「ケントさん時間ですよ?ケントさん?」
俺はタケシ君の声で思考の海から浮上してきた。
あれからどれくらいたったのだろうか。
父さんから聞いた話だったんだけど、何か迷いが発生したときは座禅を組むと意外と解決したりすると言われていた。
半信半疑だったけど、とりあえずまねごとをしていたら思いのほか深く思考の海に潜ってしまっていたらしい。
「ケントさん……寝てないんですか?」
「ん?あぁ、時間か……。ごめん深く入り過ぎてたみたいだね。」
眠ってはいなかったけど、意外と眠気は無くなっていた。
疲れについてもそれほどでもなく、このまま戦闘に突入しても問題ないとさえ思えた。
外に意識を向けると、パチパチと焚火のはぜる音が聞こえてきた。
夜番の交代時間だったみたいだな。
「ごめん、すぐ行くから少し待って。」
「コーヒー淹れておきますね。」
そう言うとタケシ君はテントの外に移動して、お湯を沸かし始めた。
俺も装備品を装着し、テントの外に出る。
ダンジョン内、しかもボス部屋だというのに、とてものんびりとした空気が辺りに充満していた。
「どうぞ。」
タケシ君から受け取ったカップからは、コーヒーの爽やかで香ばしい香りが感じられる。
その暖かな湯気を感じながら一啜り。
口に広がる薄っすらと苦みがかった味わいに一息つく。
「では俺も一回休みます。何かあったら起こしてくださいね。」
「あぁ、わかった。タケシ君、コーヒーありがとう。」
タケシ君は自身のテントへともぐりこんだ。
ものの数分で寝息が聞こえてきたところを見ると、ボス戦での戦闘でそれなりに疲れはしていたようだ。
それからも何事もなく、ボス部屋での一泊は終了したのだった。
「じゃあ、これから第21層に入るわけだけど、何か情報は仕入れてある?」
「第21層はゴブリン系の上位種が出てくるようですね。おそらくエリート系かと思います。」
ゴブリン、ホブゴブリン、ハイゴブリンときてエリートゴブリン。
いったい誰が名前を付けているんだ?
むしろ、絶対に適当につけただろ?
なんつうか、小説初心者が適当にそれっぽく名前を付ける、そんな感じかな?
あと、なんとなくレトロ感を感じてしまった。
「エリートかぁ。さぞや強いんだろうな……」
「すみません、俺も資料のみで実物は初めてですから。」
そりゃそうか。
俺は準備した朝食のパンをかじりながら、なんとなくどうでもいいことを考えてしまった。
実際には資料通りにはいかない場合が多い。
このことは参考程度にするに限るから。
「じゃあ、早速ご対面と行きましょうかな。」
案ずるより産むが易し。
食事を済ませ、手際よく片づけを行っていいく。
そしてその後、俺たちはついに第21層へと足を踏み入れたのだ。
「今回は草原じゃないんだな。」
「そうみたいですね。」
俺たちの目の前に広がっていたのは、室内だった。
むしろ、屋敷……いや、城といっても過言ではないような、内装が見受けられた。
立派な絵画や花瓶。
天井には豪華なシャンデリアが見える。
床は磨かれた石材で覆われており、中央の大階段に向かって赤い毛足の長い絨毯が敷かれている。
後ろを振り向くと、そこには大きな扉が見えた。
これはどういうことだ?
第21層への階段を降り切ると、突然目の前が真っ白になった。
そして、気が付いたらここにいた。
最初はワープトラップを疑ったんだけど、後ろの扉を開けると上につながる階段が普通にあった。
つまり目の前が真っ白になったのは、ダンジョンの演出に他ならなかった。
なんつう無意味な……
「何だったんでしょう?」
「わからん……」
タケシ君も俺同様に、戦意をそがれてしまったらしい。
どこか拍子抜けでもしたかのように緊張感が和らいでいた。
もしこれがダンジョンが仕掛けた罠だったとしたら……
なんとも狡猾なダンジョンなのだろうか……
俺たちがゆっくりと一歩歩み出ると、突然周囲から明かりが照らされる。
目の前には大階段があり、その中腹に一人の人物が立っていた。
その姿は中世の貴族を思わせるいでたちだ。
「グーギョギャ、ガギャギャギギギャ!!」
どうやらその人物は、モンスターのようだった。
どこか芝居がかりながらも何かを言っているが、俺には全く解らなかった。
どうやらタケシ君も同じだったようだ。
なおも続く芝居。
大階段をゆっくりと下りながら身振り手振りをしている。
しばらく話続けていると、俺たちに言葉が通じていない事に気が付いたみたいで、何事もなかったかのように最初の登場場所へと移動していた。
なんとなく、どこか人間臭さを感じてしまった。
「ギャ~、gya~、あ~、あ~、あ~。うんっ。これで通じるか?」
突如人間の言葉を使い始めた事に、俺たちは驚きを隠せなかった。
思わずタケシ君と顔を見合わせてしまったのだから。
だからこそ警戒を上げなくてはいけないと頭ではわかっていた。
しかし、一度下がった戦気をMAXまで上げるにはいたらなかった。
モンスターは仕切り直しとばかりに改めて話し始めた。
「ようこそ、我が屋敷へ!!」
そういうと大きく手を振り上げ、一礼をするモンスター。
やはりどこか芝居がかっていて、不愉快極まりなかった。
「お前な何だ!!」
あまりの不快感に、声を荒げ問いただすタケシ君。
モンスターは、余裕があるように、優雅に答える。
その表情はどこか見下したように、ニヤついていた。
見た目はまさにゴブリンだった。
しかし、今までのゴブリンに比べ人に近づいている。
身長も体格もまさにそれだ。
一点完全に違うのは、肌の色が緑色だということだ。
「何者と?何者と問うたか?なるほどなるほど。これだから学の無い無法者は嫌いなのです。いいですか?我々はエリート!!そう!!選ばれしエリート階級なのです!!」
俺もタケシ君も、モンスターの言っている意味が解らなかった。
だけど、なんとなくエリートゴブリンの名前の由来が分かった。
完全にこれから来ているんだな。
そしてそれは侮蔑を含む名前であることを。
カチャリ
突如モンスターの後頭部に当てられた砲身。
それはタケシ君が作り出した魔砲だ。
「で?お前たちは何だ?」
タケシ君は、俺から見ても冷静さを欠いている様に見えた。
本来であれば、そのモンスター1匹とは限らないために周囲の警戒をしなくてはいけない。
しかし、タケシ君はそのモンスター1匹に注意を奪われていた。
すると次の瞬間……
ガキン!!
突如として響き渡る金属音。
タケシ君の左首に迫ろうとする短刀が、その姿を姿を現した。
すんでのところでその存在に気が付いた俺は、ギリギリ短刀とタケシ君の間に【結界】を滑り込ませることに成功した。
「おやおや?どうかされましたかな?」
タケシ君は、わざとらしく問いかけてくるモンスターを睨み付ける。
それでもニタニタとした笑いをやめないモンスターにキレたタケシ君は、その引き金を引こうとした。
ガキン!!
またしても襲い来る短刀。
いつどこから襲ってきているのか俺でも分からなかった。
分かるのは踊り場のモンスターに攻撃を仕掛けようとしたときに、何かが襲ってきているという事だ。
俺はここでやっと自分のミスに気が付いた。
ここに至るまで全く索敵行為をしていなかった事に。
この空間に入ってから怪しさは有った。
むしろ怪しすぎた。
だからこそ目の前の事象に捕らわれ過ぎて、すっかり忘れさっていたのだ。
俺は慌てて周囲の気配や魔力を探る。
すると至る所にモンスターの気配がしてきたのだ。
そう、第20層からの階段を降りて直ぐにこのモンスターハウスが設置されていたのだ。
「タケシ君落ち着くんだ!!今ここは罠の真っただ中だ!!」
俺の声に一瞬訳が分からなかったタケシ君は、すぐに理解してくれた。
だが既に行動が遅れており、タケシ君の周囲にはいくつもの短刀が迫りくる。
タケシ君はギリギリで回避を試みるも、いくつもの切り傷を負うことになってしまった。
「おやおや?どうされたのです?服がボロボロではないですか。」
目の前のモンスターはニタニタと笑い出す。
俺は沸き上がる不快感と怒りをどうにか押さえつけ、モンスターの鑑定を改めて行った。
そして後悔にさいなまれることになった。
この貴族風エリートゴブリンが、まさかのフロアボスだったのだ。
俺はタケシ君の声で思考の海から浮上してきた。
あれからどれくらいたったのだろうか。
父さんから聞いた話だったんだけど、何か迷いが発生したときは座禅を組むと意外と解決したりすると言われていた。
半信半疑だったけど、とりあえずまねごとをしていたら思いのほか深く思考の海に潜ってしまっていたらしい。
「ケントさん……寝てないんですか?」
「ん?あぁ、時間か……。ごめん深く入り過ぎてたみたいだね。」
眠ってはいなかったけど、意外と眠気は無くなっていた。
疲れについてもそれほどでもなく、このまま戦闘に突入しても問題ないとさえ思えた。
外に意識を向けると、パチパチと焚火のはぜる音が聞こえてきた。
夜番の交代時間だったみたいだな。
「ごめん、すぐ行くから少し待って。」
「コーヒー淹れておきますね。」
そう言うとタケシ君はテントの外に移動して、お湯を沸かし始めた。
俺も装備品を装着し、テントの外に出る。
ダンジョン内、しかもボス部屋だというのに、とてものんびりとした空気が辺りに充満していた。
「どうぞ。」
タケシ君から受け取ったカップからは、コーヒーの爽やかで香ばしい香りが感じられる。
その暖かな湯気を感じながら一啜り。
口に広がる薄っすらと苦みがかった味わいに一息つく。
「では俺も一回休みます。何かあったら起こしてくださいね。」
「あぁ、わかった。タケシ君、コーヒーありがとう。」
タケシ君は自身のテントへともぐりこんだ。
ものの数分で寝息が聞こえてきたところを見ると、ボス戦での戦闘でそれなりに疲れはしていたようだ。
それからも何事もなく、ボス部屋での一泊は終了したのだった。
「じゃあ、これから第21層に入るわけだけど、何か情報は仕入れてある?」
「第21層はゴブリン系の上位種が出てくるようですね。おそらくエリート系かと思います。」
ゴブリン、ホブゴブリン、ハイゴブリンときてエリートゴブリン。
いったい誰が名前を付けているんだ?
むしろ、絶対に適当につけただろ?
なんつうか、小説初心者が適当にそれっぽく名前を付ける、そんな感じかな?
あと、なんとなくレトロ感を感じてしまった。
「エリートかぁ。さぞや強いんだろうな……」
「すみません、俺も資料のみで実物は初めてですから。」
そりゃそうか。
俺は準備した朝食のパンをかじりながら、なんとなくどうでもいいことを考えてしまった。
実際には資料通りにはいかない場合が多い。
このことは参考程度にするに限るから。
「じゃあ、早速ご対面と行きましょうかな。」
案ずるより産むが易し。
食事を済ませ、手際よく片づけを行っていいく。
そしてその後、俺たちはついに第21層へと足を踏み入れたのだ。
「今回は草原じゃないんだな。」
「そうみたいですね。」
俺たちの目の前に広がっていたのは、室内だった。
むしろ、屋敷……いや、城といっても過言ではないような、内装が見受けられた。
立派な絵画や花瓶。
天井には豪華なシャンデリアが見える。
床は磨かれた石材で覆われており、中央の大階段に向かって赤い毛足の長い絨毯が敷かれている。
後ろを振り向くと、そこには大きな扉が見えた。
これはどういうことだ?
第21層への階段を降り切ると、突然目の前が真っ白になった。
そして、気が付いたらここにいた。
最初はワープトラップを疑ったんだけど、後ろの扉を開けると上につながる階段が普通にあった。
つまり目の前が真っ白になったのは、ダンジョンの演出に他ならなかった。
なんつう無意味な……
「何だったんでしょう?」
「わからん……」
タケシ君も俺同様に、戦意をそがれてしまったらしい。
どこか拍子抜けでもしたかのように緊張感が和らいでいた。
もしこれがダンジョンが仕掛けた罠だったとしたら……
なんとも狡猾なダンジョンなのだろうか……
俺たちがゆっくりと一歩歩み出ると、突然周囲から明かりが照らされる。
目の前には大階段があり、その中腹に一人の人物が立っていた。
その姿は中世の貴族を思わせるいでたちだ。
「グーギョギャ、ガギャギャギギギャ!!」
どうやらその人物は、モンスターのようだった。
どこか芝居がかりながらも何かを言っているが、俺には全く解らなかった。
どうやらタケシ君も同じだったようだ。
なおも続く芝居。
大階段をゆっくりと下りながら身振り手振りをしている。
しばらく話続けていると、俺たちに言葉が通じていない事に気が付いたみたいで、何事もなかったかのように最初の登場場所へと移動していた。
なんとなく、どこか人間臭さを感じてしまった。
「ギャ~、gya~、あ~、あ~、あ~。うんっ。これで通じるか?」
突如人間の言葉を使い始めた事に、俺たちは驚きを隠せなかった。
思わずタケシ君と顔を見合わせてしまったのだから。
だからこそ警戒を上げなくてはいけないと頭ではわかっていた。
しかし、一度下がった戦気をMAXまで上げるにはいたらなかった。
モンスターは仕切り直しとばかりに改めて話し始めた。
「ようこそ、我が屋敷へ!!」
そういうと大きく手を振り上げ、一礼をするモンスター。
やはりどこか芝居がかっていて、不愉快極まりなかった。
「お前な何だ!!」
あまりの不快感に、声を荒げ問いただすタケシ君。
モンスターは、余裕があるように、優雅に答える。
その表情はどこか見下したように、ニヤついていた。
見た目はまさにゴブリンだった。
しかし、今までのゴブリンに比べ人に近づいている。
身長も体格もまさにそれだ。
一点完全に違うのは、肌の色が緑色だということだ。
「何者と?何者と問うたか?なるほどなるほど。これだから学の無い無法者は嫌いなのです。いいですか?我々はエリート!!そう!!選ばれしエリート階級なのです!!」
俺もタケシ君も、モンスターの言っている意味が解らなかった。
だけど、なんとなくエリートゴブリンの名前の由来が分かった。
完全にこれから来ているんだな。
そしてそれは侮蔑を含む名前であることを。
カチャリ
突如モンスターの後頭部に当てられた砲身。
それはタケシ君が作り出した魔砲だ。
「で?お前たちは何だ?」
タケシ君は、俺から見ても冷静さを欠いている様に見えた。
本来であれば、そのモンスター1匹とは限らないために周囲の警戒をしなくてはいけない。
しかし、タケシ君はそのモンスター1匹に注意を奪われていた。
すると次の瞬間……
ガキン!!
突如として響き渡る金属音。
タケシ君の左首に迫ろうとする短刀が、その姿を姿を現した。
すんでのところでその存在に気が付いた俺は、ギリギリ短刀とタケシ君の間に【結界】を滑り込ませることに成功した。
「おやおや?どうかされましたかな?」
タケシ君は、わざとらしく問いかけてくるモンスターを睨み付ける。
それでもニタニタとした笑いをやめないモンスターにキレたタケシ君は、その引き金を引こうとした。
ガキン!!
またしても襲い来る短刀。
いつどこから襲ってきているのか俺でも分からなかった。
分かるのは踊り場のモンスターに攻撃を仕掛けようとしたときに、何かが襲ってきているという事だ。
俺はここでやっと自分のミスに気が付いた。
ここに至るまで全く索敵行為をしていなかった事に。
この空間に入ってから怪しさは有った。
むしろ怪しすぎた。
だからこそ目の前の事象に捕らわれ過ぎて、すっかり忘れさっていたのだ。
俺は慌てて周囲の気配や魔力を探る。
すると至る所にモンスターの気配がしてきたのだ。
そう、第20層からの階段を降りて直ぐにこのモンスターハウスが設置されていたのだ。
「タケシ君落ち着くんだ!!今ここは罠の真っただ中だ!!」
俺の声に一瞬訳が分からなかったタケシ君は、すぐに理解してくれた。
だが既に行動が遅れており、タケシ君の周囲にはいくつもの短刀が迫りくる。
タケシ君はギリギリで回避を試みるも、いくつもの切り傷を負うことになってしまった。
「おやおや?どうされたのです?服がボロボロではないですか。」
目の前のモンスターはニタニタと笑い出す。
俺は沸き上がる不快感と怒りをどうにか押さえつけ、モンスターの鑑定を改めて行った。
そして後悔にさいなまれることになった。
この貴族風エリートゴブリンが、まさかのフロアボスだったのだ。
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