最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

096 モンスターという人類

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 そんなケントとタクマのやり取りを陰で見つめる瞳があった。
 ゆらゆらとした影は見えるものの、その輪郭はぼやけ、人なのかさえ分かりづらい印象を受ける。

 その影は別な影へ、また別な影へと移動していた。

 そして上空からは煉獄が消えていることに誰も気が付いていなかった……

——————
 
『では続きと参ろうか!!』

 タクマが、その重量級の体格をものともしないで一気に飛び出し、距離を詰めてきた。
 あまりの速さに対応が間に合わないと思い、俺は別なスキルを発動させる。

「【隔絶】!!」

 俺はタクマの目の前ぎりぎりに【隔絶】を展開させた。
 どうやらタクマは【結界】と同種のものと判断したようで減速する気はなかった。

ガゴン!!

 ボス部屋に大きな衝撃音が響き渡る。
 トラック同士の衝突事故を思わせるようなその衝撃音に、ボス部屋全体が震えるほどだった。

「ぐのぁ~~!!」

 タクマは【隔絶】に頭を強かに打ち付けてしまったようで、跳ね返されるように後方へ吹き飛ばされていた。
 俺もここまで効果があるとは思わず、思わず「うわぁ~」って声が出てしまった。

「や、やるではないか……」

 タクマは青い額を真っ赤に染めていた。
 さすがの衝撃に耐えきれず、出血してしまったようだった。

 それにしても【隔絶】の効果は絶大だな。
 【スキルカスタマイズ】で弄った甲斐はあったってところかな。
 
 俺は以前から【隔絶】を使っていた。
 使い勝手としては【結界】の強化版といったところだったけど、強化具合も強度も燃費も全てにおいて中途半端だった。
 雑魚モンスターだったらいざ知らず、強敵との戦闘では戦力として換算するには心もとなかった。
 そこで効果時間をぎりぎりまで削って、その分を強度に回してみた。
 その効果時間はジャスト1秒。
 これによってピンポイントで使用すると、鉄壁の防御力を得ることが出来た。
 
 かなりピーキーな性能だから、俺は多用はしてこなかった。
 ここぞというタイミングの切り札的扱いだ。
 
 だけどそれが功を奏し、タクマとの間に余裕を作ることになったのだ。

「タクマ……そろそろ決着をつけよう。俺もこっからは遠慮なしで行かせてもらう。」

 俺は愛用の武器魔剣【レガルド】を強く握りしめ、魔力を流し込み【レガルド】の意思を解き放つ。
 ドクリと一瞬脈付く【レガルド】。
 そして俺はさらに奥の手のスキルを発動させていく。

「【武器複製】」

 俺の言葉をキーワードに、スキルが機能し始める。
 一本が二本に。
 二本が四本に……八本……そして十六本に……

 くそ、きっついな。
 展開するだけでもかなりの量のSPが消費されているのが感覚的にわかるほどだ。
 一本当たりで消費されるSPも馬鹿にならないけど、16本になるとさすがにシャレにならない量だ。

 だけどここで終わったらおもしろくないよな……
 俺は追加でスキルを発動させた。

「【リビングソード】」

 地面に横たわっていた複製された【レガルド】がふわりと宙に浮く。
 俺を囲むように浮かぶ【レガルド】は、またもドクリと脈付いていた。

『これはまた奇怪な。武器に命を吹き込むとはな。まさに神の所業ぞ。』

 その一種異様な光景に、タクマの顔は歪んでいた。
 驚かせるには十分だったかな?

「神の所業か……俺は考えていた。この【スキルクリエイター】の本質について。そしてこの【リビングソード】を創造するに至ったんだ。」
『ほう……』

 何か感心したように声を上げたタクマ。
 やはり何か情報を持っているってことか。

「その本質は【情報改編】。有機無機問わず、その情報体を書き換える能力。それが【スキルクリエイター】に内包された本来の【神の権能】。そして生まれたのが【リビングソード】だ……」

 タクマは俺が示した答えに静かに肯定した。
 そしてその体を揺らしながら、大いに笑い始めた。

『くはははっは!!至ったか!!神に至ったか!!なるほどなるほど、やはりお主は面白い!!吾らが主神よ!!あなた様がお与えになった試練は格別なものになりもうしたぞ!!』

 天を仰ぎ、その両手を広げながら盛大に吠えるタクマ。
 その叫びは歓喜に震えていた。
 そしてひとしきり笑い終えると、ギロリとその一つ目が俺を睨みつけてきた。

『さすがは吾らが主神【プロメテウス】様よ……これほどの試練を用意していただけるとは。感謝申し上げますぞ。そして人の子よ、よくぞ至ってくれた。感謝する。』

 何を言ってやがる。
 自称神に感謝って、気がおかしいんじゃないか?
 そんな俺の表情を読み取ったのか、タクマはさらに言葉を紡いだ。

『吾らが主神【プロメテウス】様はその昔、悪神と蔑まされた。あ、いや違うな。もとはその名では無かったのだからな。お主等が知る【プロメテウス】では無いぞ?だが、その伝承の影響は大いに受けておる。なぜならば、その伝承を受け継いでおるからな。』

 タクマの言葉は、俺にとって馴染み無い事だった。
 むしろ何を話したいのか全く分からない。

『分からぬか……まあ仕方あるまい。さらにその先に至り、死亡遊戯デスゲームと呼ばれる戦いが終わればすべてが分かるだろう。一つだけヒントを与えるとすれば……【神々の書庫】。それが全ての始まりで全ての終わりだ。』

 だめださっぱり分からない。
 〝デスゲーム〟〝【神々の書庫】〟
 この二つから連想されるもの……
 さっぱり分からない。

『ふむ、ここでの長話はあまり意味のあるものではないな。では続きと行こうか……なぁ!!』

 叫びと共に一足飛びで迫りくるタクマ。
 先程までと違い、全身が赤黒く変色していた。
 それは恐らくタクマが流した血を固めた防具にも見える。

『これならどうだ!!』
 
 突進と同時に振るわれた腕を見て、俺は驚いてしまった。
 先程まで無かった武器が握られていたからだ。
 むしろ生えていると言った方が正しいかもしれない。

「【隔絶】!!」

 一瞬の反応の遅れであわや一撃貰うところだったが、何とか間に入り込ませることに成功した。

 ガギリ!!と爆音とともに衝撃が俺を襲う。
 いくら斬撃を防いだところで、衝撃波までは防ぎきれなかった。
 その衝撃波による真空の刃が襲いかかってくる。
 レッサー種とはいえ竜族……俺の装備品である白群劣竜シリーズはその役目を全うする。
 吹き飛ばされはしたのものの、ダメージとしては大したことは無かった。

「さすがにやってくれたな。それなりに効いたぞ。」

 吹き飛ばされた際に口の中を切ったのか、口内にあふれ出る血の塊を吐き出す。
 べちゃりと地面を赤く染めていく。

「それじゃあ、今度はこっちの番だ!!」

 俺は種も仕掛けもある【結界】をあたり一面にばらまいた。
 さすがにスキル二つを同時発動させてる中での【結界】。
 負担がでっかいな。
 でもここで止まれないよな!!
 
 俺は防具のセット効果【飛翼】も上乗せしていた。
 先程までと違い、一歩一歩の動きの速度が加速されていく感覚が伝わってくる。
 しかも【飛翼】の効果も相まって、空中でその姿勢を急激に変え、【リビングソード】の切っ先の動きにも変化が起こる。

『なんと面倒な!!』

 負けじとタクマもその両手に作り出した血の剣をもって対応してくる。
 だけど俺の攻撃をしのぎ切れるはずもなく、徐々にその体に切り傷を増やしていく。
 しかも先程のタケシ君との銃撃戦とは違い、深く長い裂傷となっていく。
 タクマが動くたびに、その血が周囲にまき散らされていく。

 幾たび切り結んだ時だ。
 タクマの動きがかなり緩慢になっていた。
 そろそろ終幕か……ならば一気に片を付ける!!

「行くぞ!!」

——————

 その戦いを岩陰で見つめる瞳が二つ。
 じっと身をひそめた戦いを見守るっていた。
 その手には一つの金属の物体が握られていた。
 その金属は黒く塗りつぶされており、光が当たろうとも暗闇に溶け込んでいた。

 より激しさを増していく戦闘を見て、その者は深く息を吸い込みそして吐き出した。

 周囲の音は消えてなくなり、その眼には二人の戦闘だけが見えていた。

「弾込め確認……」

 ガチャリと音を立てて何かが動作する。

「よし。安全装置解除……」

 カチリ静かに音が鳴る

「よし。射撃よーい。」

 静かに呟かれた言葉を最後に、周囲は静けさに包まれた。

ドパンッ!!

 その静寂を打ち破るかのように、激しい爆発音が鳴り響いた……

『なんと……。これはしてやられたものだな……』

 そして体に大きな穴をあけ、どさりと前のめりに倒れこんだ。
 地面には赤い血だまりが出来ていったのだった……
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