最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

098 裏切られてもなお……

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『何とも不憫な男よな。』
「覚えているんだね?」

 タクマの言葉に俺は確信した。
 タクマもまた、【神の権能】の所持者であると。

『気づいたか……』
「そりゃね。」

 俺とタクマの短い会話。
 それだけで答え合わせには十分すぎた。

「で、タクマはどっちの味方?」
『吾か……。吾は己の試練を超えられればそれでよい。ただそれだけだ。』
「なんともまぁ、根っからの武人だな。」

 この戦いが始まるまでの間、一緒にいた仲間がいない。
 タケシ君と行動を共にしていた時に、いつかはこうなるだろうと覚悟はしていた。
 だからこそ俺は、口酸っぱくタケシ君に忠告を与えていた。
 〝力に飲み込まれるな〟と……
 だけどそれは、最後までタケシ君に届くことはなかった。
 それが一番の心残りになってしまった。
 まさに後の祭りだね。

『だが二つ疑問が残る。なぜ、お主は死ななんだ?なぜ、あ奴を取り込んだ?』

 やっぱり気にはなるよな。
 どうしたものか……答えてもいいんだけど、答える理由にはならない。
 でもまぁ……

「そうだな……。一つは装備品のおかげ。もう一つはスキルの進化ってところだな。」
『そうか。』

 あれほどまでに饒舌に語り合っていた先程とは打って変わって、多くの言葉を語らなかった。

 俺が死から生還した理由。
 それはもう一つのセット効果【残存】のおかげだ。
 【残存】は、パーティーの全滅を回避する為の効果にしか過ぎなかった。
 だけど俺、はそれを書き換えることに成功した。
 使用したスキルは【スキルカスタマイズ】。
 スキルの内容を自在に書き換えることが出来るスキルだったんだけど……
 【神の権能】……【情報改編】の力が【スキルカスタマイズ】の本来の姿だった。
 だから俺は、このことを理解してから使い方がだいぶ変わったと思う。

 【残存】の内容を【情報改編】し、十日で一つ【残魂】……つまり命のストックを出来るようにしたのだ。
 最初は一日で一つを希望したんだけど、コストが馬鹿高になってしまったのであきらめた。
 ギリギリ妥協点が十日だったってわけだ。

 で、もう一つのスキルにも変化が訪れた。
 それが【レベルドレイン】。
 【スキルカスタマイズ】と【スキルコンバート】が〝信頼〟を起点としていたのに対し、【レベルドレイン】は〝敵対〟を起点としていたのだった。
 これもまた【情報改編】を理解したからこそ、知ることが出来た情報だった。

——————

レベルドレイン:対象の任意のレベルを抜き取ることができる。※対象のレベルが0になった場合、対象は消滅。吸収効率100%。対象の生命情報経験値を吸収し、自身の生命情報経験値と統合することが出来る。また、生命情報スキルの取捨選択は任意。SP:200。

——————

 スキル進化でレベルが廃止され、相手の〝すべて〟を吸収できるようになった。
 そして失われようとしていたタケシ君の生命情報経験値をもらい受けたというわけだった。

 俺はすでに人間をやめていると確信していた。
 おそらく俺は人として生きてはいけないだろう。
 自分自身こそが〝怪物モンスター〟ではないのだろうかと思っている。

『なるほどなるほど。これは面白い……。そうかそうか。そういう事か……』
「どうした?」

 何か思い当たることでもあったのか、タクマはしきりに何かをつぶやいていた。
 それは俺に聞き取れる言葉ではなく、全く理解できなかった。

「で、どうするんだ?俺としてはタクマを倒して先に進みたいんだけど。」
『……ケントよ。吾を取り込め。』

 突然の申し出に、俺は混乱していた。
 今まさに、どうやってタクマを倒そうかと考えていたのだから。
 俺のスキル群には、タケシ君のスキルも再編されている。
 お陰でタケシ君が使っていた【魔銃作成】や【魔弾作成】も使えるようになっている。
 魔道具に至っても同様だ。
 だからこそどうして倒すか迷ってしまっていたのだ。

『そう混乱するでない。ただ、興味が湧いたのだ。お主がこの先で何をなすのか。それにな、今のお主に勝てる道筋が全く見えん。ならば楽に逝くのもまた一つだろうて。』

 俺としては何とも言えない気分になってしまった。
 今までかつて、こんなに潔い負けを見たことが無かったからだ。
 世界が改変され殺伐としてからというもの、誰しもが生に執着するようになっていた。
 何が何でも生き延びる。
 ただそれだけで人類はここまでやってきたのだ。
 そんな中でのタクマの言葉に、己の耳を疑ってしまった。

「良いのか?」
『一思いにやってくれ。』

 俺はタクマの思いを受け取り、スキルを発動する。
 そしてあとに残されたのはボス部屋の静寂だけだった。

 それから俺はさらに先に進んでいた。
 タクマとの一戦の後に降り立ったフロアは、今までの様な草原や洞窟ではなかった。
 禍々しい空気を纏った薄暗い墓地だったのだ。
 それから先全てアンデットで構成されていた。
 ただし、すべてゴブリン系の……
 何処まで行ってもゴブリンのダンジョンだった。
 誰に咎められるわけでもなくなった俺は、【レベルドレイン】を躊躇うことなく使用していく。
 それもあってか、特に苦戦することなく階層を進んでいった。

 第40層のボスベアには、リッチが陣取っていた。
 しかしこれもまたゴブリン種であり、大幅に強化された俺にとっては大した旨味の有る戦いとはならなかった。

 上空に浮く【煉獄】から激しい銃撃音。
 周囲を守る【イージス】はすべての攻撃を自動で捌き切る。
 そして縦横無尽に駆け回る【オルトロス】の赤黒い閃光。
 さらには、激しい衝突音と共に巻き上がる土煙と、燃え上がるような爆炎。
 その土煙が消えるころには、ボス部屋に大きな窪みが出来ていた。

『いや~、さすがにやりすぎたな。』
『ほんと、なんでこんなことになったんだか……』

 俺が手持無沙汰でボス部屋の入り口付近に待機していると、晴れる土煙の中から二人の人物が姿を現した。
 一人は体長4mを超える大男。
 その手にはバロンからドロップした魔法剣【烈火】もどきが握られていた。
 筋骨隆々なその男は腰鎧をつけてはいるが、上半身裸でニカリと笑った口元は楽しそうに歪んでいた。
 もう一人の手には【オルトロス】が握られており、周囲には【イージス】が飛び回っていた。
 その人物が合図をすると、宙に浮いていた【煉獄】はその人物の手に収まり消えていった。

「お疲れ様二人とも。なかなかの連携だったね?」

 俺は現れた二人に声をかける。
 その言葉に二人は顔を見合わせると、フンとでも言いそうに顔を背けあった。
 それを見た俺は、またも苦笑いを浮かべていた。

『ケントよ。吾はいいとして、なぜこ奴も【召喚】したのだ?』
『あぁ~~~!!それはこっちのセリフだっつうの!!ケントさん、こんな単細胞はすぐに消してください!!』

「タクマもタケシ君も仲良くしようよ。二人ともなかなか息が合ってたぞ?」

 そう、今俺の目の前にいる人物は【レベルドレイン】で吸収されたはずのタケシ君とタクマであった。
 俺は、二人を吸収してからダンジョンを探索中にずっと考えていた。
 【スキルクリエイター】で何とかならなかと。
 二人の魂は今、自分の中にある。
 これは【レベルドレイン】のスキル情報を読み解くと、そう読み取れなくもなかったからだ。
 希望的観測ともいうけど……
 ならば呼び出すことはできないのだろうかと。
 そして創り上げたのが【召喚】であった。
 必要なレベルは100。
 タケシ君とタクマを吸収した俺は、既にレベルが400に到達していた。
 そのため100レベル程度全く惜しいとは思わなかった。
 そして【召喚】はスキルレベル10毎に1体の〝召喚獣〟を呼び出せるというものだった。
 そこで俺は【神の権能】の【情報改編】をもとに、自身の中にあるタケシ君とタクマの魂の情報を少しだけ書き換えた。
 そして生みだされたのが、召喚獣【多田野武】と【タクマ・モリサキ】だ。
 さすがにここまでくると「ご都合主義が過ぎるよな」と思ってしまったけど、それでも出来たのだからありがたく使わせてもらったと言う訳だった。

 それから俺たちは【ゴブリンダンジョン】を潜り続けた。
 どのくらいの日数が経過したのだろうか。
 4か月が過ぎたところから数えるのをやめてしまった。
 そしてついにこの時が来た……
 第50層……
 タクマの話ではここが最後の階層になるそうだ。

「行こうかみんな。」
 
 俺は気合を入れなおし、その大きな扉を押し開けた。
 そして目にしたものは……

「あれ?いない?!」

 中央には誰もおらず、ボス部屋は閑散としていた。
 これも罠かと思って慎重に中に入ってみたものの、うんともすんとも言わなかった。
 しかも奥に続く扉が開けっ放しになっていた。
 
「なぁ、タクマ。この階層ってどう考えてもアンデットだよな?」
『たしかにそうであるな。』 
 
 そう、この階層までアンデットの巣窟だった。
 しかもご丁寧にゴブリンオンリー。
 ゴブリン種で一番強いであろう人物を俺は知っている。
 どう見てもタクマだ。

「このダンジョン最強のゴブリンって間違いなくタクマだよね?」
「そう……で……あるな……」

 ぽつんと開かれた最奥への扉は、何かもの悲しささえ感じさせたのだった。
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