最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈～レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈～

第５章 首都圏解放戦線

１０４ 用心棒

　一人のやせ細った男が、石畳の仄暗い路地を全力で駆け抜ける。
　何かに追われるように、恐怖で顔をこわばらせながら。

「くそ!!聞いてねぇ～ぞ!!あんな化け物にかかわってられっか!!」

　男はさらに加速していく。
　男はおそらく探索者崩れであろうか、スキルを発動させていた。
　常人では出せない速度で裏路地を駆け抜けていく。

　薄暗く、闇夜に紛れる事で自分の姿をくらませることに成功したと思った男は、隠れ家へと戻ってきていた。

「お頭!!あいつに関わったらだめだ!!ありゃ人間じゃねぇ～ぞ!!」

　息を切らせ肩を上下させながら、男は目の前の男に苦言を呈した。
　お頭と呼ばれた男は、逃げてきた男に向かって顎をしゃくっていた。

　するとどこからともなく現れた刀身が、その男の首をポンと言う音でも出るかのように簡単に跳ね飛ばしてしまった。

「何ビビってやがる!!俺は馬場様だぞ!!あんなくそ野郎にビビってんじゃねぇ～ぞ!!」

　未だ自分の首が跳ね飛ばされたと気づいていないように立ち尽くしている胴体を、馬場は思いっきり蹴り飛ばした。
　切り口からはいまだに血があふれ出しており、蹴られた反動でそこかしこにその血をぶちまけていた。

　何処からか聞こえてきた「ひっ!!」っという怯えた声に、さらに苛立ちを募らせていく馬場。
　陰から出てきた血塗られた剣を持った男に声をかけていた。

「念のため寝蔵を変える。今から５分後にはここを出るぞ。」
「へいへい。俺はなんでもいいんだがな。取り敢えず、〝いらないもの〟は斬り捨てて良いか？」

　馬場はその男に「勝手にしろ」というと、自室に戻っていった。
　馬場の去った部屋には手錠に繋がれたままの男女数名が横たわっていた。
　かろうじて息は有るものの、元気があるとはいいがたい状況だった。
　見るも無残なその光景に、その男はニヤリと笑っていた。

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「見つけた。」

　俺は【煉獄】から送られてくる情報をもとに、アジトを見つける事に成功した。
　監視者が潜り込んだのは、とある建物だった。
　それはタケシ君が教えてくれた飯屋の隣のあばら家だ。
　恐らく地下でも作っているのか、地上の大きさはそれほど大きな建物には見えなかった。

『おっちゃんには悪いことしそうだなぁ……』

　そのあたり一帯がどうなるか不安を覚えたタケシ君は、ポツリと漏らしていた。
　俺もさすがにそこまではと思ったけど、万が一相手がアジトを爆破させればそうなるだろうと思っていた。

　俺は奴らのアジトに向かって走りだした。
　キャンプ地からはさほど遠い場所ではないので、上空に待機させている【煉獄】４機を周辺警戒に当たらせていた。

『ケントさん、俺も出ますよ。周辺警戒は俺の方でしますから。』
「しかし……、いや、意地を張っても仕方がないか。タケシ君頼んだよ。」

　俺はそう言うと、スキル【召喚】を発動させタケシ君を呼び出した。
　俺のすぐ横に現れたタケシ君は、すぐに【煉獄】の権限を受け取り、警戒を引き継いでくれた。
　これで全力で動けるな。

　全力ダッシュする事３分……目の前には件の建物がある。
　入り口で警戒に当たっていた人間は二人。
　あまり警戒した様子は見られなかった。
　俺はその二人を瞬時にのした後、入り口をそっと開いた。
　そこにはただの食堂に見えるテーブル等が備え付けられており、開店準備をすればすぐに店が開けるように思えた。

「この先か……」

　しかし、俺にはその偽装も通用しなかった。
　カウンター裏にある偽装された床を剥がすと、階段が姿を現したのだ。
　しかし、床を剥がした瞬間から、嫌な臭いが立ち込めてきた。
　鮮血がまき散らされたかのような、鉄さび臭いにおいが充満していたのだ。
　一瞬その匂いに顔を顰めるも、俺は奥へと進んでいった。

　気配を探ると、慌ただしく動き回る姿が見て取れた。
　その気配は焦りを覚えているようで、何かをかき集めているように見えた。

「あれだな……ん？」

　馬場の気配がする奥の部屋に向かう途中で、俺の前にいきなり刃が振り下ろされた。
　俺は咄嗟に後ろに飛び退き、その刃に攻撃される事はなかった。

「よく気が付いたな。俺の刀を躱した奴はそんなにいないぞ？俺の師匠と兄弟子くらいか？まあ、最後は俺が斬ったが……で、お前何もんよ？」

　通路の脇の部屋から姿を現したのは、細身の男性だった。
　腰に鞘をぶら下げ、右手には真っ黒な刀身の刀。
　そのいで立ちは〝ザ・用心棒〟的な袴姿だった。
　手にしている刀からは、血の臭いが立ち込めていた。

「ん？この刀か？こいつが気になるとはお前さんもなかなか目利きが出来るみたいだな？」

　その男性は刀をふらりと揺らすと、すっと切っ先を俺に向けて構えた。
　あまりの綺麗な所作に、俺は少しだけ見惚れてしまった。
　ここで人斬りなんてやっているような人物には見えなかったのだ。
　ただ、俺はその刀を鑑定して納得してしまった。

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魔刀【黒天牙】……漆黒の刀身は折れず曲がらずあらゆるモノを切り裂く。徐々に精神汚染を起こしていく。最終的には刀の意志により殺戮を行うようになる。

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　ここにもまた精神汚染系の武器か……
　あまりの都合のよさに、何か人為的な物を感じてしまう。
　恐らく加賀谷に渡した一対の短刀も原因なのかもしれないな。

「良い刀だろ？見るからに危険な色合い。そして醸し出す危険な香り。俺を魅了するには十分すぎる刀だ。」

　男性はそう言うと、刀をうっとりとした目で見つめていた。
　その眼は既に常軌を逸しているのが分かるほど、陶酔しているように見えた。

「何も答えなんだな……つまらないなぁ～。まぁいいか。刻めば何か発してくれるだろうから……な!!」

　男性が最後の一言を発すると同時に、一歩踏み出してきた。
　踏み込みと同時に突き出された刀の切っ先は、正確に俺の喉笛をとらえていた。
　さほど広い通路ではなく、人二人が通るのがやっとの道だ。
　左右に躱すほど余裕はなかった。
　俺はすぐさま魔道具を発動させる。
　魔道具【自動防衛システム・守護の盾イージス】。

　俺の周囲を飛び回る守護の盾イージスは、的確に突いてくる男性の突きをギリギリのところで防ぐことに成功した。

　ギリギリと音を鳴らしながら、受け止められた自身の刀を見て、男性は驚きとも喜びとも取れない表情を浮かべていた。

「これはすごい!!今までこんなことなかったんだが……まさか突きを止められるとは……。では、もっともっと突いてもいいんだよ……な!?」

　男性はそう言うと、さらに激しい連撃で突きを放ってくる。

　【結界】が随時更新されながらも、男性の突きを受け止め続ける【守護の盾イージス】。
　それでもなお男性は突きをやめなかった。
　次第に【守護の盾イージス】から悲鳴が上がり始める。
　あまりに速い突きに【結界】の更新頻度に追いつけなくなってきたのだ。

　男性は最後の一突きに、全身全霊をかける。
　今までよりも強いプレッシャーが放たれた。
　一気に迫りくる黒刃。

ガゴン!!

「んのわ!?」

　男性は顔面からつんのめる様に俺の脇を通り過ぎ、ゴロゴロと通路を転げていった。
　俺は思わずはニヤリと笑いながら、男性に向き直る。

「足元がお留守になるのはいけないね。」

　カチャリと言う金属音と共に男性の額には砲身が出現していた。
　俺がスキル【魔銃作成】で作り出した砲身だ。
　まあ、タケシ君のパクリなんだけどね。

　あまりにも冷たい金属の感触に、男性は心底冷える気がしていた。

「見逃してはくれないのか？」

　男性は命乞いともとれる言葉を投げかけてきた。
　あわよくば再度攻撃に移ろうと、いまだ手にした黒刃に力を入れたままで。

「お前は今までそうやって命乞いをした人を助けたのかい？」
「……。」

パシュン!!

　気の抜けたような音と共に、どさりと男性は崩れ落ちた。
　俺はすぐさま【レベルドレイン】を発動させた。
　ドクリと自信に流れ込んでくる【生命】に一瞬意識を持っていかれそうになった。

　そしてすぐさま【スキルコンバート】を発動させた。
　今回の生贄は……スキル【色欲】。
　恐らくこの男性は、スキル【色欲】からくる性欲を、殺人欲に置き換えていたのだろうと推測できた。
　そして新たにスキルを取得したのは、父親と同じ【鍛冶】。
　しかも、スキルとの交換レートとしては対等では無かった為、【鍛冶】のレベルが大幅に上がることになった。
　これはこれで嬉しい誤算だった。
　後は男性を吸収したことで、ユニークスキルを得る事が出来た。

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隠密：息を潜めた場合に限り、感知系のスキルをすべて無効化する。

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　最初に俺が出し抜かれた理由は、これにあったみたいだ。
　自分が微動だにしなければ、何人からも感知されないという呆れた性能だった。