最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第5章 首都圏解放戦線

105 馬場という男

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「くそ!!くそ!!くそ!!あいつ下手うちやがって!!」

 馬場は焦る気持ちを押し殺すこともできずに、慌てて身づくろいをしていた。
 闇ギルドに関係する資料や証拠を、自分のインベントリに手あたり次第収納していく。
 資産等も収納していると、階段付近から戦闘音が聞こえてきた。

「くそ!!もう来やがったか!!」

 出てくるのは悪態だけで、何ら解決の糸口が思いついていなかった。

 ん?そういや東条が居たか……まあ、あいつが居れば問題無いだろ……。あいつに勝てる奴なんかそうそういねぇ~だろうからよ。」

 馬場は東条が何とかするだろうと思うと、慌てていた心が少しづつ落ち着いていくのを感じた。

 しばらくすると戦闘音が聞こえなくなった。
 馬場は東条が勝ったものと勝手に思い込み、回収が終わるとともに隠し通路に入ろうとしていた。

——————

ドガン!!

 俺は馬場が居るであろう部屋の扉を、守りを固めていた闇ギルド員ごとまとめて吹っ飛ばした。

 ナイスバッティング!!

 俺が、タケシ君謹製の【かっ飛ばせホームランキング!!】という魔導具でフルスイングした結果がこれだった。
 いやぁ~凄いねこれ。
 めっちゃ軽いのに、めっちゃよく飛んでったわ。
 っと違った違った。
 さっさとけりをつけないとな。

「いたいた。久しぶりって言えば良いのか?」
「ナカムラ・ケント……!!くそ!!誰もいねぇ~のか?!」

 馬場は声を張り上げているようだったけど、だれからも返事がなかった。
 それは当然と言えば当然の結果だ。
 俺はここに到着する前に、すべての部屋を探して回った。
 もちろん、馬場を探していたわけじゃない。
 馬場の居場所は最初から分かってたし。
 俺が探していたのはこの血の匂いの出元だ。
 案の定、その部屋は血の海に覆われており、その中で息絶える人物が何人もいた。
 他の部屋も念の為調べて回ると、とらわれている人たちも発見できた。
 俺は話を聞いて回り、すべての部屋で手下をぶっ飛ばすか囚われの人物を助けて歩いた。

「全員眠ってんじゃないの?まあ、まずそうだったからそのまま放置したけど。」
「何言ってやがる!!くそ!!やってやんよ!!」

 馬場は三下でも言わなそうなセリフを口にすると、腰に下げた剣を抜きはらった。
 やはり馬場は腐っても探索者。
 それなりのスキルを所持していたらしい。

「今さら泣いてもおせぇ~からな!!覚悟しやがれ!!」

 これまた三下風情のセリフが飛び出すと、途端に俺のやる気が一気に萎えていった。
 明らかに先程の男性の方が強かったからだ。
 戦う気力が失せた俺は、興味を失った戦いを一瞬で終わらせることにした。

キン……

 静かに響き渡る金属音。
 俺の脇を通り過ぎると、馬場はそのままの勢いで壁にぶつかった。
 顔面から強打するようにぶつかり、ずるずると床に向かって落ちていった。
 その後を追いかけるようにゆらゆらと動く下半身。

 どちゃりと言う生々しい音と共に床一面血の海に染まっていった。

「あぁ~なんだろ。この資料使えないかもなぁ~。」

 俺は地面に転がるインベントリからあふれた資料や資産を見つめて呟いてしまった。

『おわったのぉ。』
「だね。」

 今回出番の無かったタクマが、つまらなそうに話しかけてきた。
 俺としては、最初からタクマを頼る気はなく、自分一人で決着をつけるつもりでいた。
 しかし、助け出した人間の数が多かった為、その護衛をお願いした形だ。

 そりゃ驚くよね……いきなり一つ目の大男が現れたんだから。
 俺は何とかみんなを説得して、比較的きれいな部屋で固まっててもらった。
 下手に動かれたら護衛なんて出来ないからね。

 よく見るとケガなどをしている人も多かったから、手持ちのアイテムと馬場から回収したポーションを使っていく。
 さすがに数が足りないので、俺も聖属性魔法で負傷者の手当てを行っていった。
 幸いだったのが、医療従事者も居た為何とか捌き切ることが出来た。
 ただ、欠損個所は元に戻せなかったのが心残りだった。
 それでも助かっただけありがたいと言われ、なんとなくだけど心が軽くなった気がした。

「じゃあ戻ろうか。」

 捉えられていた人たちに声をかけると、ゆっくりとだが動き始めてくれた。
 まだ身体に力が入らない人もいたので、慌てさせてはいけないからね。

『ケントさん。こっちに団体様が向かってますけどどうします?』

 出口まであと少しというところで、タケシ君から通話が入った。
 その情報を聞いた俺はつい顔を顰めてしまった。
 
「どんな奴ら?」
『完全にアウトな集団。たしか自衛隊の連絡網にも乗っていた闇ギルドの奴らですね。』

 おそらく闇ギルドか……
 考えるまでもないな。
 
「だったらせん滅で良いよ。」
『了解!!』

 俺は捉えられていた人たちに、今出れなくなったことを伝えるた。
 皆不安そうな表情を浮かべていたのは当然のことだと思う。
 やっと出られると思った途端に、待ったがかけられたのだ。
 誰だっていい思いはしないだろうからね。

 俺は階段下で待機していると、突如外から激しい銃声が聞こえ始めた。
 男たちの怒声や悲鳴も外から聞こえてくることから、タケシ君が無双していることが伺い知れる。

 その銃声一発一発にみんなの怯える姿が見受けられたが、そこまでかまってやるほど俺にも余裕はなかった。
 正直ここまで助けたのだから、あと少し耐えてほしいと思ってしまった。

 しばらくすると、外での銃声がやみ、タケシ君からの報告が入る。

『せん滅完了しましたよ。オールクリアです。』
「ありがとう。じゃあこれからここから脱出するから、上空からの援護よろしくね。」

 俺はタケシ君とのやり取りのあと、全員に此処を出るように促した。
 体の傷は消えているが、失った血などのはどうにもできないので、ゆっくりとした足取りで外に出る事になった。
 外に出ると、そこは至る所が穴だらけになっていた。
 恐らくタケシ君が上空から弾幕を張ったんだろうね。
 でも、さすがにこれはやり過ぎなのでは?
 まあ、悪党相手に手加減なんてする意味はないか。

「これから自衛隊の施設まで向かうからついてきて。」

 俺が目的地を告げると、彼らは安藤の表情を浮かべた。
 まあ、国民を守るのが自衛隊のお仕事ですからね。
 信頼度は高いから仕方ないか。
 
 至る所にある弾痕。
 横たわる死体。
 広がる血の海。
 それだけでも卒倒しそうになる光景だ。
 俺たちが去った後ろで悲鳴が聞こえるが、知らぬ存ぜぬを貫いて自衛隊施設に向かったのだった。

 自衛隊施設に無事に着くと、保護してきた人たちを自衛官に引き渡した。
 何度も頭を下げられたが、正直それはどうでもよかった。
 自分の報復行動を行ったついでだったからだ。
 俺が帰ろうとすると、自衛官に呼び止められてしまった。
 事情聴取を取るとのことだったので、あきらめて素直に応じることにした。
 正直、いならないことを聞かれる前に、この場を去りたいのが本音だった。
 仕方がないので俺は話せる範囲で事情を説明し、なんとか1時間で開放してもらえた。
 
 外に出るとすでに日付が変わっており、星がきれいに輝く夜空を見上げる事になった。

『お疲れ様です。』
「あれから変わった事は無かった?」
『問題はないですね。一応闇ギルド員が来た方向を捜索してみましたが、アジトは特定できませんでした。』
「ありがと。じゃあ引き続き警戒をお願い。」
『了解。』

 俺はタクマを【送還】していたが、タケシ君には警戒任務を頼んでいた。
 上空で4機の煉獄を飛ばしていろいろ警戒をしていた様だったが、特にやることもなく、敵アジトも見つからなかったようだった。

 それからゆっくりと自分のテントへ戻ると、いまだに【ボルテージ】の面々は事後処理に追われていた。
 散乱した物資の回収や、穴の埋め戻し。
 彼らとてダメージを負って大変だろうにな。

「あ、ケントさん!!」
「佐藤さん。あまり無理したらだめだろう?」

 俺が佐藤さんを気遣うと、佐藤さんは苦笑いを浮かべていた。
 恐らく何かしていないと気が気ではなかったのかもしれないな。

「報復攻撃は、これで終わりだから安心していいよ。」

 俺が佐藤さんにそう告げると、佐藤さんはキョトンとした表情で固まっていた。
 うん、ちょっとだけ面白いと思ったのは内緒だ。
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