最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第6章 富士攻略編

108 ラーとケント

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 ラーと呼ばれたスライムがケントと出会ったのは、ケントが最前線基地【富士急ハイランド跡地】に向かう時の事だった。

 ケントは向かうついでに、野良ダンジョンと呼ばれる今は放棄されたダンジョンを攻略していた。
 あくまでも野良であって、正規に管理されたダンジョンではない。
 未管理であるがために、もぐりの探索者が日銭稼ぎにやってきたりしている場所だ。

 そんな中、一つのダンジョンを攻略中に最終階のボス部屋にボスとしてラーは存在した。

「ここは?僕は確かムー君たちと一緒に冒険者と戦って……そうだ、倒されたんだ。つまりここはリスポーン部屋か……。あれ?ムー君?ムー君!?」

 ラーは、自分が今いる場所が良く分かっていなかった。
 本来であれば戻ってくるはずのリスポーン部屋でない事は良く分かった。
 ラーがいる場所。
 恐らくダンジョンである事は確信が持てた……
 ラー自身に流れ込む魔力がそれを証明していた。
 しかし分からない事も多い。
 今まで見た事の無いリスポーン部屋だった。

 辺りを見回しても何もない。
 あるのは自分の目の前の扉と、後ろの扉。
 ダンジョンのボス部屋にそっくるだったのだ。

「ここってボス部屋っぽいけど……うん、間違いない。何度か僕たちがが担当したボス部屋の感じにそっくりだ。でもなんで?」

 ラーは自分がなぜここにいるのか見当がつかなかった。

 時は少し遡る……
 ラーはここに来る前、5代目【勇者】と名乗る人間族と戦闘をしていた。
 いつものメンバーのムー君とスーちゃん、イーさんにラー自身だ。
 その戦闘は激しいものだった。
 最初はタダのスライムだったが、彼らは全員異常進化を遂げていた。
 人間族からは【イレギュラー】種として恐れられるほどに。
 しかし年々力を付けた人間族は、ついに魔王城へとたどり着いた。
 いつものメンバーは、それぞれ隊を任されるほどに成長を遂げていた。
 それをもってしても人間族の進撃を止める事が敵わなかった。
 魔王軍は徐々に後退し、ついには魔王城へと追い詰められてしまった。
 彼ら4匹は意を決し、【魔王】の御前を辞すると、現在侵攻中の人間族の部隊に突撃をかけたのだ。

 その戦いは熾烈を極めた。
 4匹がいくら【イレギュラー】種だとしても、迫りくる相手は30万を超える軍勢。
 一人でも多く倒し、この先にいる【魔王】を守る事だけが、自分たちの存在意義だと震える心を押さえつけ戦い続けた。

 しかしその戦いは長くは続かなかった。
 物量差には勝てるはずもなく、4万ほど打倒したのちに4匹はそろって【勇者】の手で討伐されたのだ。

 そして現在……
 ラーは体を動かすと、その形を変えていく。
 準備運動でもするかのように体全体を変形させたり、一部を武器や防具に変化させていた。
 一通り確認し終えると、満足したのか元の球体に戻っていた。

「うん、【フィジカルチェンジ】と【アタックチェンジ】に【ディフェンスチェンジ】は問題無いね。あとはここがどこで、ここからどうやったら出られるかっにて事かな?それから、みんなを探さないと。」

 ラーはそう言うと目の前の扉に向かって移動を始めた。
 ぴょんぴょんと跳ねる姿は、見るものが見たら一撃で萌えること請け合いだった。
 ただ、ここには誰もいないのだが……

「痛っ!!」

 しかし、ラーの行動もここまでだった。
 3mも移動しないうちに、何か透明な壁の様な物にぶつかってしまった。

「何だよこれ……。【結界】的な何かかな?」

 ラーはその透明な壁沿いに移動を始めた。
 その壁は最初の場所から円を描くように設置しており、そこから出る事はでいなかった。

「これって……。完全に閉じ込められたね。みんな大丈夫かな……」

 ラーはそれが心配だった。
 自分の後輩?に当たるムーが一番気がかりだった。
 あまり口数は多くないけど、それでもなんだか放って置けない弟みたいな存在。
 それがムーだった。

「無事でいてね。」

 誰もいない部屋で、ラーはそうつぶやいたのだった。

——————
 
「やっとボス部屋だな。」
『長かったですね。ここ放置され過ぎじゃないですか?』
『そう申しても始まらんだろうに。その分魔石が大量に集まったのだから良しとしておこうでは無いか。これだけあれば魔道具が創り放題であろう?』

 俺たちは、野良ダンジョンと呼ばれているダンジョンを攻略中だった。
 既に侵攻階層は第50層目に到達し、Cランクダンジョンと言っても差し支えないものだった。
 タケシ君は愚痴りながらも、ストックしてある魔石にニヤツキが止まらない様子だった。
 それをからかいながらも締めるタクマは、タケシ君の良いかじ取り役なのかもしれない。

『ふむ。どうやらここが最終地点のようだの。』
「タクマがそう言うんだったら間違いないね。よし、この【スライムダンジョン】のボスとのご対面と行こうじゃないか。」

 俺が大きな扉を押し開けると、ギシギシと音を立てながら扉が開かれている。
 中はバスケットコート2面分くらいの広さで、さほど大きいとは言えないものだった。
 中央にはこれまた青く透明な体をしたスライムが鎮座していた。
 プルプルと震えたかと思うと、時折ジャンプしてこちらを威嚇している様にも見えていた。

「やっぱりボスはスライムだよね。個人的にキングスライム的なの期待したんだけど、そうはいかなかったね。」
『ケントさん……ゲームのやり過ぎじゃ無ですか?』
『二人とも無駄話は後にせんか。ほれ向こうはやる気満々だぞ?』

 タクマはそう言うと、魔法剣【烈火】もどきを右手に持って戦闘態勢に入った。
 だらりとぶら下げられた武器は、いかにも隙がありそうだった。
 しかし、そんな隙を見せるほどタクマは優しくはない。

 タケシ君も魔導具を発動させて、いつもの戦闘態勢に入る。
 空中には【煉獄】が4基待機している。
 4基とも目の前のボスと思しきスライムを、既に照準に捉えていた。
 そのほかにも【守護の盾イージス】を浮かべ、防御にも隙が無い。
 手にしたん魔導拳銃【オルトロス】が今日も怪しく光っていた。

 でもなんかおかしくないか?
 俺はこのボス部屋に入ってから違和感を覚えていた。
 一応武器を構えるも、その違和感を拭い去ることは出来なかった。
 ここまで問題無く余裕で進んできたので、自分自身が強くなったからかと思っていたが、それも何か違うと思えた。

「二人とも少し待って……」
『どうしたんです?』
『何かあったという事か?』

 俺の静止命令に、二人は困惑の色を浮かべている。
 それはそうだろう、早く倒して先に進もうと思っていたからだ。

 俺は警戒しつつも、ゆっくりと中に入っていった。
 足を一歩踏み入れて、俺の違和感は確信に変わった。
 一応警戒はしつつも、普段街中を歩く程度の緩さで近づいていく。

 目の前のスライムは、俺が近づくにつれてその形を変化させていく。
 それは徐々に人型に近づき、最後は150cm前後の少年の姿に変わっていたのだ。

「初めましてかな?」

——————
 
 ラーがどうしたものかと思っていると、いきなり目の前の扉が軋みを立てながら開かれていく。
 そこから入って来たのは冒険者と思しき人族たち……では無かった。
 一人は間違いなく人族だった。
 しかしその横に控える者たちが異形だった。
 青い体の一つ目の巨人と、人族にしては肉体としての存在感が薄い者。
 ラーは混乱してしまった。
 今まで見てきた冒険者とは違ったからだ。
 確かにラーと同じモンスターを引き連れてきた人族はいた。
 しかしそれはテイムされており、自由などありはしないからだ。
 だが、目の前の一つ目の巨人は違った。
 何やら主人らしき人族に親し気に話しかけていた。
 テイムされていてはあり得ない状況だったからだ。
 普通テイムされていれば、その眼には活力など無かった。
 ただ命令に忠実に従う、生きた人形に成り下がってしまうからだ。

 ラーはだからこそ警戒を一層強めた。
 目の前の壁はいつの間にか無くなっており、自由に移動できるようになっていた。
 しかし、あの人族たちがいつ襲い掛かってくるか分からない以上、下手に動くのは難しいと判断してたのだ。

 ラーは訝しがりながらも、その人族の動向に注視した。
 するとその人族は武器を構えるでもなく、悠然とした態度でラーに向かって歩いてきた。
 ラーは最大戦闘力を発揮できるように、人型にその姿を変えていく。
 その姿は約150cmくらいの少年のようだった。

「初めましてかな?」

 これがケントとラーの初めての出会いだった。
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