最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第6章 富士攻略編

109 目指すは【富士急ハイランド跡地】

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「君は誰?」

 ラーは思わず冒険者の問いかけに問いかけで返してしまった。
 しかも、言葉が通じる事に疑問を持たずに。

「お、言葉が通じるみたいだな。タケシ君にタクマ。戦闘は無しだ。」

 その冒険者の言葉に、後ろの二人も素直に従った。
 そして恐れることなく、冒険者のそばにやってきたのだ。

『ふむ。こ奴も吾と同じ存在やもしれぬな。』
「君と同じ?」

 ラーは大男から言われた言葉に疑問しかなかった。
 どう見ても同じ存在には見えなかったからだ。
 一瞬だがラーの思考上に大男もスライムなの?と挙がってきたが、まずありえないとすぐさまはじき出していた。

『吾はダンジョンのフロアボスをしておった。しかし今ではこの主の【召喚獣】をしておる。』
「やっぱり君もモンスターだったの?」

 もう一人の冒険者が、そうだと肯定するように頭を縦に振っていた。

「改めて俺はケント。君の名は?」
「僕はラー。【魔王軍】第8大隊隊長のラー。」

 ケントと名乗った冒険者は、【魔王】軍と聞いて一瞬にして殺気をむき出しにした。
 しかし、大男は二人に向けて静止の言葉を投げ返る。
 その言葉で自分が反射的に戦闘態勢に入ったことに気が付き、ケントはラーに謝りを入れたのだった。

「ごめん。君は【魔王軍】と言っても、おそらく俺たちの世界の【魔王】軍ではないんだろうね。そういうとことでしょ?」
『そうだ。だから言ったでおろう?吾と同じ存在だと。』
「なるほどね。違う世界から飛ばされてきた存在だと……ほんとここの【魔王】は何をしたんだか。むしろ自称神のせいか?」

 そう言うと考え込んだケントをよそに、ラーは大男と話を続けていく。
 お互いの状況を話し合ううちに、ラーの表情は曇っていった。

「そうか……じゃあ、僕の仲間がここに来ているとは限らないって事か。」
『そうなるの。でだ、一つ提案がるのだがの?』
「提案?」

 タクマは何かたくらんだように、ニヤリと笑っていた。
 ラーはタクマと話し、ここから出られないと悟って、少し落ち込んでいた。
 しかしそこにタクマからの提案。
 いったい何があるのかと期待を持ってしまったのだ。

『なに、簡単なことよ。吾らの仲間にならぬか?』
「仲間?つまり彼の【召喚獣】になれって事?」
『然り。』

 ラーは迷いがあった。
 このままここにいても、仲間たちを探すことが出来ないからだ。
 だが、仲間になったところで見つかる保証もどこにもない。
 もしかしたら、仲間たちが自分を訪ねてくるかもしれない。
 そう言った淡い期待が、ラーの胸の奥に燻っていた。

『なぁ、ラーとやら。おそらくおぬしはここで仲間を待つつもりであろう?しかしな、仲間が来ることはありえんのだよ。ここのダンジョンで使われているシステムは、魔素そのものでモンスターを構成している。おぬしの様な個体はおそらくボスに当てられるであろうな。つまりは動けんという事だ。これは吾も体験しておるゆえに間違いは無かろうて。』

 ラーはショックだった。
 つまりは自分が動かないと探しにすらいけないという事だからだ。
 そしてラーは決意を固めた。

「ケント君。僕を君の仲間にしてくれないかな?」

 ケントはラーからの突然のお願いに、慌てて思考の海から顔を上げた。
 自分が思考中に話し合われていたので、その内容を全く聞いていなかったからだ。

「どうして急に?」
「僕の仲間を探したい。だから協力してほしいんだ。」

 ケントはタクマに視線を送ると、我が意を得たりというように大きく頷いていた。
 恐らくタクマが説得したんだと納得したケントは、仲間になる為の説明をラーにしていく。
 その説明を聞いたラーは、それでもかまわないと言い、ケントの【召喚獣】になることを決めたのだった。

——————

『タクマ君も別な世界だったんでしょ?どんな世界だったの?』

 忍野村の建物の屋上でゆっくりとくつろいでいる時だった。
 ラーがタクマの世界にも興味を持ったらしい。

『そうだな……雰囲気としてはこの世界よりも文明は遅れておったであろうな。ただ、この世界とは違い、魔素と魔力が世界の中心であったの。』
『あ、それは僕たちと同じ感じだね。』

 そんな感じで、二人は会話を楽しんでいた。
 意外と話が弾んでいたので、楽しそうで何よりだ。
 俺はその会話に興味があり、無理に話に入らず静かに聞き入った。

 しばらくすると、偵察中だったタケシ君から連絡が入った。
 その声から緊迫感が伝わる。

『最前線の【富士急ハイランド跡地】から部隊がそっちに向かって出発しました。到着までおおよそ35分ってところです。』
「わかった。そのまま警戒に当たって。」

 タケシ君から了解の返事をもらい、俺は考えていた。
 今なぜ自衛隊の部隊が動いたか。
 自分たちを追いかけて……は、さすがにあり得ないかとぼやきながら首を横に振る。
 俺の事を心配そうに見つめるラーの視線がなんとも言えない。
 
『大丈夫?何か問題でもあったの?』
『判別がつかない自衛隊……この国の騎士団がこっち方面に向かってきているって。理由は分からないけど。』

 そうは言ったものの……ってところだな。
 このまま何事もなく過ぎればいいんだけど。
 こういう時って絶対に何かあるんだよな。

 それから15分後、タケシ君から追加連絡が入った。

『どうやら【陸上自衛隊北富士駐屯地】に向かってるみたいですね。』
「何かありそうかな?」

 タケシ君の話を聞いてもいまいち行動が推測できない。
 【陸上自衛隊北富士駐屯地】に何かあるんだろうか……

『何もなければ行かぬであろう?』
『そうだね~』

 タクマとラーも同じ考えに至っていた。

『【富士急ハイランド跡地】側がおかしいですね。何か慌ただしい感じで人間が動きています。』

 タケシ君は【富士急ハイランド跡地】に飛ばしていた【煉獄】から送られてきている映像を確認していた。
 俺もそれを確認したけど、動きが慌ただしすぎる。
 何かトラブルが発生したと見るのが、一番理解しやすい。
 だが何があったんだ?
 
「【富士急ハイランド跡地】で〝何か〟あったとみるべきだろうね。まあ、その〝何か〟は分からないけど。」
『あ、自衛隊駐屯地内に物資を運びこんでますね。なんとなくですが、慣れた感じがあります。倉庫として使っているんでしょうか?』

 さすがにそれは無い……よな?
 そうだとしても、さすがに不用心すぎる。
 何時、誰に襲われるかもしれない場所に、重要な物資をしまう理由が無いからだ。
 もしこれで襲撃されたり盗まれたら大問題だ。
 つまり、運び込む理由があるという事だ。

「どの部隊が動いているか分かればいいんだけどね。」
『そうれが分かればいいんですが……。これ以上近づくと気づかれる恐れがあるので、これが限界です。』

 タケシ君はそう言うと、申し訳なさそうにしていた。
 こればっかりはタケシ君の問題ではないので、俺はそのまま監視活動を依頼した。
 
 それからあとは、タケシ君から連絡は特になかった。
 俺も【煉獄】の情報を監視してはいたが、何ら動きが無いのが逆に気持ちが悪い気がしてならなかった。
 
 自衛隊に動きが見られてから3日後、再度タケシ君から念話があった。

『ケントさんケントさん!!』
「どうしたの?」

 タケシ君の慌てようが普通じゃなかった。
 時刻は深夜2時。
 辺り一面暗闇に包まれている時間だ。

『今【富士急ハイランド跡地】の基地に一ノ瀬 三等陸尉の姿が見えました!!』
「よくやった!!皆、これから【富士急ハイランド跡地】に向かうよ。タケシ君はそのまま警戒。ラー君とタクマは一度【送還】するよ。」

 俺は急いで出発の準備を整えた。
 それから10分もしないで準備は完了し、俺は3階建ての屋上から躊躇なく一気に飛び降りる。
 【富士急ハイランド跡地】に向けて【結界】を展開し、【結界】を足場に空を駆ける。
 直線距離で約10kmは俺からすればほんの一瞬であった。
 
「これでカイリたちに会える!!」

 俺は、逸る気持ちを何とか抑えながら、【富士急ハイランド跡地】を目指した。
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