最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
130 / 131
第6章 富士攻略編

126-1 終わりの時

しおりを挟む
「【神斬りの戦剣】……。その効果は神気の封印。ただそれだけだ。この武器に殺傷能力なんてない。あるのはただ神を切り伏せるだけの機能だけだ。」

 そう、これが【神斬りの戦剣】の能力。
 唯一この剣に与えられて能力。
 まさに自称神【プロメテウス】に対して……いや、神に対しての天敵以外何物でもない能力。
 魔物にはダメージをほぼ与える事は不可能で、鉄の棍棒的役割しか発揮しない。
 それが【神斬りの戦剣】。

「さて、自称神【プロメテウス】。お前の神気はこれで最後だ。神は神気が無くなればその存在を維持できなくなる。」

 俺を忌々し気に睨み付ける自称神【プロメテウス】
 しかしすでに立ち上がる事すらできず、顔を上げるので精いっぱいの様だった。

「私は……私は神だ!!」
「そう、お前は神だ……。だが、この世界の神を名乗るな!!お前はいったい誰だ?」

 これまでの事、こいつの狙い。
 それらを考えれば答えが見えてきた。
 そしてそれを補完してくれたのがスキル【神】。

 自称神【プロメテウス】は俺の問いに無言を貫いた。
 だがその表情は屈辱の色が見て取れた。

「そうか……やっぱりか……お前は神の人形だったという事か。そしてその神は……創造神?もしくは愉快犯か?」

 それでも何も語らない自称神【プロメテウス】
 ただただ俺を睨み付けるだけだった。

「答えないか……いや、答えられないのか……。俺には分かない……だけど……終わろう。この世界も、ダンジョンも……。そして自称神【プロメテウス】……お前の役割も……」

 俺は【神斬りの戦剣】を振りかぶり、自称神【プロメテウス】を切り裂いた。
 自称神【プロメテウス】は叫び声すら上げず、消え去っていった。
 そこには何も残らず、ただただその存在が消え去っただけであった。

『主~。終わったのぉ~?』
「あぁ、終わりだ。この物語はこれで完結だ。」
『そっかぁ~。じゃあ、これでお別れかな?』

 この世界は自称神【プロメテウス】によって歪められてしまっていた。
 ダンジョンを通して複数の次元の世界とつなぎ合わされ、元の地球とは別の星へと改編されていた。
 だからこそ、俺の心は決まっていた。

「そうだね、この世界を……この物語を終わらせよう……。」

 俺はラーはそう言うと、皆の元へと歩み寄った。
 カイリは既に眠っており、穏やかな表情をしていた。
 何かの夢を見ているのだろうか。
 とても幸せそうだった。

「ありがとうカレン……アスカ。カイリを守ってくれて。」
「ケントさん……」

 カイリを抱きかかえたままのカレンとアスカは、心配そうな目で俺を見つめてきた。

「先輩……終わったんですか?」
「あぁ、終わった……。終わらせたって方が正しいかな。」

 その言葉に皆は一様に動揺を隠せなかった。
 一ノ瀬をはじめ、自衛官たちも同様だ。

「それと皆に謝らなくちゃいけない事が有るんだ……。たぶんだけどステータスが見られなくなってる。」

 皆が慌ててそれぞれの端末を確認すると、そこかしこからステータスが見られないと声が上がる。
 それはダンジョンが現れる前の世界に戻ったかのようだった。

「中村さん。これはいったい……。」

 一ノ瀬さんは答えを求めていたようだ。
 他も皆も同様だった。

「おそらくだけど、本来はダンジョンを攻略しても、ステータスは消えないはずだったんです。自称神【プロメテウス】が存在していれば問題無かったはずです。ですが、今回討伐してしまいましたからね……。自称神【プロメテウス】がもたらしたものが、リセットされた可能性があります。」
「確かにそうですね。ですがこれでモンスターからは解放された。という事ですね。」

 安堵の表情を浮かべる一ノ瀬さん。
 皆もまた同じように安堵の表情を浮かべていた。
 数人残念そうな顔もしていたが、それはそれだろう。
 
「ケントさん……これからどうなるんでしょうか……。」

 不安そうなアスカ。
 皆もまた同じ気持ちだったみたいだ。
 今の世界はダンジョンありきの世界。
 資源もすべてダンジョンで賄っている状況だ。
 それがいきなり使えなくなったかもしれないのだから、不安にならない方がどうかしているって話だよな。

 やっぱりこうなるよな……

「皆に決めてほしい事が有るんだ。選択肢は二つ……一つは……」

 そして俺は最後のスキルを発動させた。

「スキル【世界遡及ワールドリトラクティブ】」

——————
 
「お兄ちゃん?お兄ちゃん?もう、こんなとこで寝てたら風邪ひくよ?」
「ん?あぁ、なんだ美鈴みすずか。」

 春の陽気に誘われて、僕たち家族は桜祭りに参加していた。
 あまりの気持ちよさに、ベンチで居眠りしてしまったみたいだ。

「もう、荷物番の意味ないじゃない。全くもう!!」
「ごめんごめん。皆は?」

 けだるい身体をベンチから起こすと、目いっぱい背伸びをして凝り固まった身体をほぐしていく。
 少し怒り気味の美鈴に謝罪の言葉をかけると、当然のごとく屋台での買い食いの資金提供をさせられることになってしまった。
 美鈴の方が稼いでいるはずなんだけどな……
 ってあれ?違うか。
 そんな感じがしてけど、気のせいだな。

 それからゆっくりと公園内の桜並木を見ていたら、なんだか上着のポケットが重い気がした。
 
「何だこれ?本物か?あれか、美鈴のいたずらか?」

 ポケットの中には、一枚の金貨が入っていた。
 よく見ると、どこの国で使われているかもわからない古い金貨だ。
 そして裏返してみるとそこにはメッセージが刻まれていた。

〝ダンジョン踏破証明書〟と……

「うん、いたずらだな。」

 僕は金貨をポケットにしまい、空を見上げて思いを馳せていた。
 平和な世界でよかったと……
 だって、妹のいたずらでそう思えるんだからさ。

「そう言えば、あの子はどうしているかな……って、あれ?あの子って誰だ?うん、まだ寝ぼけてるのか……あ、ちょっとまって。」

 美鈴は俺の静止も聞かずに桜並木にを駆けていった。

「ったく、これじゃあ、また僕が荷物番じゃないか……まぁ、良いよな。こんないい天気なんだし。」

 静かになったベンチで、僕はまたゆっくりとした時間をすごす。
 春の陽気が眠気を誘い、またウトウトと意識が夢の中に誘われていく。

「あ!!ごめんなさい!!」
「うわっぷ⁈」

 突然顔を覆う何かに、僕は驚いて飛び起きた。
 つばの大き目な麦わら帽子が、なぜがピンポイントで僕の顔を覆たようだった。
 それを慌てて取りに来た一人の少女が、どこか申し訳なさそうに謝り倒していた。

「ごめんなさい!!」
「もう!!カイリったら、何やってるのよ!!お兄さん、ほんとごめんなさい。」
「さすがカイリちゃんだよね。」

 あとから姿を現した少女二人も同じように頭を下げてくれた。
 特に何か怒っているわけでもないんだけど……って、アレ?この子どこかで……

「怒ってないから別に構わないよ。それよりもこれ……なくさないようにね。」
「あ、ありがとうございます。」

 僕から帽子を受け取ったカイリと呼ばれた少女は、どこか照れ臭そうにしていた。
 やっぱり、僕は彼女を知っている気がする……だけど、どこであったか全く思い出せない。
 絶対忘れちゃいけないはずなのに……

「あれ?カイリちゃん、顔赤いけどどうしたの?」
「な、なんでもないよ。もう……アスカもからかわないでよ。」

 そんな和気あいあいとした空気の3人を見ていると、どこかほっとした感じがしてきた。
 なぜだといわれても、僕にも分からないけど。

「それじゃあ失礼します。」

 そう言って3人は連れ立った男の子たちを見つけると、足早に去っていった。
 その表情は年相応の可愛らしい少年少女たちの青春の一ページに思えた。
 うん、やっぱり僕も年を取ったんだな……って、なんとなくそう思ったんだ。

——————
 
「先輩これは……」
「わかんねぇ~よ。この前の富士山の火山性地震で新たに出来た洞窟の調査で来ただけなのに、なんだよこの物体は……」

 彼らの目の前には光る結晶体が、洞窟内の地面から……
 
「きれえっすね。」

 人々を魅了するがごとく、その結晶体は怪しく輝いていた……
 
「確かに……これって宝石か?もしかして俺たち億万長者とか?」
「んなわけないっすよね。これは戻って報告しないとだめっすね。」
「わぁ~てるよ。良し戻るぞ。」

 洞窟調査会社が発見した物体は、新発見の鉱物であることが後の調査で判明した。
 学者たちは、それが何なのか研究を重ねていった。
 深く……暗く……赤く光る物質は、怪しくも禍々しく輝いていた。
 学者たちは後にその物質を、神からの贈り物……〝ギフト〟と名付け、研究を進めていったのであった。

~~~FIN~~~



 
「大分歪まされてしまったな。」

 書庫と思しき場所で一冊の本を挟み、二人の男性が話し込んでいた。

「仕方がないよ兄さん。これはこれで完結している話だからね。」
「だが、このままって訳にはいかないだろ?」

 どうしたものかと考え込む二人に近づく影が有った。
 その陰に気が付いた二人は驚く様子もなく、議論を再開させる。

「その物語は別な人に行ってもらうよ。君たちにはこの世界を見に行ってほしいんだ。現地人と共に歪みを正してほしい。」

 新たに現れた人物はフードを目深にかぶり、二人に一冊の本を手渡した。
 パラリパラリとめくりながらその本に目を通していく。

「兄さんと、僕で行けばいいの?」
「いや、ほかにも何人か行ってもらうけど……その本はかなり厄介になってる。おそらくだけど、4冊くらいはごちゃ混ぜにされているかな?」
「あのクソ邪神、余計なことしかしないな!!」

 怒りのあまり本を投げ捨てそうになるも、男性はすんでのところで思いとどまり、何とも言えない表情を見せた。

「じゃあ、早速で悪いんだけど行ってもらえるかな?レイ、ジョウジ。」
「行こうか兄さん。」
「わかったわかった。行ってくるよ、セフィロト。こっちの本を頼む。」

 先程までレイとジョウジが手にしていた本をセフィロトへと手渡し、二人は書庫から出ていった。

「こっちも解決しないとね。」

 セフィロトはそう言うと手にした本を掲げた。
 次第に光を帯びる本のタイトルは……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...