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悪魔、人間の本拠地へ
28.交渉
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さて、ここからが本題だ。
リルジとオレは向かい合うようにソファに座った。
「率直に言う。悪魔と人間の争いを無くしたい。」
「それはまた…どうして?悪魔からすれば人間は脅威にもならない。そうでしょ?」
当たり前だ。どれほど弱くても、人間に劣る悪魔などいるわけが無い。それでも、オレは止めないといけない。
「今は人間と悪魔が争ってる場合じゃ無い。悪魔と言えど、人間が束になれば負ける。だから力を分散させられるオレが番人になったんだ。それに…」
「それに……?」
「悪魔に、人間を殺させたく無い。人間が悪魔を殺す事は当たり前で、悪魔が人間を殺す事は脅威だなんて、おかしいだろ。」
悪魔と人間の交流が無くなれば、悪魔に対する悪い印象は薄れて行くと思った。だから結界で悪魔を閉じ込めた。でも、人間は悪魔を悪の象徴として語り継いでしまった。
「人間が悪魔に対する見方を変えない限り、オレは永遠に人間を殺すことになる。それはお前達だって望んで無いはずだ。」
「そうだね。全然危なく無い対象の為に命をかけて、死んで、それで人間の正義を謳うのはおかしい。」
……この調子なら、うまく交渉出来るかもしれない。
「だから、頼めないか?人間と悪魔の和平を……」
「え?流石にそれは無理でしょ?」
希望が見え始めたと思った瞬間、それは簡単に崩された。
なんで?リルジも同感していたんじゃ無いのか?こいつなら、分かってくれると思っていた。でも、やはり人間は人間か。悪魔を受け入れる事は出来ないのだろう。
「……ミカ、焦らないで。」
「え……?」
「君らしくも無いよ。こんなに冷静さを欠くなんて。」
冷静さを?オレが?
「ミカ、君は天使と敵対してる。そうだよね?」
「あ、あぁ。」
「なら、明日から天使と仲良くしましょう、なんて言われて従える?」
………そうか。やっと理解した。直ぐには無理なんだ。オレは、焦りすぎていたんだ。
リルジはオレを心配するように見つめた。
「僕としても人間と悪魔の争いは終わらせたい。敵いもしない、害もない存在と争い続けるなんて、意味も生産性も無いからね。」
「でも、千年以上も人間と悪魔は敵対して来た。だから直ぐに『仲良し』なんか出来っこ無いってことか。」
「そう。だからここは、不可侵と行こうか。」
それはつまり、互いに互いを傷つけない事。協力もしなければ戦いもしない。いきなり仲良くしろと言われるよりは従いやすい。
「ごめんね。僕が王として悪魔との共存を提案したところで、現状じゃ反発されるのがオチだと思うんだ。」
「いや、その通りだ。リルジの言う通り、オレはどうも焦ってた。」
「………ねぇ、君が落ち着かなくなるような事って何?なんでそんなに焦ってるの?」
これは…言うべきか。王であるリルジにも、無関係の話では無い。と言うより、無関係な人間なんて居るはずないけどさ。でも、リルジにだけは。
イオリも知らない事を言わなければいけないだろう。
「………これから言う事は他言無用だ。ヒルメルやラドンにも、イオリにも、絶対に言ってはならない。教えていいのは、他国の王だけ。同意出来るか?」
「もちろん。他の王様には言っていいんだ?」
「あくまで、国が混乱しないための口封じだからな。秘密裏に対策して貰えればいい。」
そう。これはこの大陸のすべての国に関係する事。影響がどこまで行くかはわからないけど、他国の王達も知っておいて損は無い。
………が、どうも肝心な時に言葉が出ない。本当に言っていいのか?これを知ってるのは、オレと魔王デュランだけ。告げたところで確信があるわけじゃ無い。いや、でもこれは必ず起こる。場合によってはオレが起こす。
「ミカ、ちょっと待ってて。」
リルジは立ち上がると、何かをし始めた。
オレはずっと言えないまま固まってる。千年以上も抱えたものが、ずっとオレを押し潰そうとしてくる。首を絞め、言葉を詰まらせる。
「ほら、まずは落ち着こう?」
リルジはオレの前にティーカップを置いた。その中に入っているのは緑色の液体。匂いからしてハーブティーだろうか。
「は……はは、オレにハーブの効果は出ないんだけどな。」
「えっ、そうだったの?そっか…なら何が落ち着けるんだろう………。」
………
リルジは、王として優秀。驚くくらい優しくて、種族は関係無しに思いやる。優しすぎるから心配にもなる、けど………
リルジによく似たディークは、どんな地獄でも耐え続けた。他人の物差しで判断するのは良いとは言えない。でも、可能性はあると考えて良いだろう。
「ありがとう、リルジ。オレは大丈夫だ、腹は括ったからな。」
リルジが強い心を持った人間である事を祈る。……祈る神なんて居ないけど、さ。
ゆっくりと深呼吸をして、真っ直ぐとリルジの目を見た。
「近い将来、このままだと悪魔も人間も全滅するだろう。」
リルジは目を見開き、固まった。無理も無い、こんなぶっ飛んだ話し。
「近い将来は、大体いつくらい?」
…!まじか、冷静さを保った。しかも、どこかから出した紙とペンでメモの準備までして。
ははっ、本当にこいつはとんだすごい奴だ。
「そうだな、速くて十年以内には。」
「そんな直ぐに?なら、滅ぶと言える根拠は?」
「大戦の再開だ。天使は、人間に及ぶ影響なんて考えないからな。」
千年前もそう。天魔大戦で人間を殺したのは天使だけ。奴らは人間に価値なんて無いと思ってる。蟻を踏んで何が悪いとでも言うように。
「大戦の再開…?なんでこんな時代に?」
「天使の指導者が決まったんだろう。恐らく、次の指導者は風に愛された天使『ヴィント』だろうな。力に支配された愚者の代表だ。」
「戦闘の天使が…なんか納得。」
とことん性格の悪い奴だが、その技量は確かなものだ。人間の間でも戦闘の天使なんて言われる位には。オレが、千年前に殺せなかった奴。あいつさえ殺せていれば、大した脅威にはならなかっただろう。
「まぁ、大戦の影響で全滅する可能性がある。という事だ。千年前は今の悪魔の国が戦場になったが…今回は人間の国のどこか、あるいはこの大陸全てが戦場になるかも知れない。」
「ねぇ、千年前の大戦は双方の頭が打ち取られたから一時的に終わった。それは事実?」
「え?そうだ。」
「なら…今回はどうすれば大戦は終わる?」
「天使が滅べば終わる。それまでは終わらない。」
勝利条件なんて無い。ただ、天使が滅ぶまで戦うだけ。だって、オレは負けないから。オレは世界が滅ぶまで死なないから。
「今回の大戦はオレ対天使だ。でもオレは死なない。負ける事はない。だから天使が滅ぶまで続くだろう。百年も掛からないだろうけど、それでも人間の被害は大きくなる。」
これは、オレだけの戦いだ。
リルジとオレは向かい合うようにソファに座った。
「率直に言う。悪魔と人間の争いを無くしたい。」
「それはまた…どうして?悪魔からすれば人間は脅威にもならない。そうでしょ?」
当たり前だ。どれほど弱くても、人間に劣る悪魔などいるわけが無い。それでも、オレは止めないといけない。
「今は人間と悪魔が争ってる場合じゃ無い。悪魔と言えど、人間が束になれば負ける。だから力を分散させられるオレが番人になったんだ。それに…」
「それに……?」
「悪魔に、人間を殺させたく無い。人間が悪魔を殺す事は当たり前で、悪魔が人間を殺す事は脅威だなんて、おかしいだろ。」
悪魔と人間の交流が無くなれば、悪魔に対する悪い印象は薄れて行くと思った。だから結界で悪魔を閉じ込めた。でも、人間は悪魔を悪の象徴として語り継いでしまった。
「人間が悪魔に対する見方を変えない限り、オレは永遠に人間を殺すことになる。それはお前達だって望んで無いはずだ。」
「そうだね。全然危なく無い対象の為に命をかけて、死んで、それで人間の正義を謳うのはおかしい。」
……この調子なら、うまく交渉出来るかもしれない。
「だから、頼めないか?人間と悪魔の和平を……」
「え?流石にそれは無理でしょ?」
希望が見え始めたと思った瞬間、それは簡単に崩された。
なんで?リルジも同感していたんじゃ無いのか?こいつなら、分かってくれると思っていた。でも、やはり人間は人間か。悪魔を受け入れる事は出来ないのだろう。
「……ミカ、焦らないで。」
「え……?」
「君らしくも無いよ。こんなに冷静さを欠くなんて。」
冷静さを?オレが?
「ミカ、君は天使と敵対してる。そうだよね?」
「あ、あぁ。」
「なら、明日から天使と仲良くしましょう、なんて言われて従える?」
………そうか。やっと理解した。直ぐには無理なんだ。オレは、焦りすぎていたんだ。
リルジはオレを心配するように見つめた。
「僕としても人間と悪魔の争いは終わらせたい。敵いもしない、害もない存在と争い続けるなんて、意味も生産性も無いからね。」
「でも、千年以上も人間と悪魔は敵対して来た。だから直ぐに『仲良し』なんか出来っこ無いってことか。」
「そう。だからここは、不可侵と行こうか。」
それはつまり、互いに互いを傷つけない事。協力もしなければ戦いもしない。いきなり仲良くしろと言われるよりは従いやすい。
「ごめんね。僕が王として悪魔との共存を提案したところで、現状じゃ反発されるのがオチだと思うんだ。」
「いや、その通りだ。リルジの言う通り、オレはどうも焦ってた。」
「………ねぇ、君が落ち着かなくなるような事って何?なんでそんなに焦ってるの?」
これは…言うべきか。王であるリルジにも、無関係の話では無い。と言うより、無関係な人間なんて居るはずないけどさ。でも、リルジにだけは。
イオリも知らない事を言わなければいけないだろう。
「………これから言う事は他言無用だ。ヒルメルやラドンにも、イオリにも、絶対に言ってはならない。教えていいのは、他国の王だけ。同意出来るか?」
「もちろん。他の王様には言っていいんだ?」
「あくまで、国が混乱しないための口封じだからな。秘密裏に対策して貰えればいい。」
そう。これはこの大陸のすべての国に関係する事。影響がどこまで行くかはわからないけど、他国の王達も知っておいて損は無い。
………が、どうも肝心な時に言葉が出ない。本当に言っていいのか?これを知ってるのは、オレと魔王デュランだけ。告げたところで確信があるわけじゃ無い。いや、でもこれは必ず起こる。場合によってはオレが起こす。
「ミカ、ちょっと待ってて。」
リルジは立ち上がると、何かをし始めた。
オレはずっと言えないまま固まってる。千年以上も抱えたものが、ずっとオレを押し潰そうとしてくる。首を絞め、言葉を詰まらせる。
「ほら、まずは落ち着こう?」
リルジはオレの前にティーカップを置いた。その中に入っているのは緑色の液体。匂いからしてハーブティーだろうか。
「は……はは、オレにハーブの効果は出ないんだけどな。」
「えっ、そうだったの?そっか…なら何が落ち着けるんだろう………。」
………
リルジは、王として優秀。驚くくらい優しくて、種族は関係無しに思いやる。優しすぎるから心配にもなる、けど………
リルジによく似たディークは、どんな地獄でも耐え続けた。他人の物差しで判断するのは良いとは言えない。でも、可能性はあると考えて良いだろう。
「ありがとう、リルジ。オレは大丈夫だ、腹は括ったからな。」
リルジが強い心を持った人間である事を祈る。……祈る神なんて居ないけど、さ。
ゆっくりと深呼吸をして、真っ直ぐとリルジの目を見た。
「近い将来、このままだと悪魔も人間も全滅するだろう。」
リルジは目を見開き、固まった。無理も無い、こんなぶっ飛んだ話し。
「近い将来は、大体いつくらい?」
…!まじか、冷静さを保った。しかも、どこかから出した紙とペンでメモの準備までして。
ははっ、本当にこいつはとんだすごい奴だ。
「そうだな、速くて十年以内には。」
「そんな直ぐに?なら、滅ぶと言える根拠は?」
「大戦の再開だ。天使は、人間に及ぶ影響なんて考えないからな。」
千年前もそう。天魔大戦で人間を殺したのは天使だけ。奴らは人間に価値なんて無いと思ってる。蟻を踏んで何が悪いとでも言うように。
「大戦の再開…?なんでこんな時代に?」
「天使の指導者が決まったんだろう。恐らく、次の指導者は風に愛された天使『ヴィント』だろうな。力に支配された愚者の代表だ。」
「戦闘の天使が…なんか納得。」
とことん性格の悪い奴だが、その技量は確かなものだ。人間の間でも戦闘の天使なんて言われる位には。オレが、千年前に殺せなかった奴。あいつさえ殺せていれば、大した脅威にはならなかっただろう。
「まぁ、大戦の影響で全滅する可能性がある。という事だ。千年前は今の悪魔の国が戦場になったが…今回は人間の国のどこか、あるいはこの大陸全てが戦場になるかも知れない。」
「ねぇ、千年前の大戦は双方の頭が打ち取られたから一時的に終わった。それは事実?」
「え?そうだ。」
「なら…今回はどうすれば大戦は終わる?」
「天使が滅べば終わる。それまでは終わらない。」
勝利条件なんて無い。ただ、天使が滅ぶまで戦うだけ。だって、オレは負けないから。オレは世界が滅ぶまで死なないから。
「今回の大戦はオレ対天使だ。でもオレは死なない。負ける事はない。だから天使が滅ぶまで続くだろう。百年も掛からないだろうけど、それでも人間の被害は大きくなる。」
これは、オレだけの戦いだ。
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