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悪魔、人間の本拠地へ
29.戦う意味
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なんとかリルジと不可侵を誓った。近いうちに法律として発表される事だろう。そしてこの国が戦場になっても良いように対策を練ると言っていた。とは言え、リルジ一人でだが。
なんとか、成功はした。
大戦が起これば真っ先に悪魔の国が狙われる。オレは唯一の戦力だ。守り続ける事は出来ない。
だから、別の人が結界を張り直さなければならない。それが出来るのは一人だけ。でもそいつの結界は一種族限定に絞ることになる。天使から守る結界を張れば人間が通れるようになる。だから人間と敵対しないようする必要があった。
着々と戦う準備は進んでいる。
そして、オレはイオリと別れる準備もしないと………。
せめてイオリは、人間として生きて欲しい。その強い力と優しい心はすぐに皆気付くだろう。人付き合いが苦手なイオリでもきっとすぐに馴染める。
あと、少しだ。
あと…少しだけ………。
オレはイオリには黙って離れる。だから、問題なのはオレの心だ。
いつまでも離れたくないなんて我儘を考える訳にはいかない。そう、これはイオリを守るため。死なせないためだから。
部屋に戻るとイオリとヒルメルが対面でソファに座り話していた。ヒルメルはオレを見るなり驚き顔を赤くしてるけど。たかがマーキング指摘しただけでこうなるか?
机の上を見てみると、どうやら天使マイヤの画集や資料が広げられていた。なるほど、確かに天使信仰しまくりのヒルメルなら情報を持ってそうだ。
「ミカ、ちょうど良かった。団長に資料を見させてもらってるんだが目的の絵はあるか?」
「行動が早いな。とは言え、実物を見ないと判断できない。オレが探してるのは『ある特定の絵』というよりは『絵の中の魔法』だからな。」
マイヤの絵には魔法が籠っている。それは意図的だったり感覚だったり無意識だったり………。
ただ、探している絵は他のものより筆数は多いだろう。線や色が多ければ多いほどより複雑で強い魔法になる。……だったっけ。
「ヒルメル、マイヤの絵の実物は見れるか?」
「え、えぇ。ただ事前に許可を得る必要があるので早くても明日になるかと。予約しましょうか?」
「頼む。」
これで二つ目の目的を果たせるかもしれない。
…いや、もともと目的はこれだけだった。人間と悪魔の終戦は計算外のただの望み。確実にいい方向に進んでる。
ヒルメルは資料をまとめると足早に部屋を出た。
オレはどかりとベッドに座った。
あと、他に大戦のためにする事はあったっけ。場所の確保は無駄だろう。この大陸全土が焼け野原になったっておかしくない。オレも他種族を気にしてはいられない。人間のことは人間に、オレは悪魔とイオリの事だけ考える。
………第四種は、正直救えないと思う。人間に属することもできない彼らは守られることはない。全てを悪魔の国に保護することも出来ないだろう。オレも聖人じゃないからな。全て助けようなんて思えない。
本当は、守りたいとか助けたいとかそんなものは微塵も無い。ただ、天使を滅ぼしたい。それだけだ。守りたいのも助けたいのも大切な人たちだけ。本当、オレには向いてないな……。
「ミカ、考え事か?」
「あ…ごめん。また呼んでたの気付かなかったかな。」
「それはいい。けど…遠い目をしてた気がして。」
気付けばイオリも同じようにベッドに座っていた。いつから居たのかは分からないけど。でもオレが考え事してるだけでこんなすぐ隣の事にも気が付かないなんて。オレも変わったって事だ。ずっと気を張っていないと全部怖かったのが遠い昔のよう。
「……なぁミカ、何を考えてる?」
「え?何をって特に…」
「嘘だ。お前が何考えてるか分からないけど、それでもお前が何か考えてる事は分かる。そんなんで誤魔化せると本気で思ったのか?」
両手でオレの頬に触れるイオリ。…怖い。今はイオリが怖い。真っ直ぐな目も、力強い手も。
これは試練?オレに大罪人の意識があるのか、世界のために恋人を捨てられるのか。世界に試されてるのか?それならそんなに酷な事は無い。
「本当に…イオリが気にするようなことじゃないから。」
「それでも気にする。」
「やめろ……」
怖い、痛い、もうやめてくれ。
傷を抉るマネを、他の誰でもないイオリにされたく無い。
「俺も何か力になりたいんだ。なんでもかんでも一人で背負おうとするな……」
「う る さ い !」
痛い…いたいよ、イオリ。
オレが壊れてくんだ。今までこんな事なかったのに。こんな感情、今まで無かったのに。どうしてか涙が止まらない。
オレは意味も分からず泣いたままイオリの手を払った。
「もういい、お前に合わなければ…あの時殺しておけば良かったんだ。」
「ミ、カ………」
「それともいっそ、今お前を殺すか?」
イオリに隠し続けている意味も、イオリを騙し続けている意味も、全部はイオリのためなのに。イオリを守りたい、生きていて欲しいだけなのに。このままじゃオレは戦う意味を見失う。
オレだけは戦わないと、オレは幸せになっては………
もう、何も考えたく無い。
オレは窓から部屋を飛び出した。
なんとか、成功はした。
大戦が起これば真っ先に悪魔の国が狙われる。オレは唯一の戦力だ。守り続ける事は出来ない。
だから、別の人が結界を張り直さなければならない。それが出来るのは一人だけ。でもそいつの結界は一種族限定に絞ることになる。天使から守る結界を張れば人間が通れるようになる。だから人間と敵対しないようする必要があった。
着々と戦う準備は進んでいる。
そして、オレはイオリと別れる準備もしないと………。
せめてイオリは、人間として生きて欲しい。その強い力と優しい心はすぐに皆気付くだろう。人付き合いが苦手なイオリでもきっとすぐに馴染める。
あと、少しだ。
あと…少しだけ………。
オレはイオリには黙って離れる。だから、問題なのはオレの心だ。
いつまでも離れたくないなんて我儘を考える訳にはいかない。そう、これはイオリを守るため。死なせないためだから。
部屋に戻るとイオリとヒルメルが対面でソファに座り話していた。ヒルメルはオレを見るなり驚き顔を赤くしてるけど。たかがマーキング指摘しただけでこうなるか?
机の上を見てみると、どうやら天使マイヤの画集や資料が広げられていた。なるほど、確かに天使信仰しまくりのヒルメルなら情報を持ってそうだ。
「ミカ、ちょうど良かった。団長に資料を見させてもらってるんだが目的の絵はあるか?」
「行動が早いな。とは言え、実物を見ないと判断できない。オレが探してるのは『ある特定の絵』というよりは『絵の中の魔法』だからな。」
マイヤの絵には魔法が籠っている。それは意図的だったり感覚だったり無意識だったり………。
ただ、探している絵は他のものより筆数は多いだろう。線や色が多ければ多いほどより複雑で強い魔法になる。……だったっけ。
「ヒルメル、マイヤの絵の実物は見れるか?」
「え、えぇ。ただ事前に許可を得る必要があるので早くても明日になるかと。予約しましょうか?」
「頼む。」
これで二つ目の目的を果たせるかもしれない。
…いや、もともと目的はこれだけだった。人間と悪魔の終戦は計算外のただの望み。確実にいい方向に進んでる。
ヒルメルは資料をまとめると足早に部屋を出た。
オレはどかりとベッドに座った。
あと、他に大戦のためにする事はあったっけ。場所の確保は無駄だろう。この大陸全土が焼け野原になったっておかしくない。オレも他種族を気にしてはいられない。人間のことは人間に、オレは悪魔とイオリの事だけ考える。
………第四種は、正直救えないと思う。人間に属することもできない彼らは守られることはない。全てを悪魔の国に保護することも出来ないだろう。オレも聖人じゃないからな。全て助けようなんて思えない。
本当は、守りたいとか助けたいとかそんなものは微塵も無い。ただ、天使を滅ぼしたい。それだけだ。守りたいのも助けたいのも大切な人たちだけ。本当、オレには向いてないな……。
「ミカ、考え事か?」
「あ…ごめん。また呼んでたの気付かなかったかな。」
「それはいい。けど…遠い目をしてた気がして。」
気付けばイオリも同じようにベッドに座っていた。いつから居たのかは分からないけど。でもオレが考え事してるだけでこんなすぐ隣の事にも気が付かないなんて。オレも変わったって事だ。ずっと気を張っていないと全部怖かったのが遠い昔のよう。
「……なぁミカ、何を考えてる?」
「え?何をって特に…」
「嘘だ。お前が何考えてるか分からないけど、それでもお前が何か考えてる事は分かる。そんなんで誤魔化せると本気で思ったのか?」
両手でオレの頬に触れるイオリ。…怖い。今はイオリが怖い。真っ直ぐな目も、力強い手も。
これは試練?オレに大罪人の意識があるのか、世界のために恋人を捨てられるのか。世界に試されてるのか?それならそんなに酷な事は無い。
「本当に…イオリが気にするようなことじゃないから。」
「それでも気にする。」
「やめろ……」
怖い、痛い、もうやめてくれ。
傷を抉るマネを、他の誰でもないイオリにされたく無い。
「俺も何か力になりたいんだ。なんでもかんでも一人で背負おうとするな……」
「う る さ い !」
痛い…いたいよ、イオリ。
オレが壊れてくんだ。今までこんな事なかったのに。こんな感情、今まで無かったのに。どうしてか涙が止まらない。
オレは意味も分からず泣いたままイオリの手を払った。
「もういい、お前に合わなければ…あの時殺しておけば良かったんだ。」
「ミ、カ………」
「それともいっそ、今お前を殺すか?」
イオリに隠し続けている意味も、イオリを騙し続けている意味も、全部はイオリのためなのに。イオリを守りたい、生きていて欲しいだけなのに。このままじゃオレは戦う意味を見失う。
オレだけは戦わないと、オレは幸せになっては………
もう、何も考えたく無い。
オレは窓から部屋を飛び出した。
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