42 / 73
終わりへ
38.探しもの
しおりを挟む
ーーーーーミカーーーーー
イオリから離れて3ヶ月。その期間はあっという間だった。そう、本来なら3ヶ月程度は瞬く間のことで、イオリといる時間が長く感じてしまうことの方が異常だった。
この3ヶ月はただひたすら魔法を編んでいた。本当はそれらの魔法が天使にとって無意味だと分かっていながら。全てが無駄では無いとはいえ、ほとんどがただの暇つぶしだった。
そして、オレの体質を変える魔法は完全に発動し、今のオレは食事が完全に不要になっている。もう、イオリと体を重ねる必要も無い。
……それでも触れたいと思うのは、まだ思いを捨てきれていない証拠だろう。
足音とノックの音。あぁ、リルジか。
「ミカ、明日には勇者のお披露目だよ。」
「知ってる。」
……もう直ぐ、イオリと再会するのか。イオリは今、どうしているのか全く知らない。怖くて意識だけでも見に行かなかった。他の勇者たちと仲良くなっただろうか。…新しい恋人でも出来ただろうか。
いくら直接別れ話をした訳では無いとはいえ、あれ程拒絶すれば関係は終わったと思われても仕方ないだろう。
……どうでもいい。そう、オレには無関係だ。オレはただ、勇者のお披露目を壊す。それだけ。
リルジには、多く語らず「お披露目が終わったら直ぐ避難を開始しろ」と告げた。開戦が近いことはあいつも察しているだろう。ただ、オレが最初に仕掛けることまで察しているかどうかは知らない。
締め切ったカーテンの隙間から夕焼けの光が差し込む。明日の今頃には、オレは天使の元へと向かっているだろう。……まだ、ここでやるべきことは終わっていない。
リルジに天使マイヤの絵が保管されている場所を聞いた。城の地下とだけ聞いていたが、行ったことは無い。イオリと遭遇してしまったらと考えて、部屋の外に出れなかったからだ。
更に時間が経って、完全に日が落ちた。
3ヶ月ぶりに部屋の外に出た。もうこの部屋に戻ってくることは無いだろうと、僅かしか無い荷物も全て持って。
地下への階段を降り、歴代の王の肖像画が並ぶ廊下を進む。薄暗く長い廊下に靴音が響く。以前まで当たり前に聞こえてた音ですら、寂しく感じるのは何故だろうか。
廊下の奥、ドアノブに手を掛けてやけに重たい扉を開く。明かりのない部屋はどこか不気味に感じた。急いで手のひらに聖力を集めて辺りを明るくした。蛍のように瞬く聖なる子らのおかげか、少しだけ心が安らぐ。
「ありがとうな、心配してくれて。」
未だオレに力を貸してくれる聖なる子らは、オレが大罪人に成り果てた事を知らないのだろう。大昔と変わり無く力になろうとしてくる。
そしてその明かりを頼りに展示されている絵画を端から順番に見た。殆どがオレとディークを描いたものだ。今にも動き出しそうで、当時の記憶が鮮明に蘇る。唯一の友であるディーク、オレを兄と慕いオレも弟と慕ったマイヤ。戻ることのできない、楽しかった時。
(いや、懐かしんでる場合じゃない。)
また一つ一つ絵画を見た。この部屋から強い気配はする。ここにある事は間違いないはずだ。
また更に進んで行くと、存在すら知らなかった大きな一枚の絵画を見つけた。これは…天魔大戦が冷戦した時の絵だ。こんなものまで描いてたのか。でも、やっと分かった。なんで天魔大戦に関する間違った情報が流れていたのか。確かにこの絵一枚だけでは勘違いしてもおかしくない。『大天使が己の命と引き換えに魔王を打った』か……。ディークはそこまで強く無い。天使からすれば魔王ですら取るに足らない弱い存在だ。
……オレも描かれている。ディークとデュランと共に。この瞬間の事は、今でもつい先日のことのように思い出す。
この絵画も違う。強い魔法は感じるけど探してるものとは違う。この絵画にかけられてる魔法は……記録魔法。当時の記録が残されている。起動すればその記録に触れる事が出来るだろう。天魔大戦の真実に。
また進むと、そこにはヴィントの肖像画もあった。風に愛された戦闘の天使、ヴィント。次期大天使とまで噂された強大な力を持つ天使だ。風の力を閉じ込めた薄い緑の瞳には優しさなんてものは感じられない。
そして、現在の天使たちの長と思われる人物。少しだけ会ったことがあるが、どうも分かりやすくオレを敵視していた。昔からオレが邪魔で邪魔で仕方ないのだろう。
今度こそ殺す。
更に進もうとした時、扉が開く音が聞こえた。条件反射で音が聞こえた方を向くと、そこにはランプを持ったイオリが立っていた。
「ミ…カ………?」
「イオリ……」
なんで、なんでこんな時間にこんな場所に?まずい、こんな時に会いたくなかった。会うのは明日、お披露目会を壊す時だけだと、そう思ってたのに。
イオリは驚いた顔でゆっくりと近付いて来ている。思わず後ずさっても確実に距離が近くなって来ている。イオリはランプをテーブルに置くとそのままオレに駆け寄った。
「なっ…来るな………」
「ミカ…!」
オレの拒絶なんて無視して抱きしめてくるイオリ。思わずオレは涙を流し始めていた。
会いたくなかったのに。もう、関わる事は無いと思ってたのに。
それでも………
「イオリ…イオリ………!」
それでも、会いたくて仕方がなかった。
気が付けば二人、真っ暗な部屋で抱き合い口付けを交わしていた。
イオリから離れて3ヶ月。その期間はあっという間だった。そう、本来なら3ヶ月程度は瞬く間のことで、イオリといる時間が長く感じてしまうことの方が異常だった。
この3ヶ月はただひたすら魔法を編んでいた。本当はそれらの魔法が天使にとって無意味だと分かっていながら。全てが無駄では無いとはいえ、ほとんどがただの暇つぶしだった。
そして、オレの体質を変える魔法は完全に発動し、今のオレは食事が完全に不要になっている。もう、イオリと体を重ねる必要も無い。
……それでも触れたいと思うのは、まだ思いを捨てきれていない証拠だろう。
足音とノックの音。あぁ、リルジか。
「ミカ、明日には勇者のお披露目だよ。」
「知ってる。」
……もう直ぐ、イオリと再会するのか。イオリは今、どうしているのか全く知らない。怖くて意識だけでも見に行かなかった。他の勇者たちと仲良くなっただろうか。…新しい恋人でも出来ただろうか。
いくら直接別れ話をした訳では無いとはいえ、あれ程拒絶すれば関係は終わったと思われても仕方ないだろう。
……どうでもいい。そう、オレには無関係だ。オレはただ、勇者のお披露目を壊す。それだけ。
リルジには、多く語らず「お披露目が終わったら直ぐ避難を開始しろ」と告げた。開戦が近いことはあいつも察しているだろう。ただ、オレが最初に仕掛けることまで察しているかどうかは知らない。
締め切ったカーテンの隙間から夕焼けの光が差し込む。明日の今頃には、オレは天使の元へと向かっているだろう。……まだ、ここでやるべきことは終わっていない。
リルジに天使マイヤの絵が保管されている場所を聞いた。城の地下とだけ聞いていたが、行ったことは無い。イオリと遭遇してしまったらと考えて、部屋の外に出れなかったからだ。
更に時間が経って、完全に日が落ちた。
3ヶ月ぶりに部屋の外に出た。もうこの部屋に戻ってくることは無いだろうと、僅かしか無い荷物も全て持って。
地下への階段を降り、歴代の王の肖像画が並ぶ廊下を進む。薄暗く長い廊下に靴音が響く。以前まで当たり前に聞こえてた音ですら、寂しく感じるのは何故だろうか。
廊下の奥、ドアノブに手を掛けてやけに重たい扉を開く。明かりのない部屋はどこか不気味に感じた。急いで手のひらに聖力を集めて辺りを明るくした。蛍のように瞬く聖なる子らのおかげか、少しだけ心が安らぐ。
「ありがとうな、心配してくれて。」
未だオレに力を貸してくれる聖なる子らは、オレが大罪人に成り果てた事を知らないのだろう。大昔と変わり無く力になろうとしてくる。
そしてその明かりを頼りに展示されている絵画を端から順番に見た。殆どがオレとディークを描いたものだ。今にも動き出しそうで、当時の記憶が鮮明に蘇る。唯一の友であるディーク、オレを兄と慕いオレも弟と慕ったマイヤ。戻ることのできない、楽しかった時。
(いや、懐かしんでる場合じゃない。)
また一つ一つ絵画を見た。この部屋から強い気配はする。ここにある事は間違いないはずだ。
また更に進んで行くと、存在すら知らなかった大きな一枚の絵画を見つけた。これは…天魔大戦が冷戦した時の絵だ。こんなものまで描いてたのか。でも、やっと分かった。なんで天魔大戦に関する間違った情報が流れていたのか。確かにこの絵一枚だけでは勘違いしてもおかしくない。『大天使が己の命と引き換えに魔王を打った』か……。ディークはそこまで強く無い。天使からすれば魔王ですら取るに足らない弱い存在だ。
……オレも描かれている。ディークとデュランと共に。この瞬間の事は、今でもつい先日のことのように思い出す。
この絵画も違う。強い魔法は感じるけど探してるものとは違う。この絵画にかけられてる魔法は……記録魔法。当時の記録が残されている。起動すればその記録に触れる事が出来るだろう。天魔大戦の真実に。
また進むと、そこにはヴィントの肖像画もあった。風に愛された戦闘の天使、ヴィント。次期大天使とまで噂された強大な力を持つ天使だ。風の力を閉じ込めた薄い緑の瞳には優しさなんてものは感じられない。
そして、現在の天使たちの長と思われる人物。少しだけ会ったことがあるが、どうも分かりやすくオレを敵視していた。昔からオレが邪魔で邪魔で仕方ないのだろう。
今度こそ殺す。
更に進もうとした時、扉が開く音が聞こえた。条件反射で音が聞こえた方を向くと、そこにはランプを持ったイオリが立っていた。
「ミ…カ………?」
「イオリ……」
なんで、なんでこんな時間にこんな場所に?まずい、こんな時に会いたくなかった。会うのは明日、お披露目会を壊す時だけだと、そう思ってたのに。
イオリは驚いた顔でゆっくりと近付いて来ている。思わず後ずさっても確実に距離が近くなって来ている。イオリはランプをテーブルに置くとそのままオレに駆け寄った。
「なっ…来るな………」
「ミカ…!」
オレの拒絶なんて無視して抱きしめてくるイオリ。思わずオレは涙を流し始めていた。
会いたくなかったのに。もう、関わる事は無いと思ってたのに。
それでも………
「イオリ…イオリ………!」
それでも、会いたくて仕方がなかった。
気が付けば二人、真っ暗な部屋で抱き合い口付けを交わしていた。
3
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる