【完】天使な淫魔は勇者に愛を教わる。

輝石玲

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38.探しもの

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 ーーーーーミカーーーーー



 イオリから離れて3ヶ月。その期間はあっという間だった。そう、本来なら3ヶ月程度は瞬く間のことで、イオリといる時間が長く感じてしまうことの方が異常だった。

 この3ヶ月はただひたすら魔法を編んでいた。本当はそれらの魔法が天使にとって無意味だと分かっていながら。全てが無駄では無いとはいえ、ほとんどがただの暇つぶしだった。


 そして、オレの体質を変える魔法は完全に発動し、今のオレは食事が完全に不要になっている。もう、イオリと体を重ねる必要も無い。
 ……それでも触れたいと思うのは、まだ思いを捨てきれていない証拠だろう。



 足音とノックの音。あぁ、リルジか。


「ミカ、明日には勇者のお披露目だよ。」
「知ってる。」


 ……もう直ぐ、イオリと再会するのか。イオリは今、どうしているのか全く知らない。怖くて意識だけでも見に行かなかった。他の勇者たちと仲良くなっただろうか。…新しい恋人でも出来ただろうか。
 いくら直接別れ話をした訳では無いとはいえ、あれ程拒絶すれば関係は終わったと思われても仕方ないだろう。



 ……どうでもいい。そう、オレには無関係だ。オレはただ、勇者のお披露目を。それだけ。



 リルジには、多く語らず「お披露目が終わったら直ぐ避難を開始しろ」と告げた。開戦が近いことはあいつも察しているだろう。ただ、オレが最初に仕掛けることまで察しているかどうかは知らない。




 締め切ったカーテンの隙間から夕焼けの光が差し込む。明日の今頃には、オレは天使の元へと向かっているだろう。……まだ、ここでやるべきことは終わっていない。


 リルジに天使マイヤの絵が保管されている場所を聞いた。城の地下とだけ聞いていたが、行ったことは無い。イオリと遭遇してしまったらと考えて、部屋の外に出れなかったからだ。




 更に時間が経って、完全に日が落ちた。
 3ヶ月ぶりに部屋の外に出た。もうこの部屋に戻ってくることは無いだろうと、僅かしか無い荷物も全て持って。


 地下への階段を降り、歴代の王の肖像画が並ぶ廊下を進む。薄暗く長い廊下に靴音が響く。以前まで当たり前に聞こえてた音ですら、寂しく感じるのは何故だろうか。

 廊下の奥、ドアノブに手を掛けてやけに重たい扉を開く。明かりのない部屋はどこか不気味に感じた。急いで手のひらに聖力を集めて辺りを明るくした。蛍のように瞬く聖なる子らのおかげか、少しだけ心が安らぐ。


「ありがとうな、心配してくれて。」


 未だオレに力を貸してくれる聖なる子らは、オレが大罪人に成り果てた事を知らないのだろう。大昔と変わり無く力になろうとしてくる。
 そしてその明かりを頼りに展示されている絵画を端から順番に見た。殆どがオレとディークを描いたものだ。今にも動き出しそうで、当時の記憶が鮮明に蘇る。唯一の友であるディーク、オレを兄と慕いオレも弟と慕ったマイヤ。戻ることのできない、楽しかった時。


(いや、懐かしんでる場合じゃない。)


 また一つ一つ絵画を見た。この部屋から強い気配はする。ここにある事は間違いないはずだ。
 また更に進んで行くと、存在すら知らなかった大きな一枚の絵画を見つけた。これは…天魔大戦が冷戦した時の絵だ。こんなものまで描いてたのか。でも、やっと分かった。なんで天魔大戦に関する間違った情報が流れていたのか。確かにこの絵一枚だけでは勘違いしてもおかしくない。『大天使が己の命と引き換えに魔王を打った』か……。ディークはそこまで強く無い。天使からすれば魔王ですら取るに足らない弱い存在だ。
 ……オレも描かれている。ディークとデュランと共に。この瞬間の事は、今でもつい先日のことのように思い出す。

 この絵画も違う。強い魔法は感じるけど探してるものとは違う。この絵画にかけられてる魔法は……記録魔法。当時の記録が残されている。起動すればその記録に触れる事が出来るだろう。天魔大戦の真実に。


 また進むと、そこにはヴィントの肖像画もあった。風に愛された戦闘の天使、ヴィント。次期大天使とまで噂された強大な力を持つ天使だ。風の力を閉じ込めた薄い緑の瞳には優しさなんてものは感じられない。
 そして、現在の天使たちの長と思われる人物。少しだけ会ったことがあるが、どうも分かりやすくオレを敵視していた。昔からオレが邪魔で邪魔で仕方ないのだろう。

 今度こそ殺す。



 更に進もうとした時、扉が開く音が聞こえた。条件反射で音が聞こえた方を向くと、そこにはランプを持ったイオリが立っていた。


「ミ…カ………?」
「イオリ……」


 なんで、なんでこんな時間にこんな場所に?まずい、こんな時に会いたくなかった。会うのは明日、お披露目会を壊す時だけだと、そう思ってたのに。
 イオリは驚いた顔でゆっくりと近付いて来ている。思わず後ずさっても確実に距離が近くなって来ている。イオリはランプをテーブルに置くとそのままオレに駆け寄った。


「なっ…来るな………」
「ミカ…!」


 オレの拒絶なんて無視して抱きしめてくるイオリ。思わずオレは涙を流し始めていた。
 会いたくなかったのに。もう、関わる事は無いと思ってたのに。


 それでも………



「イオリ…イオリ………!」




 それでも、会いたくて仕方がなかった。


 気が付けば二人、真っ暗な部屋で抱き合い口付けを交わしていた。
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