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54.天魔大戦 ⑤
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大天使と神の『喧嘩』から百年と少し。神に大怪我をさせられた大天使は、ようやく目を覚ました。体に異常も無く、全て元通りに回復している。その事に大天使は違和感を感じた。
(神は何で、オレを消さなかったんだろう………)
神が「神に相応しくない」と考える自身を、何故未だに後継者として置いているのか。
謎に思った大天使は、直接聞こうと神の元へ向かった。例え再び喧嘩になって数百年眠ろうと、ディーク「待ち続ける」と言う言葉を信じて立ち向かう。
離れの宮の地下室。そこが神の住まう部屋だ。
螺旋階段を下り恐る恐る扉をノックすると、向こうから嫌と言うほど聞き馴染みのある声が聞こえた。
「……目が覚めたか。用があるなら入るといい。」
許可を得て神の部屋に入る大天使。
神の部屋は大天使の部屋よりも更に簡素で、とても普通の人間や天使すら住める環境では無い。部屋にあるのは一人掛けソファーと水晶の置かれたデスクのみ。神はいつも水晶を通して世界を見るだけだ。
「何用だ?」
目線も向けず冷たく対応する神。声からも重苦しい雰囲気が漂っている。
「色々聞きに来た。例えば…何でオレを消さなかったのか、とかな。」
「……くだらん。貴様は我の後を継ぐ者だから残しただけの事。」
「オレを消して新しい後継を創り出すことも出来るだろう。」
「…………」
そこから黙り込んでしまった神。関連する事は何一つ答え無くなってしまい、大天使は無理矢理次の話を続けた。
「もういい、次だ。下界に降りる許可を貰いに来た。」
「許可など無くとも勝手に行くだろう。」
「それじゃあダメなんだよ。真面目な友人達は、ちゃんと許可を貰えと五月蝿いんだ。」
神はようやく大天使の方を向いた。
そして数分黙り込み、大天使が苛立ち始めた頃に神は口を開いた。
「よかろう、好きにするが良い。」
「……驚いた。通らないとばかり思ってたんだがな。」
「ただし、必ずここに帰る事。……我の叱責も忠告も無視したのは貴様だ。今は許可をするが、いずれ必ず地獄を見るだろう。」
あまりにも簡単に折れて許可を出した神に、大天使は驚愕しながらも密かに喜んだ。
しかし、この時の大天使は神の言う「いずれ必ず地獄を見るだろう」という言葉を軽く受け流してしまう。言葉の裏に隠された策略に気付かずに。
本殿に一度行き、マイヤとの再会を果たした大天使。許可を得た事を伝えると、驚きながらも喜び空を泳ぐように舞った。
一目散に湖に向かった二人は、レンガ造りの小屋に入り懐かしい空気を堪能した。百余年ぶりの居場所は昔と変わらず、とても清潔にされている。大天使が眠っている間、ディークは小屋を整備し、マイヤは大天使の状況をまめに共有していた。
また三人で集まれるように。
そして間も無くディークとも再会した。久しぶりに大天使の顔を見たディークは、大天使に抱き付くなり泣き出してしまった。マイヤから大怪我で眠り続けていた事を聞いていたからこそ、余計に心配していたのだろう。
「悪かったな。もう大丈夫だ。これで、いつでも会える。」
そして三人は何度も湖に集まった。談笑をしたり湖で遊んだり、ただ昼寝をするだけの時もあった。なんて事ない平和な時間を過ごす三人。
しかし、マイヤだけが気付いていた。神の策略に……
とある日、大天使がいつも通りに湖へ行った後のことだ。この日だけ天空宮に残ると告げたマイヤは、離れにいる神に会いに行った。
「何用だ。」
「………ヴィントに何か吹き込みましたね。どう言う事ですか?悪魔が滅んだらヴィントを大天使にするなんて嘘を囁くなんて。」
そう、神は風に愛された天使ヴィントに甘言を囁いたのだ。
もちろん大天使は生まれながらのもので天使はなる事ができない。しかしそれを知る者はごく一部。何も知らないヴィントは神の言葉を信じ、着々と悪魔を滅ぼす準備を進めていた。
「何の事だ。」
「白々しいです!なんでそこまで兄様を苦しめる事しか考えていないのですか!?」
「我は彼奴に告げている。地獄を見るだろう、とな。次代の神である自覚をさせるためなら悪魔如き滅んでも問題無かろう。」
何を言おうと無駄だと悟ったマイヤは、ヴィントの元へ止めに向かった。
しかし、時既に遅し。ヴィントはどこからか悪魔を攫って来たのだ。それもワインレッドの髪と鮮やかな赤い瞳、竜のような特徴を持った、誰かを彷彿とさせる容姿の子供。
ディークの幼い一人息子であるデュランだ。
まだ六つの子供を攫い、悪魔の死ぬ条件を調べようとしていたようだ。悪魔は寿命が無い。また、まだ悪魔が独立していないとき、人間に処刑された悪魔もなかなか死ななかった。だから天使は効率よく殺す方法を幼子を使い探そうとした。
元々戦いに特化していないマイヤはヴィントと張り合うなど出来ない。マイヤは味方に付くフリをして、時間稼ぎでもデュランを守る事を決めた。
そして同時刻、デュランが天使に拐われた事が発覚した悪魔の国では、大天使とディークが怒りに震えていた。大天使は自分一人で助けに行こうとしたが、それよりも先にディークが乗り出してしまった。
それが天魔大戦の始まり。我が子を奪われた魔王が、息子を取り戻すためだけに天使を襲撃した事が開戦の合図となってしまったのだ。
(神は何で、オレを消さなかったんだろう………)
神が「神に相応しくない」と考える自身を、何故未だに後継者として置いているのか。
謎に思った大天使は、直接聞こうと神の元へ向かった。例え再び喧嘩になって数百年眠ろうと、ディーク「待ち続ける」と言う言葉を信じて立ち向かう。
離れの宮の地下室。そこが神の住まう部屋だ。
螺旋階段を下り恐る恐る扉をノックすると、向こうから嫌と言うほど聞き馴染みのある声が聞こえた。
「……目が覚めたか。用があるなら入るといい。」
許可を得て神の部屋に入る大天使。
神の部屋は大天使の部屋よりも更に簡素で、とても普通の人間や天使すら住める環境では無い。部屋にあるのは一人掛けソファーと水晶の置かれたデスクのみ。神はいつも水晶を通して世界を見るだけだ。
「何用だ?」
目線も向けず冷たく対応する神。声からも重苦しい雰囲気が漂っている。
「色々聞きに来た。例えば…何でオレを消さなかったのか、とかな。」
「……くだらん。貴様は我の後を継ぐ者だから残しただけの事。」
「オレを消して新しい後継を創り出すことも出来るだろう。」
「…………」
そこから黙り込んでしまった神。関連する事は何一つ答え無くなってしまい、大天使は無理矢理次の話を続けた。
「もういい、次だ。下界に降りる許可を貰いに来た。」
「許可など無くとも勝手に行くだろう。」
「それじゃあダメなんだよ。真面目な友人達は、ちゃんと許可を貰えと五月蝿いんだ。」
神はようやく大天使の方を向いた。
そして数分黙り込み、大天使が苛立ち始めた頃に神は口を開いた。
「よかろう、好きにするが良い。」
「……驚いた。通らないとばかり思ってたんだがな。」
「ただし、必ずここに帰る事。……我の叱責も忠告も無視したのは貴様だ。今は許可をするが、いずれ必ず地獄を見るだろう。」
あまりにも簡単に折れて許可を出した神に、大天使は驚愕しながらも密かに喜んだ。
しかし、この時の大天使は神の言う「いずれ必ず地獄を見るだろう」という言葉を軽く受け流してしまう。言葉の裏に隠された策略に気付かずに。
本殿に一度行き、マイヤとの再会を果たした大天使。許可を得た事を伝えると、驚きながらも喜び空を泳ぐように舞った。
一目散に湖に向かった二人は、レンガ造りの小屋に入り懐かしい空気を堪能した。百余年ぶりの居場所は昔と変わらず、とても清潔にされている。大天使が眠っている間、ディークは小屋を整備し、マイヤは大天使の状況をまめに共有していた。
また三人で集まれるように。
そして間も無くディークとも再会した。久しぶりに大天使の顔を見たディークは、大天使に抱き付くなり泣き出してしまった。マイヤから大怪我で眠り続けていた事を聞いていたからこそ、余計に心配していたのだろう。
「悪かったな。もう大丈夫だ。これで、いつでも会える。」
そして三人は何度も湖に集まった。談笑をしたり湖で遊んだり、ただ昼寝をするだけの時もあった。なんて事ない平和な時間を過ごす三人。
しかし、マイヤだけが気付いていた。神の策略に……
とある日、大天使がいつも通りに湖へ行った後のことだ。この日だけ天空宮に残ると告げたマイヤは、離れにいる神に会いに行った。
「何用だ。」
「………ヴィントに何か吹き込みましたね。どう言う事ですか?悪魔が滅んだらヴィントを大天使にするなんて嘘を囁くなんて。」
そう、神は風に愛された天使ヴィントに甘言を囁いたのだ。
もちろん大天使は生まれながらのもので天使はなる事ができない。しかしそれを知る者はごく一部。何も知らないヴィントは神の言葉を信じ、着々と悪魔を滅ぼす準備を進めていた。
「何の事だ。」
「白々しいです!なんでそこまで兄様を苦しめる事しか考えていないのですか!?」
「我は彼奴に告げている。地獄を見るだろう、とな。次代の神である自覚をさせるためなら悪魔如き滅んでも問題無かろう。」
何を言おうと無駄だと悟ったマイヤは、ヴィントの元へ止めに向かった。
しかし、時既に遅し。ヴィントはどこからか悪魔を攫って来たのだ。それもワインレッドの髪と鮮やかな赤い瞳、竜のような特徴を持った、誰かを彷彿とさせる容姿の子供。
ディークの幼い一人息子であるデュランだ。
まだ六つの子供を攫い、悪魔の死ぬ条件を調べようとしていたようだ。悪魔は寿命が無い。また、まだ悪魔が独立していないとき、人間に処刑された悪魔もなかなか死ななかった。だから天使は効率よく殺す方法を幼子を使い探そうとした。
元々戦いに特化していないマイヤはヴィントと張り合うなど出来ない。マイヤは味方に付くフリをして、時間稼ぎでもデュランを守る事を決めた。
そして同時刻、デュランが天使に拐われた事が発覚した悪魔の国では、大天使とディークが怒りに震えていた。大天使は自分一人で助けに行こうとしたが、それよりも先にディークが乗り出してしまった。
それが天魔大戦の始まり。我が子を奪われた魔王が、息子を取り戻すためだけに天使を襲撃した事が開戦の合図となってしまったのだ。
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