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67.神話 (完)
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ーーーーーーーーーー
かつて、この世界では人知れず争いがあったらしい。
人間は突如悪魔に変わり、精霊は悪魔を排除しようと戦った。しかし精霊を統べる大精霊により悪魔狩りは無くなり、悪魔は一つの種族として認められたとか。
それは大昔、二千年前から千年にわたる長いお話。
千年前に実在したとされるセリフィア王国の賢王リルジ・ケイ・セリフィア。
彼は精霊と共に悪魔を受け入れる基盤を創り上げた。その精霊の名はマイヤ。悪魔と人間を繋げた水の精霊だ。
水の精霊マイヤは大精霊の右腕として世界に大きく貢献した。現在は現存する魔王デュランと正式に契約し、今も悪魔と人間を繋いでいる。
しかし、水の精霊マイヤによると大精霊の行方が千年間不明になっているようだ。
「…………と、霊魔神話の内容はこんな感じですが、これでよろしかったでしょうか?」
セリフィア帝国の帝都にある大きな教会に、一人の青年が神話を聞きに来ていた。
青年はフードで顔を隠し、誰もいない深夜の教会にひっそりと来た。いかにも訳ありな雰囲気を醸し出して。
「あぁ。それと変なことを聞くが…『神』や『天使』と言った存在を知ってるか?」
「え?いえ…耳にしたこともありません。」
「そうか。いや、忘れてくれ。」
青年はそのまま教会を出た。
教会で青年に神話を語った『聖徒』は何かを思い出したように青年を追いかける。
「あの、よろしければこれを……。子供向けですが神話を分かりやすく綴ったものです。」
「あぁ、ありが………」
青年が薄い冊子を受け取ると、突風が吹き青年のフードをとってしまった。
ふわふわの白い髪と大きな黄金の瞳。人間離れした美貌と雰囲気。
青年はすぐにフードを被り教会を後にしたが、聖徒は彼の気配が人間のそれでは無いと気付き、口を継ぐんだ。
青年は酒場に寄り、ワインと肴をテイクアウトして帰宅する。
ーーーーーミカーーーーー
街から遠く離れた森の中。霧に隠れて誰も見つけることのできない小さな家。
「ただいま、イオリ。」
帰宅して真っ先にベッドで休むイオリの元に向かった。
長い眠りから目覚めて間も無いイオリは未だ自由に動けないでいる。
「おかえり。悪いな、色々と任せっぱなしで。」
「そんなこと言うな。その代わり、回復したらいっぱい甘えさせて貰うから。」
「あぁ、なら早く回復しないとな。」
そんなにオレに甘えて欲しいのか。千年経ってもイオリはイオリだな。
とりあえずワインは一旦しまって、教会で聞いた神話をイオリに伝えた。天魔大戦は霊魔神話と名前を変え、天使は精霊に、大天使は大精霊に変わってることを。
「天使が精霊に………。歴史が書き換えられているのか。」
「あぁ。親父が『神』も『天使』もいない世界に変えたみたいだ。神みたいに絶対的な存在を信仰するんじゃなくて、精霊という世界の一部に感謝を示すようになってた。もしかしたら親父自身が信仰の対象が『神』であることが嫌だったのかも。」
全てを知ったわけじゃ無いけど、あれから色々と考えてる。
親父がオレを閉じ込めたのは、次代の神である以上に息子としてオレを守りたかったからなのか。何度もオレに痛みで躾けてきたのは、親父自身も同じ教育をされてたからなのか。
考えればキリが無いが、それでもオレが殺した過去は変わらないし、親父がディークを殺した過去も変わらない。
そして、一度死んだ俺たちを蘇らせたのが親父であることも。
「それにしても、『神話』なんだな。」
「え?」
「俺がいた世界だと、神話は『神の話』って書くんだ。神という存在は忘れ去られても、実在していたことは確かなままなんだろう。」
そういえば、親父が最後になんか言ってたような…
“その正体を決して誰にも明かしてはならん”
“悟られてもならん”
“『神』の存在は忘れさられ、お前は名も無き天上の存在となるのだ”
今、一番立場が高いのは大精霊。それはオレのことで、大天使のことだ。
なら大天使の上の立場である神の今の名前は?
名も無き天上の存在にオレがなったのなら………
なるほど、神は忘れ去られても消えていない。オレが、誰からも信仰されない『神』になったんだ。
誰にも期待されず、信仰されず、縛られない『神』に。
「イオリ、オレ、やっぱイオリだけでいいんだ。」
「どういうことだ?」
オレに期待して、信じて、愛してくれるのはイオリだけ。
オレは、イオリのためだけの『神』だ。
不自由な大天使は、神になったことでただ一人を想うことができる自由を手に入れた。
かつて、この世界では人知れず争いがあったらしい。
人間は突如悪魔に変わり、精霊は悪魔を排除しようと戦った。しかし精霊を統べる大精霊により悪魔狩りは無くなり、悪魔は一つの種族として認められたとか。
それは大昔、二千年前から千年にわたる長いお話。
千年前に実在したとされるセリフィア王国の賢王リルジ・ケイ・セリフィア。
彼は精霊と共に悪魔を受け入れる基盤を創り上げた。その精霊の名はマイヤ。悪魔と人間を繋げた水の精霊だ。
水の精霊マイヤは大精霊の右腕として世界に大きく貢献した。現在は現存する魔王デュランと正式に契約し、今も悪魔と人間を繋いでいる。
しかし、水の精霊マイヤによると大精霊の行方が千年間不明になっているようだ。
「…………と、霊魔神話の内容はこんな感じですが、これでよろしかったでしょうか?」
セリフィア帝国の帝都にある大きな教会に、一人の青年が神話を聞きに来ていた。
青年はフードで顔を隠し、誰もいない深夜の教会にひっそりと来た。いかにも訳ありな雰囲気を醸し出して。
「あぁ。それと変なことを聞くが…『神』や『天使』と言った存在を知ってるか?」
「え?いえ…耳にしたこともありません。」
「そうか。いや、忘れてくれ。」
青年はそのまま教会を出た。
教会で青年に神話を語った『聖徒』は何かを思い出したように青年を追いかける。
「あの、よろしければこれを……。子供向けですが神話を分かりやすく綴ったものです。」
「あぁ、ありが………」
青年が薄い冊子を受け取ると、突風が吹き青年のフードをとってしまった。
ふわふわの白い髪と大きな黄金の瞳。人間離れした美貌と雰囲気。
青年はすぐにフードを被り教会を後にしたが、聖徒は彼の気配が人間のそれでは無いと気付き、口を継ぐんだ。
青年は酒場に寄り、ワインと肴をテイクアウトして帰宅する。
ーーーーーミカーーーーー
街から遠く離れた森の中。霧に隠れて誰も見つけることのできない小さな家。
「ただいま、イオリ。」
帰宅して真っ先にベッドで休むイオリの元に向かった。
長い眠りから目覚めて間も無いイオリは未だ自由に動けないでいる。
「おかえり。悪いな、色々と任せっぱなしで。」
「そんなこと言うな。その代わり、回復したらいっぱい甘えさせて貰うから。」
「あぁ、なら早く回復しないとな。」
そんなにオレに甘えて欲しいのか。千年経ってもイオリはイオリだな。
とりあえずワインは一旦しまって、教会で聞いた神話をイオリに伝えた。天魔大戦は霊魔神話と名前を変え、天使は精霊に、大天使は大精霊に変わってることを。
「天使が精霊に………。歴史が書き換えられているのか。」
「あぁ。親父が『神』も『天使』もいない世界に変えたみたいだ。神みたいに絶対的な存在を信仰するんじゃなくて、精霊という世界の一部に感謝を示すようになってた。もしかしたら親父自身が信仰の対象が『神』であることが嫌だったのかも。」
全てを知ったわけじゃ無いけど、あれから色々と考えてる。
親父がオレを閉じ込めたのは、次代の神である以上に息子としてオレを守りたかったからなのか。何度もオレに痛みで躾けてきたのは、親父自身も同じ教育をされてたからなのか。
考えればキリが無いが、それでもオレが殺した過去は変わらないし、親父がディークを殺した過去も変わらない。
そして、一度死んだ俺たちを蘇らせたのが親父であることも。
「それにしても、『神話』なんだな。」
「え?」
「俺がいた世界だと、神話は『神の話』って書くんだ。神という存在は忘れ去られても、実在していたことは確かなままなんだろう。」
そういえば、親父が最後になんか言ってたような…
“その正体を決して誰にも明かしてはならん”
“悟られてもならん”
“『神』の存在は忘れさられ、お前は名も無き天上の存在となるのだ”
今、一番立場が高いのは大精霊。それはオレのことで、大天使のことだ。
なら大天使の上の立場である神の今の名前は?
名も無き天上の存在にオレがなったのなら………
なるほど、神は忘れ去られても消えていない。オレが、誰からも信仰されない『神』になったんだ。
誰にも期待されず、信仰されず、縛られない『神』に。
「イオリ、オレ、やっぱイオリだけでいいんだ。」
「どういうことだ?」
オレに期待して、信じて、愛してくれるのはイオリだけ。
オレは、イオリのためだけの『神』だ。
不自由な大天使は、神になったことでただ一人を想うことができる自由を手に入れた。
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