75 / 428
転移者イオ編
第14話:レア魔法(画像あり)
しおりを挟む
禁書閲覧室の薄い本、後半まで読み進めた。
魔法ともギフトとも違う【七徳の光】は、こちらの世界には無い珍しい現象だな。
薄い本の世界には魔法と呼ばれるものは出てこない。
主人公が使う【聖なる力】が、こちらの世界でいう聖属性魔法みたいものかな。
風の妖精の力を借りて空を飛んだりするのは、ゲームによくある精霊術に近いものかな?
主要キャラクターの少年が【聖剣】に認められた者って事は、勇者的な立場になるんだろうか?
「タマはこの本の作者に会った事があるんだっけ?」
「うん」
「どんな人だった?」
「まだ子供だったよ。13歳って言ってた。黒髪だから普通の転移者だね」
作者についてタマに聞いてみた。
俺やモチみたいに前世がこちら側の人間という人ではなかったようだ。
本の主人公が転生+転移だから、作者もそうかなと思ったけど、違うらしい。
「作者はこちらに来た後、どうなったの?」
「ナーゴに住み着いて、天寿を全うしたよ」
「学園に入ったりしたの?」
「魔法学部に在籍して、レア魔法を開発して、卒業後は宮廷魔導師になったよ」
本の主人公は日本に帰ったけど、作者は異世界に永住したらしい。
やはり転移者、魔法の才を授かった?
「レア魔法?」
「例えば、アズとルルの亡骸にかけられた【時の封印】がそれだね」
「あ~、アズの霊が『死にたて新鮮』とか言ってたアレか」
「アズってば、まるで魚か何かみたいな事を……」
タマも俺と同じ事を思ったようだ。
神様の時間停止魔法を作ったのが日本人だったのには少し驚いた。
「【時の封印】の開発のきっかけになったのは、【コールドスリープ】っていう地球の技術らしいよ」
「まさかの元ネタSFか」
俺の脳内に、冷凍保存されているアズとルルが浮かんだ。
2人とも死んだ後の保存だから、解凍しても生き返らないだろうね。
その細胞を使ってクローンを……って、アズのクローンみたいな俺がここにいるじゃないか。
それならルルのクローンを……いや、やめとこう。
ルルの復元は魔王の復活と同じ、本人はそれを望んでいない。
「【時の封印】の魔法原理は、ナーゴで生まれ育った猫人や世界樹の民には理解出来なくて、開発者の死と共に創造神に奉納されたよ」
「地球からの転移者は?」
「当時はまだ異世界転移が滅多にない時代だったから、他の転移者はいなかったよ」
薄い本と作者が異世界転移したのは、かなり大昔のことだった。
ゲーム会社の従業員が765人も転移した現代なら、いくらでも継承者がいただろうに。
現世の知識を持つエカなら魔法の才もあるから継承出来ると思う。
エカの妻ソナは日本からの転移者で魔法の才を持つ人だから、継承出来るかも。
あまり詳しくはないけど、ソナは日本で嫌な経験があり、自分個人に関わる記憶は消したらしい。
でも、箸の使い方とか道具に関することは、知識として残っていると言っていた。
「今なら、モチや俺が継承出来たかもしれないのにね」
「見に行ってみたら?」
「え?」
「アズとルルの身体、世界樹の中に保管されてるでしょ。それにかかってる【時の封印】を見たら継承出来るかもしれないよ?」
そういうテがあったか。
俺は昨日から予定していた、世界樹の中のルルを見に行く事にした。
もれなく自分の前世の遺体も見る事になるけど、気にしない方向で。
いつも通り剣神アチャラ様の修行空間で日課の剣術修行を済ませて、通常空間に戻ると世界樹の根元へ向かう。
大樹の根元に立ち、創造神にお願いしてみた。
『神様、ルルに触れてみたいので、世界樹の中に入れてもらえませんか?』
『入るがよい』
念話で話しかけるとすぐに返事がきて、俺は大樹の中に吸い込まれた。
一瞬、薄い本の第1話、主人公が菩提樹の大木に吸い込まれるシーンが浮かぶ。
薄い本とは違い、俺は異世界転移する事は無かった。
というかもう既に異世界転移済だな。
世界樹の中には、木漏れ日のように緑の葉の間でキラキラする光があった。
俺は太い枝の上に現れて、前方にある緑の球体に気付く。
そこに、よく知っている男女が横たわっていた。
「ルル、来てみたよ」
俺は、目を閉じて動かない美女に話しかける。
返事は無かった。
そりゃそうだ、これは抜け殻、ルルの霊はアサギリ島にいる。
「もしも君が生きていたら、俺は前世の記憶と心を受け継げたのかな?」
ルルに話しかけながら、その隣に横たわる青い髪の青年を見る。
今の俺が成長した姿みたいな青年。
まあ、俺の今の身体は前世の身体をコピーしたようなものだから、似てるのは当然だ。
「もしも前世の記憶と心を受け継げたら、ジャスさんやフィラさんを泣かせずに済んだのにね」
ルルの頬を撫でてみた。
温かくはないけど、冷たいわけでもない。
自分の頬を伝う涙は、魂に残る前世の残滓のせいだろうか。
そうしてしばらくルルに触れていたら、何かの術式が自分の脳に書き込まれた事に気付いた。
【時の封印】という起動言語が記憶される。
それはコールドスリープにヒントを得た、生命の時を止める魔法だ。
ルルとアズには死亡後に使われているけれど、これは生きている人間にも使える。
「この魔法、ルルが若くて元気だった頃にアズが覚えられたら良かったのにね」
タマの予想通りレア魔法を継承した俺は、ルルの額にキスをして世界樹の外に出た。
魔法ともギフトとも違う【七徳の光】は、こちらの世界には無い珍しい現象だな。
薄い本の世界には魔法と呼ばれるものは出てこない。
主人公が使う【聖なる力】が、こちらの世界でいう聖属性魔法みたいものかな。
風の妖精の力を借りて空を飛んだりするのは、ゲームによくある精霊術に近いものかな?
主要キャラクターの少年が【聖剣】に認められた者って事は、勇者的な立場になるんだろうか?
「タマはこの本の作者に会った事があるんだっけ?」
「うん」
「どんな人だった?」
「まだ子供だったよ。13歳って言ってた。黒髪だから普通の転移者だね」
作者についてタマに聞いてみた。
俺やモチみたいに前世がこちら側の人間という人ではなかったようだ。
本の主人公が転生+転移だから、作者もそうかなと思ったけど、違うらしい。
「作者はこちらに来た後、どうなったの?」
「ナーゴに住み着いて、天寿を全うしたよ」
「学園に入ったりしたの?」
「魔法学部に在籍して、レア魔法を開発して、卒業後は宮廷魔導師になったよ」
本の主人公は日本に帰ったけど、作者は異世界に永住したらしい。
やはり転移者、魔法の才を授かった?
「レア魔法?」
「例えば、アズとルルの亡骸にかけられた【時の封印】がそれだね」
「あ~、アズの霊が『死にたて新鮮』とか言ってたアレか」
「アズってば、まるで魚か何かみたいな事を……」
タマも俺と同じ事を思ったようだ。
神様の時間停止魔法を作ったのが日本人だったのには少し驚いた。
「【時の封印】の開発のきっかけになったのは、【コールドスリープ】っていう地球の技術らしいよ」
「まさかの元ネタSFか」
俺の脳内に、冷凍保存されているアズとルルが浮かんだ。
2人とも死んだ後の保存だから、解凍しても生き返らないだろうね。
その細胞を使ってクローンを……って、アズのクローンみたいな俺がここにいるじゃないか。
それならルルのクローンを……いや、やめとこう。
ルルの復元は魔王の復活と同じ、本人はそれを望んでいない。
「【時の封印】の魔法原理は、ナーゴで生まれ育った猫人や世界樹の民には理解出来なくて、開発者の死と共に創造神に奉納されたよ」
「地球からの転移者は?」
「当時はまだ異世界転移が滅多にない時代だったから、他の転移者はいなかったよ」
薄い本と作者が異世界転移したのは、かなり大昔のことだった。
ゲーム会社の従業員が765人も転移した現代なら、いくらでも継承者がいただろうに。
現世の知識を持つエカなら魔法の才もあるから継承出来ると思う。
エカの妻ソナは日本からの転移者で魔法の才を持つ人だから、継承出来るかも。
あまり詳しくはないけど、ソナは日本で嫌な経験があり、自分個人に関わる記憶は消したらしい。
でも、箸の使い方とか道具に関することは、知識として残っていると言っていた。
「今なら、モチや俺が継承出来たかもしれないのにね」
「見に行ってみたら?」
「え?」
「アズとルルの身体、世界樹の中に保管されてるでしょ。それにかかってる【時の封印】を見たら継承出来るかもしれないよ?」
そういうテがあったか。
俺は昨日から予定していた、世界樹の中のルルを見に行く事にした。
もれなく自分の前世の遺体も見る事になるけど、気にしない方向で。
いつも通り剣神アチャラ様の修行空間で日課の剣術修行を済ませて、通常空間に戻ると世界樹の根元へ向かう。
大樹の根元に立ち、創造神にお願いしてみた。
『神様、ルルに触れてみたいので、世界樹の中に入れてもらえませんか?』
『入るがよい』
念話で話しかけるとすぐに返事がきて、俺は大樹の中に吸い込まれた。
一瞬、薄い本の第1話、主人公が菩提樹の大木に吸い込まれるシーンが浮かぶ。
薄い本とは違い、俺は異世界転移する事は無かった。
というかもう既に異世界転移済だな。
世界樹の中には、木漏れ日のように緑の葉の間でキラキラする光があった。
俺は太い枝の上に現れて、前方にある緑の球体に気付く。
そこに、よく知っている男女が横たわっていた。
「ルル、来てみたよ」
俺は、目を閉じて動かない美女に話しかける。
返事は無かった。
そりゃそうだ、これは抜け殻、ルルの霊はアサギリ島にいる。
「もしも君が生きていたら、俺は前世の記憶と心を受け継げたのかな?」
ルルに話しかけながら、その隣に横たわる青い髪の青年を見る。
今の俺が成長した姿みたいな青年。
まあ、俺の今の身体は前世の身体をコピーしたようなものだから、似てるのは当然だ。
「もしも前世の記憶と心を受け継げたら、ジャスさんやフィラさんを泣かせずに済んだのにね」
ルルの頬を撫でてみた。
温かくはないけど、冷たいわけでもない。
自分の頬を伝う涙は、魂に残る前世の残滓のせいだろうか。
そうしてしばらくルルに触れていたら、何かの術式が自分の脳に書き込まれた事に気付いた。
【時の封印】という起動言語が記憶される。
それはコールドスリープにヒントを得た、生命の時を止める魔法だ。
ルルとアズには死亡後に使われているけれど、これは生きている人間にも使える。
「この魔法、ルルが若くて元気だった頃にアズが覚えられたら良かったのにね」
タマの予想通りレア魔法を継承した俺は、ルルの額にキスをして世界樹の外に出た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ベテラン精霊王、虐げられ皇子の子育てに励みます
はんね
ファンタジー
大陸で最も広大な領土と栄華を誇るアストラニア帝国。
その歴史は、初代皇帝ニコラスと精霊王バーティミアスが“疫病王ヴォラク”を討ち倒したことから始まった。ニコラスとバーティミアスは深い友情を結び、その魂を受け継ぐ皇子たちを永遠に見守り、守護する盟約を交わした。
バーティミアスは幾代もの皇帝を支え、帝国は長き繁栄を享受してきた。しかし、150年の眠りから目覚めた彼の前に現れた“次の皇帝候補”は、生まれたばかりの赤ん坊。しかもよりにもよって、十三番目の“虐げられ皇子”だった!
皮肉屋で老獪なベテラン精霊王と、世話焼きで過保護な月の精霊による、皇帝育成(?)奮闘記が、いま始まる——!
人物紹介
◼︎バーティミアス
疫病王ヴォラクを倒し初代皇帝ニコラスと建国初期からアストラニア帝国に使える精霊。牡鹿の角をもつ。初代皇帝ニコラスの魂を受け継ぐ皇子を守護する契約をしている。
◼︎ユミル
月の精霊。苦労人。バーティミアスとの勝負に負け、1000年間従属する契約を結びこき使われている。普段は使用人の姿に化けている。
◼︎アルテミス
アストラニア帝国の第13皇子。北方の辺境男爵家の娘と皇帝の息子。離宮に幽閉されている。
◼︎ウィリアム・グレイ
第3皇子直属の白鷲騎士団で問題をおこし左遷されてきた騎士。堅物で真面目な性格。代々騎士を輩出するグレイ家の次男。
◼︎アリス
平民出身の侍女。控えめで心優しいが、アルテミスのためなら大胆な行動に出る一面も持つ。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
