【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

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前世編

第117話:思いを残す

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 エカは「まだ死にたくない」と思った。
 彼には、愛する妻と子供がいるから。
 大切な家族を残して死んでもいいなんて思える筈が無い。

 爆裂魔法の修行で何回も心臓が止まってるし、完全回復薬エリクサーを使わずに死んだりしたけど。
 それはボクの力で蘇生出来ると分かってたからだ。
 今回はそうはいかない。
 死んだらそれっきり。
 創造神かみさまが与える死は、ボクには蘇生出来ないから。

「エカ、どうしたの?」

 無意識に涙が流れていたエカを、ソナが心配して抱き締めてくれた。
 神様から聞いた話を、彼は妻にまだ話していない。

(ソナとリヤンを置いて転生なんて出来ない……!)

 エカは、ソナを抱き締め返して思う。
 涙は一向に止まらない。

「ねえエカ、どうしたの? 何があったの?」

 エカが泣くなんて滅多に無いから、ソナは不安になってきたらしい。
 聞かれてもエカは答えられなくて、ただ涙を流し続ける。

「うわぁぁぁん!」

 ベッドで寝ていたリヤンが、いきなり号泣して目を覚ました。

「え?! リヤンまで……どうしたの?」

 困惑するソナが息子を抱き上げてあやし始めた直後、その右手からルビイが飛び出した。

「え? 何? ルビイまで……」

 混乱するソナを置いて、ルビイは凄い勢いで家から飛び去ってゆく。
 ルビイがどこへ向かったか、エカもボクも察した。

「アズ!!」

 エカも家から外へ駈け出した。
 ソナは混乱していたけど、エカが叫んだ名前でアズに何かあったと察して、リヤンを抱いてついてゆく。

 不死鳥ルビイがソナ以外の事で行動するとしたら、理由は1つしかない。
 世界樹の根元まで走って行くと、翼を広げて誰かを包んでいるルビイがいた。
 更に近付いて見ると、ルビイの翼の間から見覚えのある2人が見えてくる。

 以前、転移装置で日本へ行ったルイとアズが、戻って来た時と同じ光景。
 血の気が引いた顔でグッタリしたアズを抱いて、座り込んでいるルイ。
 ルビイが不死鳥の姿になって2人を翼で包み、蘇生の力を使っている。

 以前と違うのは、ルイは泣いてはいるけど慌ててはいない事。
 以前はすぐ蘇生出来たのに、ルビイがどんなに力を使っても、アズが息を吹き返す事は無かった。

「あ~! あう~!」

 リヤンはアズに可愛がってもらってたから、何か気付いたのかもしれない。
 世界樹の民の幼子は、感受性が高いんだ。
 泣きながら小さな手を伸ばすので、ソナが近付いて行ってアズに触らせてあげた。
 リヤンの手が頬に触れても、アズは全く動かず、目を閉じたままだった。


『魂の抜き取りは終わった。亡骸を愛する者の隣に寝かせてやりなさい』
「はい」

 創造神かみさまに言われて、ルイがアズの亡骸を抱いて世界樹の中へ入ってゆく。
 この頃はもうルイは成人していて、アズとほぼ同じくらいの体格になっていた。

「……創造神かみさま、アズは……どうしたんですか……?」

 まだ事情を知らないソナが、声を震わせながら問う。

『魔族討伐のため、日本へ転生してもらったのだよ』
「……日本へ……?」
『知っての通り、あちらの世界では世界樹の民は生存出来ない。スキルも魔法もギフトさえも無効化される。それでは魔族と戦えぬ故、異世界転生を行なったのだ』
「……アズは、ひとりぼっちで異世界転生なんですか……?」
『否、他に3名の仲間も転生している』

 神様が言う「3名」が誰か、エカとボクには分かる。
 行くと言っていたロコだけじゃなく、ローズとエアもアズを手伝いに行ったらしい。
 あの時問われた5人の中で、未だ返事が出来ずにいるのはエカだけだった。

『妻と子を残して逝けぬ気持ちは理解した。其方はこれまで通りの生活を続けるがよい』

 創造神かみさまは、エカに無理強いはしなかった。

「爆裂魔法が無くても、倒せる魔族なんですか?」
『否。討伐する魔族は将軍クラス故、爆裂魔法以外では倒せぬ』

 問いに返ってきた答えは、討伐隊にエカが必要に思える内容だけど。

「じゃあ、やっぱり俺も行かなきゃならないのでは?」
『だが其方の意志無く転生は出来ぬ。地球の創造神かみには、イオに爆裂魔法を与えるように頼んでおこう』

 異世界転生ではその世界の創造神かみさまからスキルや魔法を貰う。
 こちらで持っていた完全回避は失われる代わりに、アズは爆裂魔法を授かるのかもしれない。
 でも、アズには不死鳥の召喚獣がいない。
 ボクたち召喚獣は主の魂にくっついて転生するけど、福音鳥ハピネスベノワには主人を蘇生する力は無い。

「それは……アズが爆裂魔法を使ったら、あちらでもまた死亡するという事ですか?」
『そういう事になる。死した後はこちらへ転生させよう』

 それを聞いた後、エカはしばらく黙り込んだ。
 彼はまだ葛藤していた。

 気持ちが定まらないエカの前に、世界樹の中からルイが出て来た。
 アズの亡骸は世界樹の中に置いて来ていて、ルイ1人だ。

創造神かみさま、父さんと母さんをお願いします」

 世界樹の幹をそっと撫でて呟くルイの眼差しは、穏やかだけど切ない。

 エカは血が滲むほど強く、自分の手を握り締める。
 魔王討伐の時、エカは目立たないようにと後方に護られ隠されて、アズだけが敵軍に突っ込んでいた。
 狙われない為とはいえ、申し訳ない気持ちがあった。
 あの時はまだアズが死ぬ心配は無かったから平気だったけれど、今度は確実にアズが死ぬ。

 ソナとリヤンを残して死にたくない。
 この幸せが長く続いてほしいと思う。

 けれど、双子の弟だけを魔族と戦わせて、死なせて、知らん顔して、自分は生きられるのか?

 葛藤の末、エカの気持ちが定まる。

「……ソナ……リヤン……ごめん……俺も行ってくる……」

 その言葉に、ソナは息を呑んだ後、号泣した。
 母親の悲しみに反応して、リヤンも泣き出した。
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