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ポケットの中に
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「はぁ~……」
俺はゲームの世界から帰った直後に溜め息を零しつつ首に手を当ててゴキリと音を鳴らす。
やっぱりこの違和感には慣れない。ゲームから現実に戻ってきた時のこのズレ。
横ではレトナたちが和気あいあいと「楽しかったな」「色々と凄かったですね!」などとそれぞれ感想を口にしている。
ガ・ルーとかいう新しい敵が出てきたことでストーリーが発展しそうだというところだったが、そろそろ時間だからやめようとなってしまったためレトナが少し駄々をこねたりもした。
とはいえ今はゲームに本腰を入れるにはまだやることがあるからそちらを優先するしかない。
俺たちがいない間はあの世界の時間は止まってるようだし、急がなくてもいいだろう。
「時間は……」
時間を気にしようとしたところで俺はポケットの中に何か違和感があることに気付いた。
「夕食のお時間でございます」
俺がその違和感に気を取られていた時に背後からジークがぬっと出てきて答え、俺以外のメンバーが全員「うわっ!?」と声を出して驚く。俺でさえ少しビクッと反応してしまっちまった。
ヴェルネに至ってはその勢いでジークの頭を引っ叩いてしまっていたが、叩かれた本人は気にした様子もなく「ホホホ」と愉快そうに笑って去って行った。
むしろ叩いた側のヴェルネが胸を押えて息を切らしていた様子。相当驚いたらしい。
――――
―――
――
―
食事を済ませた俺はヤトと少し話していた。
「竜の心臓、か……」
ポケットの中にあったのはまさかのガ・ルーから貰った戦利品である「黒竜の心臓の成れの果て」だった。
心臓というには余りにも歪な形をしているが、ヤトは疑うこともなく真剣な表情でそれを観察している。
「たしかにこれは竜の心臓だな。しかもかなり長く生きた竜のやつだ」
どうやらガ・ルーの言っていたことは間違いではないことが証明されたらしい。
「どこでこれを手に入れたんだ?」
「今行ってきたゲームの中の世界」
「そこに竜がいたのか?」
「いや、別の世界で竜を殺したってやつがそれをくれた」
「そうか……」
ヤトは呟くようにそう答えると残念そうに竜の心臓を見つめる。
恐らくではあるが……この世界にも竜はいくらかいるだろうが、自分と同じほど生きた竜が他にもいるかもという期待をしたのだろうか。
「同じ竜に聞くのはちょっと気が引けるが、それの使い道ってなんかあるのかと思ってな」
「竜の心臓の使い道を竜に聞くのはたしかに人の心がないな!」
ハハハハと笑うヤト。
まぁ、気にした様子がないし、そうだと踏んだから聞いたわけだが。
「ふむ……必要な素材を集めれば副作用はあれど人体を強化する秘薬のようなものが作れるな。しかも長く生きた竜であればその分効果も強くなる」
「秘薬ねぇ……その副作用ってのは?」
「くしゃみが止まらなくなる」
ショボッ……
「マジで?」
「冗談だ。言ってしまえば種族が根本的に変わってしまう」
「種族が……根本的に?」
俺が気になったところを聞き返すとヤトが頷く。
「例えば今、お前さんの状態は人間でありながら吸血鬼のように長い寿命を持っている。だが血を飲みたいという衝動はないだろう?」
「……そうだな」
言われてみればそうだ。ルルアと契約して寿命が伸びたと言われていたが、今までと何も変わらず過ごしているからその実感がない。今でも何かの冗談じゃないかとさえ思うほどに何も変化無い。
「それが完全に竜になる、ということだ。寿命が竜と同じになるだけでなく姿も竜になり、生の肉でさえ好んで食うようになる。最悪なのは……しばらくの間、その者は本能的になり自我が消えてしまうことだろう」
「……それって大丈夫じゃないよな?つまり竜の姿で暴れ回るってことだろ」
「必ずしもそうとは限らないが……とはいえ若い竜はたしかに血気盛んだから近くに人間や魔族がいれば襲いかかるだろうな。だからと言って誰もいなければ巣を作るために飛び立ってどこかへ消えてしまうだろう。しかもだ」
そこでヤトが疲れたように一息吐いて言葉を続ける。
「その『しばらくの間』が過ぎて自我を取り戻した後はどうなるかわからん。竜の姿から人に戻ることができずに絶望して自ら命を絶つか廃人となるか……」
「……まるで見てきたような言い方をしてるけど、前にもそういう奴がいたのか?」
俺の問いにヤトは昔を思い出すようにうつむいて少し黙り込む。
「……あぁ、人間の中にいた『英雄』と呼ばれた男がな。そいつもお前ほどではなくとも竜を打ち倒せる強さを持っていた。だが――」
ヤトは過去にいた者の末路を話した。
何をとち狂ったのか、倒した竜の心臓を取り出してその場で食べてしまったこと。
すると最初は力が上がっただけだったのが時間が経つにつれて竜のような姿へと変化していき、そして完全に竜と成ってしまった時にソイツが育ってきた村を本人の手で焼き払ってしまったこと。
そしてその場を後にして自分の巣を作り、自我を取り戻して……
「……奴は全て覚えていたがために発狂して自分の首に噛み付き自害してしまったんだ」
「…………」
まるでちょっとした鬱展開のあるアニメみたいだ、という感想は心の中に留めておいた。
少なくともヤトから感じる悲しみは本物で、作り話でなく過去の出来事だったことと、その英雄とヤトの間には何かしらの縁があったのだろうと推測したからである。
「……ならこの心臓は下手な使い方をしない方がいいってことか」
「そうだな、少なくとも食用には向かないだろう。そんなものよりお前さんが作ってくれる甘菓子を食べてる方がよほど有意義だ」
ヤトはフッと笑っていつもの調子に戻って答える。
だが……何より気になるのは、なぜゲーム内で貰ったものが現実に持ち込めたのだろうか、ということだった。
ポケットからスマホを取り出して観察する。
……今更だがやっぱり、このスマホは普通じゃない気がすると思えてならない。
俺はゲームの世界から帰った直後に溜め息を零しつつ首に手を当ててゴキリと音を鳴らす。
やっぱりこの違和感には慣れない。ゲームから現実に戻ってきた時のこのズレ。
横ではレトナたちが和気あいあいと「楽しかったな」「色々と凄かったですね!」などとそれぞれ感想を口にしている。
ガ・ルーとかいう新しい敵が出てきたことでストーリーが発展しそうだというところだったが、そろそろ時間だからやめようとなってしまったためレトナが少し駄々をこねたりもした。
とはいえ今はゲームに本腰を入れるにはまだやることがあるからそちらを優先するしかない。
俺たちがいない間はあの世界の時間は止まってるようだし、急がなくてもいいだろう。
「時間は……」
時間を気にしようとしたところで俺はポケットの中に何か違和感があることに気付いた。
「夕食のお時間でございます」
俺がその違和感に気を取られていた時に背後からジークがぬっと出てきて答え、俺以外のメンバーが全員「うわっ!?」と声を出して驚く。俺でさえ少しビクッと反応してしまっちまった。
ヴェルネに至ってはその勢いでジークの頭を引っ叩いてしまっていたが、叩かれた本人は気にした様子もなく「ホホホ」と愉快そうに笑って去って行った。
むしろ叩いた側のヴェルネが胸を押えて息を切らしていた様子。相当驚いたらしい。
――――
―――
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食事を済ませた俺はヤトと少し話していた。
「竜の心臓、か……」
ポケットの中にあったのはまさかのガ・ルーから貰った戦利品である「黒竜の心臓の成れの果て」だった。
心臓というには余りにも歪な形をしているが、ヤトは疑うこともなく真剣な表情でそれを観察している。
「たしかにこれは竜の心臓だな。しかもかなり長く生きた竜のやつだ」
どうやらガ・ルーの言っていたことは間違いではないことが証明されたらしい。
「どこでこれを手に入れたんだ?」
「今行ってきたゲームの中の世界」
「そこに竜がいたのか?」
「いや、別の世界で竜を殺したってやつがそれをくれた」
「そうか……」
ヤトは呟くようにそう答えると残念そうに竜の心臓を見つめる。
恐らくではあるが……この世界にも竜はいくらかいるだろうが、自分と同じほど生きた竜が他にもいるかもという期待をしたのだろうか。
「同じ竜に聞くのはちょっと気が引けるが、それの使い道ってなんかあるのかと思ってな」
「竜の心臓の使い道を竜に聞くのはたしかに人の心がないな!」
ハハハハと笑うヤト。
まぁ、気にした様子がないし、そうだと踏んだから聞いたわけだが。
「ふむ……必要な素材を集めれば副作用はあれど人体を強化する秘薬のようなものが作れるな。しかも長く生きた竜であればその分効果も強くなる」
「秘薬ねぇ……その副作用ってのは?」
「くしゃみが止まらなくなる」
ショボッ……
「マジで?」
「冗談だ。言ってしまえば種族が根本的に変わってしまう」
「種族が……根本的に?」
俺が気になったところを聞き返すとヤトが頷く。
「例えば今、お前さんの状態は人間でありながら吸血鬼のように長い寿命を持っている。だが血を飲みたいという衝動はないだろう?」
「……そうだな」
言われてみればそうだ。ルルアと契約して寿命が伸びたと言われていたが、今までと何も変わらず過ごしているからその実感がない。今でも何かの冗談じゃないかとさえ思うほどに何も変化無い。
「それが完全に竜になる、ということだ。寿命が竜と同じになるだけでなく姿も竜になり、生の肉でさえ好んで食うようになる。最悪なのは……しばらくの間、その者は本能的になり自我が消えてしまうことだろう」
「……それって大丈夫じゃないよな?つまり竜の姿で暴れ回るってことだろ」
「必ずしもそうとは限らないが……とはいえ若い竜はたしかに血気盛んだから近くに人間や魔族がいれば襲いかかるだろうな。だからと言って誰もいなければ巣を作るために飛び立ってどこかへ消えてしまうだろう。しかもだ」
そこでヤトが疲れたように一息吐いて言葉を続ける。
「その『しばらくの間』が過ぎて自我を取り戻した後はどうなるかわからん。竜の姿から人に戻ることができずに絶望して自ら命を絶つか廃人となるか……」
「……まるで見てきたような言い方をしてるけど、前にもそういう奴がいたのか?」
俺の問いにヤトは昔を思い出すようにうつむいて少し黙り込む。
「……あぁ、人間の中にいた『英雄』と呼ばれた男がな。そいつもお前ほどではなくとも竜を打ち倒せる強さを持っていた。だが――」
ヤトは過去にいた者の末路を話した。
何をとち狂ったのか、倒した竜の心臓を取り出してその場で食べてしまったこと。
すると最初は力が上がっただけだったのが時間が経つにつれて竜のような姿へと変化していき、そして完全に竜と成ってしまった時にソイツが育ってきた村を本人の手で焼き払ってしまったこと。
そしてその場を後にして自分の巣を作り、自我を取り戻して……
「……奴は全て覚えていたがために発狂して自分の首に噛み付き自害してしまったんだ」
「…………」
まるでちょっとした鬱展開のあるアニメみたいだ、という感想は心の中に留めておいた。
少なくともヤトから感じる悲しみは本物で、作り話でなく過去の出来事だったことと、その英雄とヤトの間には何かしらの縁があったのだろうと推測したからである。
「……ならこの心臓は下手な使い方をしない方がいいってことか」
「そうだな、少なくとも食用には向かないだろう。そんなものよりお前さんが作ってくれる甘菓子を食べてる方がよほど有意義だ」
ヤトはフッと笑っていつもの調子に戻って答える。
だが……何より気になるのは、なぜゲーム内で貰ったものが現実に持ち込めたのだろうか、ということだった。
ポケットからスマホを取り出して観察する。
……今更だがやっぱり、このスマホは普通じゃない気がすると思えてならない。
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