最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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フラグを立てた覚えはないんだが

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 便利な魔法を覚えたところで俺たちは再びダンジョンの奥へ進み、探索を始める。
 途中までは一本道でできており、ちょくちょく出会う魔族と(主に魔王が)話して情報を集めていた。
 そんな中で気になる情報を耳にする。

「魔狼族の少年が?」

「そうです。一応冒険者らしいのですが、『俺はここで名を上げるんだ!』って言って一人で突っ込んでしまって。何事もなければいいのですが……」

 ダイスの聞き返しに話をしていた魔族の男が心配そうに答える。

「聞いた限り幼い印象だけど、冒険者って年齢制限があるんじゃなかったか?」

「魔族はね。魔狼族は獣人、そっちの冒険者登録は魔物の素材を持っていけばそれが討伐の証として認められて冒険者になることができるの」

「なら人間のとこだったら人間のとこでまたルールが変わってくるのか?」

「そう、だからこっちで登録した時に魔族領以外では使えないって説明されたでしょ?」

 冒険者登録をした時にイルからそう聞かされたことを思い出す。あれはそういう意味だったのか。

「それでその魔狼の子供が一攫千金を狙って奥に行ったわけ?」

「お金が目的というよりは希少な武器や防具を見つけて強くなりたいって感じじゃないか?ほら、獣人ってみんな脳筋思考なとこあるし」

 魔族の男がそう言うと俺以外が「あー……」と妙に納得したような反応を示す。

「ちなみになんだが、こういう場所に出てくる魔物ってどれだけ強いんだ?」

「弱い奴から強い奴までがそこら辺にいるわ。ただ集団で動くことが多いから弱くても面倒なのには変わりないの。だから普通は複数人でパーティを組んで入るのが普通よ。どちらにしろ身体能力の高い獣人とはいえ子供が一人で入って無事でいられるような甘い場所じゃないわよ」

 そんな感じで説明してくれるヴェルネの視線が俺を一瞥する。

「……どっかの誰かさんみたいなバカげた力を持ってるならそんな心配もないんだけど」

「そんなに褒められると照れるぜ☆」

「ムカつく……まぁ、でもそれならもう手遅れかもね。この先で野垂れ死んでるか……運が良ければ今頃魔物を引き連れて逃げ回ってるかもしれないけど」

 どうでもよさそうに冷たくそう言い放つヴェルネ。
 ……ま、実際こちらから探して助けようとは思わない。俺はそこまでお人好しじゃないからな。
 精々偶然見つけてピンチだったら少し手を貸してやろうと思うくらい……って、これをヴェルネに言ったら結局「やっぱお人好し」なんて言われそうだけど。
 ともかく俺たちは俺たちなりのペースで進むとしよう。

――――
―――
――


 ……と思っていた矢先、妙な部屋を見つけた。
 まだしばらく一本道が続くと思っていたら横に突然扉が出現し、その向こう側から少年らしき声と戦う音が聞こえてきていた。

「本当、気持ち悪いくらいにいきなり現れたな……」

「えぇ、その特性からダンジョンは一種の生物なのでは、なんて仮説を立て始める研究者も少なくないわ」

「つまり私たちがいるのは巨大生物の腹の中とも言えるわけだ」

 俺の感想にヴェルネが豆知識を付け加え、ダイスが冗談っぽくそう言って顎をカタカタ鳴らす。声には出てないけど、あのカタカタって音を出してる時って笑ってるっぽいんだよな。
 俺が相手の感情を読み取る時って顔や体の表情筋などを見て見抜くことが多いから、コイツがどんな気持ちなのかってイマイチわかり難い……だって筋肉どころか骨しかないんだもの。

「ところでこの向こうで誰か戦ってるみたいだけど入って大丈夫か?」

「え?……本当ね、誰かいるわ」

 ヴェルネが扉に耳を当ててようやく気付く。

「すでに誰かがいる部屋が移動したか……そういう事例もあるが、部屋が移動するというのは大体戦闘に時間が掛かった時くらいだ。つまりこの扉の向こうの者もそれだけの時間戦っているということになる。少し危険やもしれん」

 ダイスが目を細めてそう推察する。
 それなら一応扉を開けて助けてほしそうにしてたら助けるとしますかね。
 とりあえず扉を開けて確認してみるとその向こうには広い空間があり、大きな木が一本と何かと戦っている少年の姿があった。
 長い黒髪に犬や猫のような耳が生え、鋭い目には金色の瞳と獣のように縦に瞳孔が開いていた。
 そしてその手には細く長い刀のような武器が握られており、慣れない様子で振り回している。

「……もしかしなくてもアイツがさっきの話にあった魔狼族の子供じゃないか?」

「あっ、ホントね。それにアイツの持ってる武器、多分ダンジョンのものよ」

「あの少年の近くに細長い箱があるから多分そうなのだろうな」

「おー、カッケー!」

 それぞれが推測する中、レトナだけその武器に目を輝かせていた。

「にしても意地が悪い。細長い近接武器のある場所にトレントを配置するとは……アイツは火の魔法をぶつければ簡単に倒せる魔物なんだが、その分他の属性や物理耐性が高くて苦労するのだ。特に魔法が得意じゃない獣人からすれば天敵そのものと言えるだろう……」

「あたしも無理。火の魔法なんて生活に使う程度が精一杯で攻撃になんて使えないもの」

「俺もー。三属性くらい使えるみたいだけど火の適性はないし」

 四人中二人がすでに相性が悪いらしい。
 ダイスにも視線を向けてみるが……

「残念だが私も火はない。とはいえ耐性が高いというだけで一応倒せないこともないから、力でゴリ押し頑張ればなんとかなると思うが……」

 結局、まともな戦力になるのは俺だけというらしい。
 相談してる中でようやく俺たちの存在に気付いた魔狼の少年。

「た、たす……助けてくれっ!」

 体力の消耗が激しいらしく、掠れた声で助けを求めてきた魔狼少年。
 さっき考えてた「偶然」が本当に起きてしまったのだから助けよう。そう思って走り出す。

「お前は避けることだけに専念してその武器をこっちに投げろ!」

「う、うん……!って、うわっ!?」

 気を弛めてしまったためか、魔狼少年はツルで足をすくわれて持ち上げられ、宙吊りの状態になってしまった。
 それでも一生懸命に少年は細長い武器をこっちに投げ、俺はそれを受け取る。
 と、ほぼ同時にトレントから無数のツルが俺に向かってくるが、それら全てを受け取った武器で切り刻む。
 その時に生まれた斬撃波で少し離れた魔狼少年を吊り上げていたツルをも切り、腕でキャッチする。

「なるほど、これは……よく手に馴染むな」

「あっ……ありがと……」

 地面に着地して初めて使うにも関わらず手に馴染む不思議な感覚を覚えてた武器を眺めていると、腕の中の少年が顔を赤くして見上げながらそう呟いた。
 ……よく考えたらこれお姫様抱っこ状態になっていた。たしかにこれは恥ずかしかったな。
 相手の機嫌を悪くさせないうちに彼を地面に降ろす。

「おっと、悪い」

「う、うん……」

「悪いついでにこの武器をもう少し借りてていいか?」

 許可を貰う前にトレントへ向き直り、武器を下向きに両手で握って構える。

「いいけど……コイツ硬くて刃が通らな――」

 再びツルが向かってきたので、魔狼少年が言葉を終わらせる前に俺は武器を振った。
 たったの一閃だけを。

「――いよ……って、え?」

 その一振をした後はトレントの動きがピタリと止まる。

「……ん。それじゃあ返す」

「え……え?何をしたの?終わったって……」

 混乱している魔狼少年を他所に俺は固まっているトレントの横を通ってヴェルネたちの元へと戻る。
 ここで改めて自己PRをするとしよう。
 俺は武術を極める武人である。
 そして武術というのは空手や柔道のように素手で技を繰り出すというイメージが強いが剣術や槍術も武術に該当し、俺は武器全般を使えるよう鍛えられている。
 つまり何が言いたいかというと、突然その場で適当な武器を渡されても使いこなせる自信があると自負して言えるのだ。
 そう、例えば銃を渡されて的を撃ち抜けと言われればできるし、刀身が異様に長い刀だったとしても、だ。
 俺が横を通過した辺りでトレントに変化が起き、斜めに切り崩れていく。

「ええぇぇぇぇぇっ!?」

 後ろからは魔狼少年の驚く声が聞こえ、正面にいたダイスやレトナも間の抜けた顔をし、ヴェルネに至っては……

「たでーま」

「はいはい、おかえり」

 わかっていたと言いたげに呆れ気味にそう言って笑っていた。

 ――ピコン

「ん?今の音……スマホからか?」

 そんな音を設定した覚えはないんだが。というか初期設定のままいじってないから通話とかメールの時とかそのままなんだよな。
 スマホを見てみると、一件のお知らせが届いていた。

【アップデートが可能です。今すぐアップデートしますか?】

「アップデート……?」

 マップの時と同じく、電波も無いのにアップデートができるらしい。何をアップデートするの?
 でもこういう時の決まっている。
 「はい」か「あとで」しか選択肢が無いので適当に「はい」を押した。

【アップデートを開始します。アップデートが完了するまでこの機種を操作することはできません。アップデートの終了予定時間は三十分後となります】

 そう表示された後、スマホの画面は暗くなってしまった。
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