最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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ボスを倒したら報酬があるのはどこも一緒

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「助かったよ、カズくん。君たちと別れてから私もみんかを助けていたのだがね……」

 ダイスが空けた穴を広げると向こうが通路のように続いており、彼の後ろには魔族や獣人たちを引き連れていた。
 今その壁を見るとすでに元通りになっている。

「戻るより進んだ方がどこかに繋がって誰かに会えるんじゃないかと思って壁を壊しながら進んでいたんだ。そしたら壊した後ろの壁が閉じ始めて……」

「なんでそこで引き返さなかった?」

「もうある程度まで進んじゃって戻る道がわからなくなっちゃった☆」

 テヘ☆と舌を出してお茶目に言うダイス。声は男だけど性別が分からない骸骨姿だからちょっと可愛く思えてしまったのが悔しい。

「はぁ……ヴェルネが心配してたのがちょっとわかったよ」

 悪い意味での「かもしれない」で行動して道に迷うとか……失敗すれば助けた奴らと一緒にお陀仏してたかもしれないのに。

「まぁまぁ、結果的に合流できたのだからいいじゃないか。あの箱は君たちの物だろ?開けないのか?」

 ダイスが大部屋に現れた宝箱を指差す。
 話を逸らされた感も否めないが、まぁいいとしよう。
 他の冒険者たちもチラチラと箱の中身が気になってしょうがないようだし、お披露目といきますか。
 三つの箱はそれぞれ大きさがバラバラで、一つが俺と同じくらいの丈があり、他二つが軽く持てるくらいに小さな箱だった。

「じゃあ、俺とジルは小さいのを開けるからライネルが大きなのを開けてくれ」

「お、俺もいいのか?ほとんど何もしてないんだが……」

「俺なんて捕まっただけなんだけど……」

 ライネルとジルが遠慮気味に言うが、そのワクワクした雰囲気に水を差すようなことを言えるわけがない。

「いいんだよ、こういうのは独占するよりパーティー気分で楽しんだ方が面白いだろ?だからせーので開けるぞ。せーのっ――」

 俺も俺で中身はともかく宝箱を開けるというのは楽しみだったわけで、少し急かしながらそう言って二人に開けさせるよう促しながら蓋を開く。
 すると俺の箱にあったのは……

「……なんだこれ?腕輪?」

 腕輪と言えば腕輪と言える筒状をした謎の物体X。

「俺のは……手袋ですかね?しかも片方だけ」

 ジルが開けた箱にはたしかに黒く薄い手袋のようなものが片方のみポツンと入っているだけだった。

「お……お……おおぉぉぉ?」

 ライネルはというと言葉になっていない声を漏らして体を震わせていた。
 その後ろからも「オオォォォォッ!!」と歓声が起きている。
 流石に俺も気になってジルと一緒にライネルの開けた箱の中を覗き込む。
 するとそこにあったのはピッカピカに輝くガトリングを連想させるような近未来的な機関銃だった。
 

「カッケェェェェェッ!!!!」

 ライネルがそのガトリングっぽいものを持ち上げて高く掲げて叫ぶ。

「なんだコレ?なんだコレ!? こんなの見たことねえぞ!」

 今までで一番のハイテンションになっているライネル。
 たしかに見た目だけで言えば俺たちのが見劣りしてしまうほどの立派な見た目だ。
 俺だってちょっと羨ましいと思ってしまうくらい。多分ロマンを持つ男の子なら目を輝かせるであろう外見だ。

「……なぁ、これは俺が貰っていいか?」

 最初は喜んでいたライネルが恐る恐ると聞いてくる。今回の功績が俺一人だったことに再度思い出したようだ。

「いいぞ。元々それぞれで分けるつもりだったから欲しいもんがあれば一つ選んで持っていけばいいし、そんだけ大きいもんだとジルは使えないだろうしな」

「そりゃありがてぇ!……でもこれってどうやって使うんだ?」

 この世界に「銃」の概念がないのか扱いに困っていたようだった。

「それに持ちやすくする取っ手みたいな出っ張りがあるだろ?そこを持って指に当たる引き金を引けばいいんじゃないか?」

 ライネルがガトリングっぽいものを見渡して「これか」と見つけて指をかける。
 本当にそれが銃かはわからないが「人のいない方に向けてな」と注意して誰もいないところへ向かわせる。
 しかしアレに弾を詰める場所が見当たらなかったが本当に銃なのか?

「……ま、いいか。さて、それじゃあ俺たちはこれらを持ってくか。お前はどっちが欲しいとかあるか?」

「え?いえ、両方ともアニキが持って行っていいですよ?」

「譲るのはさっきのだけでいい。謙虚なのは美徳だが、過ぎればただの卑屈だ。使えそうなものなら持っていけ。とりあえずこれは……」

 俺が開けた箱に入っていた筒状のものを取り出そうと掴む。

 ――シュコンッ

「えぇ……?」

 手で触ると同時に筒の片方から刃が飛び出してきた。
 手を引くと刃が引っ込み、触ると出てくる。もう一つも全く同じものだった。

「何これ……勝手に刃が出てくるんだけど。ちょっとジル触ってみ?」

「触ったら武器が出てくるなんて面白いですね?……ってあれ?」

 ジルに差し出して渡すと刃が引っ込んでしまった。
 いや、なんでだよ?この筒、俺を殺したいのか?
 なんて思っているとジルの持ってる筒から刃が出たり引っ込んだりする。

「あっ、これ魔力ですよ!魔力で刃を出したりするみたいです」

「あぁ、なるほど……じゃあ、それはもうジルのな」

「えっ、なんでですか?」

 魔力が無いから、とか言ったら説明がややこしくなると思うので、魔力の扱いが下手だからとかそれっぽく省略して説明した。

「そういうことでしたか……でも魔力の扱いが下手って割にはさっき凄い勢いで魔法を使ってましたよね?」

 思わずギクリと音が出てきそうな指摘に固まってしまいそうになる。

「か、感覚で使ってるんだよ……それよりもそっちの手袋はどうなんだ?」

 話題を少しでも逸らそうとジルが開けた箱の手袋のようなものに意識を向けさせる。
 実際、一番見劣りする手袋片方だけというのが気にならないわけじゃない。
 それをジルが手に取ると……

「うわっ!?」

 何かに驚いたジルが手袋を投げ飛ばす。え、虫でもいた?

「どうした?」

「魔力が……あの手袋に魔力を一気に吸われました。なんかこう、ギュンッと!」

 擬音で説明しようとするジルだがイマイチ伝わり難い。

「何それ、呪われてるの?」

「……いえ、そうではないです」

 そう言って投げ飛ばされた手袋を拾って持って来たのは、ライネルの妻フェイだった。
 彼女もその手袋をあまり持っていたくないらしく、俺たちの目の前まで持ってくるとすぐに地面へ置いた。

「これは魔力を糧に強化される手袋みたい。ただそっちの筒状の物みたいに少し魔力を注ぐだけのものとは違って、こっちは永続的に吸収され続ける……んだと思う。ごめんなさい、私もあまり魔力が多いわけじゃないから長くは持てないわ」

「そうか……」

 そう聞いて俺はとりあえずその手袋を拾おうとしてみる。だがその前にまた爆発が起きる。
 すぐに視線をダイスの方へ向けるが、彼は手と首を横にブンブン振る。
 煙が上がった方へ目を向けると壁に焦げ跡とガトリングっぽいものを地面に落として倒れている姿が見えた。

「あんた!?」

 そんなライネルの姿を見たフェイが急いで駆け寄りに行く。
 見たところ命に別状はないようなので俺は手袋に視線を戻して手に取る。
 ……うん、何も感じない。
 
「大丈夫なんですかアニキ?」

「ああ、大丈夫そうだ。ならこれは俺が持った方がいいんだろうな」

 左手に着けてみても異常はないからそう判断する。
 しかしこれで本当に強化されてる状態なのか?そもそもどう強化されてるのかがわからないんだが……
 まぁいいかと思いつつ倒れてるライネルの方へ近寄る。

「この現状、一体どうしたんだ?」

「ああ、カズ……さっきのやつを試しに使ってみたんだ。そしたらソイツの先端部分から弾みたいなのが出てきたんだが、何発か撃ったら魔力切れを起こしちまった……」

 フェイに揺らされながら心配されていたライネルがそう言う。
 弾倉を入れる場所が見当たらないと思ったら魔力で弾を作って撃ち出すやつだったらしい。

「また魔力か……なんか魔力が必要なもの多くない?」

「たまたまなんだろうけどよ……ははっ、運がなかったってこったな……」

 ライネルが力無く笑う。
 魔力が多くない者にとってこれほど悔しくて面白くない結果はないだろう。
 だからといってジルに受け取らせたものをライネルに渡すわけにもいかないし……

「売るしかないってことか」

「そういうこったな」

 回復してきたライネルが「よっこいせ」と声を出してあぐらで座り直す。

「ああいうのって売ったらいくらになるんだ?」

 気になったことをダイスに聞いてみた。

「そうだな……性能にもよるが、ああいうのは魔力量が高い奴にしか需要が無いし、見たところ魔力の消費量も多い。となると金貨十枚辺りが妥当だろう」

「それでも金貨十枚ってんなら美味い話だよな」

 ダイスの見積もりで少し機嫌を直したライネル。
 周りの奴らも「金貨十枚かー」「一気に小金持ちになった気分になりそうだな」と羨ましがる声が上がる。
 金貨十枚か……

「ならその武器、俺に売るか?」

「え?」

 そう切り出した俺の言葉にライネルが驚き、横にいたフェイもポカンと間の抜けた顔をする。
 周囲の奴らもどよめく。

「倍の金貨二十枚なんてどうだ?足りないならもう少し出せるが……」

「待て待て待て!ちょっと待ってくれ!えっ、お前が買い取るって……そんな金今すぐに用意できるのか!?」

「できる!」

 ライネルの疑問にそう断言し、闇の魔法で収納しておいた大量の金貨が入った袋を取り出す。

「……もうなんでもありだな、あんた」

「よく言われる」

 そう言ったライネルと二人で笑う。
 そして言った通りにその場で金貨二十枚を手渡しして交渉が成立し、ガトリングっぽいものを収納魔法に入れようとする。

「って、普通に買い取ってもらっちまったけど、あんたはそれを使えるのか?」

 そこでライネルが素朴な疑問を投げかけてくる。
 そのおかげでフェイや他の冒険者たちも俺に期待の視線を向けてきていた。
 えっと……もしかしてこれって試してみないといけないパターン?
 こういう無駄に大きい武器は性に合わないんだけどな……

――――
―――
――


「ヒャッハー!汚物は消毒だァァァァッ!」

 大部屋から出てしばらく、俺はガトリングを使い絶え間無く撃ち続けていた。
 撃って撃って撃って撃って撃って撃ちまくって。
 前に魔物がいようといまいと関係無く撃ち続け、出てきた魔物は片っ端から跡形も無く消し飛んでいってしまう。
 そのせいか俺も珍しくハイテンションになってしまっていた。

「怖ぇ……」

 後ろからライネルがそう呟く声が聞こえてきたが、俺は構わず撃ち続けて前進した。
 俺が止まったのはヴェルネと合流した一時間後のことだった。
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