最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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心配くらいしてもいいだろ

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「ほぉー……へぇー……ふーん……ほぉー?」

 ギルドから出てから向かった飯屋でメニューを、レトナは凝視して物珍しそうにしていた。

「珍しいか?」

「ああ、全部見たことねぇ!この『肉パン』って何だ?」

 肉パン……俺も聞き覚えがあるわけじゃないが、メニューに書かれた絵を見てすぐにどういうものかを知った。
 いわゆるホットドッグだ。

「パンに肉を挟んで一緒に食うやつだよ。本当なら合う調味料があればよかったんだが……」

 ここの肉パンというのは本当に肉をパンで挟んだだけで、ケチャップやマスタードがない状態だ。俺たち現代人からすると少し物足りないかもしれない。

「見たことないものを食べろって言われてもわからないんだけど……そうだ、カズがオススメを選んで注文してくれよ!」

 名案と言わんばかりに目を輝かせてそう言うレトナ。たしかに当てずっぽうよりはいいと思うが……正直俺もどんな料理があるかはそこまで把握してないんだけど。
 ……このアポローネとかいうのでいいかな?「超激辛!辛さに自信がある方以外は非推奨」って書かれてるけど。

「さて」

 店員を呼んで注文をしたところで俺がそう切り出してレトナを見る。

「とりあえずこうやってゆっくりしてることだし、なんで親父さんと喧嘩したのか聞いてもいいか?」

「ぇ……?」

 水を一口飲みつつそう聞くと、予想外だったのかレトナの口から変に掠れた声が漏れて驚いた顔をした。

「深刻な話なら無理には聞かないけどな。でもヴェルネのとこに居候するならなんでそうなったってんならその理由を聞くくらいしてもいいんじゃねえかなって思うんだが……」

 諭すようにそう言って促してみるとレトナが黙って俺たちは静かになり、周りの騒がしさが目立った。
 レトナは気まずそうに俯いて黙り込んでいたが、ゆっくりと口を開く。

「……勉強が嫌で逃げました」

 半笑いで白状したレトナ。
 そんな子供らしい理由で思わず溜め息を吐いてしまう。

「勉強が嫌でって、それだけの理由で遠く離れた町まで来るとか感心すればいいのか呆れればいいのか……」

「うぅ、ごめん……」

 責められているように感じたらしいレトナが肩を落として落ち込んでしまう。

「別に責めてるわけじゃない。ただ理由の割に大層な家出をしたなと思っただけだ。よく道中襲われなかったな?」

「え、魔物にはよく襲われたぞ?」

「そういうのじゃなくてだな……そういやお前ってずっと城の中で生活してきたんだろ?」

 俺の問いに頷くレトナ。

「その理由は聞いてないのか?」

「ちゃんとした力を身に付けないと危ないからだろ?でも俺ってば結構強くなったって前にダンジョンに潜った時にわかって自信が付いたからさ、魔物を倒すのも問題なかったぜ!」

 レトナは知ってるぞと言いたげに得意気な顔で言う。
 内容が内容だけに全部は教えてないのか、ダイスの奴……?

「魔物以外には襲われなかったのか?男の魔族とかに」

「ん~?そういえばそれっぽいのには出会ったぞ。襲われたっちゃ襲われたけど……普通の見た目だし、変なことしか言ってなかったけど」

「変なこと?」

 レトナからその時の状況を聞いた。

☆★☆★
~他視点~

 レトナはヴェルネのいる町に向かう道中にある町に着き、貰い物のリンゴをかじっていた。

「買い物って金を払って物を貰うもんだと教わったけど、みんな普通にくれるな……なんでだ?」

 リンゴを頬張りながら首を傾げて疑問を抱くレトナ。
 しかしその大半が男であり、単なる親切心ではなく下心の結果だと彼女は気付いていない。
 そしてそんな彼女に近付く者たち。

「ねぇねぇ、そこの子猫ちゃん?」

「…………」

 複数の男たちに声をかけられたレトナ。
 だがそれを自分のことだとは思っていない彼女はそのまま歩みを止めなかった。

「おーい、君だよ君、リンゴを食べてるそこの君!」

 そこまで言われて「もしかしたら自分のこと?」と気付いたレトナが男たちのいるの方に振り返る。

「……俺?」

「そう、君!ずいぶん可愛いけど、ここら辺じゃ見ないね?」

 そこには四人ほど男たちが集まり、声をかけたのは爽やかな笑顔をしている好青年の見た目をした者だった。

「可愛い……そうか?親父や周りの奴以外から言われたのって初めてだな……」

 他者から直接褒められた経験が少なく耐性がなかったレトナは照れてしまう。
 その様子を見て「チョロい」と思った背後の男たちが怪しく笑う。

「それでなんだけど、これから僕たちとお茶しない?」

「お茶?お茶するってなんだ?お茶を作るのか?」

 男たちがしようとしていたのはいわゆるナンパなのだが、その経験すらなかったレトナは「お茶をする」を「食事をする」や「一緒に遊ぼう」という意味があるとは知らず、意味の不明瞭さから眉をひそめてそう答えた。
 さすがにその世間知らずさには男たちもキョトンとしたが、それを逆にチャンスと捉えてなんとか引き込もうとする。

「食事をしようってことだよ、もちろんご飯代はこっちが持つし。なんならその後も一緒に遊べると嬉しいんだけど……どうかな?」

 警戒させないよう笑顔で優しくそう言う男。
 甘い言葉に惹かれて悩むレトナ。何よりまともな食事を取れてないせいで、その誘いが彼女にとって魅力的だったのだ。
 しかしレトナはニッと笑い――

「……ごめん、凄く嬉しいけど遠慮しとく。行かないといけないとこがあるからさ!」

 食欲よりもヴェルネに会いたい一心で誘いを断ったのだった。
 だが男たちもこの時点で正気ではなく、レトナの魅了によって「なんとか引き込んでやりたい」という考えに支配されて動かされていた。

「少しだけなんだけど……ダメかな」

「いや、だから……」

「もうまどろっこしいのはやめようぜ。ちょっとぐらい強引にでも……」

 見兼ねたナンパ男たちの一人が好青年の肩を軽く叩いて通り過ぎ、レトナに近付いて腕を掴む。

「お、おい……」

「なぁ、お嬢ちゃ――」

 その瞬間、男の声から力が抜けていき、その場で倒れてしまう。

「「……えっ?」」

 突然の出来事にナンパ男たちは唖然とし、レトナはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、なんとなくそうなる結果がわかっていたかのような反応をする。

「アハハッ、俺に触っただけで動けなくなってやんの!」

「そ、ソイツに何したんだ!?」

「俺って実はサキュバスなんだ。しかも相手を魅了する力が結構強いらしくてな……元々制御が難しい力だけど、俺がその気になれば発動くらい自分でできるし、そうなったら普通の奴じゃ俺に触るどころの話じゃなくなるんだぜ?コイツみたいにな……」

 そう言うと倒れた男の頭を踏み付けるレトナ。

「ぐぅ……!」

「まぁ、そうすると変な気分になってみんなから性格が変わるって言われるんだけどな……なぁ、力尽くで連れて行こうとして何もできずに地面を舐める気分はどうだ?ザーコ♪」

 レトナは動けずにいる男に対して舌を出してあからさまな挑発をし、「ンハハハハッ!」と独特な笑いを上げながらその場から去っていく。
 その背中を恐怖、もしくは怒り、恥辱の表情を露わにして見送るしかなかったのだった。

☆★☆★
~カズ視点~

「――ってな感じだったかな?まぁ、いきなり初対面なのに飯に誘って来たり変な奴らだなとは思ったけど」

「そ、そうか。何事もなく……何事もなく?いや、レトナの身に何も無かったみたいで何よりだよ……」

 レトナの話に出てきた倒れた男がどうなったかが気になるけれど、それよりもレトナ自身に何もなくて良かったことにしておこう。ソイツに何かがあったとしても自業自得だったってことで。

「お?俺のことを心配してくれるのか?」

「当たり前だろ。もしお前の身に何かがあったら親父さんがどんだけ悲しむと思ってんだ。結果的にサキュバスの特性に助けられたが、何の力も無い奴だったら誘拐されたりしてたかもしれないんだぞ?全く……」

 説教みたいなことを言ってる間に注文した料理がきたので早速食べ始める。
 するとレトナがニヤニヤと気持ち悪い笑みで俺の方を見てきていた。

「そっかそっか、それは嬉しいな~♪」

「何がだ?」

「みんなさ、俺が『魔王の娘だから』とか『城から出ないから』って言って『大丈夫だろう』って思ってんのよ。実際その通りだし、ヴェル姉ちゃんから魔法を教わってるからその辺の奴には負けないって思ってるけど、親父以外から心配されるって嬉しいって思えるんだ……」

 そう言いながらレトナは立ち上がって含みのある笑みを浮かべて俺の隣にやってきて腕に絡み付いてくる。

「……今ヴェル姉ちゃんたち二人と恋人してんだろ?俺も立候補しちゃおうかな~って?」

「それは……」

 ふざけているのかからかっているのかわからない物の言い草にどう返そうかと思っていると、反対にいたルルアから引っ張られる。
 ガルルと獣のように唸るルルア。
 毎回そうだが、「これは私のだ」と主張しているみたいだ。こういうところはたしかに獣人っぽいけれど。

「もう!なんでみんなお兄ちゃんを取ろうとするの!カズお兄ちゃんはルルアたちのなんだから絶対に上げないんだからっ!」

 そんな感じでルルアの渾身の叫びがその飯屋の中に響き渡るのだった。次から来るのが気まずくなるじゃねえか……
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