最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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年越し 2022

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 皆様、あけましておめでとうございます!
 この作品を書き始めてもうすぐ一年になろうとしていますが、楽しんでいただけているでしょうか?
 例の病が流行り出してからしばらく時間が経ち、当初ほどの騒ぎはなくなったものの変わらず脅威を振り撒いていて落ち着かない最近ですが、そんな中だからこそ皆様の無事息災を願っています。
 未だ大変な世の中ですが、今年もよろしくお願いします!

――――

「「「あぁ~……」」」

 寒い日が続くある日。
 この世界の基準で一年が終わろうとしていたこの日に俺たちはコタツに似た魔道具を囲んでぬくぬくとゆったりしていた。

「こっちの世界にもコタツみたいなものがあってよかったよ。冬といえばやっぱりこれだよな~」

 その心地良さに全身が緩んでしまう。
 それも向こうにいた時のような殺伐とした時間をこっちでは味わっておらず、平和な日々を堪能していたからだろう。

「ふふっ、だらしない顔になってるわよ?」

 なんて言っているヴェルネもフニャッとだらしくなった顔をコタツのような机の上に顎を乗せていた。
 「そう言うお前もな」というと多分ヴェルネは恥ずかしくなってちゃんとしようとするだろうし、もう少しそんな彼女の様子を見ていたいので言わないでおく。
 それに彼女だけじゃなくルルアやレトナ、ジルまでも同く人様には見せられないだらしない顔になってしまっていた。

「そういえば……」

「ん?」

「俺がこの世界に来た時もこんな感じだったなって思ったんだ。ちょうどこうやってコタツでゆっくりしてる時にな」

 今思えば唐突過ぎる状況だったのに、よく俺は冷静さを欠かずにいられたなと思える。
 まぁ、それが脈絡もなく突然過ぎたってのと移動した先で不思議な肌色をした裸の女の子が水浴びをしていたおかげで驚く暇もなかったのもあるかもしれないけれど。

「まさか年越しを異世界で過ごすことになるとは……あの世界の誰もが想像できなかっただろうな」

 想像力豊かな奴だって「こうだったらいいな」と思う程度が関の山だ。実際に別の世界へ飛ばされるなんて誰が考えようか。
 それにこういうのは普通、トラックに轢かれるとか病死とか神という存在によって故意的に行われるのがよくある定番だろう。
 なのに俺は死ぬ予定もなかったし、その神様に呼ばれたわけでもない。
 もしあの時この世界に移動させたのが神様なのだとしたら「ありがとう」と言いながらぶん殴ってるところだ。別に恨んでるわけじゃないけれど、そうする前に一言くらい寄越せと文句は言いたいからな。

「……あんたにとって今をどう思ってるかわからないけど、でもあんたがここに来てくれたおかげで色々と良い方向に変わっていったわ」

 ヴェルネは頭を机に乗せたままの状態でそう言い、二ヘラと笑う。

「……ありがとう――」

 珍しく素直なヴェルネの言葉。それを噛み締めるように目をつむってフッと笑い、目を開けるとそこは先程までの光景ではなくなっていた。

「おはよう、カズ」

 優しい声……別の世界に移動するまでずっと聞いてきた懐かしく聞き慣れた声。
 視線を声のした方へ移すと、俺の母親がエプロン姿で微笑んだ顔を俺に向けて立っていた。

「全くみんなコタツで寝ちゃって……」

 やれやれと呆れながらコタツの上にある食器を片付ける母さん。
 俺も起き上がり、一緒にキッチンの水道まで片付けを手伝う。

「……何かあったの?」

 俺の顔を見て察したのか、それとも母親特有の息子センサーが働いたのか、優しい声色で急にそんなことを聞いてきた。
 つい最近まで聞いていた声なはずのに懐かしく思える……

「別に……変な夢を見ている気分ってだけだよ」

「『変な夢を見ていた』じゃなくて?」

 母さんはそう言いながらクスクスと笑う。
 変な話だ、これは夢だと理解できる。だがいつもなら夢を夢だと自覚すればすぐに起きるはずなのに、まるで現実のような感覚だ……しかし嫌な感じはしない。
 これは一体……?

「カズ」

「ん?」

 考え事をしている俺に食器を洗いながら声をかけてくる母さん。

「これからもあなたはその力のせいで色んな出来事がその身に起こると思うわ。それでもあなたはあなたが思うように前へ進みなさい」

――――
―――
――


 そこで目が覚め、異世界のコタツで顔を上げる。どうやら寝落ちしてしまっていたようだ。
 周囲にはヴェルネたとが俺と同じようにコタツに座ったまま寝てしまっている。

「寝落ちなんて久しぶりだな……それだけ気が緩んでたってことか」

 なるべくみんなを起こさないようにコッソリとその場から抜け出し、厨房へ行ってホットココアを飲んだ。
 その温かさが全身に行き渡るのを感じつつ、さっきまで見ていた夢の内容を思い出す。

「……やっぱり夢にしてはハッキリと覚えてるんだよな」

 特に印象的と言えるわけでもない母親とのたわいないやり取り。なのにそれが現実で起こったかのように鮮明に覚えている。
 なんなんだ……?

「……お兄ちゃん、おはよう」

 するとルルアが目を擦り眠そうにしながらやってきた。

「おはよう、起こしちまったか?」

「ううん、ただ起きたらお兄ちゃんがいなかったから探してただけ。何飲んでるの?」

 俺が飲んでるものが気になるルルアが覗き込んできて、それが甘いものだとわかると「ルルアも飲むー!」とパッと笑顔になる。

「ほいよ。そういやもう年が明けたんだっけな?だったらアレを言わないとな……あけましておめでとう」

 ホットココアを彼女に出してそう言うと、ルルアも笑顔を俺に向ける。

「うん、今年もよろしくね!」

☆★☆★
~他視点~

「…………」

 元の世界にてカズの母起床。
 呆けた表情でしばらく固まり、周囲を見渡す。

「……夢?」

 ポツリと呟き、残念そうに溜め息を漏らす。

「そうよね、和は今いないんだもんね……うっ!?」

 憂鬱感の中、突然襲ってくる頭痛。そこで彼女は昨晩のことを思い出す。

「あー……そういえば年越し前に飲んで寝ちゃってたわね……」

 年末だからとお酒類を飲み続けて倒れてしまったらしい。

「あっはっは、こんな母親らしくない姿はあの子には見せられないわね……」

 気丈な振る舞いでそう言い、頭痛のする頭に手を当てるカズの母。
 ふと視線を横に向けると自分の夫である者が静かな寝息を立てて寝ており、その姿を見た母親がホッと安堵の息を吐く。

「あんな夢を見るなんてね……やっぱり武人であること以前に母親であることは捨てられない、か」

 眩い朝日がカーテンの隙間から差し込み、彼女は眩しそうに顔をしかめながら窓の方を見る。

「あけましておめでとう、カズ。次はちゃんと顔を見させてよ」

 決して本人に届くことのない独り言を口にし、彼女は優しく微笑むのだった。
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