最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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「うぐっ……⁉」

「「ヴェルネ様ッ⁉」」

 片腕が消し飛んだあたしを心配してジークたちが駆け寄り戻ってくる。

「おや、耳障りな悲鳴の一つでも上げるかと思いましたが……我慢強いのですね」

「教皇様……教皇様だ!」

 今までの誰よりも優しい声色でそう言い、散歩でもするかのようにゆっくりと近付いてくる奴がいた。
 そんな彼を見た周囲の人間たちが沸き上がる。
 消えた左腕のところを押さえながら痛みで座り込んでいたあたしがソイツの顔を拝もうと顔を上げると、そこにはさっきの男よりも歳を取った高齢の老人がいた。
 明らかに位が高そうな服を纏い、身の丈ものある杖を持つ彼は他の人間が倒れているのを気にも留めずに余裕の笑みを浮かべながらあたしたちの方へ一直線に向かってくる。こんな老人に腕を消し飛ばされたの……?

「デタラメな魔力の使い方には目を見張るものが、所詮は害虫の小娘といったところでしょうか。戦場に出た経験もない者が悪戯に前へ出るからそうなるのです」

「貴様ッ!」

 頭に血が上ったジークがその老人に向かって走り出し襲い掛かる。
 しかし老人はそれでも余裕な笑みを絶やさず歩きの速さも変わらないまま向かい続けていた。嫌な予感がする……

「ジー、ク……!」

 奴の不自然な態度にジークを止めようとしたが、痛みで声が出ない。
 そうこうしている間にジークが持っていたナイフで彼の首を切り裂く。
 普通ならそれで終わる……はずだった。だが老人は何事もないかのように生きていた。

「手応えはあったはず……⁉」

 驚くジーク。すると彼とは別に動いていた。マヤルも何本もの細い糸で老人を包み込んでいた。
 そして瞬きする間もない速さで糸が収束し、老人をバラバラに……

「……え?」

 変わらず五体満足の老人にマヤルが声を漏らす。やはり死んでいない……というか服すら切れた様子がない。

「無駄ですよ。何の対策もしていないあなた方の攻撃は私には届きません」

「幻影か⁉」

「どうでしょう……試してみますか?」

 フッと笑ってそう言い放って挑発し、両手を広げた。

「私はウルストラ教会所属、教皇グルータス・ウィンター。さぁ、我が同胞を傷付けた報いを受けてもらいますよ」

 そう名乗り、片腕をゆっくり上げてこちらへ向けるグルータス。彼の雰囲気にまた嫌な感じがしたのでこちらも遅れて「ある方」の腕を上げて標準を定めた。

「『神の裁き』」

「はっ、『反射水』ッ!」

 痛みで気を失いそうなのを我慢し、なんとか防御魔法を発動する。
 相手が発動した魔法は予想通り眩い光を放ち、あたしが発動した水の魔法が空へと方向を変えて飛んで行った。

「ほう!先程の一撃を受けてもう対策を講じましたか!流石は魔法『だけ』が取り柄の魔族ですねぇ……ただ――」

 馬鹿にするように褒めてくる老人がそう言って拍手する。だが同時にこちら側を見透かしたように細めた目を向けてきた。

「――今のあなたはその魔法を使うだけで精一杯のようですね。先程までの余裕が感じられない……まるで湯水のように溢れていた魔力が枯れてしまったかのようです。強力な魔法を使い過ぎましたか?それとも……もしかして何か大切なものでも無くされました?」

 いやらしく値踏みでもするかのような視線。しかし彼の言う通り、魔力をいくらでも使えるようにするための指輪が左腕ごと消し飛んでしまったから、使える魔法が一気に減ったしまった上に今の魔法でかなりの魔力を消費してしまった。
 同じ魔法を使えてあと二回……その前に奴を仕留めたいところだけれど、そこにいる奴に攻撃しても意味がない。
 どうにかして本体を見つけないと、こちらがやられてしまう。
 もう一つ攻略の手段……ってわけじゃないけど、凌ぐためには――

「チクショウ……こっちが手を出せないからってやりたい放題しやがって!こうなったら一か八か攻撃が通るまで何度も攻撃してやれば……!」

「ユースティック!」

 怒りで今にも飛び出そうとしていたユースティックを呼び止める。

「今のまま攻撃しても意味がないのはさっきのジークたちのやり取りでもうわかってるでしょ……それよりもあんたにやってほしいことがあるわ」

 そう言ってユースティックにやるべきことを伝えた。

「フフフ、相談ですか。ですがどうする気です?私はあなた方の作戦を待つ気はありませんよ……?『神の裁き』」

 グルータスが会話に混ぜて魔法らしき技を撃ち放ってきたのでさっきと同じ魔法を発動して別の方向へ反射する。その瞬間、フラッと眩暈に襲われた。あ、やばい……防げるの次が最後かも……

「そういえばもう理解できていますか?私が放つこの神の奇跡……あなた方が使う魔法と違って魔力の消費などないのです。もっと言えば制限がない……これがどういう意味を持つのかわかりますか?」

「…………」

 あたしはその答えを予想できていた。
 でも答えない。

「『放てる限界がない』ということなのですよ。つまりあなた方が魔力がどれだけ多かろうと関係ないのです。それに発動する速さ、威力もあなたが先程放った魔法の比ではない。この辺りで観念してみては……?」

「フンッ、それで観念したとして、それであたしをどうするつもり?言っとくけど『歓迎する』なんてあなたたち言われても馬鹿正直に信じる気はないわよ」

「まぁ、あなたの処遇はもちろん『相応のもの』を用意させてもらいますよ。しかしあなたはあくまで餌として連れて行く『ついで』……おっと、これ以上は無駄な話になりますね。さて、今はかなり辛そうですが、あとどれだけ凌げるのでしょう……?」

 圧倒的な力を持ちながらこちらを弄ぶような発言をするグルータス。クッソ性格悪いわね……
 しかし実際こちらから反撃するための糸口が見えない。策を講じるにしてもあの幻影みたいな状態の突破口のヒントでも見つけない限り前進しないわけで……
 そんなことを考えている間にも例の光が容赦なく放たれようとしていた。
 ヤバイ……でも防げないと今度は腕だけじゃ済まないかもしれない。
 ユースティックはまだなのかしら……?
 作戦を伝えたユースティックはすでにこの場にいない。その彼が戻って来なければもう防ぐ術がない。
 そうしたらジークとマヤルは……
 彼らも下手な相手であれば後れを取らないほど強いっていうのは知ってる。
 たしがほとんど壊滅させたあの人間たちの数だってこの二人だけで事足りるくらい。ただ町に被害が出る前に片付けたかったから前に出ただけなわけだし。
 そんな二人だって攻撃が通用しない相手がいればどうしようもないし、何より「あたし」という存在がいるせいでこの二人に逃げる選択肢を奪ってしまっている。

「ヴェルネ様、ここは撤退を。後ろに下がれば町の結果が守ってくれます」

「そうです!あとはあっちたちに任せてヴェルネ様は――」

「ダメ、よ……!アレは……直接食らったあたしだから、わかる……結界で防げるようなものじゃ、ないから……」

 魔力も少なく痛みで意識が飛びそうなのを必死に堪えてはいるけれど、本当にギリギリ……
 そんな時、後ろからユースティックが叫ぶ声が聞こえた気がした。

「ジーク、これを受け取れ!」

「何を……」

 ユースティックが無造作に投げた「ソレ」をジークが受け取る。

「ッ……⁉ これはヴェルネ様の左腕?これはどういう……」

「ジーク、その手の指にある指輪を外してあたしにちょうだい!」

 「ついに!」と思った焦りで少々言葉になってしまったが、ジークはすぐに察した様子で左手から指輪を外す。
 ……自分から離れた腕が何かされてるって傍から見たら不思議な光景ね。
 腕、もとい指輪が見つかったからか思考にそんなことを思える程度には余裕が出て来たらしい。しかし――

「『神の裁き』」

「しまっ……⁉」

 あたしがジークから指輪を受け取る前にグルータスからあの魔法が放たれてしまう。
 油断したせいで防ぐための反射魔法の発動が遅れ、あの眩い光が目の前に広がった。
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