最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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泣かせちゃった

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 魔王の少女が口から血を垂れ流しながら疑問を口にした。

「すぐに来れないように遠くまで飛ばした。なのになぜもうここにいる?」

「悪いな、俺らはある程度の中継地点に戻って来れるんだよ」

 一度行った町に戻れる「ファストトラベル」のことを匂わせつつ不敵に笑うカズ。
 再び少女がカズをどこかへ飛ばそうとしたのか手を振る動作を取るが、その前にカズが距離を瞬時に詰めて彼女の腕を掴む。

「二度目はさせねえよ」

 そう言って容赦なく彼女の顔面も鷲掴み、先程ルルアにしたように彼女の後頭部を地面へと勢いよく叩き付ける。その後ろにはピコンと機械音と共に321という数値が出る。

「……毎回思うけどこれ、かなり気が抜けるな」

 ゲームの使用上仕方ないとはいえ、気合の入れた攻撃に取って付けたかのような機械音と「らしい」数字の表記にカズのやる気は目に見えて下がっていた。
 するとカズが今しがた掴んでいた少女の姿が一瞬で消えて彼の横に出現、仕返しと言わんばかりに顔を掴みに行く。
 しかしカズは驚いた表情をしつつもその動きに反応し、腕を振り払い再び顔面を鷲掴み持ち上げる。

「……不意を突いたつもりなのに」

「おう、驚いた」

「嘘だ。驚いた人間がこんな早く反応できるはずがない。まるで私の動きを知っていたみたいな動きだ」

「そこら辺の人間とは鍛え方が違うのだよ」

 顔を捕まれ宙に浮かされた少女と当たり前のように会話を広げるカズの姿にヴェルネたちやパラミシアは奇怪な表情を浮かべていた。
 その後も少女が何かしようと腕を上げようとすればはたき落とされ、瞬間移動で消えてもすぐにまた顔を鷲掴むなどループをしつこく繰り返し、それが百を超えたか超えないか辺りで少女は根負けして落胆の表情と共にその場で座り込んでしまうのだった。

「なんだ、この人間……?」

 ボソリと呟く少女。
 そして今まで気丈とも言えた無表情が崩れ、ついには外見相応の泣き顔になってしまい……

「魔王様⁉」

 それを始終見ていたパラミシアが少女に駆け寄り、キッとカズを睨み付ける。

「貴様!こんな愛らしいお方にこのような仕打ちをして良心が痛まないのか⁉」

「痛まないね。仲間を守るためならなんだってやってやる。たとえソイツが子供の様にみっともなく泣き叫んだとしても俺は容赦なくぶちのめせる」

 感情に付け込もうとしたらしいパラミシアの質問にカズが威圧を込めて血も涙もない返答をすると彼女の口から小さく「ヒュッ」と一瞬吸い込む音と共に青ざめた顔をする。
 ……と、そんな会話をしていると彼女たちの姿が突如として消える。

「……ま、相手をどこかへ飛ばせるなら自分たちもテレポートできるわな」

 相手が突然消えた理由をなんとなく察して軽く溜め息を吐くカズ。

「結局あんたは何をされたの?」

「テレポートやワープの類だろうよ。俺を殺すためじゃなくて単純に時間稼ぎをしようとしたんだな。おかげで最初はまんまと引っかかっちまったわけだが」

 カズはそう言って「俺もまだまだだな」と付け加えて背伸びをする。
 ふとそんな彼にヴェルネが訝しげな表情で近付く。

「あんたがそういうのに引っかかるって珍しいわね」

「害意を感じなかった上に魔法で何かされるって感覚に慣れてなかったからだろうな」

 もっと言えば「ここはゲーム内」という考えが前提にあるせいである程度の技を受けてしまっても大丈夫だろうと考えてしまっていたところがあったカズはそこも直す悪癖だと反省する。

「あ~あ、あのヴェルネお姉様似の人逃がしちゃったね。もうちょっと色々弄ってあげたかったんだけどな~♪」

 残念という割には表情はほのかに赤く、舌なめずりをしていた。

「もしかして俺たちがいない時に何かしてた?」

「……そういや俺が抜ける時にルルアが変な笑い方して『もうちょっとだけ残る』って言ってたな。本当にすぐに戻って来たから何かしたとは思わなかったけど……」

 レトナがそう言ってカズと共にルルアを見ると彼女は首を傾げる。

「別にそこまで酷いことはしてないわよ?ちょっと胸を揉ませてもらっただけだし」

「十分よ!」

 あっけらかんと答えるルルアにヴェルネが彼女の頭を軽く叩いてツッコミを入れた。

「だって気になるじゃない!あれだけヴェルネお姉様に似た人がどこまで似てるのかって!」

「普通ならないわよ!……って、ちょっと待ちなさい。なんか比べようとしてるけどあんた、あたしの胸のサイズとか知らないわよね……?」

 ハッと気付いた彼女の問いにルルアは意味深な笑みを浮かべる。

「たしかに細かい数値は知らないけど……ま、いつも一緒に寝てるわけだし、ね?」

 その返答にヴェルネはしばらく考えた後にその意味を理解し、顔を真っ赤にして自分の胸を隠す。

「ああああ、あんた一体何を――」

「ちなみにレトナのは毎晩揉んでるからサイズの把握はバッチリ!」

「起きてる時にしてくるから中々眠れなくなって困るんだよな……」

 騒ぐ女性陣を見ていたカズはふと空を見上げて一息吐くのだった。
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