359 / 385
泣かせちゃった
しおりを挟む
魔王の少女が口から血を垂れ流しながら疑問を口にした。
「すぐに来れないように遠くまで飛ばした。なのになぜもうここにいる?」
「悪いな、俺らはある程度の中継地点に戻って来れるんだよ」
一度行った町に戻れる「ファストトラベル」のことを匂わせつつ不敵に笑うカズ。
再び少女がカズをどこかへ飛ばそうとしたのか手を振る動作を取るが、その前にカズが距離を瞬時に詰めて彼女の腕を掴む。
「二度目はさせねえよ」
そう言って容赦なく彼女の顔面も鷲掴み、先程ルルアにしたように彼女の後頭部を地面へと勢いよく叩き付ける。その後ろにはピコンと機械音と共に321という数値が出る。
「……毎回思うけどこれ、かなり気が抜けるな」
ゲームの使用上仕方ないとはいえ、気合の入れた攻撃に取って付けたかのような機械音と「らしい」数字の表記にカズのやる気は目に見えて下がっていた。
するとカズが今しがた掴んでいた少女の姿が一瞬で消えて彼の横に出現、仕返しと言わんばかりに顔を掴みに行く。
しかしカズは驚いた表情をしつつもその動きに反応し、腕を振り払い再び顔面を鷲掴み持ち上げる。
「……不意を突いたつもりなのに」
「おう、驚いた」
「嘘だ。驚いた人間がこんな早く反応できるはずがない。まるで私の動きを知っていたみたいな動きだ」
「そこら辺の人間とは鍛え方が違うのだよ」
顔を捕まれ宙に浮かされた少女と当たり前のように会話を広げるカズの姿にヴェルネたちやパラミシアは奇怪な表情を浮かべていた。
その後も少女が何かしようと腕を上げようとすれば叩き落とされ、瞬間移動で消えてもすぐにまた顔を鷲掴むなどループをしつこく繰り返し、それが百を超えたか超えないか辺りで少女は根負けして落胆の表情と共にその場で座り込んでしまうのだった。
「なんだ、この人間……?」
ボソリと呟く少女。
そして今まで気丈とも言えた無表情が崩れ、ついには外見相応の泣き顔になってしまい……
「魔王様⁉」
それを始終見ていたパラミシアが少女に駆け寄り、キッとカズを睨み付ける。
「貴様!こんな愛らしいお方にこのような仕打ちをして良心が痛まないのか⁉」
「痛まないね。仲間を守るためならなんだってやってやる。たとえソイツが子供の様にみっともなく泣き叫んだとしても俺は容赦なくぶちのめせる」
感情に付け込もうとしたらしいパラミシアの質問にカズが威圧を込めて血も涙もない返答をすると彼女の口から小さく「ヒュッ」と一瞬吸い込む音と共に青ざめた顔をする。
……と、そんな会話をしていると彼女たちの姿が突如として消える。
「……ま、相手をどこかへ飛ばせるなら自分たちもテレポートできるわな」
相手が突然消えた理由をなんとなく察して軽く溜め息を吐くカズ。
「結局あんたは何をされたの?」
「テレポートやワープの類だろうよ。俺を殺すためじゃなくて単純に時間稼ぎをしようとしたんだな。おかげで最初はまんまと引っかかっちまったわけだが」
カズはそう言って「俺もまだまだだな」と付け加えて背伸びをする。
ふとそんな彼にヴェルネが訝しげな表情で近付く。
「あんたがそういうのに引っかかるって珍しいわね」
「害意を感じなかった上に魔法で何かされるって感覚に慣れてなかったからだろうな」
もっと言えば「ここはゲーム内」という考えが前提にあるせいである程度の技を受けてしまっても大丈夫だろうと考えてしまっていたところがあったカズはそこも直す悪癖だと反省する。
「あ~あ、あのヴェルネお姉様似の人逃がしちゃったね。もうちょっと色々弄ってあげたかったんだけどな~♪」
残念という割には表情はほのかに赤く、舌なめずりをしていた。
「もしかして俺たちがいない時に何かしてた?」
「……そういや俺が抜ける時にルルアが変な笑い方して『もうちょっとだけ残る』って言ってたな。本当にすぐに戻って来たから何かしたとは思わなかったけど……」
レトナがそう言ってカズと共にルルアを見ると彼女は首を傾げる。
「別にそこまで酷いことはしてないわよ?ちょっと胸を揉ませてもらっただけだし」
「十分よ!」
あっけらかんと答えるルルアにヴェルネが彼女の頭を軽く叩いてツッコミを入れた。
「だって気になるじゃない!あれだけヴェルネお姉様に似た人がどこまで似てるのかって!」
「普通ならないわよ!……って、ちょっと待ちなさい。なんか比べようとしてるけどあんた、あたしの胸のサイズとか知らないわよね……?」
ハッと気付いた彼女の問いにルルアは意味深な笑みを浮かべる。
「たしかに細かい数値は知らないけど……ま、いつも一緒に寝てるわけだし、ね?」
その返答にヴェルネはしばらく考えた後にその意味を理解し、顔を真っ赤にして自分の胸を隠す。
「ああああ、あんた一体何を――」
「ちなみにレトナのは毎晩揉んでるからサイズの把握はバッチリ!」
「起きてる時にしてくるから中々眠れなくなって困るんだよな……」
騒ぐ女性陣を見ていたカズはふと空を見上げて一息吐くのだった。
「すぐに来れないように遠くまで飛ばした。なのになぜもうここにいる?」
「悪いな、俺らはある程度の中継地点に戻って来れるんだよ」
一度行った町に戻れる「ファストトラベル」のことを匂わせつつ不敵に笑うカズ。
再び少女がカズをどこかへ飛ばそうとしたのか手を振る動作を取るが、その前にカズが距離を瞬時に詰めて彼女の腕を掴む。
「二度目はさせねえよ」
そう言って容赦なく彼女の顔面も鷲掴み、先程ルルアにしたように彼女の後頭部を地面へと勢いよく叩き付ける。その後ろにはピコンと機械音と共に321という数値が出る。
「……毎回思うけどこれ、かなり気が抜けるな」
ゲームの使用上仕方ないとはいえ、気合の入れた攻撃に取って付けたかのような機械音と「らしい」数字の表記にカズのやる気は目に見えて下がっていた。
するとカズが今しがた掴んでいた少女の姿が一瞬で消えて彼の横に出現、仕返しと言わんばかりに顔を掴みに行く。
しかしカズは驚いた表情をしつつもその動きに反応し、腕を振り払い再び顔面を鷲掴み持ち上げる。
「……不意を突いたつもりなのに」
「おう、驚いた」
「嘘だ。驚いた人間がこんな早く反応できるはずがない。まるで私の動きを知っていたみたいな動きだ」
「そこら辺の人間とは鍛え方が違うのだよ」
顔を捕まれ宙に浮かされた少女と当たり前のように会話を広げるカズの姿にヴェルネたちやパラミシアは奇怪な表情を浮かべていた。
その後も少女が何かしようと腕を上げようとすれば叩き落とされ、瞬間移動で消えてもすぐにまた顔を鷲掴むなどループをしつこく繰り返し、それが百を超えたか超えないか辺りで少女は根負けして落胆の表情と共にその場で座り込んでしまうのだった。
「なんだ、この人間……?」
ボソリと呟く少女。
そして今まで気丈とも言えた無表情が崩れ、ついには外見相応の泣き顔になってしまい……
「魔王様⁉」
それを始終見ていたパラミシアが少女に駆け寄り、キッとカズを睨み付ける。
「貴様!こんな愛らしいお方にこのような仕打ちをして良心が痛まないのか⁉」
「痛まないね。仲間を守るためならなんだってやってやる。たとえソイツが子供の様にみっともなく泣き叫んだとしても俺は容赦なくぶちのめせる」
感情に付け込もうとしたらしいパラミシアの質問にカズが威圧を込めて血も涙もない返答をすると彼女の口から小さく「ヒュッ」と一瞬吸い込む音と共に青ざめた顔をする。
……と、そんな会話をしていると彼女たちの姿が突如として消える。
「……ま、相手をどこかへ飛ばせるなら自分たちもテレポートできるわな」
相手が突然消えた理由をなんとなく察して軽く溜め息を吐くカズ。
「結局あんたは何をされたの?」
「テレポートやワープの類だろうよ。俺を殺すためじゃなくて単純に時間稼ぎをしようとしたんだな。おかげで最初はまんまと引っかかっちまったわけだが」
カズはそう言って「俺もまだまだだな」と付け加えて背伸びをする。
ふとそんな彼にヴェルネが訝しげな表情で近付く。
「あんたがそういうのに引っかかるって珍しいわね」
「害意を感じなかった上に魔法で何かされるって感覚に慣れてなかったからだろうな」
もっと言えば「ここはゲーム内」という考えが前提にあるせいである程度の技を受けてしまっても大丈夫だろうと考えてしまっていたところがあったカズはそこも直す悪癖だと反省する。
「あ~あ、あのヴェルネお姉様似の人逃がしちゃったね。もうちょっと色々弄ってあげたかったんだけどな~♪」
残念という割には表情はほのかに赤く、舌なめずりをしていた。
「もしかして俺たちがいない時に何かしてた?」
「……そういや俺が抜ける時にルルアが変な笑い方して『もうちょっとだけ残る』って言ってたな。本当にすぐに戻って来たから何かしたとは思わなかったけど……」
レトナがそう言ってカズと共にルルアを見ると彼女は首を傾げる。
「別にそこまで酷いことはしてないわよ?ちょっと胸を揉ませてもらっただけだし」
「十分よ!」
あっけらかんと答えるルルアにヴェルネが彼女の頭を軽く叩いてツッコミを入れた。
「だって気になるじゃない!あれだけヴェルネお姉様に似た人がどこまで似てるのかって!」
「普通ならないわよ!……って、ちょっと待ちなさい。なんか比べようとしてるけどあんた、あたしの胸のサイズとか知らないわよね……?」
ハッと気付いた彼女の問いにルルアは意味深な笑みを浮かべる。
「たしかに細かい数値は知らないけど……ま、いつも一緒に寝てるわけだし、ね?」
その返答にヴェルネはしばらく考えた後にその意味を理解し、顔を真っ赤にして自分の胸を隠す。
「ああああ、あんた一体何を――」
「ちなみにレトナのは毎晩揉んでるからサイズの把握はバッチリ!」
「起きてる時にしてくるから中々眠れなくなって困るんだよな……」
騒ぐ女性陣を見ていたカズはふと空を見上げて一息吐くのだった。
18
あなたにおすすめの小説
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム)
目を覚ますとそこは石畳の町だった
異世界の中世ヨーロッパの街並み
僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた
案の定この世界はステータスのある世界
村スキルというもの以外は平凡なステータス
終わったと思ったら村スキルがスタートする
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。
家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、
優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、
俺は必死に、置いていかれないようについていった。
自分には何もできないと思っていた。
それでも、少しでも役に立ちたくて、
誰にも迷惑をかけないようにと、
夜な夜な一人でダンジョンに潜り、力を磨いた。
仲間を護れるなら…
そう思って使った支援魔法や探知魔法も、
気づかれないよう、そっと重ねていただけだった。
だけどある日、告げられた。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、優しさからの判断だった。
俺も分かっていた。だから、何も言えなかった。
こうして俺は、静かにパーティを離れた。
これからは一人で、穏やかに生きていこう。
そう思っていたし、そのはずだった。
…だけど、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、
また少し、世界が騒がしくなってきたようです。
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる