最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

文字の大きさ
201 / 303
武人祭

保護

しおりを挟む


 修行も区切りの良いところだったので、ミランダの要望通りこの魔空間に住む予定である奴らに会わせる事となった。
 住まわせる場所は前に作った露天風呂の近くにしており、すでに家を二軒建ててある。ちなみに建てたのは俺だ。
 今のところ保護しているのは女だけなので、その内の一軒に雑魚寝してもらっている状態となっている。
 そいつらのいるところへ行くと、すぐに俺たちに気付いた。

 「ようこそ、アヤト様。今回はどういったご要件でしょう?」

 最初に近付いて出迎えてくれたこの人は、保護する事になった奴らの代表となっているリカという女だ。
 その笑顔を見たミランダがホッとする。不満や不自由が見受けられなかったからだろう。
 そんなミランダにリカが視線を向ける。

 「・・・・・・どこかでお会いしましたか?」
 「いや、初めてだ。もしかしたらあなたは私を見た事あるかもしれないが・・・・・・先に挨拶を済まさせてもらおう。私はミランダ。ミランダ・ワークラフトだ」
 「・・・・・・ああっ! あなたがあの!?」

 リカはようやく思い出したようで、スッキリした顔をする。
 代わりにミランダは僅かに頬を紅潮させて掻いていた。

 「ハハハ、なんだか恥ずかしいな・・・・・・」
 「そうなのか? 言われ慣れてると思ってたが」

 何気なくそう言うと頬を紅潮させたままのミランダがこっちを向く。やめろよ? 今のは責めてるわけじゃないからな?
 初対面の奴がいるこの場ではっちゃけるなよ?

 「前までは難なく受け入れたのだろうけれども、アヤト殿に負けてから私のような者が「あの」とか「有名な」と言われたところで素直に喜べなくなっているのだ」

 俺の思いは杞憂らしく、普通の会話内容だった・・・・・・と安心していると。

 「しかしそんな賛辞よりも『この恥さらしがっ!』などと罵倒してくれた方がむしろ・・・・・・」
 「よし、こいつらの様子も見た事だし、お前の話はこれで終わりだな。さっさと帰れ」

 ミランダの下に亀裂を作り、屋敷へ落とそうとした。しかし亀裂を小さめに作ってしまったがためにミランダは腕を引っ掛けて耐えてしまっていた。

 「待ってくれ! もう少し話を・・・・・・!」

 這いずり出て来ようとするミランダの顔面を踏み付ける。

 「チッ、ゴキブリみたいにしつこいな・・・・・・」
 「ああ、こんな状態で私を喜ばせてどうするつもりだ!?」

 喜ばせるつもりなどないのにこうである。
 するとミランダの亀裂から出ている上半身が大きく跳ねる。

 「んぁっ!? な、なんだ? 足が・・・・・・くひっ!? や、やめっ・・・・・・」

 何かが向こうにいるらしく、その後もミランダはビクビクと痙攣し、涎を垂らした艶めかしい表情になっている。これはメアたちに見せちゃいけないような気がする。特に年頃なカイト辺りには。
 後ろを見るとミーナとメアは少し頬を染めて何が起きてるか気になってるだけの状態だが、フィーナとカイトとレナが顔を真っ赤にして俯いていた。もう遅かったか。
 ミランダの状態が蕩けた顔をしているせいで完全にR指定である。
 すると亀裂の向こうから僅かに「キューン」と聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。ああ、ベルか。
 大方、空間を繋げた先にベルがいて、目の前に出てきたミランダの足を咥えて引っ張っているのだろう。
 そこである事を思い付き、未だに喘ぎながら頑張って耐えているミランダの腕に手を添える。

 「アヤト、殿・・・・・・?」

 不安そうに、しかしやはり期待の眼差しを宿した目を俺に向けるミランダ。

 「丁度良いからそいつの相手をしててくれないか?」

 添えた手に力を入れて徐々に引き剥がしていく。

 「待て、本当に待てっ!? 私にこの淫獣の相手をしろというのか!? 確かに全く嫌というわけではないが、慰め者にされるのは・・・・・・」

 などと卑猥且つ意味不明な言動をしているミランダの腕にさらにミーナの手が加わる。

 「ベルを淫獣呼ばわり・・・・・・許すまじ」
 「ああ、今のはちょっと口が滑っただけーー」

 ミランダの言い訳にならない言い訳の途中、俺とミーナが息を合わせる。

 「「そーい」」

 完全に引き剥がされたミランダは嬉しそうな悲鳴を上げながら亀裂の中へと消えていった。
 これ以上ミランダの醜態を聞きたくないので、すぐに亀裂を閉じ、ノワールへと念話を通す。

 『ノワール、今少しいいか?』
 『アヤト様からとは珍しい。何かございましたか?』
 『ベルって今どこにいるかわかるか?』

 俺の問いに向こうから「ふむ・・・・・・」と少し考え込むような声が聞こえた。

 『たった今、ミランダ様を咥えて喜びながら自室へと駆け込んで行きましたが・・・・・・』

 心の中で密かに「ああ・・・・・・」と呟きつつ、ノワールへ指示を出す。

 『その部屋に出入りできないようロックをかけといてくれ。できれば防音も』
 『わかりました。ではあの部屋には空間魔術で包み、扉と窓の固定化と音の消音を行います』
 『ああ、よろしく頼む』

 それだけ言って念話を切る。すると目の前にリカが不安そうな表情で俺を見ていた。

 「あの・・・・・・今の方はミランダ様、ですよね?」

 恐る恐ると遠慮気味に聞いてくる。

 「ああ。思ってたイメージと違うか?」
 「あ、ええ、まぁ・・・・・・流石に」

 「だよなー」と俺も同意する。ミランダの噂って「凛々しい」とか「格好良い」なはずなのに・・・・・・あんなになっちゃってるんだもんな。

 「あ、そうそう、そういえば用事だったよな。・・・・・・あれ、確か用事ってミランダにお前らの様子を見せるってだけで、他に用事は・・・・・・ねえな」
 「ないですか・・・・・・あ、そうだ!」

 何か良いアイディアを思い付いたようにリカは手を合わせる。

 「お背中流しましょうか?」
 「断る」

 その誘いを一瞬で一蹴した。
 何故この流れでその考えが出てくるのか教えてほしい。

 「そうですか? 前の村にいたお爺さんたちは喜んでくださいましたが・・・・・・」
 「俺、お爺さんじゃないから。若い男だから、俺」
 「そんじゃあ、尚更嬉しいんじゃないッスか?」

 すると次は軽い感じの女が割って入って来た。

 「もう、スイ! アヤト様に失礼でしょ?」
 「えー? でも前に兄さんはそういうの気にしなくていいって言ってたじゃん? ねぇ、兄さん?」

 そう言ってスイと呼ばれた女が俺に同意を求めてくる。
 そして年齢的には俺の方が年下なのに「兄さん」と呼んでくるのが引っかかる。
 まぁ、言い方的にノクトのような兄弟的な意味合いじゃなく、おばさんが若い男をそう呼ぶような感覚に近い。どうせ背が自分より高いからとかそういう理由だろう。

 「まあな。『様』なんてのもあまり好きじゃないしな。ノワールやココアからのは諦めているが、そうやって崇められるのはちょっとな・・・・・・」
 「で、ですが・・・・・・聞いた話ですとこの世界を作ったのは・・・・・・」

 おい誰だ、自慢話みたいに俺の事話した奴は? ・・・・・・いや、そういや一人いたな。

 「おっ、アヤトじゃねえか!」

 俺の名を呼ぶ声が聞こえる。その声がした方を見ると青肌をした金色の長髪の魔族、ナルシャの姿があった。

 「てめえか!」
 「何がっ!?」

 この魔空間でこいつらと一緒に住まわせているナルシャ。ここがどういう場所か把握していて口が軽そうな奴といったらこいつしか該当しない。
 そして聞き出せば案の定この世界を作ったのが俺だと話したらしい。しかもまるで自分の事のように自信満々に、との事。
 とりあえずナルシャにはお仕置きでデコピンを打ち込み、神格化されても困るから彼女たちにはなるべく「様」以外で呼ぶようにと釘を刺しておいた。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。