最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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夏休み

鍛治

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 「「・・・・・・」」


 薄暗い石で作られた部屋の中、カンッカンッと鉄を叩く音が鳴り響き火花が散り、瞬間ほのかに部屋が明るくなる。
 部屋の中央には火炉と金床などがあり、そこでアヤトは作業をしていた。
 周囲にはメアとミーナ、カイトにレナも真剣な表情で正座をし、アヤトを見ていた。
 正確にはアヤトのしている作業を。
 熱して形の変わったソレを専用のハサミで掴み、金床に置いて叩く。
 そして水に浸けて温度を下げ、火に入れて再び金床で槌で叩く。
 アヤトの頭にはなるべく汗が垂れ落ちないようタオルを頭に巻かれているが、吸収され切れずに垂れる。
 燃え上がる火の中に入れ、叩き、火に入れ、叩き、火に入れて叩く。
 そんな同じような作業を神妙な顔付きでひたすら続けるアヤト。
 本来二人以上必要な作業である切れ目のところは足の指で摘むと器用に押さえ付けて槌で打ち付ける。
 メアたちは興味がなければつまらないであろう繰り返す地味なその作業を欠伸一つせずに見つめている。
 するとアヤトが一息吐くとメアたちに声を掛けた。


 「・・・もう二時間か三時間くらい経ってると思うから聞くが、別に何がなんでも見てなくていいからな?辛いとか眠いんなら馬車に戻すぞ」

 「俺は平気です」


 カイトの言葉にメアたちも頷く。


 「・・・そうか」


 アヤトは短くそう答えると作業に戻った。
 すると流石に暑くなったのか、上をはだけさせて上裸になるアヤト。


 「「ッ!?」」


 女性三人が無数の傷が付けられたアヤトのその姿に目を見開き息を飲む。
 唯一ソレを知っていたカイトだけが動揺せずに見守っていた。
 メアたちもまた、その状態を聞き出せるような雰囲気ではない事を悟り沈黙を続ける。
 打ち付ける作業がまた始まる。
 鉄を打つような音とパチパチと火から出る音だけが部屋の中に反響する。
 最初はそこら辺に転がっているような歪な形をしていたソレは、長い時間を掛けて槌を打ち付け、段々と形状が定まった形へと変化していく。
 細く、薄く、下手をすれば折れてしまいそうな刃の形に。
 そしてソレは同時にメアが使用していた「刀」の形に酷似していた。
 しかし刀と呼ぶには不格好な状態で。


 「・・・今日はここまでだ」


 そう言って出来上がった物を置いて大きく息を吐くアヤト。
 すると他の者たちも同じように息を吐いて気を緩めていた。


 「・・・なんでお前らまで疲れたみたいになってんだよ?」

 「だってよぉ・・・アヤトが切羽詰まったような感じでやるからこっちまで緊張しちまうんだよ」

 「ですよね・・・師匠って物作ってる時ってあんな顔をしてるんですね」

 「何見てんだよ。俺の作業見てたんじゃないのかよ・・・」

 「俺はちゃんと見てたぜ!」


 フンスッと鼻を鳴らして胸を張るメア。


 「ああそうだな。いくつかの視線の中に完全に俺をガン見してるのもあったもんな」


 アヤトがジト目で見るとメアは「ナンノコトダカナー」と呟いて顔を逸らした。


 「・・・ふぅ、まあいい。カイト、そこにあるタオル投げてくれ」

 「あ、はい」


 頭に巻いた物とは別のタオルをカイトから受け取り体の汗を拭く。
 その姿を頬を染めてジッと見るメアとミーナ。
 アヤトは熱い視線を感じて眉をひそめる。


 「あんま見せられるもんじゃないんだが・・・凄いだろ?」

 「ああ、凄い筋肉だな・・・」

 「・・・ん?あり、がとう?・・・いや、聞いたのは傷の方なんだけどな」

 「・・・え?あ、ああ!傷な!傷・・・どうしたんだよその傷!?」


 正直、ツッコまれるのが遅すぎて俺の方がびっくりした。

 まさかこんなに目立つ傷より肉体の方を見ていたとは。
 ・・・なんか恥ずかしいんですけど。

 ササッと体をタオルで拭いて服を着る。
 大量の汗を掻いたから早く風呂に入りたい。

 ・・・そういえば、俺たちはこっそり魔空間の露天風呂入ってるけどクリララはどうしてるんだ・・・?

 それを聞こうと馬車を停めたキャンプ地の近くの森に転移すると、クリララたちがいるであろう場所が少し騒がしくなっていた。
 近付いて見てみるとそこで数種類混じった大量の魔物に襲われていた。
 すでにいくらか時間が経過していたようで、魔物の死体が転がっていた。


 「アーク、そっちに沢山魔物行くからねー!」

 「なんでだよ・・・って本当に来やがった!?なんで!?」

 「私が「ヘイトポイント」の対象を貴方にしたからですよぉ」

 「おい、ふざけんなっ!」


 あの三人は相変わらず緊張感のない戦いをしているようだった。
 その中にランカが加わる。


 「あ、そのまま引き付けてて下さい。魔術でまとめて吹っ飛ばしますので!!」

 「待て、ちょっと待て!その「まとめて」って俺も含まれてないよな?なぁ!?」

 「烈火の如き炎で千を焼き尽くし、万を葬り、万物全てを虚無へと還元せよ!穿て!エクスプロージョンッ!!」


 ランカが言い終わるとアークの上に巨大な魔法陣が展開され、そこから小さな火の玉が急降下してきた。
 そしてその玉が地面に着地するのと同時にドーム状の爆発が広がる。


 「アァァァァァ!?火がッ!?ヒガァァァァッ!!」


 なりふり構わず走るアーク。
 しかし爆炎の広がりが早く、すでにアークの真後ろまでに迫っていた。
 なのでアークの前方に裂け目を作り、俺たちの横へと転移させた。


 「あっ、あひっ、ひぃ・・・あれ?たす、たすかっ・・・うぇっ・・・」


 膝に手を突いて辺りの安全を確認しながら切れた息を整えようとして嗚咽する。
 仲間に囮に使われた挙句頭のおかしい中二病患者の魔術で巻き添えを食らいそうになったとか・・・ただ相手がアークだからなのか、別に同情しなくてもいいかな?なんていう気分になる。
 改めて見るとランカの魔術でほとんどの魔物が消え、パラパラと散らばってるのみとなった。


 「ランカさん凄えだよ!オラも頑張るだ!!」


 そう言ったクリララは襲って来た狼の魔物をスパーンッ!という音を立てて殴り飛ばしていた。
 狼だけではない、自分の体よりも大きな猪や蛇も難無く飛んでいく。
 なんという怪力系女子。
 そして他はというと、ヘレナの周囲には魔物が一切近付こうとしておらず、フィーナとシャードは近くでゆったりと座っていた。
 魔物はヘレナが竜だと本能で感じ取っているのだろうか?ビクビクとして近付くどころか後退して行っている。


 「・・・楽だな」

 「そうね、楽で助かるわー」

 「・・・告。ヘレナが魔物避けに使われてるようで少々不快です」

 「実際魔物に避けられてるんだからしょうがないじゃない」

 「一応ここにの液体薬があるが・・・」

 「余計な事はしないでよ!?」


 魔物の軍勢に襲われてるとは思えない、なんとも和やかな雰囲気を出していた。


 「クリララ、コレってどういう事だ?」


 クリララに近付きながら聞く。
 途中カイトたち共々襲って来た魔物を殴り飛ばす。
 間に守ってもらうようにアークがブルブルと肩を震わせて使い物にならなくなっているのは気にしないでおく。
 むしろこれで女性不信にでもなって落ち着いてくれればいいんだが。


 「いやー、オラもこんな事初めてでびっくりししてるだよ!魔物の一匹二匹ならよくある話だが、こんな異常な量・・・しかも複数種類が混じった魔物が襲って来るなんて聞いた事もねえでなぁ・・・」


 しみじみと話しながら狼の魔物の尻尾を掴んでブンブン振り回し、勢いに耐えられなかった魔物がキャインキャインと鳴いていた。・・・いや、泣いてる?
 俺が言うのもなんだけど、やめたげて!と叫びたくなる光景だった。


 「あっ、逃げてくだ」


 自分たちの同族をほとんど倒されたのを見て怖気付いたのか、クリララの言う通り魔物は森の奥へと消えて行った。


 「まぁ、これだけやられたら逃げたくなるわな」

 「臆病な腰抜けどもめ!我らが戦力を眼前に尻尾を巻いて逃げ出しおったわ!!フッハハハハハハゲホッケホッ・・・!」

 「お前はどこの軍曹だ」


 調子に乗って咳き込んだランカの頭をペシンと軽く叩く。
 辺りの魔物の大量の残骸を集めて邪魔にならない所に寄せ、飯の準備を始めた。
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