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諦めようとした話。
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同じだ。楓がいなくなってからずっと考えてた。僕は、楓は、どうすればよかったんだろうって。お互いがお互いをこんなに愛していても、離れてしまった。
「分からない…。どうすればよかったのか。
僕にとって、楓を傷つけた人たちから距離を置くことはどうってことないさ。楓さえいればいい、そう思っているから。でも君は優しいから、そんなことは望まないのだろう。
僕たちの間に子供ができないこともいいんだ。楓が男でも、女でも僕は愛したと思うけれど、今僕が大切にしているのは男の楓なんだから。
君の不安を取り除くには、僕じゃ力不足かもしれない。
ただ、僕が言えることは、どんなことがあっても楓を愛しているということだけなんだ。
楓、僕のそばにいて欲しい。楓の行動が、僕の幸せのためだと自惚れていいのなら、君がそばにいることが僕の幸せなんだ。」
「伊織、ありがとう。伊織が言ってくれることは本当に嬉しい。でも、見て」
楓が両手を伸ばしてくる。その両手は細かく震えていた。
「怖いんだ。今ある幸せが壊れるんじゃないかと怯えるのが。
僕たちは前に進めない。恋人より先がない。いつだってあやふやな関係のまま行ったりきたりするしかないんだ。伊織の温かさに包まれて、僕は本当に幸せだった。でも、ふと我に帰る時がある。この幸せがなくなったらって。
これ以上の幸せを知ったら、それがなくなったときに生きていけないって思った。」
そう言って楓は力無く笑った。
「伊織のためなんて言ったって、結局僕は自分のことばかりだ。自分勝手に逃げただけなんだよ。」
幻滅しただろ、なんて。
そんなの…。そんなの、
「自分勝手で何が悪い。僕だって楓と一緒にいたいがために君の気持ちも考えずに探し続けたんだ。」
楓の前に跪いて、両手を強く握り込む。
「楓、不安になったっていい。僕が頑張って君の不安を取り除くよ。それでも不安に押しつぶされそうになったら、また逃げたっていい。
でもね、これだけは覚えていて。君がどこに行ったって、何年かかっても楓を見つけるよ。それで愛してるって伝える。」
楓の瞳を覗き込んだ。
「楓、結婚してくれ。恋人じゃなくて、家族になろう。」
一年以上前から用意していたものを鞄から取り出した。楓が大きく目を見開く。びっくりしたのか涙が止まってしまっている。ケースから指輪を出して、楓の左手の薬指に嵌めた。
「たしかに僕らは正式には結婚できない。でもね、だからこそ僕たちのあり方は僕たち次第だと思うんだ。僕たちで名前をつけていいんだよ。
僕は君と家族になりたい。一生楓のそばにいたい。」
楓の大きな目が潤んだかと思うと、またボロボロと涙が溢れでた。
「不安になったら、この指輪をみて。楓への想いの証だ。いつだって楓を愛してる。」
それを聞いて、楓はとうとう声を上げて泣き始めてしまった。僕は楓のことを強く抱きしめた。僕の思いが伝わりますようにって強く。
水平線の向こう、太陽はもう半分も見えない。あと少ししたら陽が沈む。楓の左手をとって立ち上がる。
「楓、もう暗くなるよ。帰ろ。」
「ん。」
問題が解決したわけじゃない。これから僕たち2人がどうなっていくのかも分からない。それでも今は穏やかな気持ちだ。それはきっときみが隣にいてくれるから。この手はもう離さない。
「分からない…。どうすればよかったのか。
僕にとって、楓を傷つけた人たちから距離を置くことはどうってことないさ。楓さえいればいい、そう思っているから。でも君は優しいから、そんなことは望まないのだろう。
僕たちの間に子供ができないこともいいんだ。楓が男でも、女でも僕は愛したと思うけれど、今僕が大切にしているのは男の楓なんだから。
君の不安を取り除くには、僕じゃ力不足かもしれない。
ただ、僕が言えることは、どんなことがあっても楓を愛しているということだけなんだ。
楓、僕のそばにいて欲しい。楓の行動が、僕の幸せのためだと自惚れていいのなら、君がそばにいることが僕の幸せなんだ。」
「伊織、ありがとう。伊織が言ってくれることは本当に嬉しい。でも、見て」
楓が両手を伸ばしてくる。その両手は細かく震えていた。
「怖いんだ。今ある幸せが壊れるんじゃないかと怯えるのが。
僕たちは前に進めない。恋人より先がない。いつだってあやふやな関係のまま行ったりきたりするしかないんだ。伊織の温かさに包まれて、僕は本当に幸せだった。でも、ふと我に帰る時がある。この幸せがなくなったらって。
これ以上の幸せを知ったら、それがなくなったときに生きていけないって思った。」
そう言って楓は力無く笑った。
「伊織のためなんて言ったって、結局僕は自分のことばかりだ。自分勝手に逃げただけなんだよ。」
幻滅しただろ、なんて。
そんなの…。そんなの、
「自分勝手で何が悪い。僕だって楓と一緒にいたいがために君の気持ちも考えずに探し続けたんだ。」
楓の前に跪いて、両手を強く握り込む。
「楓、不安になったっていい。僕が頑張って君の不安を取り除くよ。それでも不安に押しつぶされそうになったら、また逃げたっていい。
でもね、これだけは覚えていて。君がどこに行ったって、何年かかっても楓を見つけるよ。それで愛してるって伝える。」
楓の瞳を覗き込んだ。
「楓、結婚してくれ。恋人じゃなくて、家族になろう。」
一年以上前から用意していたものを鞄から取り出した。楓が大きく目を見開く。びっくりしたのか涙が止まってしまっている。ケースから指輪を出して、楓の左手の薬指に嵌めた。
「たしかに僕らは正式には結婚できない。でもね、だからこそ僕たちのあり方は僕たち次第だと思うんだ。僕たちで名前をつけていいんだよ。
僕は君と家族になりたい。一生楓のそばにいたい。」
楓の大きな目が潤んだかと思うと、またボロボロと涙が溢れでた。
「不安になったら、この指輪をみて。楓への想いの証だ。いつだって楓を愛してる。」
それを聞いて、楓はとうとう声を上げて泣き始めてしまった。僕は楓のことを強く抱きしめた。僕の思いが伝わりますようにって強く。
水平線の向こう、太陽はもう半分も見えない。あと少ししたら陽が沈む。楓の左手をとって立ち上がる。
「楓、もう暗くなるよ。帰ろ。」
「ん。」
問題が解決したわけじゃない。これから僕たち2人がどうなっていくのかも分からない。それでも今は穏やかな気持ちだ。それはきっときみが隣にいてくれるから。この手はもう離さない。
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