2 / 52
2:ジュリアの理想の夫婦像②
しおりを挟む
待ちに待った時がやってきた。
ダニエルと、その両親が到着したのである。
使用人から知らせを受けると、ジュリアはすぐさま部屋を飛び出した。
我を忘れて廊下を走ったが、階段まで来たところでピタリと足を止めた。
「ようこそいらっしゃいました。
娘も、すぐ参りますので、どうぞ奥の部屋でお待ち下さい」
「ありがとうございます。
さあ、ダニエルもご挨拶を」
そんな声が聞こえてきたものだから、慌てて足音を殺して手すりに飛びついた。
そっと階下を覗き込めば、柔らかな金髪を揺らして微笑む青年の姿が見えた。
彼は一歩前に出ると、深々と頭を下げる。
そしてゆっくりと顔を上げながら
「ダニエル・バークスです。
これから、どうぞよろしく……」
と言いかけたのだったが、突然、言葉を切った。
マズイ……!
ジュリアは嫌な予感がして、慌ててしゃがみ込もうとしたが、もう遅かった。
彼女の視線に気づいたらしいダニエルが、じっとこちらを見ていて。
バッチリと目が合ってしまったのである。
手すりの陰に身を潜めながら、ジュリアは心臓がバクバク鳴るのを感じていた。
こんなはずじゃなかったのに!
初めての出会いは、もっと……もっとドラマチックな感じになるだろうと期待していたのに!
ぶつぶつと文句を言っても、もう遅い。
なにより原因は自分なのが分かっているだけに、苛立ちをぶつける相手さえいないのが悔しかった。
彼の視線を辿ったのだろう。
ジュリアの父親が
「ジュリア、いるのかい?
早く降りてきなさい」
と呼ぶのが聞こえて、ジュリアは仕方なく立ち上がると、平静を装って、優雅に階段を降りていった。
こんなところをダニエルに見られたと思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしかったけれど。
なんとか笑顔を貼り付けて、誤魔化す。
チラッと見れば、ダニエルは少しもバカにした様子では無かった。
それがせめてもの救いである。
この時ジュリアは、初めて彼をまともに見た。
特別目立つわけではないが、整った顔立ちをしている。
背はジュリアよりほんの少し高い程度だ。
「ダニエル・バークスです。
どうぞよろしくお願いいたします」
「ジュリア・チェスターですわ。
こちらこそ、よろしくお願いいたします」
幾分緊張しているのだろうか。
ダニエルの表情は固い。
しかし、深い緑の瞳がとても印象的で。
目があった瞬間、ドキリとしてしまった。
私は来年には、この人の妻になるんだわ!
そう考えただけで、胸が躍った。
心なしか、ジュリアを見るダニエルの目も、優しい光に満ちているように思える。
つまりジュリアは、たった数分で、すっかりダニエルを気に入ってしまったのだった。
きっと、お父様とお母様のような仲睦まじい夫婦になって、誰もが羨むおしどり夫婦と呼ばれてみせる!
ジュリアは振り返ると、ダニエルには見えぬように、両親に向かって小さくガッツポーズしてみせた。
すると2人も、安心したように微笑んでくれたのだった。
ダニエルと、その両親が到着したのである。
使用人から知らせを受けると、ジュリアはすぐさま部屋を飛び出した。
我を忘れて廊下を走ったが、階段まで来たところでピタリと足を止めた。
「ようこそいらっしゃいました。
娘も、すぐ参りますので、どうぞ奥の部屋でお待ち下さい」
「ありがとうございます。
さあ、ダニエルもご挨拶を」
そんな声が聞こえてきたものだから、慌てて足音を殺して手すりに飛びついた。
そっと階下を覗き込めば、柔らかな金髪を揺らして微笑む青年の姿が見えた。
彼は一歩前に出ると、深々と頭を下げる。
そしてゆっくりと顔を上げながら
「ダニエル・バークスです。
これから、どうぞよろしく……」
と言いかけたのだったが、突然、言葉を切った。
マズイ……!
ジュリアは嫌な予感がして、慌ててしゃがみ込もうとしたが、もう遅かった。
彼女の視線に気づいたらしいダニエルが、じっとこちらを見ていて。
バッチリと目が合ってしまったのである。
手すりの陰に身を潜めながら、ジュリアは心臓がバクバク鳴るのを感じていた。
こんなはずじゃなかったのに!
初めての出会いは、もっと……もっとドラマチックな感じになるだろうと期待していたのに!
ぶつぶつと文句を言っても、もう遅い。
なにより原因は自分なのが分かっているだけに、苛立ちをぶつける相手さえいないのが悔しかった。
彼の視線を辿ったのだろう。
ジュリアの父親が
「ジュリア、いるのかい?
早く降りてきなさい」
と呼ぶのが聞こえて、ジュリアは仕方なく立ち上がると、平静を装って、優雅に階段を降りていった。
こんなところをダニエルに見られたと思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしかったけれど。
なんとか笑顔を貼り付けて、誤魔化す。
チラッと見れば、ダニエルは少しもバカにした様子では無かった。
それがせめてもの救いである。
この時ジュリアは、初めて彼をまともに見た。
特別目立つわけではないが、整った顔立ちをしている。
背はジュリアよりほんの少し高い程度だ。
「ダニエル・バークスです。
どうぞよろしくお願いいたします」
「ジュリア・チェスターですわ。
こちらこそ、よろしくお願いいたします」
幾分緊張しているのだろうか。
ダニエルの表情は固い。
しかし、深い緑の瞳がとても印象的で。
目があった瞬間、ドキリとしてしまった。
私は来年には、この人の妻になるんだわ!
そう考えただけで、胸が躍った。
心なしか、ジュリアを見るダニエルの目も、優しい光に満ちているように思える。
つまりジュリアは、たった数分で、すっかりダニエルを気に入ってしまったのだった。
きっと、お父様とお母様のような仲睦まじい夫婦になって、誰もが羨むおしどり夫婦と呼ばれてみせる!
ジュリアは振り返ると、ダニエルには見えぬように、両親に向かって小さくガッツポーズしてみせた。
すると2人も、安心したように微笑んでくれたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
私を捨てて後悔したようですけど、もうあなたと関わりません
天宮有
恋愛
「クノレラの方が好きだから、俺との婚約を破棄して欲しい」
伯爵令嬢の私キャシーは、婚約者ラウド王子の発言が信じられなかった。
一目惚れしたと言われて私は強引に婚約が決まり、その後ラウド王子は男爵令嬢クノレラを好きになったようだ。
ラウド王子が嫌になったから、私に関わらないと約束させる。
その後ラウド王子は、私を捨てたことを後悔していた。
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
婚約破棄させたいですか? いやいや、私は愛されていますので、無理ですね。
百谷シカ
恋愛
私はリュシアン伯爵令嬢ヴィクトリヤ・ブリノヴァ。
半年前にエクトル伯爵令息ウスターシュ・マラチエと婚約した。
のだけど、ちょっと問題が……
「まあまあ、ヴィクトリヤ! 黄色のドレスなんて着るの!?」
「おかしいわよね、お母様!」
「黄色なんて駄目よ。ドレスはやっぱり菫色!」
「本当にこんな変わった方が婚約者なんて、ウスターシュもがっかりね!」
という具合に、めんどくさい家族が。
「本当にすまない、ヴィクトリヤ。君に迷惑はかけないように言うよ」
「よく、言い聞かせてね」
私たちは気が合うし、仲もいいんだけど……
「ウスターシュを洗脳したわね! 絶対に結婚はさせないわよ!!」
この婚約、どうなっちゃうの?
お飾りの側妃となりまして
秋津冴
恋愛
舞台は帝国と公国、王国が三竦みをしている西の大陸のど真ん中。
歴史はあるが軍事力がないアート王国。
軍事力はあるが、歴史がない新興のフィラー帝国。
歴史も軍事力も国力もあり、大陸制覇を目論むボッソ公国。
そんな情勢もあって、帝国と王国は手を組むことにした。
テレンスは帝国の第二皇女。
アート王ヴィルスの第二王妃となるために輿入れしてきたものの、互いに愛を感じ始めた矢先。
王は病で死んでしまう。
新しく王弟が新国王となるが、テレンスは家臣に下賜されてしまう。
その相手は、元夫の義理の息子。
現王太子ラベルだった。
しかし、ラベルには心に思う相手がいて‥‥‥。
他の投稿サイトにも、掲載しております。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる