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28:ケインの心変わり①
しおりを挟む「それでダニエル様が、最近は特に優しくして下さるようになったんです!
毎日のように会いに来て下さるようになりましたし、先日などは花束をプレゼントして下さって」
さぞかし嬉しいのだろう。
ニマニマして話すジュリアの横顔を、ケインは相槌をうつことさえ忘れて、ぼんやりと眺めていた。
今日も偶然を装って、公園でジュリアを待ち構えていたケインは、顔を合わせるなり、すかさず隣に並んで歩き始めたのである。
2人で散歩を楽しみながら、ググッと親交を深めようという魂胆だったのだが……
「どんどんダニエル様と仲良くなれて、本当に嬉しいんですの!
幸せすぎて怖いっていうのは、こういうことなのかしら、と思ってしまうくらいですわ」
と、ジュリアがいつになく上機嫌で、ダニエルの惚気を話し続けるものだから、さすがのケインも段々と気が滅入ってきてしまって。
すっかりムスッとして、とにかくよく動く彼女の唇を見るともなしに見ていた所だったのだ。
「確かに、ダニエル様の手が肩に触れた時には、驚いてしまいました。
でも正直に言えば、少しも嫌では無かったんです!
それどころか……ああ!これ以上は恥ずかしくて口には出せませんわ!」
惚気たくて仕方がないところへ、のこのことやってきたケインに話せるのが嬉しいのだろう。
目を輝かせ、笑い声をあげながら、ジュリアは続ける。
きゃあきゃあ言う甲高い声のせいで、さっきから頭が痛い。
幸せそうなジュリアを見ていると、なんだか胸がムカムカとしてきたケインは、つい仏頂面になって呟いてしまった。
「良いんですかねぇ、そんなことで」
「……え?」
途端にジュリアの顔から笑みが消える。
ケインはもったいぶって首を振りながら続けた。
「いくら婚約者だといっても、まだ結婚前です。
それなのに不用意に体に触れてくるなんて、失礼じゃないですか!
あなたのことを大切に考えていない、ということなんじゃないですか?」
「そんなことありませんわ!」
間髪入れずにジュリアが言い返してくる。
「ダニエル様は、とても私のことを大切に思っていて下さってます。
それは私が一番よく分かっています!」
……全く分かってないだろうよ。
と、ケインは思ったが、もちろん口に出すようなことはしない。
その代わりに、哀れみたっぷりの目でジュリアを見つめてやった。
「あなたはダニエルにひどい仕打ちを受けていることに、気がついていないだけなのですよ」
言いながら、すっと足を止める。
それに気がついたジュリアも、一歩先に行ったところで足を止め、振り返った。
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