やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

文字の大きさ
73 / 73

73

しおりを挟む
「そういえば、聞いた?」
「聞いたって、何を?」

イーディスの問いに、ネリーはカップを口に運びながら、のんびりと答えた。

青空の下で、香りの良い紅茶と湯気をたてるスコーンを前に、友人とお喋りを楽しむなんて、こんなに幸せな時間はない。

季節は流れ、もう日が当たっていても肌寒くなってきた為、パラソルは出していない。
雲一つない青空を眺めながら、ネリーは目を閉じて紅茶の香りを楽しんだ。

「アリス様の話よ。
いまだにご両親が、必死に結婚相手を探してるらしいわよ。
でも見つからなくて、困ってるみたい」

ふうん、と気のない返事をするが、イーディスはお構いなしに話を続けた。

「シェイマス様に婚約破棄された上に、マーティ様を弄んだって、すっかり噂になっているんだから、それも当然よね。
自業自得って感じよ」

ネリーは答えなかった。
アリスに気を使っているわけではない。
もうあれから半年が経ち、今はもう遠い過去の出来事のように思えていたからである。

「マーティ様のおうちは、ようやく財政難が解消されそうって聞いたわ。
お父様と一緒に、マーティ様もかなり頑張っていらっしゃるみたいね」
「彼は、良い意味でも悪い意味でも真面目だもの。
きっと上手く立て直せるわよ」

マーティの名前を耳にしても、ネリーは少しも揺らがなかった。
それほど今の彼女は幸せに満ち溢れていて、過去の不安が入り込む隙間など見当たらない状態だったのである。

今なら冷静に、そして客観的に、マーティの事を口に出来た。

「ネリーの家からの慰謝料請求がなかったから、かなり助かったんじゃない?」
「……そうかしら」
「しなかったこと、後悔してない?」
「してないわ。
マーティの家が大変なのは分かっていたし。
それに、あそこまで思いつめるほどアリス様を好きになったのなら、もう私は何も言えなかったもの」
「そう……。
まあネリーがそれで納得してるなら、それでいいんだけど」

イーディスが、まるで独り言のように呟いた時。
遠くにシェイマスの姿を見つけて、ネリーは小さく手を振った。
その視線を辿ったのだろう。
イーディスも顔を上げて、言った。

「あら、シェイマス様がお迎えにいらしたのね。
もうそんな時間!」
「お喋りしてると、あっという間よね」

ネリーが笑って言う間にも、シェイマスが2人の前までやって来ていた。

「こんにちは、イーディス様」

シェイマスはイーディスに軽く頭を下げてから、ネリーに微笑んだ。

「お喋りは楽しんだ?
そろそろ行けるかい?」
「ええ」
「今日はどこへお出かけ?」

と、イーディスが口を挟む。

「ウエディングドレスが出来上がったから、受け取りに行くのよ」
「あら、それは楽しみね!
もう結婚式は来週ですものね」
「ええ」

ネリーが恥ずかしそうに微笑むと、シェイマスが感慨深げに言った。

「ネリーのウエディングドレス姿か……見るのが楽しみだな」
「あら、でも今日はまだ見せられないわよ。
式の前に花婿に見られるのは縁起が悪いっていうし。
当日のお楽しみ!」
「そうか……じゃあ仕方ない」

しゅんとするシェイマスに、クスクス笑うネリー。
そんな2人を笑顔で送り出してから、イーディスは再び椅子に腰かけた。

そして、小さくなっていく2人の背中をうっとりと眺めた。

いつの間にか、そっとシェイマスの手が、ネリーの背中に添えられていた。
それに応えるように、ネリーが身を寄せながら進んでいく。

「なんだか、まるで絵に描いたように素敵な光景ね……」

ポツリと呟きながら、イーディスは、幸せってこういうことなのかしら、とぼんやりと思ったのだった。


おしまい



………………………………………………………


最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
よろしければ、他のお話も読んでみて頂けると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 45

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(45件)

セリ
2022.11.18 セリ
ネタバレ含む
2022.11.18 ゆきな

感想ありがとうございます😊

解除
canon2
2022.11.15 canon2
ネタバレ含む
2022.11.15 ゆきな

感想ありがとうございます😊

解除
セリ
2022.11.13 セリ
ネタバレ含む
2022.11.13 ゆきな

感想ありがとうございます😊

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue
恋愛
 ガルヴァーニ侯爵家の末娘であるアンジェリーナは困った事になっていた。第二王子が一方的に婚約者になれと言ってきたのだ。バカな上に女癖もよろしくない。しかも自分より弱い男に嫁ぐなんて絶対に嫌なアンジェリーナ。第二王子との婚約が正式に決まってしまう前に、自分より強い素敵な人を探すために、色々な人の力を借りて彼女は強い者たちが集まる場所に探しに行くことにしたのだった。

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

【完結】恋を忘れた伯爵は、恋を知らない灰かぶり令嬢を拾う

白雨 音
恋愛
男爵令嬢ロザリーンは、母を失って以降、愛を感じた事が無い。 父は人が変わったかの様に冷たくなり、何の前置きも無く再婚してしまった上に、 再婚相手とその娘たちは底意地が悪く、ロザリーンを召使として扱った。 義姉には縁談の打診が来たが、自分はデビュタントさえして貰えない… 疎外感や孤独に苛まれ、何の希望も見出せずにいた。 義姉の婚約パーティの日、ロザリーンは侍女として同行したが、家族の不興を買い、帰路にて置き去りにされてしまう。 パーティで知り合った少年ミゲルの父に助けられ、男爵家に送ると言われるが、 家族を恐れるロザリーンは、自分を彼の館で雇って欲しいと願い出た___  異世界恋愛:短めの長編(全24話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。