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支配 sideブラムウェル
しおりを挟む王都に来てすぐにノアに出会えたのは奇跡だった。
長く暗く先が見えない今までの日々に、明かりが灯された。渇いて何も感じないと思った心臓がとくとくと早鐘を打つ。
ノアを見つける前、女性に絡まれていたことはもともと眼中になかったのでさらにどうでもよくなった。
性欲がないわけではない。ただ、断ってもしつこくガツガツくる相手に食指が動かない。
そもそもブラムウェルは昔から人に干渉されるのが嫌いだった。
「君たちと寝るつもりはないから帰ってくれ」
「ブラムウェル様。誰か一人に選べなければ私たち三人でもいいんですよ」
はっきりと断っても、その意図を理解しようとしない。
なぜ乗り気でもないのに三人も相手しなければいけないのか。言い寄られれば寄られるほど興覚めする。
「君たちに興味はない」
しかも、今はノアのことで頭がいっぱいでそれ以外は本気でどうでもよかった。
ここで曖昧にすれば今後も同じことがあるだろうと、徹底的にシャットアウトする。
自身の顔立ちが非常に女性に好まれることを理解している。
しばらくこの手の誘いは多いだろうが、態度を一貫していればそのうち収まるだろう。
口を開けば女性のアプローチが増しさらに労力がいることを学び、誘いははっきり断り後は無視と決めている。
さっさとこの場を去ろうと手を振り払おうとした時、視界の先に茶色の髪の男が歩いているのが見えた。
茶色の髪なんてどこにでもいる。
だけど、妙に目が引き視線をどうしても剥がせなかった。
女性たちの声が完全に聞こえなくなり男の歩く音だけが耳に入る。
男が立てる小さな砂利を踏む音さえも拾い上げ、すべての意識が男に向かう。
相手はこちらを認識しているようだが、大して気にかけた様子はない。
どうしても近くで顔が見たい。確認したい。その欲求のまま男を見つめ続け、ようやく視線が合った。
一瞬だったのか、もう少し長かったのかわからない。ぐっと吸い込まれていき一層彼しか見えなくなった。
だけど、その視線が外され通り過ぎていく。
――ノアっ!
魂がずっと求めていた相手だと震え、気づけばブラムウェルは動いていた。
その震えと連動してすべてが歓喜で震えてしまいそうで必死に取り繕う。
急に腕を掴まれたノアはぱちぱちと瞳を瞬かせ、驚きの表情でブラムウェルを見た。
純粋に驚きを乗せた瞳はそれ以外の感情は見ることはできず認識されていないことにへこんだのは一瞬で、生きていて出会えただけでもいいと切り替える。
――これを逃したらダメだ。
出会ったのなら、もう見失わないようにするしかない。
ブラムウェルの知るノアは、困っている人を放っておけない。必要とされ甘えられると突き放せないタイプだ。それを利用する。
「悪いが今夜は彼にする」
出会ってどうしたいと明確にあったわけではない。
ただただ、会えるなら会いたくてどうしようもなかった人。村が魔物の氾濫に襲われそこに住んでいた人々の生存に希望はないと思われていた。
でも、生きているかもと希望を示され、こうして出会えた奇跡に十年以上ぶりに乾いていた気持ちが一気に潤ったようで感情の爆発が止まらない。
じっとしていられない。
生きていた喜びと、いざ対面してこれ以上一瞬たりとも離れたくない気持ちに支配される。
出会ってしまえば最後、もう自分の生活にノアがいないことは考えられなくなった。
すぐに動いて少しでもノアを感じていたいと、この手を拒まないでくれと願いノアを見つめる。
「いいよね?」
その言葉に、ん? とノアは小さく首を傾げ、ブラムウェルにまとわりついている女性に目を向け何かしら納得したように頷いた。
断らないでくれと必死の願いが通じ、緩みそうになる顔を引き締める。
蒸気した頬にうるんだ瞳。
かすかに香る酒の匂いに、相手が酔っていることがわかる。ブラムウェルにとって好都合だった。
断る口実にされたと思っているようだが、そもそもいなくても断っていたしノアだから誘っている。
だが、勘違いしてくれているほうが付いてきてくれるはずだと、退路を断つようにノアに近づいた。
女性を追い払い、とにかく二人きりになりたくてノアとの繋がりを作るのに必死になった。
少しでも興味を示してもらえるよう話しかけ、それにノアが応えてくれるだけで嬉しくて顔が緩む。
なにより、そして昔の記憶のまま何も変わっていないノアが愛しくてもっと近づきたくなった。
ノアが欲しい。
子供の時とは違った欲望が芽生える。
変わることのない、周囲からも明確に示せる関係。そのあり方を大人になった今は知っている。
友情なんて精神的に繋がっているものではなく、離れてしまっても元気でいればなんてそんな生ぬるいものではなく、身も心もどうしてもノアのすべてをものにしたい。
そのためにはと、ブラムウェルはノアの大らかで甘えに弱い性格を存分に刺激し落としにかかった。
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