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責任 sideブラムウェル
しおりを挟むブラムウェルにとって、夢のような再会から奇跡のような一夜を迎えた翌朝。
子どもの頃以来の人の温もりを感じる朝に一気に意識を覚醒させ、隣に眠るノアの姿を見てほっと息をつくと目を細めた。
童顔なノアは目をつぶっていると一層幼く見え、あの頃の記憶と被る。
さらに目を細めたブラムウェルは、その姿をじっと眺めた。
長い睫毛がわずかに揺れる。
目を開けないだろうかと見ていたが、残念ながらその瞳を見ることは今はお預けのようだ。
続いて、目線を下げた。
唇は吸い付きすぎたのか赤く色づきぷっくりとしている。食べてくれと言わんばかりのそれに、見ているだけで食いつきたい衝動にかられる。
顔を寄せようとしたところで、ブラムウェルはぴたりと止めた。
昨夜は酒が入り勢いがあったからで済ませられるが、朝からがっつきすぎると引かれるかもしれない。ここは我慢だ。
その代わりにとさらに視線を下げる。
細い首に華奢なノアの身体のあちこちに、ブラムウェルがつけた情交の痕が散っている。
それらをたどるように眺めると同時に、その時のノアの反応の昨夜のことを思い出す。
心だけなどと綺麗ごとですませられるはずはなく、身体も自分の色に染めることの喜びに、あの頃は知らなかった場所まで知りえる関係に心の震えが止まらない。
言いようのない痺れに似た高揚感が支配し、欲しくてたまらなくなる。
ノアを余すことなく自分のものにしたくて、少しでも自分を刻み付けるために必死になった。
貪って、貪りつくして、欲望を吐き出して、塗りつけて、最後は切に懇願する思いだけが残る。
――二度と手の届かないところに行かないで。
自身の一部がノアの中に入り、受け入れられることに喜びが全身に広がる。あらゆる反応を引き出し、目を見つめながら互いを焼き付けるように訴えた。
これでもかというほど自分のものだと刻み付けてもまだ不安で、快楽の渦に落とし込んでも満たされたと思った瞬間にすぐ乾く。
混ざるのも一瞬で、当然のことながらすぐに別になることが不安で、見ていないところで怪我をしたらと思うともう怖くて、ノアに無断で保護魔法をかけた。
体液が混ざった今なら伝導率も上がり、さらに効率よくかけることができる。
「もう離れない」
ノアを害そうする対象はもちろん、よほどの魔法レベルではないと気づかれない最強の魔法。
眠っている今なら無意識に疎外されることなく、思う通りに術を施せる。
高度な魔法はごっそり魔力を持っていかれたが、ぽわっとノアの全身に光がまとわりつき吸い込まれるように消えた。
成功だ。この部分さえクリアしてしまえば、後はそこまで労力はかからない。
さらにこの魔法を強固なものにするには、一定期間、できれば毎日施すことで成果を発揮する。
だが、そのためには触れる時間が必要だ。
起きたらどうやってノアと一緒にいたいと説得しようかと考えながら、出会えた喜びとこの手にできた温もりを抱き寄せ、ブラムウェルの安堵と疲れにより久しぶりに深い眠りについた。
濃厚な夜を思い出しながら、再びノアの顔を眺める。
ノアがいる。その事実を噛みしめ頬が緩み、ブラムウェルはそっと腕を伸ばして頭を撫でた。
――ああ、ノアだ。
柔らかな髪の感触だけでも気分が高揚する。触れているという事実がどうしようもなく浮かれさせる。
このままだとまた襲いかねず歓喜のあまり取り乱してみっともないところを見せるかもしれないと、一度気持ちを落ち着かせるためにバスルームへ向かった。
疲れと何より浮かれていた。
だから、いつもだったら気づくであろう、ノアが起きていたことも気づけなかった。
バスルームから出て、その姿が見えないことに怒りがこみ上げたがすぐに考え直す。
「ふ~ん。あれだけしても動けるんだ。さすがノア。そっちがその気なら本気だしてもいいよね」
二度と離れないのはブラムウェルの中で決定事項。
本当はゆっくり言葉を重ねてと思っていたけれど、逃げようとするならあらゆる方法で絡めとるしかない。
逃げられてしまったけれどまだ余裕をもって考えられているのは、保護魔法をかけたばかりで自分の魔力を追えばすぐにわかるからだ。
それにギルドで働いていることは聞いていた。
住んでいる場所や過去の話は会ってすぐの男を警戒しているのか教えてもらえなかった。
だが、昨夜は家に帰るところと言っていたので、王都の東部に住んでいることは推測できるしこれまでの情報を繋ぎ合わせると東部ギルドの職員で間違いないだろう。
「追跡魔法でもかけるべきか」
保護魔法は外側と内側の傷を防ぐだけで、実際に殴られたりすると衝撃はある。それに攻撃がなければ発動しないし、例えば自力で出られない場所で衰弱という形になれば効果がない。
それではダメだ。
ノアの安全のために、そして自分の安心のために。
もう二度と失わないために。
何より、この先ノアがいない人生は考えられない。
ノアなしではいられない心と身体にした責任を取ってもらおうと、ブラムウェルはあれこれ思考を巡らせた。
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