ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)

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追跡 sideブラムウェル

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 薄闇が王都を覆う。
 ぱちっと自身の中で魔力が反応を起こし、窓辺に凭れるように立ち外を眺めていたブラムウェルは手をかざした。

 あの時の判断が正しかったと、ブラムウェルはノアにかけていた保護魔法が発動したことを感知し、すぐさま追跡魔法を起動させた。
 何かあればと思ってのことだったが、こんなに早く起動させる日が来るとは思わなかった。

 追跡魔法は念のために保険としてしたことだが、さすがに勝手に魔法を施し起動させ位置を把握したとなれば後でノアに説明と謝罪しなければならないだろう。
 だが、まずはノアの救出と安全確保が先だ。

「今日で契約は終わりです」
「あら、もう行くの?」

 窓辺に立っていたブラムウェルは、サミルド伯爵とその娘であるヨランダに向けて告げた。

「約束は守りました」
「ほんとつれないんだから。まあ、でも、いい男を連れ歩くのは楽しかったわ」
「今後、協力が必要なことがあれば言いなさい」

 ヨランダに続く伯爵の言葉に小さく頷き礼をすると、ブラムウェルはすぐさま伯爵邸を後にした。
 話ながらも起動させていた追跡魔法で感じるノアの位置。歩くスピードではない移動の仕方に、拉致された可能性を考えブラムウェルは舌を打った。

 本当はノアのもとから一時も離れたくなかった。
 できることならずっとそばにいたい。だが、自分たちは冒険者とギルド職員。それぞれ仕事もあるし、築いてきた立場がある。

 今さらそれらがなかったことにはできない以上、今後の生活や立場を強固にするしかない。
 そばにいたいという気持ちだけでは後に支障をきたすため、泣く泣くブラムウェルはノアと離れていた。

 一時の感情で、ノアとの未来を壊すつもりはない。
 二度と出会うことがなかったかもしれない自分たちが、奇跡とも言える確率で出会えたのだ。もう簡単に周囲の都合に流され離れることは許さない。

 今回の依頼は大きな取引のためのサミルド伯爵の護衛。
 それと同時に令嬢のヨランダが高位貴族の男に付け狙われていたため、防波堤として強さと顔で選ばれたのが黄昏の獅子だった。

 今回の依頼は守秘義務がありノアに事前に話すことはできなかった。
 しかも変な噂が流れていて、それをノアが鵜のみにしていたらと思うと気が気でなく、ノアのことを考えるだけで胸が苦しい。

 無事一週間の依頼を遂行し、残りは令嬢に付きまとう男のことだがそもそも彼女自身や家門の力で振り払える。なのに延長を言われたのは、なかば貴族の遊びのようなものだ。
 ブラムウェルのみの延長に関しては、思うところがありこちらのタイミングで引き上げることを条件に合意しているため仕事に支障はない。

 そもそも、このタイミングで依頼を引き受けたのには理由がある。
 東部ギルドの依頼をこなすようになってからわりとすぐ、貴族から黄昏の獅子に対しての長期の依頼が増えだしたためだ。

 これは本部ギルドが思うように靡かない自分たちを邪魔に思い、東部ギルドから引き剥がすためだろうと踏んでいる。
 どれか一つ受けなければさらに強引にねじ込んでくる可能性を考慮して、ノアにかけていた保護魔法が完成したと同時にランドルフギルド長と馴染みのある伯爵の依頼を受けた。
 それと同時に、ランドルフもギルド長としての仕事を振られ忙しくなったと聞いている。
 
「魔物のほうがわかりやすいし簡単だ」

 屠ればいいだけだ。力が強い方が勝つ。
 だが、人間はそうはいかない。

 利権が絡む足の引っ張り合いに辟易しながらも、そういったなかでうまくやらなければこちらが葬られるだけだ。単純な力の強さだけでは人が多く住む場所ではやっていけない。
 そのため、今回そばにいて退けたとしても、第二弾、第三弾と狙われるだけだと依頼に融通の利く相手と自身が王都にいて動ける時に片付けてしまうべく、あえてノアのもとには帰らなかった。

 本部のギルド長はやけにノアに拘り、粘着質な男らしく牽制するだけでは引かないだろうとのことだった。
 だったら、早々に徹底的潰しておく必要がある。

 離れることで危険がある可能性は承知していたが、ずっと一緒にいたため今なら保護魔法の効果は絶大だ。
 自分の手が届かないところでノアが危険な目に遭う可能性をなくすため、確実に敵を殲滅できる時に片付けてしまわなければならない。

 だが、本当に保護魔法が発動するような手の出し方をするとは……
 ブラムウェルはぎりっと奥歯を噛みしめた。
 ノアに手を出したらどうなるか、本部ギルドと貴族どもにもわからせてやる。

「ノアに手を出したことを後悔させてやる」

 ブラムウェルは魔法を展開し移動しながら、ノアのもとへと向かった。


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