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出会い sideブラムウェル②
しおりを挟む院長たち大人とノア以外、ろくに反応をしないブラムウェルに飽きて話しかけようとしなくなったある日のこと、いつもなら昼に二人分のご飯を持ってやってくるノアがこなかった。
ずっと待っていても姿が見えず、こんなことは初めてで午前中に何かあったのだろうかとブラムウェルは気になって食堂へと向かった。
人を避けてひきこもるようになって初めてのことだった。
昼時なので廊下には誰もおらず、自分の足音だけが響く。明るいのに急にこの世界に一人になったような寂しい気持ちになって、ブラムウェルは足早に歩いた。
「あはははっ。なんで引き止めるのにこちょこちょするの? あははっ。チャーリーやめなって」
「だめ。ノアがうんって言うまでやめないもん」
「ふふっ。ははっ。もうっ。三時のおやつはみんなで外にピクニックに行こうと思っていたのになぁ。こうしていたら時間なくなっちゃうかも」
「ピクニック!? 本当に?」
楽しそうな声に食堂を覗くと、ノアは孤児たちに囲まれ話しかけられていた。
チャーリーはノアにべったりとくっついて、頭をぽんぽんと撫でられている。とても嬉しそうだ。
「ピクニックか。そういえば最近していなかったな。いい天気だし気持ちよさそうだ」
「だよね。絶対気持ちいいと思うよ」
ノアよりも年上組が満足そうに同意する。
「わぁい。ピクニックだ~。何持っていくの? 僕はクッキーがいいな」
「私はマドレーヌがいい」
「私はノアと一緒ならなんでもいいもん」
「ずるい。僕もノアがいればなんでもいい。嫌いな野菜でも食べるよ」
ノアは口々に要望を告げる小さい子供たちを穏やかな眼差しで見ている。
そこで、一時期やたらと話しかけてきた女子がノアの腕を引いた。
「みんな誤魔化されているわよ。結局、ノアはブラムのところに行くのだから」
「あっ。そうだ。ブラムばっかりずるい」
「ずるい? どうして?」
「私たちもノアと一緒にお昼を食べたいってこと。贔屓はよくないと思うの」
その言葉に、そうだそうだと周囲の子供たちも口々に声を上げる。
「朝と晩はみんなと一緒に食べてるよね?」
「でも、ブラムはここ最近毎日ずっとノアと一緒だよ。ノアはみんなのノアなのに、新しく入ってきたからってずるいと思うわ」
ノアは孤児たちそして大人受けもよく、非常に人気者だった。常にきゃあきゃあ言われるタイプではないけれど、誰もがノアを認め必要とし年齢性別関係なく常にノアの周りには人がいる。
わかっていることだ。だけど、いつもよりその光景が面白くなく感じた。
「でも、僕たちの城にいるのに寂しい思いはしてほしくないよ」
ここの孤児たちは孤児院のことを城と呼ぶ。家よりもっと特別感を持たせるための言葉。
そう呼ぶことで仲間だと一体感を持っているようだった。
好きにすればいいが、みんなで仲良しごっこをしているようでブラムウェルはその言葉を聞くとしらける思いだった。
ブラムウェル自身、継承争いがなければ本当の城に住んでいたからかもしれなかったため余計に反応していたのだが、この頃のブラムウェルは自分の感情は持て余していた。
「別に放っておけばいいんじゃない? 好きで一人でいるようだし」
「そうかもしれないけど寂しい時は寂しいと思うよ。それに僕が勝手に気になるだけだし、もしそれがルイサでも同じようにしていたよ」
「ノアならそうかもしれないけど……。でも、放っておいてほしい人をいつまでも構うのってどうかと思うわ。迷惑しているんじゃないかな」
ルイサの厚意を冷たくあしらったブラムウェルに対して、彼女があまりよく思っていないのはわかっている。
少しは悪かったという気持ちはあるけれど、彼女に関してはしつこかったし押し付け感がすごくてまた過去に戻っても同じような態度をとっていただろう。
だけどノアは違う。ノアは彼女とは違う。
自分の気持ちを勝手に決めつけないでくれと、ブラムウェルはぎゅっと拳を握りしめた。
「迷惑かぁ。最近話してくれるようになったし、ブラムは嫌だったらはっきり拒絶すると思うのだけどな」
ほら。ノアはやっぱりわかっている。
ブラムウェルは腹立たしい気持ちから、どこか誇らしい気持ちでノアを見つめた。
「もう。ノアってお人好しなんだから。傷ついてもしらないからね。それでピクニックにブラムも誘うの?」
「もちろん彼も誘ってみるよ」
「ええ~。どうせ行かないって言うのに」
「そうかもしれないけど、みんな行くみたいだし一人でここにいるのは寂しいんじゃないかな。行かないにしても声だけはかけるよ」
ノアとだけなら考える余地はあるが、みんなでピクニックは面倒でしかない。
せっかく誘ってくれるのに申し訳ないが断ろうと決める。
この様子だともう少し時間がかかりそうだ。
見つかる前に部屋に戻ろうと踵を返したその時、続くルイサの声に視線を戻す。
「なら、そこでブラムが反応しなかったらこれからはノアもこっちでお昼食べる?」
「うーん。でも……」
「でも、ブラムがそうしたくてそうしているんでしょ? だったら別にもういいんじゃない? 院長の言いつけは守って朝晩はここで食べてるんだしやろうと思えばやれるんだから。迷惑と思っていなかったとしてもそれは甘やかしになるんじゃない? ここにはもっと小さな子もいるんだからいつまでもブラムばかりに構っていると、今日みたいに拗ねちゃう子が出てくるよ」
そこでノアはべったりと張り付くチャーリーたちを見下ろし、それぞれの頭を撫でた。
「確かに……。ブラムは僕がいなくても平気だよね。慣れてきただろうしそうすべきなのかな」
「それがいいと思う。それにブラムはそんなに小さくもないのにここでの仕事も免除されているようだし。それもあって不公平感はどうしても出るから」
「それは僕らとブラムは違うからね」
ノアの言葉に頭が真っ白になった。ものすごくショックだった。
放っておいてほしいのに、いざノアに構わない宣言され自分たちとは違うのだとはっきり言われると無性に腹が立ってイライラした。
ノアに余計なことを吹き込んだルイサも、べったりくっつくチャーリーたちにも腹が立って、誰に何をというのさえ自分でもわからない。
これ以上話を聞いていられず、ここにいることさえ嫌になってブラムウェルは孤児院を飛び出した。
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