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一緒にいて sideブラムウェル①
しおりを挟むブラムウェルは孤児院を出ると山のほうへと向かった。気持ちがぐちゃぐちゃだった。
先ほどの会話が脳内をぐるぐるして腹が立つとともに泣きたくもなって、どうしてこんなにしんどいのかとまた腹が立つ。
自分の気持ちを持て余し、なんだかすべてが嫌になった。
大人の事情で身を潜めながらの生活。
何も悪いことをしていないのにこそこそしなければいけない状態に鬱屈はどうしてもあって、それでもヒギンズという大人が必ず気にかけてくれていて恵まれていることは理解していた。
ただ、理解と気持ちは必ずしも一致しなくて、それらはブラムウェルの余裕をなくす。
そういったことがノアといると余計に際立つようで、だったら距離を取ればいいのにどうしてもノアを拒絶できず一緒にいることを楽しんでいる自分がいた。
ブラムウェルにとってノアは感情の表面ではなく奥までかき乱す唯一の存在だった。
もう何年も会っていない親に財力があるので孤児院に入るにあたり寄付していることもあって、大人たちはブラムウェルに孤児院のルールを無理に強要しない。
そういうことを子供たちは敏感に感じ取り、顔立ちや魔法のこともありこれまでずっとどこに行ってもブラムウェルは浮いていた。
だが、ここは少し浮いてはいるもののこれまでとは少しばかり違った。
ここにいる子供たちは普通の孤児ではなく、何かしら魔力に事情を抱えており親に見放された者がほとんどだ。
さっきのチャーリーは感情が落ち込むと、周囲を水浸しにしてしまう。
ルイサだってそうだ。感情が爆発すると火魔法が発動し、彼女自身が火に包まれて落ち着くまで近づくことはできない。
この孤児院はちょっとやそっとの魔法で建物は損傷しない。それは院長の能力に関係しているようだった。
特殊な力を持った子供たちの集まり。ここの孤児院にはそういう子供しかいない。
貴族ならばその扱いに長け、家系で伝承してきたものもあるためその魔力をうまく取り込めるように育てられるが、講師を雇う金もない平民となるとよほどの幸運に恵まれない限りそれらは脅威となり持て余す。
後ろ暗いことがある者、もともと魔法に関して知識がない親。そういったところで生まれた子供たちは捨てられ、巡り巡ってこの地にたどり着いているのだと思われた。
そのためそれぞれ子供たちは与えられた仕事とは別に訓練する時間を設けられていた。
ブラムウェルは定期的にヒギンズなどから教わることができ魔法の教科書も与えられていたので、突発的に何かをやらかすということはなく合同訓練は必要がないので参加していない。それはノアも同じだった。
ただ、ノアの魔力が多いことはわかるのだが、それがどう使われどんな種類の魔法なのかブラムウェルには検討がつかなかった。
子供たちが感情を乱し魔法が爆発し誰も近寄れないなか、一番に彼らを落ち着かせることができるのがノアで、それがとても特別だということはわかっている。
ノアは特別。
誰にとっても特別で、そのノア自身は分け隔てなく誰にでも優しい。
ブラムウェルはきゅっと唇を噛みしめ、岩の陰に隠れて膝に顔を埋めた。
今まで好きで一人でいた。だけど、ここに来てからなんだか寂しい気持ちが増す気がしてしんどい。
「ブラム!」
どれくらい時間が経っただろうか。
もしかするとあまり時間が経っていないのかもしれないが、これまでにない孤独感が永遠にさえ感じ暗闇の中に落とされたような気分になった。
ノアの声がそんなブラムウェルの内側から明かりを灯す。
顔を上げると、へにゃりと眉尻を下げて息を切らしながらブラムウェルのほうへと駆けてきた。
走っているのにまだまだ遠い。見えているのに届かない。遅い。もどかしい。
早く、早くと急く思いでブラムウェルはいつの間にか立ち上がり、自らノアのほうに駆け出していた。
「ノア」
「ブラム! 心配したよ」
少しでも近くに届けと叫ぶと、ノアは両手を広げておいでをしてくれる。ブラムウェルはたまらず抱き着いた。
外にいるのに、ノアが連れてくるお日様の匂いはどうしてこんなにも胸がぽかぽかして泣きたくなるのだろうか。
ブラムウェルはぎゅうっとノアに回した腕に力を込めた。
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