ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)

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26.熱量②

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 ノアの指を掴むと、そのまま手を絡めとりブラムウェルが流れるように口づける。
 触れる柔らかな感触と熱とともに、上目遣いで様子をうかがってくる。

「だって、俺はノアから離れないって」
「うん。聞いたよ」
「話を聞いてわかると思うけど、俺の中はノアだらけだ。マーヴィンにも引かれるくらいだ。それについてノアは何か言うことない?」

 あれだけ宣言しておいて訊ねるのは不安だからなのだろう。
 ノアが何を言ってもブラムウェルは主張を変えないのに、言葉を欲しがる姿は誰にも縛られず自由で最強の冒険者黄昏の獅子の一人だとは思えない。
 立場ある大人の我が儘にノアはくすりと笑った。

「思うも何も離れないのでしょう? ブラムの気持ちはわかったから、次に話すのは僕自身の問題だよね? 一緒にいるなら僕の魔力や家のことはブラムも関係してくるでしょ?」
「そうだけどそうじゃない」

 ブラムウェルはへにょりと眉を下げ、じぃっとノアを見つめた。
 視線で訴えられ、ノアはにこりと微笑んだ。

 ブラムウェルが求めている言葉はわかっているが、ここまで悲しげな顔をされるとは思わなかった。ちょっといじめすぎたかもしれない。
 勝手にいろいろ黙ってされたことの意趣返しのつもりだったのだけれど、こんなにも必死になられるといつまでもそうするわけにはいかない。

「ブラムってば、ちゃんとわかっているよ。そもそも、ブラムは僕がどう言おうと一緒にいることは変らないよね?」
「離れるなんてあり得ない。もう二度と別れるなんて嫌だ。ノアの意志で別れを選択するなら、俺はノアを誰にも合わせず閉じ込める」

 一つひとつ区切り明瞭に言い聞かせるように告げ、想像だけで双眸に昏い光を見せるブラムウェルにノアは嘆息する。

 ――そこまで語ってくれなくても……

 この手の話はあまり深く掘らないほうがよさそうだ。
 ノアは気を取り直してできるだけ明るい声を出した。

「そんなことしなくても、僕も一緒にいたいと思っているから問題ないんじゃないかな」
「そんなさらっと」

 そう言ってほしいのに、いざ言われると今度は心配になるらしい。我が道を行くのかと思えば、そういうところはわかりやすくて案外可愛い。
 ノアは仕方がないなと腕を伸ばした。

「だって、追跡魔法も外したくないんでしょ? それでいいって僕も言ったし。なら一緒にいるために話し合おうと思って」

 掴まれていないほうの手でブラムウェルの金の髪に指を絡めると、ものすごく困惑した顔をされて、思った反応と違うなと考えていたらいきなり口を塞がれた。

「んんっ」

 激しく息ごと吸われ、離されたと思ったらぐりぐりと額をつけてきた。
 いつの間にかブラウェルの膝の上に乗っている。

「ノアが好きだ!」
「急に告白」
「ノアは俺だけをかまって。俺だけに愛されて」

 お、おおぅ……。言葉とともに畳みかけてくる。
 圧倒されている間に、また唇を奪われた。
 触れ合う唇からぞくぞくするような感覚が伝わってきて、ノアはキスの合間に熱っぽい吐息を吐き出した。

「……ふっ、ブラム」
「ノアだけしか欲しくない」

 これはノアも一緒にいられればではなくて、一緒にいるのだと腹をくくらなければならないようだ。
 記憶を思い出してからと悠長なことを言っている場合ではなく、俺を見て、俺だけを見ろとブラムウェルの熱がノアを包む。
 ノアはすべてを受け入れる覚悟を決めた。

「全部あげる。だから、これから一緒にいるためにいろいろ考えてくれる? それにブラムの血筋のことも何かあるなら全部話しておいてほしいな」

 さらっと話していたけれど、王族の血を引いていることや逃亡生活の末に国が滅亡とはノアたち国民も大変だったけれどブラムウェルはまた違った大変さがあっただろう。
 なかなかハードだ。


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