ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)

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28.指輪

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「……その後ろのべったりなのはどうした?」

 ギルド長室に訪れたノアを見たランドルフは、眉根を寄せていの一番に声を上げた。
 背後にくっつくブラムウェルに視線をやると離れないぞと後ろからお腹に手を回され、ノアははははっと苦笑した。

「彼のこれは気にしないでください」
「……はぁ。ノアがいいならいいが」

 ここに来るまでにも散々そのことで言い合ったが、ブラムウェルはノアの守護神のように近い距離で周囲を威嚇するのをやめなかった。
 保護魔法の強化と何やら新しい魔法を編み出すのに時間がかかり万全ではないため、ノアが外に出るのは不安らしい。

 侯爵も本部ギルド長も捕まったので大丈夫だと言ったのだけれど、何があるかわからないからと譲られなかった。
 ブラムウェルの事情も考慮しているのかもしれない。

 昨日の今日ということもあり、最終的に好きにさせるほうが今後のためにいいだろうと結論付けノアは説得するのを諦めた。
 ブラムウェルのいうところの強化が済んだら納得するのだろう。

「はい。今日ですがブラムも一緒に聞かせてください」

 ノア自身もいざ話を聞くとなったらどんなことを話されるのだろうとドキドキしてきたのでそれどころではないというか、むしろ呆れるくらいの態度に救われる面もあった。
 座るように促され、一度離れたブラムウェルだが座るとノアの右手を繋いでくる。
 それにやっぱり呆れと同時に心強さも感じて、ノアは頬を緩ませた。

「……ああ。一時期あの孤児院で一緒に過ごしていたらしいな」

 その様子を見ていたランドルフはわずかに頬を引きつらせたが、軽く肩を竦めると話を進めた。

「うろ覚えですが、ブラムから話を聞いて少しずつ当時のことは思い出してきました」

 孤児院の仲間たちの顔立ちや性格が以前より明確に思い出せるようになった。だけど、まだ圧倒的な何かが欠けていてそれがなんだか思い出せない。
 きっとそれが記憶を封印することになった一端なのだろう。

「そうか。記憶のことだが、エイダに確認を取ったらやはり強く望めば解けるようなものと言っていた。だから慌てなくてもいいとは思うが、どうしても急ぎで思い出したいなら見ると言っていたがどうする?」

 トレヴァーは本部ギルド長、オルコックは貴族なので手続きなどが大変だったと思うが、そこまで短い時間で動いてくれていたようだ。
 左目の傷跡がいかつくて怖いイメージを持たれるランドルフだが、大雑把さと細やかな気配りが絶妙のバランスでいつもものすごく頼りになる。

「ありがとうございます。それについてはランドルフの話を聞いてから考えたいです」

 ブラムウェルの話を聞いて思い出したように、また話を聞いたら刺激されるものがあるかもしれない。
 それにその話の内容によっては、一度考える必要もあり一気に情報を得るのは怖い気がする。

「そうか。なら、ノアの母親の話からしようか」
「はい。お願いします」
「といっても、昨日も話したように俺は詳しくは知らない。今から話すのは、俺の知る彼女と今回のことで知ったオルコック家の者だという情報を元にした推測も混じるがいいか?」
「それでいいです。お願いします」
「わかった。あと、先にこれを渡しておく」

 ことりと机の上に置かれたそれは、金の指輪で宝石などは一切ついていないが蔦のような模様が全面に細工されている。
 古いものだけれど、丁寧に磨かれて大切にされてきたとわかるものだ。

「これは?」
「ノアの母親から預かっていたものだ。今のノアに渡すほうがいいと思ったから渡しておく」

 ノアは手を伸ばして指輪を手に取った。
 女性のものにしては太く分厚い指輪だ。よく見ると、そこに何かあったのかそういうデザインなのか一か所くぼみのようなものがある。

 一緒に覗き込んでいたブラムウェルは黙ったままそれを見ていた。
 口を挟む様子はないので、ノアはランドルフに視線を戻すと話に耳を傾けた。


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