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エピローグ 繋がった縁①
しおりを挟むノアがギルドの扉を開けるなり、ウォルトが飛びついてきた。
「ノア、心配したんだから」
「ごめん」
勢いに押されて倒れそうになり、後ろにいたブラムウェルに支えられる。
その体勢のままぎゅっと引っ付いて離さないウォルトの背中に、ノアは手を回した。
仕事を休んだだけで、こんなにも気にかけてくれる友人がいる。
日常に帰ってくることができ、ここが今自分の生きる場所なのだとじわりと喜びが広がった。
ノアの本来の魔力と掛け合わせ、思ったよりも早くブラムウェルの納得がいく魔法が完成し、ようやく出勤することが許された。
詳しく聞いてはいないが、簡単と言っているけれどかなり高度なことをしているはずだ。
侯爵のこともあり、ノア自身の能力の安定を見るためにもしばらく休めとランドルフに言われたので、その間はブラムウェルも冒険者の活動は休止し一緒に過ごした。
昔の話も含めいろいろな話をした。
そうする中で、ふわふわとしていた感情が少しずつノアの中に収まっていくのを感じ、さらに今を大事にしたい気持ちを強くした。
「何も怪我はない?」
「うん。大丈夫だよ」
身体を離し、ノアの両頬を掴みあっちこっちに動かし確認していく。
似たような体形なのに、ウォルトはかなり力が強くてノアはされるがままだ。
休むにあたって拉致されたことは報告されており、そのことを知ったウォルトはやきもきしてくれていたようだ。
よかったとまた抱きしめられぐっと込められる力に苦しく思いながらも、力強さは生きている証拠、簡単にはなくならないものだと安心する。
「もう。こんなことは二度と嫌だから」
「うん。そうだね」
やっと身体を離してくれたが睨んでくるウォルトに、にこにこと笑って返すとぺしっとおでこを弾かれる。
「つっ。痛いよ」
「なんで笑うの?」
苦情を告げると、もう一度ぺしっと弾かれた。
「だって、心配してくれたの嬉しいから」
「はぁ、もう。ノアといると怒っていたのも気がそがれるんだけど。結構大変なことのはずなのになどうして当の本人は清々しい顔をしているのか! 本当なら僕がやっつけてもいいのだけど、犯人も捕まって処罰されるようだからこの憤りどうしよってなってたのに」
やっつけてくれるつもりだったのかと、思わず細い腕を見てしまいそうになったが堪えた。
ようはそれくらいの気持ちだということを言ってくれているのだと、また怒られるのだろうがどうしても頬が緩む。
「大丈夫。これからは何が何でも俺が守る」
背後でブラムウェルがノアのお腹に腕を回しながら、自分たちのやり取りに入ってきた。
ウォルトは冷めた目でブラムウェルを見ると、辛辣に言う。
「ああ~、大事な時に一緒にいなかった人が言うこと?」
「それは……」
ブラムウェルにも事情や考えがあり、できることはしてくれてのことだ。
実際に怪我もなかったし、すぐに見つけて助けに来てくれた。あれはブラムウェルだからなせる業だ。
むしろ、今回のことはノアが巻き込んだのでブラムウェルが責められるのは違う。
説明しようとしたら、ブラムウェルが先に口を開いた。
「そうだな。俺の力が足りなかったばかりにノアに怖い思いをさせた」
「そうだよ。というか、なんで言いながらそんなにくっつくの?」
「さっきウォルトもくっついていたからおかしくない。ノアにかけてある保護魔法は強化させたしこれからも強化していく。ノアは命をかけて俺が守るし、こうする権利は俺にはある」
これからも強化していくんだ。
いつかノア自身はさして強くないのに、その魔法のせいで最強になってしまうのではないだろうか。
「確かにくっついたけどさぁ。はぁ……、権利って。つまり二人はそういう関係で、それってマーキングだよね。変な虫が寄ってこないように」
「それもある」
「それしかないように見えるけど、まあ、実際に効果はありそうだしノアがいいなら外野が口を挟むものでもないし」
そこでウォルトがノアを見てきたので、ノアは小さく笑みを浮かべ頷く。
ブラムウェルを納得させるためには、ある程度自由にさせてから意見を言うほうがすぐに聞いてくれるのだ。
こういうところは幼い頃から変わらない。まず、自分の思い通りに動かないと、次に考える余裕が生まれないようだ。
普段から圧倒的に周囲と距離を取りほとんどのことに関心がない人だから、これも深く関わらないと知られない部分だ。
そこでウォルトは、ノアを「ふ~ん」と上から下まで見た。可愛らしいのに時々鋭さを感じる。
それからノアのお腹に視線を固定させると、そこで口を開いた。
「まあ、それくらい強引でないとノアを守れないか。……わかった。頼むからね」
ウォルトははぁっと再度溜め息をつくと、あっさり受け入れた。
ブラムウェルの好きにさせるとは決めているけれど、周囲に簡単に受け入れられるとまた複雑な気持ちになる。
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