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18.これもある意味元サヤ
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「了解しました。どうやら予定を少々オーバーしてしまったみたいだが、大丈夫?」
「心配ご無用よ。隠しゲームに関して割ける時間はちゃんと別個に取ってあるもの」
余裕があるような返事をしたサイレント真実だったが、言い終わると同時にその場からまさしくぱっと消えた。いくら時間が別枠で設けられていても、入札ゲームの進行を遅らせると他の参加者五人を待たせることになるから、急がなくてはいけないようだ。
その後ほどなくして隠しゲームの全貌が明かされた。
各チームの女子は他の女子になりすまして、入札ゲームの間中ライバルチームの男子に気付かれないようにするとの密命を帯びていた。隠し通せた場合は、百万ディテクを得られる。逆に途中で露見しても罰はなし。気付かれた者が出た段階で、他の女子は隠し通せたものと認められる。
「高田さんだったのか……分からなかった」
サイレント真実の解説のあと、アバターが本来の物に切り替えられた。本番の探偵ゲームにおいて互いを認識できるよう、ボックスを出てご対面となる。
「ていうか何でそんな昔のギャル風なの? 実際の見た目とだいぶ違う!」
高田鈴子のアバターは顔立ちこそ同じだが、茶髪のソバージュで印象をがらりと変え、指にはつけ爪、服はどうやら有名女子校の制服らしい。
「どんな格好も思いのままと聞いていたので、参加を決めたときに、普段できない姿をリクエストしておきました」
(女子に対しては、事前にそういうリクエストを受け付ける機会があったのか。いや、僕が鈍感なだけだったりして?)
だとしても、何故にカンフーっぽい衣装なのかは分からないが……。
「見破られたということは、どうやらミスを犯してしまったようですね」
高田がため息とともに言った。落胆の色が露わで、思わず桐生も同情を覚えたほど。
「大丈夫? これは勝負だから仕方ないけど何かごめん」
「……残念。もっと早く気付いていればなあ」
さばさばした体に転じて、高田が言った。
「は?」
「桐生さんはこういう仕種に弱いのかなって思って。こういうキャラクターで行っていれば、最後まで騙し仰せたかもしれないわけか」
「……いやいや。違うから。片薙さんのキャラと重なっていないと意味ないから、それ」
抗弁する桐生の背中に、「私がどうかした?」と片薙の声が届く。
振り返った桐生は視線の先にいる片薙が、ほぼほぼ実物と違わぬ姿でいることに半分安堵し、半分がっかりした。
「何なんですかその目は」
怪訝がるパートナーに対しては、「いやアバターでの表現だから、本当の表情を反映しているかどうかは、自分にも分からない」と適当な理屈をこねておいた。
「まさかこんな形で出し抜かれるとは、やられた」
「畜生、油断してた」
石倉と螢川の両男子も、顔形は実物と寸分変わらぬようだが衣服のみが違っている。石倉が西洋風狩猟スタイルで、螢川は袴……。桐生は頭を捻った。
「聞いておきたいことがあるんだが」
「前置きはいらん。どうせ聞くんだろ」
石倉が応じた。螢川の方は高田から正体がばれてしまったことを詫びられ、何度も頭を下げられて恐縮してしまっている。
「その格好は君自身がリクエストしたのか?」
「これ? いいや。こんなシャーロキアン丸出しのコスプレは、畏れ多くてできやしない。恐らく主催サイドで適当に割り振られたんじゃないか」
「ということは螢川は金田一耕助か、初期の明智小五郎ってことか」
「そのようだね。問題は桐生、君の格好がいまいちピンと来ないってことだな」
「うーん、とすると、和洋中の『中』なんだろうな。中華系の名探偵というのは確かにいたと思うけれど、格好はこんなカンフースタイルじゃなかった気がするが」
「中華料理のコック長や怪しげな奇術師スタイルじゃなかっただけ、ましと思っておけよ」
「そうかもしれない。ところで石倉のパートナーはどこにいる? さっきから気にしてたんだが、姿が見えない」
「螢川の奴にアプローチされて参ったらしい」
「うん?」
一瞬、意味が分からずに戸惑う桐生だったがじきに理解した。隠しゲームでの男女の組み合わせを考えると、馳千波は螢川を騙そうとした。そのときに螢川は相手が田中だと思って馴れ馴れしい軽口を叩きでもしたのか。もしくは田中が桐生に仕掛けたのと同様、螢川を惑わせるために馳が某かの大胆な行動に出た結果、真に受けられた可能性もあり得る。
そんな風に考えたことを手短に話して、桐生は確認を取った。
「要するに、恥ずかしくて顔を合わせる気にならないってわけね」
「恐らく。――おや? 今の話、高田さんに聞こえていたようだぞ」
見ると、つい先ほどまで申し訳なさいっぱいに頭を下げていた高田が、螢川に詰め寄っている。
「どういうこと? 勝負の最中に他のことに気を取られていたとしか思えないんですがっ?」
つづく
「心配ご無用よ。隠しゲームに関して割ける時間はちゃんと別個に取ってあるもの」
余裕があるような返事をしたサイレント真実だったが、言い終わると同時にその場からまさしくぱっと消えた。いくら時間が別枠で設けられていても、入札ゲームの進行を遅らせると他の参加者五人を待たせることになるから、急がなくてはいけないようだ。
その後ほどなくして隠しゲームの全貌が明かされた。
各チームの女子は他の女子になりすまして、入札ゲームの間中ライバルチームの男子に気付かれないようにするとの密命を帯びていた。隠し通せた場合は、百万ディテクを得られる。逆に途中で露見しても罰はなし。気付かれた者が出た段階で、他の女子は隠し通せたものと認められる。
「高田さんだったのか……分からなかった」
サイレント真実の解説のあと、アバターが本来の物に切り替えられた。本番の探偵ゲームにおいて互いを認識できるよう、ボックスを出てご対面となる。
「ていうか何でそんな昔のギャル風なの? 実際の見た目とだいぶ違う!」
高田鈴子のアバターは顔立ちこそ同じだが、茶髪のソバージュで印象をがらりと変え、指にはつけ爪、服はどうやら有名女子校の制服らしい。
「どんな格好も思いのままと聞いていたので、参加を決めたときに、普段できない姿をリクエストしておきました」
(女子に対しては、事前にそういうリクエストを受け付ける機会があったのか。いや、僕が鈍感なだけだったりして?)
だとしても、何故にカンフーっぽい衣装なのかは分からないが……。
「見破られたということは、どうやらミスを犯してしまったようですね」
高田がため息とともに言った。落胆の色が露わで、思わず桐生も同情を覚えたほど。
「大丈夫? これは勝負だから仕方ないけど何かごめん」
「……残念。もっと早く気付いていればなあ」
さばさばした体に転じて、高田が言った。
「は?」
「桐生さんはこういう仕種に弱いのかなって思って。こういうキャラクターで行っていれば、最後まで騙し仰せたかもしれないわけか」
「……いやいや。違うから。片薙さんのキャラと重なっていないと意味ないから、それ」
抗弁する桐生の背中に、「私がどうかした?」と片薙の声が届く。
振り返った桐生は視線の先にいる片薙が、ほぼほぼ実物と違わぬ姿でいることに半分安堵し、半分がっかりした。
「何なんですかその目は」
怪訝がるパートナーに対しては、「いやアバターでの表現だから、本当の表情を反映しているかどうかは、自分にも分からない」と適当な理屈をこねておいた。
「まさかこんな形で出し抜かれるとは、やられた」
「畜生、油断してた」
石倉と螢川の両男子も、顔形は実物と寸分変わらぬようだが衣服のみが違っている。石倉が西洋風狩猟スタイルで、螢川は袴……。桐生は頭を捻った。
「聞いておきたいことがあるんだが」
「前置きはいらん。どうせ聞くんだろ」
石倉が応じた。螢川の方は高田から正体がばれてしまったことを詫びられ、何度も頭を下げられて恐縮してしまっている。
「その格好は君自身がリクエストしたのか?」
「これ? いいや。こんなシャーロキアン丸出しのコスプレは、畏れ多くてできやしない。恐らく主催サイドで適当に割り振られたんじゃないか」
「ということは螢川は金田一耕助か、初期の明智小五郎ってことか」
「そのようだね。問題は桐生、君の格好がいまいちピンと来ないってことだな」
「うーん、とすると、和洋中の『中』なんだろうな。中華系の名探偵というのは確かにいたと思うけれど、格好はこんなカンフースタイルじゃなかった気がするが」
「中華料理のコック長や怪しげな奇術師スタイルじゃなかっただけ、ましと思っておけよ」
「そうかもしれない。ところで石倉のパートナーはどこにいる? さっきから気にしてたんだが、姿が見えない」
「螢川の奴にアプローチされて参ったらしい」
「うん?」
一瞬、意味が分からずに戸惑う桐生だったがじきに理解した。隠しゲームでの男女の組み合わせを考えると、馳千波は螢川を騙そうとした。そのときに螢川は相手が田中だと思って馴れ馴れしい軽口を叩きでもしたのか。もしくは田中が桐生に仕掛けたのと同様、螢川を惑わせるために馳が某かの大胆な行動に出た結果、真に受けられた可能性もあり得る。
そんな風に考えたことを手短に話して、桐生は確認を取った。
「要するに、恥ずかしくて顔を合わせる気にならないってわけね」
「恐らく。――おや? 今の話、高田さんに聞こえていたようだぞ」
見ると、つい先ほどまで申し訳なさいっぱいに頭を下げていた高田が、螢川に詰め寄っている。
「どういうこと? 勝負の最中に他のことに気を取られていたとしか思えないんですがっ?」
つづく
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