孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi

文字の大きさ
6 / 108
1章 国王陛下ですよね?

ランバートとチロ

しおりを挟む
勉強会が終わり、孤児院に戻る準備をしていると、ランバート先生がルル達に声をかけてきた。

「君がルルさんですね、ジョンさんがいつもあなたの話ばかりしているので会ってお話をしたかったんです」

「ジョンさんがですか?」

「はい、ルルは世界一可愛いとか天才とか誰にも嫁にやらんぞとか」

「恥ずかしい!もう!なんかすいません!」

ランバート先生はルルと話をしていても視線はチロに向けていた。そんな視線に気付かないチロは一生懸命にお絵描きセットを片付けている。

「⋯坊や、手伝おうか?」

ランバート先生が急にしゃがむとチロに優しく話しかけた。

「んーん、チロはひとりでできるよー!」

「そうですか、偉いですね!」

ランバートはチロの頭を愛しげに撫でる。

「チロはおいこうだから!」

そんなランバートとチロを見てこの二人には何かあると感じ取ったルル。そしてすぐにランバートに挨拶をして教室を出ていった。チロもランバートには懐いたのか手を振っていた。

「優しいし格好いいし教えるのも上手だし完璧じゃん」

「アンリが気に入るのは珍しいね」

「そうかな?前があのブタだしねー。でもあの人って多分いい身分の人よね」

「私もそう思う⋯ねえチロはあのお兄さん好き?」

私と手を繋ぎスキップ(できていない⋯)をするチロに聞いてみる。

「ちぇんちぇいすきー!チロはえらいって!」

「⋯そうだね、チロはお利口だもんね!」

「うん!」

ルル達が出来ていないスキップで戻ってくると、院長先生と話すジョンさんがいた。ジョンさんはルルに気付いて嬉しそうに近付いて来た。

「ちゃんと勉強してきたか?」

「うん。ねえジョンさん、ランバート先生ってチロの何?」

ルルの真剣な問いに驚いた顔をしたジョンさん。ルルがあまりにも追い詰められたような真剣な顔をしているのを見て、院長室で話すといい2人で行こうとしたが、チロがまた泣き出してしまったのでしょうがなくチロも一緒に行くことになった。

「チロ兵士!静かにしているのであります!」

「あい!だんちょー!」

その掛け合いを微笑ましく見つめるジョンさん。院長室に入るとソファーにチロと一緒に座る。反対側にジョンさんと、ジョンさんに呼ばれたのだろうランバートがやって来て座り、院長はルルの横に座った。

「ルルはやっぱり賢いな。」

ジョンさんは何故か嬉しそうだ。

「じゃあ私が思っている通りなの?」

「ルルは何が不安なんだ?」

ジョンさんがルルに優しく問う。

「⋯チロは私の弟なの!今さらチロを返せって言うつもりですか!チロが見つかった時には死にかけてたんですよ!ガリガリで汚れてて⋯グズっ」

ルルは涙が溢れて止まらなくなってしまう。

「ねーね、どーちたの?いたいいたい?」

チロは急にルルが泣き出したのが不安なのか一生懸命に聞いてくる。ルルは必死に涙を止めようとしたがチロを見ると止まらない。

「ルル、不安にさせたな。ちゃんと話すから聞いてくれ」

ルルは静かに頷いた。

「ねーね、見て!」

チロが思いっきり変顔をする。ルルを笑わそうとしているらしい。

「プッ!」

そんな健気なチロを見てつい笑ってしまう。

チロ、ありがとう。


しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...