孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi

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6章 それぞれの旅立ちとこれから

偉業を成し遂げた者達。

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暫くすると、ルルと一緒に楽しそうに帰って来たおちび達だが、エチカやジェラルドは疲れ果てていた。

「毎回思うが、戦争だな⋯」

「そうね⋯。私もまだまだだわ!!」

そんな大人達の苦労も知らずにキャッキャと楽しそうなヨシュア達。

「しゅっきりちまちた!」小躍りしているヨシュア。

「げんきいっぱちゅ!!(?)」意味不明のリク。

「あぶなかったでしゅ⋯」心からホッとするエドワード。

そんなおちび達を出迎えたのは、偉大なる先王ヨルドに小遣いを要求するという偉業を成し遂げたアンリだった。

「おっ!うんち組が戻って来たな~!」

アンリの発言にまた飲んでいた紅茶を噴き出してしまったランバートと、唖然とするしかないゲッター。

「おい、うんち組は無いだろ!」

流石に注意するジェラルドだが、呼ばれたおちび達は何故か嬉しそうだ。


昔からアンリの発言は危険極まりないものだった。ルルに会いにジョンさんとして孤児院に通い始めたジェラルドは、ルルと一緒にいたアンリに挨拶した。

「初めましてだな!院長の知り合いのジョンだ。よろしくな!」

「何か怪しい⋯。女には苦労してなさそうだから⋯まさか人身売買組織か!?」

飲んでいた水を噴き出してしまうジェラルドだが、ここにいる職員は顔面蒼白だ。院長だけはニコニコと笑っている。

「おいおい、何言ってんだ!?」

「だって、ここには私みたいな美少女が多いし?おちび達も貴族向きの子が多いからさぁ!」

これにはルルも苦笑いしか出ない。

「あー⋯ジョンさん。この子はアンリで、ちょっと疑い深くて⋯まぁ変わってるのさ!」

「そうみたいだな⋯初めて犯罪者扱いされたぞ。何か新鮮だった」

ちょっと感動すらしているジェラルドを見て呆れるルルだが、周りの大人達はホッとする。

「アンリか。」

泣いている小さな子を変顔で笑わせているアンリを見て、心根は優しいと感心していた。のだが⋯

「全く!あんた達はうんちを漏らしたくらいで泣かないの!!」

「ヒック⋯だって⋯」

「そうやって大人になっていくのよ!!うんちは漏らしてなんぼよ!さぁ遠慮しないで漏らしなさい!ここにいるルルが面倒見てくれるわ!!」

また飲んでいた水を噴き出してしまうジェラルド。ルルはルルで頭を抱えていた。

「アンリ。私一人じゃ無理だよ!でもここにいるジョンさんはこう見えて優秀(な王)なのよ!だから面倒を見てくれるって!!」

「あ⋯え?おい!俺は無理だぞ!?」

全力で拒否したが、結局はまだ幼いルルだけに押し付けるのも心が痛み、小脇におちびを抱える日々が続いてこの光景に慣れてしまうジェラルドだった。歴代の国王でおちび達をトイレに連れていき、トイレトレーニングを行ったという偉業(?)を成し遂げたのはジェラルドだけだろう。


今でも思い出したら笑ってしまう衝撃的な出来事だった。

アンリはきっと大物になるだろうと考えていると、彼女が金貨を握りしめているのに気付いた。

「おいアンリ。その金貨はどうしたんだ?」

「ああ、これ?ヨルド様にお小遣いもらったのよ!肩叩きしたお駄賃だよ!」

それを見たヨシュア達が、キラキラ光る金貨に興味を持ち始めた。

「キラキラしてりゅ!ヨシュアもじーじのかたたたく!」

そう言うと、ゲッター達と話しているヨルドの元へ駆けていく。

「おっ?どうしたんじゃ?」

可愛い孫を抱っこするヨルドだが、ヨシュアはそんな祖父の肩を思いっきりバチンと叩く。そして⋯

「かたたたいたかりゃ、キラキラくだしゃい!」

そう言って金貨を要求するヨシュアに、横で微笑ましく見ていたランバートが顔面蒼白になる。気にする事なく、リクもヨルドによじ登って肩をバチンと叩いた。

「キラキラくだしゃい!」

エドワードはヨルドによじ登る前に未遂でジェラルドに確保された。

「ちびっ子ギャング爆誕!!」爆笑するアンリ。

笑ってはいけないと思いつつも笑ってしまうエチカとジェラルド。ルルは呆れながらもヨルド達に事情を話した。

「ガハハハ!そうか金貨が欲しいのか!」

笑いながらも懐から大量の金貨が入った袋を取り出して、そのままヨシュア達にあげようとするヨルドに思わず腹パンチを喰らわすルル。

「甘すぎじゃ!!」

「ぐっ」崩れ落ちるヨルド。

偉大なる先王ヨルドに腹パンチを喰らわして片膝を突かせた、初めての者が何と孫のルルだった。



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