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60.宿を出発
天空の魔女 リプルとペブル
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60.宿を出発
30分後、宿の食堂のテーブルについたペブルは、がっくりとうなだれていた。
「ごめんなさいね――。ちょうどカルキーが売り切れちゃって。お昼に王都から団体のお客さんが来られたもんだから。でも普通のチキンもおいしいのよ。なんたって、広い飼育場で放し飼いにされてるニワトリたちだからね」
宿の女主人の言葉を聞いて、ペブルは少し元気になった。
チキンもいい。ぱりっと焼いた皮の香ばしいところ大好きだし。
そうして、気を取り直して、前菜のサラダをフォークで食べようと大きな口を開けた時、キッチンの方から先ほどの女主人の大きな声が聞こえてきた。
「何だって!? チキンが逃げ出したって?」
それを聞いたペブルは、またがっくりとうなだれてしまった。
次の日の朝。
みんなが出発の準備をしている中、出発間際まで、ペブルは、宿の女主人と何かを話していた。
「じゃあ、幸運を祈ってるよ」
女主人に笑顔で見送られ、ペブルは
「任せてください!」
と、親指をグッと立ててみせた。
馬車に荷物を積み込んでいたリプルが、ペブルに問いかける。
「なあに? ペブル。女将さんと何を話してたの?」
「よろこんで、リプル。今から私たちが越えて行くこの山の中にカルキーが生息しているんだって。だから、捕まえて食べるわ。まぼろしの味、カルキーを」
「お、狩りの話か? 狩りなら、俺に任せろ」
ロッドが腰の剣を叩きながら言う。
「負けないわよ。私がカルキーを捕まえるんだから」
幻の味に目がくらんでいるペブルもやる気まんまんだ。
「おう、勝負するか?」
ロッドも受けて立つかまえだ。
「狩りか。そういえば、次の村まではかなり距離があるし、今夜は、野宿になりそうだから、狩りをして食料を確保するっていうのも悪くないね」
ジールもうなずく。
「荷物も積めたわね。じゃあ、行きましょう」
リプルの声でみんなは、馬車へと飛び乗った。
ところが、リプルが御者台で手綱を握っていると
「失礼」
と言いながら、イザベスがずかずかと乗り込んできた。
「……ちょっと狭いような……」
リプルが真ん中にどかりと座ったイザベスを見ながらつぶやく。
「あら、私、荷台では酔ってしまうんですもの。幌のかかった荷台は、なんだか空気もよどんでいるみたいですし。ここでこうしてジール様の隣で、流れゆく景色を見ていたいのですわ」
と、立て板に水のようにしゃべり続けるイザベスの言葉が終わらないうちに、最後まで馬の世話をしていたジールがサッとリプル側から御者台へ乗り込み、
「イザベス、そっちもっと詰めて」
と、爽やかに言う。
あまりに自然な身のこなしにイザベスが口を挟む隙すらなかった。
イザベスは、ジールに背を向け舌打ちをすると、笑顔で振り向き、
「ええ、喜んで」
と、言いながら端っこに座り直した。
その頃、宿屋のおかみさんは、洗い物をする手を止めて、独り言をつぶやいていた。
「やだ、さっきの青い髪のおじょうちゃんに、カルキーの幼鳥だけは狩っちゃだめって言うの忘れてたわ。あれを狩ると大変なことになるからね。でもまあ、幼鳥に出会うことはめったにないし、大丈夫かしらね」
そう言うとおかみさんは、また腕まくりをして洗い物をはじめた。
30分後、宿の食堂のテーブルについたペブルは、がっくりとうなだれていた。
「ごめんなさいね――。ちょうどカルキーが売り切れちゃって。お昼に王都から団体のお客さんが来られたもんだから。でも普通のチキンもおいしいのよ。なんたって、広い飼育場で放し飼いにされてるニワトリたちだからね」
宿の女主人の言葉を聞いて、ペブルは少し元気になった。
チキンもいい。ぱりっと焼いた皮の香ばしいところ大好きだし。
そうして、気を取り直して、前菜のサラダをフォークで食べようと大きな口を開けた時、キッチンの方から先ほどの女主人の大きな声が聞こえてきた。
「何だって!? チキンが逃げ出したって?」
それを聞いたペブルは、またがっくりとうなだれてしまった。
次の日の朝。
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「じゃあ、幸運を祈ってるよ」
女主人に笑顔で見送られ、ペブルは
「任せてください!」
と、親指をグッと立ててみせた。
馬車に荷物を積み込んでいたリプルが、ペブルに問いかける。
「なあに? ペブル。女将さんと何を話してたの?」
「よろこんで、リプル。今から私たちが越えて行くこの山の中にカルキーが生息しているんだって。だから、捕まえて食べるわ。まぼろしの味、カルキーを」
「お、狩りの話か? 狩りなら、俺に任せろ」
ロッドが腰の剣を叩きながら言う。
「負けないわよ。私がカルキーを捕まえるんだから」
幻の味に目がくらんでいるペブルもやる気まんまんだ。
「おう、勝負するか?」
ロッドも受けて立つかまえだ。
「狩りか。そういえば、次の村まではかなり距離があるし、今夜は、野宿になりそうだから、狩りをして食料を確保するっていうのも悪くないね」
ジールもうなずく。
「荷物も積めたわね。じゃあ、行きましょう」
リプルの声でみんなは、馬車へと飛び乗った。
ところが、リプルが御者台で手綱を握っていると
「失礼」
と言いながら、イザベスがずかずかと乗り込んできた。
「……ちょっと狭いような……」
リプルが真ん中にどかりと座ったイザベスを見ながらつぶやく。
「あら、私、荷台では酔ってしまうんですもの。幌のかかった荷台は、なんだか空気もよどんでいるみたいですし。ここでこうしてジール様の隣で、流れゆく景色を見ていたいのですわ」
と、立て板に水のようにしゃべり続けるイザベスの言葉が終わらないうちに、最後まで馬の世話をしていたジールがサッとリプル側から御者台へ乗り込み、
「イザベス、そっちもっと詰めて」
と、爽やかに言う。
あまりに自然な身のこなしにイザベスが口を挟む隙すらなかった。
イザベスは、ジールに背を向け舌打ちをすると、笑顔で振り向き、
「ええ、喜んで」
と、言いながら端っこに座り直した。
その頃、宿屋のおかみさんは、洗い物をする手を止めて、独り言をつぶやいていた。
「やだ、さっきの青い髪のおじょうちゃんに、カルキーの幼鳥だけは狩っちゃだめって言うの忘れてたわ。あれを狩ると大変なことになるからね。でもまあ、幼鳥に出会うことはめったにないし、大丈夫かしらね」
そう言うとおかみさんは、また腕まくりをして洗い物をはじめた。
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