天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

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80.まさかの休園日

天空の魔女 リプルとペブル

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80.まさかの休園日

「おっ、あの山盛りサラダを完食するなんて、よほど野菜好きなんだな」
 ペブルのお皿がからっぽになっているのを見たウエイターは「はい、お代わり!」と、新たな野菜をペブルの皿にガサガサと入れる。

 ペブルは、お腹をさすりながら、もういらないというふうに首を振る。
「遠慮しなくていいですよ。うちのサラダは新鮮パリパリ。健康にもいいですからね!」
 ウエイターは、ニッコリ笑いながら、空っぽになったペブルのボウルにまた野菜を山盛りに載せた。
 その量、さっきの1.5倍はありそう。
 ペブルは「む、ムリ」と、白目をむいた。

 ウエイターは、リプルに「そういえば、君たちはもうガンガル動物園に行ってきたのかい?」と問いかけた。
 リプルが「いいえ。まだこの街についたばかりで」と答えると、ウエイターは両手をひろげて肩をすくめた。
「なんだ、まだ動物園に行ってないのか。ガンガル村に来て動物園をスルーするなんて、ありえないよ。ぜひ行ってくれよ」

 リプルがジールにむかって、遠慮がちに言う。
「動物園、行ってみたいけど、大切なお役目の途中だからムリよね」
 動物好きのリプルにとって、動物園は、憧れの場所だった。
 オルサト村で生まれ育ち、村から一歩も出たことがなかったリプルはまだ動物園に行ったことがなかった。

 ジールは、リプルにむかってほほえんだ。
「行こうよ。ここまで来れば王都までは、半日の距離だし、動物園に寄って行こう。僕も久しぶりだ。小学部の遠足で来て以来かな」
 ジールは懐かし気な口調だ。

 するとロッドが、ちょっと苦笑しながら言った。
「あのとき、ジールは、ライオンに乗りたいって無理を言って、飼育員さんを困らせてたよな」
 そのことばを聞いたリプルがハッとした顔をした。

 ジールは眉を下げた。
「ロッド、それをいま言うかな。あの時、ちょうど母さまが読んでくれた絵本にライオンに乗った勇者の話が書いてあったから、乗れると思っていたんだよ」

「ライオンに乗ったジール様、想像したら、まるで勇者様のようですわ」
 イザベスがうっとりと言う。
「そりゃもう、カッコよかったぞ! 俺の記憶の中にいまでも燦然と輝いている!」
 ジール推しのロッドは目を輝かせ、ガッツポーズをしている。
「やめてくれ、ロッド」
 ジールが頭をかかえ、みんながいっせいに笑った。 

 久しぶりに温かい食事を味わいながら、みんなの舌もなめらかだった。
 あ、大量の野菜を前に悪戦苦闘しているペブルをのぞいて。

 次の朝、早くに宿を出て、リプルたちは意気揚々と動物園に向かった。
 リプルが急ぎ足でスキップしそうな足取りになっているのをジールは後ろから見ながら(かわいいな)と、思っていた。

 ところが、動物園のゲートには、無情にも「休園日」と書かれた札が下がっていた。

「楽しみにしてたのに……」
 リプルが、がっかりしたようにつぶやいた。

 その時、後ろに一台の馬車がやってきて止まり、中からお腹の突き出たちょびひげのおじさんが
「よっこらしょい」
 と、言いながら降りてきた。

 そして、リプルたちの姿を見ると、
「すみませんねえ。今日からしばらく休園なんですよ。と、いうのも、明日から一週間、王都で移動動物園を開くんでね。また一週間後に来てくださ……」
 と、そこまでしゃべって、ジールの顔をみたおじさんは、急にハッと口をつぐんだ。
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