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004【海神の矛】
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ハァハァ「おい! 聞いたか!」
酒場へ走り込んできた、サヴォイがすでに出来上がっているリヴォイとトーチに駆け寄る。
「なんだよ、そんな慌てて! またハイオークでも出たんじゃ無いだろうな!」
「ジビカガイライがいない今、それは困るぞ!」
がっははははは~
「馬鹿野郎! そのジビカガイライだよ! ギルドに入った情報じゃ、アロスでまた厄災を倒して国を救ったらしいぞ!」
「マジか! なんでそんな遠くに! 船でダンジョンへ向かったのつい先月だぞ!」
「凄い人だな! また国を救うなんて、英雄の物語だまるで!」
惣一郎は、まだゴキコロリの正体が自分とバレていないと思っているが、薄々冒険者達にはバレていた。
「しかも、また報酬も受け取らずに世界を救う旅に出たそうだぞ!」
「かっ~ 渋いぜ! 流石、惣一郎さんだぜ! 俺らの時もしれっと助けて、何も言わなかったもんな、欲がね~ まさに聖人だぜ!」
港町セルロイの酒場に届いた知らせは、冒険者達の心を熱くさせていた。
遠い地での知り合いの活躍に、酒が進む3人は遅くまで飲み明かすと、各々家路へと帰って行く。
翌日の昼過ぎ、ギルドの掲示板を睨むサヴォイ。
「おはよ~ トーチは?」
「何がおはようだ! もう昼過ぎだぞ! トーチは買い出しに行ったよ!」
「あっははは、わりーわりー! 何かいい依頼あったか?」
「あるわけねーだろ! こんな時間に!」
「だから悪かったって! ん? ザザメイト討伐?」
「あほ! 俺らじゃ無理だろ、ハイオーク1匹も怪しいのに」
そこにトーチが戻って来て、
「おい、港に珍しい武器商人が来たそうだぞ!」
「お、見に行こうぜ! 大分蓄えも貯まって来ただろう!」
「毎日の酒代で、そんな貯まるか! ま、見には行くがな!」
ギルドを出る3人は港へ、船で地方を回る商人が、夕方から開く市場へ向かう。
港の市は、食材などが早朝、それ以外は夕方から開かれるのであった。
客が集まる時間が、夕方の方が多い為である。
だが、時折船の時間の都合上、夕方を待たずに店を出す商人もいる。
今回はそれを、たまたま買い出し中のトーチが見つけた形であった。
「おい、おやじ! なんか掘り出し物はね~か!」
「この町の冒険者で?」
「ああ!」
「助かった~ 潮の関係で、もうすぐ船が出るんだ、この町が最後でな~ ほれ、安くするから見てっておくれ!」
商人が荷車から、布に巻かれた武器を広げる。
「どうだ、ダンジョン産だぞ!」
火を吹く短剣
アイスランスを放つ弓
空気を切り裂く片刄の剣
防御力が増す盾
どれもこの辺りでは珍しい物であった。
「すっげ~ この剣イカしてるな!」
「サヴォイは、武器新調したばかりだろ! 俺の盾がそろそろ限界だ、買うなら盾だな!」
「いや、私の魔法は火だけだ、この弓があれば、倒せる魔物も」
「杖もってどう弓を引くんだ!」
「おやじ、この盾はいくらだ!」
「ええ、この盾は魔力を防御力に変換する魔法の防具でして、お値段もそれなりに…… 2300ギーですね」
「たっか! まぁ、ダンジョン産じゃしょうがないか……」
「だが、この盾がリヴォイにあれば、ザザメイトも倒せるかもしれないぞ!」
「確かに、魔法使えないのに無駄に高い魔力を持つリヴォイならば……」
「悪かったな! しかし、予算が無いぞ、出せても1000ギーだ、無理無理」
「しょうがないですね~ 私も先を急ぐ身! あんたら運が良い! 赤字だが、1000ギーで売りましょう!」
「本当か! おやじ!」
3人は相談し合い、購入を決めた。
惣一郎の武勇伝に影響されていたのだろう……
湾曲した菱形の大楯は、他に比べ軽くもしっかりとした重量感もあった。
「おい、今から試してみようぜ!」
「北の森に行けばグルピーぐらいいるでしょう、あそこなら夜までには戻って来れますね」
「おいおい、まだ慣らしても無いんだぞ…… まぁ、いいか!」
新たな防具を手に入れ、早く試したいという衝動に背中を押され、3人は、森へ向かう。
馬に乗り、森を目指す3人は冒険者として、惣一郎に大きな憧れを抱いていた。
自分達も噂される様な、冒険者になりたいと焦っていたのだった。
森に着くと馬を木に繋ぎ、中へ入っていく。
盾を構えるリヴォイが先頭であった。
その後を杖を構えるトーチが歩き、後方に意識を向け剣を持ったサヴォイが歩く。
少し進むとリヴォイが木に残された爪痕を見つける。
「近いな」
辺りを警戒しながら、進んで行くと生い茂った緑の中に、白い大きな影が見える。
「おいおいおいおい、なんて幸運だ!」
「マジか…… ありゃ白いグルピーじゃないか!」
「日頃の行いだな! やろう! おふたりさん!」
サヴォイがトーチの前に出て、構える。
トーチは詠唱に入る。
「焼き過ぎるなよ!」
っと声をかけ、盾を構え前に出るリヴォイ。
それに気付く白熊は、立ち上がり大きな咆哮をあげる。
7mほど離れた場所で、盾に魔力を流すリヴォイ。
「こい! こっちだ!」
ヘイトを自分へ向ける様に、声を張り上げると、前に倒れる白熊が、前足で地面を蹴ると、あっという間に距離を詰め、大きな口を開け、斜め上から爪撃を撃ち込む!
リヴォイが新しい盾で受ける!
意外な重さであった。
衝撃はあるが耐えられる!
『行けるぞ』
そのまま盾を前に押し出し、白熊の懐に入ると、下から持ち上げる様に、盾で白熊の上体を押し上げる。
上がった白熊の顔に小さな炎槍が、次々と当たり、悲鳴に似た声をあげ下がる白熊!
盾を押し戻す力が消えたリヴォイは、そのまま勢いよく押し出して、白熊を後ろに倒すと、リヴォイの上を飛び越えて、サヴォイが剣を白熊の胸に刺す!
暴れる白熊は胸から血の泡を吹き、やがて動きを止める!
「やったぞ!」
「ひゃっほ~ 金持ちだ!」
「もう盾の分、取り戻しましたな!」
トーチはマジックバッグに白熊を入れ、周りの警戒も忘れない。
「この盾、凄く良いぞ! 魔力は結構喰われるが、グルピーの一撃を、片手でも受けれそうだったぞ!」
良い買い物と、幸運な狩りに喜ぶ3人は、欲を出さずそのまま森を出て、町へ帰っていった。
ギルドに着くと夕方で、人も多かった。
「おいミーリア! 買取頼むぜ!」
「あら、さっき出たのに何を獲って来たの?」
「ふふふ、これさ!」
トーチが、白熊をカウンターに出すと、その場にいた冒険者達が騒ぎ出す。
その騒ぎを聞き、ギルマスが現れる。
「ほぉ~ お前ら運がいいな! 買取はギルドでいいのか? 商人ギルドなら多少高く売れるが!」
「あ~ これなら差額も大差ないさ!」
すると他の冒険者が、
「おい! 今夜は海神の矛の奢りだぞ!」
ギルドは賑わい、その声は遅くまで続いた。
翌日、また遅くに現れる3人は、あくびをしながら掲示板を見ていた。
「なぁ、今なら行けるんじゃないか?」
「ああ、ついてるしな!」
「もう少し火力が欲しい所ですが、その盾なら長期戦になっても行けるでしょう」
サヴォイが、掲示板から依頼書を剥がし受付に持っていく。
ザザメイト討伐依頼 2200ギー
受付のミーリアが、
「海神の皆さん、昨夜はご馳走様でした…… えっ! 受けてくれるのですか?」
ザザメイト、大きなサイに似た魔獣で、北の森の先にある集落が襲われ、村人はこの町に逃げ込んでいる。
村を取り返したいと依頼を出していたが、分厚い皮膚は頑丈で額の大きなツノで突進されると、レンガの家も数件に穴が開く。
この町では、倒せる冒険者がしばらく現れず、依頼料も半分ギルドが負担し、この金額になった。
以前、他所の腕に自信のある冒険者が依頼を受けたが、5人で向かい、帰ったのは2人だった。
そこに現れた、ギルマスのサーズリ。
「やれるのか? 奴には罠も毒も効かんぞ!」
「やってみせます! 冒険者になった以上、俺たちも彼の様に誰かの為の剣になりたい!」
「ジビカガイライか…… それで、必要な人数と編成は?」
「3人で!って言いたいですがね、火力が不足です。火力重視の編成でお任せします」
「よし、俺も腹を括ろう! ミーリア、今町にいる冒険者に声をかけてくれ、遠距離攻撃できる者だ! 出発は3日後、指揮は海神の矛だ」
「はい、わかりました!」
3日後……
北の集落跡地に集まった冒険者は、7人。
海神の矛の3人とギルマスのサーズリ、それと魔法が使える2人の町の古参冒険者に、たまたま町にいた冒険者であった。
「くっそ、ひどい有様だな! これじゃ取り戻してもまた人が住める様になるのに、どんだけ時間がかかるか!」
「リヴォイ! 本当に抑えられるのか?」
「ええ、グルピー売った金で、回復薬も奮発しました! 耐えてみせますよ!」
「来たぞ! ザザメイトだ!」
「おいおい、前よりデカくないか?」
「サヴォイ! ギルマス! 左右に! トーチ達は詠唱に!」
真っ赤な毛の無い皮膚に、体の三分の一ほどの大きなツノ。
「リヴォイ、無茶だ! あんな大きな体で突進されたら!」
「はは、ギルマス! ハイオークの王みたいなプレッシャーは無いですよ!」
盾を構え、前に立ちザザメイトと対峙するリヴォイ。
「トーチ!」
リヴォイが声を上げると、真後ろからトーチが炎槍を飛ばし、ザザメイトに当てる!
ザザメイトが唸り、リヴォイに向け殺気を飛ばす。
「こい!」
ザザメイトが地面を2回蹴り、加速をつけ突進してくる!
ありったけの魔力を盾に送り、ザザメイトとぶつかるリヴォイ!
歯を食いしばり、数メートル押されるが踏ん張り耐える!
突進を止めると、左右からサヴォイとサーズリが剣で前足に切り掛かる!
同じ所を何度も!
たまらず声を上げる赤いサイは、ツノでサヴォイに横から襲うが、ツノを盾から離した瞬間、リヴォイが踏ん張る!
「うりゃ!!!」
首を曲げた形で押され、怯むザザメイトにサーズリが深く剣を刺す!
ツノを振り、暴れるザザメイトにリヴォイも盾ごと吹き飛ばされる。
そこに魔法が降り注ぐ!
火柱が上がり氷が刺さり、地面から棘が盛り上がりザザメイトの体制を崩す!
「もっとだ!」
サヴォイがツノの根元の目に切り掛かると、血を吹き出し、視界を奪う!
盾を構え、仕切り直すリヴォイ!
盾で突撃して、サイに突進させない!
深く刺さったサーズリの剣が折れ、振り回されるツノでサーズリも吹っ飛ばされる。後ろに回り込んだトーチが炎槍を連発するが、皮膚を焦がすだけだ!
「土魔法で足場をもっと悪くしろ!」
地面から棘がサイを襲いツノによる攻撃範囲が限られていく!
サヴォイの剣が脇腹に刺さり、暴れたサイが自ら傷口を広げる!
そこに魔法が集中し、刺さる!
サーズリもマジックポーチから斧を出し、首に切り掛かる!
剣を抜こうとサヴォイが力を入れるとザザメイトが暴れ前足で蹴り飛ばされる!
剣を握ったままだ!
その飛ばされた先に火力を出そうと近いたトーチがおり、運悪く手に持つ剣が足に刺さる!
「トーチ!」
ツノを振り回すザザメイトの、そのツノを盾で受け止めるとザザメイトも体力がなくなってきたのか、リヴォイが抑えつける。
傷口に刺さる氷、首元の斧、折れた剣先、足を絡める土の棘。
ザザメイトがようやく動きを止め、力なく倒れる。
「やったか……」
「トーチ! 無事か!」
「ああ、命に別状は無い!」
「やった! 倒したぞ!」
ザザメイトを真っ向から倒した冒険者達は、その場に座り込みしばらく動けなかった。
後日、村の人達から礼を言われ、一躍有名になった海神の矛。
だが、トーチの足は冒険者を続けていける状態ではなかった。
ギルマスも他の冒険者も、大きな見返りと称賛を受けるが、海神の矛の被害は大きかった。
「気を落とすな! 俺はこれで引退だが、金もあるし十分だ!」
「すまんトーチ……」
「おいおい、ザザメイトを倒したんだぞ! もっと胸を張れ! 俺らは冒険者だろ! こんな事もあるさ!」
惣一郎に憧れ、無茶な冒険をした海神の矛の代償は大きかった。
サヴォイとリヴォイが、ふたりの故郷が厄災の被害に遭っているのを知るのは、それから数日後の事であった。
酒場へ走り込んできた、サヴォイがすでに出来上がっているリヴォイとトーチに駆け寄る。
「なんだよ、そんな慌てて! またハイオークでも出たんじゃ無いだろうな!」
「ジビカガイライがいない今、それは困るぞ!」
がっははははは~
「馬鹿野郎! そのジビカガイライだよ! ギルドに入った情報じゃ、アロスでまた厄災を倒して国を救ったらしいぞ!」
「マジか! なんでそんな遠くに! 船でダンジョンへ向かったのつい先月だぞ!」
「凄い人だな! また国を救うなんて、英雄の物語だまるで!」
惣一郎は、まだゴキコロリの正体が自分とバレていないと思っているが、薄々冒険者達にはバレていた。
「しかも、また報酬も受け取らずに世界を救う旅に出たそうだぞ!」
「かっ~ 渋いぜ! 流石、惣一郎さんだぜ! 俺らの時もしれっと助けて、何も言わなかったもんな、欲がね~ まさに聖人だぜ!」
港町セルロイの酒場に届いた知らせは、冒険者達の心を熱くさせていた。
遠い地での知り合いの活躍に、酒が進む3人は遅くまで飲み明かすと、各々家路へと帰って行く。
翌日の昼過ぎ、ギルドの掲示板を睨むサヴォイ。
「おはよ~ トーチは?」
「何がおはようだ! もう昼過ぎだぞ! トーチは買い出しに行ったよ!」
「あっははは、わりーわりー! 何かいい依頼あったか?」
「あるわけねーだろ! こんな時間に!」
「だから悪かったって! ん? ザザメイト討伐?」
「あほ! 俺らじゃ無理だろ、ハイオーク1匹も怪しいのに」
そこにトーチが戻って来て、
「おい、港に珍しい武器商人が来たそうだぞ!」
「お、見に行こうぜ! 大分蓄えも貯まって来ただろう!」
「毎日の酒代で、そんな貯まるか! ま、見には行くがな!」
ギルドを出る3人は港へ、船で地方を回る商人が、夕方から開く市場へ向かう。
港の市は、食材などが早朝、それ以外は夕方から開かれるのであった。
客が集まる時間が、夕方の方が多い為である。
だが、時折船の時間の都合上、夕方を待たずに店を出す商人もいる。
今回はそれを、たまたま買い出し中のトーチが見つけた形であった。
「おい、おやじ! なんか掘り出し物はね~か!」
「この町の冒険者で?」
「ああ!」
「助かった~ 潮の関係で、もうすぐ船が出るんだ、この町が最後でな~ ほれ、安くするから見てっておくれ!」
商人が荷車から、布に巻かれた武器を広げる。
「どうだ、ダンジョン産だぞ!」
火を吹く短剣
アイスランスを放つ弓
空気を切り裂く片刄の剣
防御力が増す盾
どれもこの辺りでは珍しい物であった。
「すっげ~ この剣イカしてるな!」
「サヴォイは、武器新調したばかりだろ! 俺の盾がそろそろ限界だ、買うなら盾だな!」
「いや、私の魔法は火だけだ、この弓があれば、倒せる魔物も」
「杖もってどう弓を引くんだ!」
「おやじ、この盾はいくらだ!」
「ええ、この盾は魔力を防御力に変換する魔法の防具でして、お値段もそれなりに…… 2300ギーですね」
「たっか! まぁ、ダンジョン産じゃしょうがないか……」
「だが、この盾がリヴォイにあれば、ザザメイトも倒せるかもしれないぞ!」
「確かに、魔法使えないのに無駄に高い魔力を持つリヴォイならば……」
「悪かったな! しかし、予算が無いぞ、出せても1000ギーだ、無理無理」
「しょうがないですね~ 私も先を急ぐ身! あんたら運が良い! 赤字だが、1000ギーで売りましょう!」
「本当か! おやじ!」
3人は相談し合い、購入を決めた。
惣一郎の武勇伝に影響されていたのだろう……
湾曲した菱形の大楯は、他に比べ軽くもしっかりとした重量感もあった。
「おい、今から試してみようぜ!」
「北の森に行けばグルピーぐらいいるでしょう、あそこなら夜までには戻って来れますね」
「おいおい、まだ慣らしても無いんだぞ…… まぁ、いいか!」
新たな防具を手に入れ、早く試したいという衝動に背中を押され、3人は、森へ向かう。
馬に乗り、森を目指す3人は冒険者として、惣一郎に大きな憧れを抱いていた。
自分達も噂される様な、冒険者になりたいと焦っていたのだった。
森に着くと馬を木に繋ぎ、中へ入っていく。
盾を構えるリヴォイが先頭であった。
その後を杖を構えるトーチが歩き、後方に意識を向け剣を持ったサヴォイが歩く。
少し進むとリヴォイが木に残された爪痕を見つける。
「近いな」
辺りを警戒しながら、進んで行くと生い茂った緑の中に、白い大きな影が見える。
「おいおいおいおい、なんて幸運だ!」
「マジか…… ありゃ白いグルピーじゃないか!」
「日頃の行いだな! やろう! おふたりさん!」
サヴォイがトーチの前に出て、構える。
トーチは詠唱に入る。
「焼き過ぎるなよ!」
っと声をかけ、盾を構え前に出るリヴォイ。
それに気付く白熊は、立ち上がり大きな咆哮をあげる。
7mほど離れた場所で、盾に魔力を流すリヴォイ。
「こい! こっちだ!」
ヘイトを自分へ向ける様に、声を張り上げると、前に倒れる白熊が、前足で地面を蹴ると、あっという間に距離を詰め、大きな口を開け、斜め上から爪撃を撃ち込む!
リヴォイが新しい盾で受ける!
意外な重さであった。
衝撃はあるが耐えられる!
『行けるぞ』
そのまま盾を前に押し出し、白熊の懐に入ると、下から持ち上げる様に、盾で白熊の上体を押し上げる。
上がった白熊の顔に小さな炎槍が、次々と当たり、悲鳴に似た声をあげ下がる白熊!
盾を押し戻す力が消えたリヴォイは、そのまま勢いよく押し出して、白熊を後ろに倒すと、リヴォイの上を飛び越えて、サヴォイが剣を白熊の胸に刺す!
暴れる白熊は胸から血の泡を吹き、やがて動きを止める!
「やったぞ!」
「ひゃっほ~ 金持ちだ!」
「もう盾の分、取り戻しましたな!」
トーチはマジックバッグに白熊を入れ、周りの警戒も忘れない。
「この盾、凄く良いぞ! 魔力は結構喰われるが、グルピーの一撃を、片手でも受けれそうだったぞ!」
良い買い物と、幸運な狩りに喜ぶ3人は、欲を出さずそのまま森を出て、町へ帰っていった。
ギルドに着くと夕方で、人も多かった。
「おいミーリア! 買取頼むぜ!」
「あら、さっき出たのに何を獲って来たの?」
「ふふふ、これさ!」
トーチが、白熊をカウンターに出すと、その場にいた冒険者達が騒ぎ出す。
その騒ぎを聞き、ギルマスが現れる。
「ほぉ~ お前ら運がいいな! 買取はギルドでいいのか? 商人ギルドなら多少高く売れるが!」
「あ~ これなら差額も大差ないさ!」
すると他の冒険者が、
「おい! 今夜は海神の矛の奢りだぞ!」
ギルドは賑わい、その声は遅くまで続いた。
翌日、また遅くに現れる3人は、あくびをしながら掲示板を見ていた。
「なぁ、今なら行けるんじゃないか?」
「ああ、ついてるしな!」
「もう少し火力が欲しい所ですが、その盾なら長期戦になっても行けるでしょう」
サヴォイが、掲示板から依頼書を剥がし受付に持っていく。
ザザメイト討伐依頼 2200ギー
受付のミーリアが、
「海神の皆さん、昨夜はご馳走様でした…… えっ! 受けてくれるのですか?」
ザザメイト、大きなサイに似た魔獣で、北の森の先にある集落が襲われ、村人はこの町に逃げ込んでいる。
村を取り返したいと依頼を出していたが、分厚い皮膚は頑丈で額の大きなツノで突進されると、レンガの家も数件に穴が開く。
この町では、倒せる冒険者がしばらく現れず、依頼料も半分ギルドが負担し、この金額になった。
以前、他所の腕に自信のある冒険者が依頼を受けたが、5人で向かい、帰ったのは2人だった。
そこに現れた、ギルマスのサーズリ。
「やれるのか? 奴には罠も毒も効かんぞ!」
「やってみせます! 冒険者になった以上、俺たちも彼の様に誰かの為の剣になりたい!」
「ジビカガイライか…… それで、必要な人数と編成は?」
「3人で!って言いたいですがね、火力が不足です。火力重視の編成でお任せします」
「よし、俺も腹を括ろう! ミーリア、今町にいる冒険者に声をかけてくれ、遠距離攻撃できる者だ! 出発は3日後、指揮は海神の矛だ」
「はい、わかりました!」
3日後……
北の集落跡地に集まった冒険者は、7人。
海神の矛の3人とギルマスのサーズリ、それと魔法が使える2人の町の古参冒険者に、たまたま町にいた冒険者であった。
「くっそ、ひどい有様だな! これじゃ取り戻してもまた人が住める様になるのに、どんだけ時間がかかるか!」
「リヴォイ! 本当に抑えられるのか?」
「ええ、グルピー売った金で、回復薬も奮発しました! 耐えてみせますよ!」
「来たぞ! ザザメイトだ!」
「おいおい、前よりデカくないか?」
「サヴォイ! ギルマス! 左右に! トーチ達は詠唱に!」
真っ赤な毛の無い皮膚に、体の三分の一ほどの大きなツノ。
「リヴォイ、無茶だ! あんな大きな体で突進されたら!」
「はは、ギルマス! ハイオークの王みたいなプレッシャーは無いですよ!」
盾を構え、前に立ちザザメイトと対峙するリヴォイ。
「トーチ!」
リヴォイが声を上げると、真後ろからトーチが炎槍を飛ばし、ザザメイトに当てる!
ザザメイトが唸り、リヴォイに向け殺気を飛ばす。
「こい!」
ザザメイトが地面を2回蹴り、加速をつけ突進してくる!
ありったけの魔力を盾に送り、ザザメイトとぶつかるリヴォイ!
歯を食いしばり、数メートル押されるが踏ん張り耐える!
突進を止めると、左右からサヴォイとサーズリが剣で前足に切り掛かる!
同じ所を何度も!
たまらず声を上げる赤いサイは、ツノでサヴォイに横から襲うが、ツノを盾から離した瞬間、リヴォイが踏ん張る!
「うりゃ!!!」
首を曲げた形で押され、怯むザザメイトにサーズリが深く剣を刺す!
ツノを振り、暴れるザザメイトにリヴォイも盾ごと吹き飛ばされる。
そこに魔法が降り注ぐ!
火柱が上がり氷が刺さり、地面から棘が盛り上がりザザメイトの体制を崩す!
「もっとだ!」
サヴォイがツノの根元の目に切り掛かると、血を吹き出し、視界を奪う!
盾を構え、仕切り直すリヴォイ!
盾で突撃して、サイに突進させない!
深く刺さったサーズリの剣が折れ、振り回されるツノでサーズリも吹っ飛ばされる。後ろに回り込んだトーチが炎槍を連発するが、皮膚を焦がすだけだ!
「土魔法で足場をもっと悪くしろ!」
地面から棘がサイを襲いツノによる攻撃範囲が限られていく!
サヴォイの剣が脇腹に刺さり、暴れたサイが自ら傷口を広げる!
そこに魔法が集中し、刺さる!
サーズリもマジックポーチから斧を出し、首に切り掛かる!
剣を抜こうとサヴォイが力を入れるとザザメイトが暴れ前足で蹴り飛ばされる!
剣を握ったままだ!
その飛ばされた先に火力を出そうと近いたトーチがおり、運悪く手に持つ剣が足に刺さる!
「トーチ!」
ツノを振り回すザザメイトの、そのツノを盾で受け止めるとザザメイトも体力がなくなってきたのか、リヴォイが抑えつける。
傷口に刺さる氷、首元の斧、折れた剣先、足を絡める土の棘。
ザザメイトがようやく動きを止め、力なく倒れる。
「やったか……」
「トーチ! 無事か!」
「ああ、命に別状は無い!」
「やった! 倒したぞ!」
ザザメイトを真っ向から倒した冒険者達は、その場に座り込みしばらく動けなかった。
後日、村の人達から礼を言われ、一躍有名になった海神の矛。
だが、トーチの足は冒険者を続けていける状態ではなかった。
ギルマスも他の冒険者も、大きな見返りと称賛を受けるが、海神の矛の被害は大きかった。
「気を落とすな! 俺はこれで引退だが、金もあるし十分だ!」
「すまんトーチ……」
「おいおい、ザザメイトを倒したんだぞ! もっと胸を張れ! 俺らは冒険者だろ! こんな事もあるさ!」
惣一郎に憧れ、無茶な冒険をした海神の矛の代償は大きかった。
サヴォイとリヴォイが、ふたりの故郷が厄災の被害に遭っているのを知るのは、それから数日後の事であった。
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こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
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