目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン

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第一章 どうやら、異世界に転移したらしい

12. これって、職業なの?

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「ルビー、どうしたんだ?」

 掃除のときに扉や窓は開け放していたから、遠慮なく中に入ってこれば良かったのに。
 あっ、隣近所とは距離があるから、騒音・汚水等々の問題はないよ?
 
「お腹が空いているだろうと思ってね。はい、差し入れよ。それで、掃除は捗って……もしかして、もう終わったの!?」

「うん、さっきね」

 家の中に入ってきたルビーは、驚いた顔で部屋中を見回っている。
 ルビーの差し入れは、薄切りにしたパンにハムと野菜が挟まったサンドウィッチ風のもので、腹の減った俺はさっそく頂くことにした。
 中のハムだけ抜いてトーラにもあげようと思ったけど、こんな塩が効いているものを食べて大丈夫なんだろうか?

⦅この世界の魔物は、何でも食べられるぞ。あちらの世界の生き物と、一緒にするでない⦆

 まあ、動物じゃなく魔物…魔獣だもんな。
 トーラは美味しそうに、あっという間に食べてしまった。

「魔法で、ここまで綺麗になるのね。ふふふ、カズキはこれで商売ができるんじゃない?」

 なるほど、清掃業か。
 元手も道具も必要ないから、簡単に始めるにはアリかもしれないな。
 扶養家族もできたことだし、俺は何か仕事を始めて金を稼がないといけない。
 通常ならば冒険者になるのがお約束だろうけど、魔物の素材や薬草を売るにはギルドへの登録が必要だもんな。
 でも、ステータスを確認されて召喚勇者とバレるのは困るから、つい二の足を踏んでしまうんだよね……

「生活用品を買うのなら、今日ちょうど行商人が村に来るから見てみたら?」

「そうだな、鍋とか布団は必要だもんな」

 寝袋は持っているけど、ベッドがあるなら布団で寝たい。

「村には、いつ頃来るんだ?」

「いろんな所を回って、ここに来るのはいつも最後だから、もう少し時間はかかるわね」

「じゃあ、まだ時間はあるな。それまで、ちょっと出かけてくる」

「うん、いってらっしゃい。私は、そろそろ仕事にもどるわ」

「差し入れ、ごちそうさま。美味しかった」

 ルビーと別れた俺は、再び森へ向かった。


 ◇


「よし、ここまで来れば大丈夫だろう。トーラ、元の姿に戻ってもいいぞ」

 下におろしてやると、トーラは大きくなった。

「ごはんがあれだけじゃ、足りないだろう? 狩りに行っておいで。ただし、俺が呼んだら戻ってこられるように、あまり遠くへは行くなよ」
 
 俺の言葉に、トーラは嬉しそうに駆けていった。
 村人たちが採取や狩りをしている場所からはかなり離れた、街道沿いからは奥まった場所だから、人目につくことはないだろう。
 それに、この辺りは先日討伐した場所とも違うから、ついでに、魔物を駆除しておこうとも思った。
 村の周辺は、なるべく安全にしておきたいからな。
 
⦅おぬしは、ついでに探知魔法の訓練をするがよい。トーラの所在とその周辺を、常に確認するのじゃ。近づいてくる者がおらんか、とかな⦆

 わかった。
 俺は、神経を研ぎ澄ます。
 トーラは、さっそく獲物を見つけたようだ。
 あれは、なんだ?

⦅ワイルドボワ、じゃな⦆

 あっさりと倒したトーラは、獲物を引きずって戻ってきた。
 
「うわ、でかい!」

 体長は二メートル近くあるだろうか。
 丸々と太った猪みたいな魔獣だ。
 トーラは俺の前に獲物を置くと、お座りをした。

「うん? 食べないのか?」

⦅褒めてほしいようじゃ⦆

「そうか。トーラは狩りが上手だな! たくさん食べるんだぞ」

 頭を撫でてやると、トーラは食事を始めた。
 目の前で食べ始めたから、俺はそっと視線をそらす。
 うん、やっぱり直視するのは無理だな。
 土魔法で作った椅子に腰掛け、森の中をボーっと眺めていた。
 
「そういえば、この辺りは全然魔物がいないな」

 ゴブリン討伐に行ったときは次々と現れたのに、今日は遠目にもまったく姿を見ていない。

⦅当たり前じゃ。トーラがおるのに、姿を見せる馬鹿がどこにおるのじゃ⦆

 それだけ、トーラが強者ってことか。

⦅こやつを、一度鑑定してみよ。今日は、もっと精度をあげるのじゃぞ?⦆

 へいへい、言われなくてもやりますよ。


     【種族】  メガタイガー
     【職業】  魔法使いの従魔・召喚獣
     【レベル】 61
     【魔力】  58
     【体力】  70
     【攻撃力】 63
     【防御力】 62
     【固有スキル】 体操作


 ブフォ!
 びっくりし過ぎて、思わず吹き出してしまったぞ。
 トーラと従魔契約をした覚えはないとか、『魔法使いの従魔・召喚獣』が職業なのか?というマホーへのツッコミは横に置いといて、レベルが『61』ってSランク越えなのかよ!

⦅魔獣と人を同列には数えられぬが、強いのは確かじゃな。あと、召喚に応じた時点で、契約は成立しておるぞ。強制召喚ではないから、こやつに食われる心配もない⦆

 ハハハ……それは、安心だな。
 固有スキルの『体操作』って、メガタイガー特有のものなのだろう。
 これで、自分の体を小さくしているようだ。
 異世界の生き物、恐るべし!

⦅そうじゃ! 強制召喚で思い出したが、おぬし、一度……⦆

 一心不乱に食事をしていたトーラが、急に顔を上げた。
 俺も、しっかりと気配を察知している。

⦅……人が、襲われているようじゃのう⦆

「トーラは、ここにいろ。すぐに戻る」

⦅ゴブリン討伐の地点よりさらに先じゃから、転移魔法で途中まで飛んで向かうのじゃ!⦆

 了解!
 そういえば、さっきマホーは何か言いかけたよな?

⦅あれは今でなくてもよいことじゃから、気にするでない⦆

 そうか。
 とにかく、人助けが最優先だもんな。

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