目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン

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第二章 村のために、いろいろ頑張る!

41. トーアル村で遠足を(後編)

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 宝箱が部屋の中央で止まると、灯りが一斉に消えた。

「な、なんだ!」

「なにも見えないよ!!」

 子供の声だけが、暗闇に響いている。
 扉付近にいる子たちは、皆周囲の大人たちへしがみついてきた。

「ねえ、カズキ……みんなは大丈夫よね?」

「もちろん、大丈夫だぞ」

 二人の頭を撫でてやると、リラたちは安心したように微笑む。
 ちょっと、怖すぎたかな?

⦅おぬしまで一緒になって、『ノリノリ』で作っておったからのう⦆

 でも、ドレファスさんたちはこれでOKしてくれたぞ。
 どうしよう、まだこれからが本番なんだけど……


≪……誰だ、私の眠りを妨げる者は≫

 落ち着いた声と共に、天井から四つの小さな光が降りてくる。
 それは青白く光る、宝石のような輝きを放つ水色の玉…………ではない。
 再び灯りが点ったとき、そこにいたのは玉座に座る美少年アンディと、傍に控える中型の黒い(色になった)魔獣トーラだった。

「あれは……メガタイガーか?」

 さすが、ルカさんはすぐにわかったみたい。
 マホーによると、通常のメガタイガーはダークグレー色なのだとか。
 だったら、ラスボスの眷属は黒にしよう。アンディとお揃いになるし…ということで、今回トーラには黒色になってもらいました。
 最初はアンディに怯えていたトーラだけど、一緒に遊ぶうちに打ち解け、今では兄弟のように仲良くなっている……たまに悪いことも一緒にして、俺に叱られるけどね。

≪この冒険者パーティーのリーダーは、誰だ?≫

「お、オレだ!」

≪ふむ、其方はなかなか凛々しい面構えをしておるな≫

「そ、それは、どうも……」

 リーダーの子、ちょっと照れた(笑)
 女の子たちはアンディを見て、「素敵ね……」と瞳を輝かせている。
 なんと言っても、うちの息子は美少年だもんな。
 でも、アンディだけじゃなく誰かトーラも褒めてあげて。
 今日は、彼もキリっとした顔をしているんだよ?

≪これから、其方たちに試練をやろう。我が眷属と戦い勝利すれば、その宝箱の中身を褒美としてくれてやる≫

「よし、受けて立つ!」

≪では、健闘を祈る≫

 アンディがパチンと指を鳴らすと、壁からスケルトンたちがわらわらと出てきた。
 うん、ちゃんと指示通り、子供たちの人数と同じ八体いる。
 リーダー格の子は死霊王と、サブの子は死霊騎士を相手にするようだ。
 女の子にはやや小さめの小型スケルトンが用意されているのは、アンディの気遣いかな。
 トーラも参戦したかったらしいけど、万が一子供にケガをさせたり、逆にケガを負う心配もあったから、今回はごめんねと言っておいた。
 猫型でもダメなのか?とアンディはトーラの気持ちを慮って聞いてきたけど、それでトーラの正体が猫ではなくメガタイガーだとバレるほうが困るんだよね……

 最後の戦いが始まった。
 子供たちは武器を手に果敢に立ち向かっていくが、スケルトンは破壊されてもすぐに復活する……だって、本物だから。

「なあ、カズキ……俺には奴らが本物にしか見えないが、どういう仕掛けだ?」

「申し訳ありませんが、それにはお答えできません。村の重要機密ですので」

 『重要機密』
 非常に使い勝手のいい言葉だよね。
 こう言っておけば、大抵のことは無理やり聞き出されないですよ!と、ドレファスさんが太鼓判を押すだけのことはある。
 現に、ルカさんも「……それじゃあ、しょうがねえな」とあっさり諦めてくれたし。
 ちなみに、ゴウドさん、ルビー、ドレファスさん、ジェイコブさんだけには、アンディの正体を正直に話した。
 トーラのときのように隠してバレたら、今度こそ村を追い出されかねないもんな。
 なにより、ルビーに怒られることが一番怖いし……(汗)


 ◇◇◇


「えっと……カズキくん、すまないがもう一度言ってくれるかい?」

 試作が完成した洞窟内で、ゴウドさん以下三名は皆困惑の表情を浮かべていた。
 そりゃ、そうだよね。
 ラスボス役のアンディや眷属役のスケルトンは、魔法で出しているのか?と訊かれた答えが、「本物なので、俺は何もしていません」なんだから。

「本物ということは……この、人間の子供にしか見えないこの子も、『アンデッド』ってことか?」

≪私は、数百年前に『シトロエンデ帝国』という国に住んでいた者だ。理由あって、今は父上のところで世話になっている≫

 ジェイコブさんの質問にアンディが答えると、彼は「ハハハ……」と乾いた笑い声を出した。
 
「……『父上』って、この子の父親はカズキなの?」

「そんなわけ、ないだろう! その…俺も黒髪で父親に似ているから、アンディがそう呼んでいるだけだ」

「そ、そうよね……」

 ルビーは、驚くところがズレているぞ。
 アンディがアンデッドなことをスルーして、俺が父親かもしれないことに驚くってね。

「村長、如何されますか? 私はカズキさんのことに関しては、もう今さらだと思いますが……」

「そうだね。私もそう思う。いちいち驚いていたら、キリがない」

 なんか、ゴウドさんもドレファスさんも、思考を停止しちゃったぞ。
 もう、俺は手に負えない感じってこと?

⦅仕方あるまい。これまでがこれまでじゃから、儂でも付き合い切れんときがあるぞい……⦆

 ちょっと、なんでマホーまで俺と距離を取ろうとしているんだ?
 俺たちは、一心同体だろう!

「私は、村長の意向に従うよ。異論は唱えない」

「私もよ」

「じゃあ、これまで通りということで、よろしいですね?」

 ドレファスさんの問いかけに皆が一斉に頷き、こうしてアンディはあっさりと村に受け入れられる。
 今後の扱いはトーラと同じ。
 村人には正体を気付かれぬよう、洞窟以外では姿を見せないように念を押されたのだった。


 ◇◇◇


 過ぎ去った日々を俺が思い返している間も、子供たちの戦いは続いている。
 リーダー格の子が、杖を持った女の子へ「弱体化の魔法を唱えろ!」と指示を出した。
 よしよし、ようやく気付いてくれたな。
 ここでは、アンデッドは武器だけでは倒せないことを覚えてもらうのだ。
 女の子は「光の神よ。我に、邪悪なる者を打ち砕く力を授けよ」と自作の呪文を詠唱している。
 杖を振ると、一瞬にして六体のアンデッドが煙のように消えた。
 アンディ、消すタイミングも上手だぞ。
 生き残った死霊王と死霊騎士も動きが鈍くなり、それぞれようやく倒すことができた。
 喜び合う皆の前に、宝箱が置かれる。

≪次は、もっと強い眷属を用意しておくとしよう≫

 そう言って、アンディはトーラを連れ姿を消したのだった。

「早く、開けてみようぜ!」

「なにが入っているのかな……」

 期待と不安に満ちた顔で、子供たちが中を覗き込む。
 入っていたのは大小各八個ずつの魔石で、俺とジェイコブさんの二人で狩ってきた魔物のものだ。

「うわあ! やったー!!」

「帰ったら、父ちゃんや母ちゃんに見せてやろう!」

 八人はそれぞれ一個ずつ分けると、ほくほく顔で戻ってきた。
 どの子も多少疲れた顔はしているけど、満足そうな表情をみる限り今回の試みは成功したみたい。
 この経験をもとに、これから試行錯誤を重ねてより面白い『オバーケ』にしていかないとな。
 今回はダンジョンぽく魔石を入れたが、本格運用の際は、次回使える温泉の無料チケットを入れるとか、すぐに引き換えられるお土産交換券なんかが良いと話し合っている。
 これを機会にリピーターになってもらい、何度もトーアル村を訪れてもらうことが最大の目的だから。
 他にも、はずれ宝箱や大当たり宝箱も設置する予定。
 当たりは、個室風呂の(並ばずに入れる)事前予約利用券や上級ポーションなどが喜ばれるかな。
 その代わり、攻略難度は上がるけどね。


 ◇


 昼食を終えたら、今度は交代で一班が『オバーケ』へと向かう。
 皆が食事をしている間にこっそり洞窟内の様子を見に行ったら、アンディを中心に反省会をしていた。
 トーラまで神妙な顔で話を聞いていたけど、肉を差し出したらすぐに飛んできたからお腹がすいたんだな。
 次の班は、さっきの子たちよりやや年齢が高い(九,十歳)と事前情報を伝えたら、少し改良を加えるかとアンディの瞳が光る。
 難度はほどほどに抑えておけよ!と釘を刺しておいたけど、大丈夫だろうか。

⦅さっきは上手くやっておったから、一度、自主性に任せてみてはどうじゃ?⦆

 まあ、マホーがそう言うなら。
 少々不安を感じつつ、俺は警備の仕事に戻る。
 一班には、ルカさんから話を聞いて興味を持った妹のアニーさんが同行するとのこと。
 引率するドレファスさんとジェイコブさん、よろしくお願いします。


 二班は、オリジナル温泉サイダー作りをやった。
 普通のサイダーに混ぜる果汁を、自分たちで自由に選べるというもの。
 これは年齢関係なく誰でもできるから、もっと小さい子でも参加は可能だ。
 それにしても、どこの世界にも必ず一人はいる。
 用意された果汁を全種類入れ、毒々しい色のサイダーを作ってしまう子が……
 味はまったく想像できないけど、これも良い思い出だよな。


 ◇


 班に分かれての活動は終わり、皆で温泉に入ったあと子供たちは土産を持って王都へ帰っていった。
 どの子もまた来たいと言ってくれたから、今度は家族で来てねと伝えておく。
 リラが嬉しそうに、小さな魔石を見せてくれた。
 聞けば、眷属たちと戦って宝をもらった子たちが、後ろで見学していた子たちに小さい魔石を分けてくれたんだって。
 優しいなと感心していたら、ドレファスさんとジェイコブさんから呼び出しを受ける。
 そこで聞かされたのは、眷属たちとの戦いにトーラも参戦していたという衝撃の事実……しかも、元の大きさで。

「黒の大型魔獣が眷属たちと一緒に現れたときには、本当に肝を冷やしたな……」

「でも、子供たちを上に乗せたりして遊んでくれたので、皆は大喜びでしたけどね」

「ただ、引率の先生と冒険者の女性から詳細を尋ねられたときは、本当に困ったぞ」

「『村の重要機密なので、詳しくは語れません!』と、ごまかしておきました」

「・・・・・」

 うちのやつらが、本当にスミマセンでしたー!!
 お二人に平謝りして、すぐに洞窟から一人と一匹を回収し即反省会をしたのは言うまでもない。



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