桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
17 / 131

17限目 桜花会

しおりを挟む
 一通りお互いに褒めあうと、口を押さえて上品に笑った。前世ではできなかった女子同士の会話がレイラは楽しくて仕方なかった。

「そういえばレイラ様、朝、香織(かおり)様とお話なさっていましたね」
「ええ」

 夢乃(ゆめの)がうっとりとした顔をした。

「羨ましいですわ。香織様は勉強もスポーツもでき素敵な方に声をかけて頂けるなんて」
「そうですわ。女性ですが、そこらの男子よりかっこいいですわよね」

 夢乃と藤子はキャッキャと香織の素晴らしいについて、語り盛り上がっていた。レイラは、そんな彼女たちを可愛いと思いながら見ていた。

(女子最高だな。こんな可愛い姿がまじかで見られるなんて)

 レイラ達が会話に花を咲かせている中、初等部から上がってきたメンバーは教科書を出して必死に勉強をしていた。

「あの、御手洗(みたらい)さん……」
「なにかしら?」

 藤子は真後ろに座ると女子生徒が話しかけた。藤子は眉をひそめて迷惑そうな表情をした。

「藤子さん、呼ばれてたたげで睨んでは可愛そうですわよ」

 レイラが注意すると、藤子は不満そうな顔をした。

「レイラ様とのお話中に割り込んでいらしたのですよ。失礼ですわ」
「全く、その通りですわ」

 二人が頷きながらレイラを見た後、彼女たちは女子生徒を再度睨みつけた。女子生徒は下を向き何も言わない。

(まったくもう。えーと、こいつは特待Sで、生徒会の中村彩花(なかむらあやか)じゃねぇか)

 レイラは4月にもらった、桜花会と生徒会及び特待生の顔写真入りの紹介冊子を思い出した。レイラは冊子に載っている人間は全て覚えていた。

「中村さん。何か藤子さんに話したい事があるのでしたら、私のことなんて気になさらずにお話下さい」

 なるべく優しい笑顔を心掛けたが彩花はチラリとレイラの顔をみたがまた下を向いた。

「ちょっと、レイラ様がわざわざ声を掛けてくださっているのよ。顔を上げなさいよ」
「そうよ。失礼な方ね」

 二人が強い口調で彩花に言った。
 レイラが二人の様子を見てため息をつき、彩花を見ると彼女は顔をあげて困った顔をしてこちらを見ていた。

(やべぇ、怖がらせちゃったかな。しかし、俺らに声を掛けるなんて度胸あるよな。“白服に関わるな”って暗黙のルールがあると聞いたが知らねぇのか。まぁ、特待Sの生徒会だから別か)

「お二人とも、声を掛けて下さったのに威圧しないでください」
「でも、レイラ様。この方は桜花会を分かっていませんわ」
「そうですわ」

(桜花会なんて、だだの金持ちの子どもってだけだろう。そんなたいそうなもんじゃねぇ)

「桜花会……?」
「ご存じありませんの?」

 彩花の言葉に藤子は目を大きくしたと思ったら、眉間に眉を寄せて鬼のような形相をした。レイラの反対側にいる夢乃も同じように恐ろしい顔をしている。
 周囲を見渡せば、先ほどまで楽しそうに話していた者や必死で勉強していた者も黙り、レイラ達を見ていた。

(いや、知らねぇわけないだろ。こいつ特待Sの生徒会だぞ。つうか、夢乃と藤子はこいつのことしらねぇのか? いや、同じクラスだからそんなわけないか)

「いいですか。桜花会と言うのは素晴らしい家柄の方々が集まるところですわ」

 藤子は立ち上がり、腕を組み彩花を見下すようにいった。

(ちげーよ。学校に高額な寄付金を渡している奴らだよ)

「そうですわ。その素晴らしい方々は貴女のような下々の人間が話すことなど許されないのです」

 夢乃も立ち上がり腕を組み、藤子と同じように見下していた。

(下々って……お前らも桜花会じゃねぇだろう。そして、彩花は特待Aのお前らより上のSだって)

「下々って、御手洗さんも山下(やました)さんも黒服ですし桜花会じゃないよね? それならば私たちと同じでしょ」

(彩花、素晴らしい。よく言った。つうかよく言えたな。さすが生徒会って、そうじゃねぇよ。どうすんだよ。めっちゃ注目のまとじゃねぇか。それじゃなくても俺(レイラ)は目立つのに……)

 彩花は今まで下を向いていたのが嘘のようにはっきりと言葉を返したのだ。
 クラスが静まり返っているため、三人の声が教室中に響き渡っていた。レイラは目立ってしまっていることに不安なった。

「なんですって。私たちはレイラ様に選ばれたのです。そもそも、敬語をつかいなさい」

(俺(レイラ)は選んでない)

「えー。桜花会付きの特待Aを選ぶのは学園でしょ。そもそも、その特待って勉強できれば誰でもなれるわけだし」

(その勉強が結構難しいのだが特待Sに言われると……)

 彩花はどんどんヒートアップしていき、彼女の声は大きくなって言った。

「それに桜花会ってただ沢山寄付金を出してるだけでしょ。親の力じゃん。なんでも子どもが敬われるなんでおかしいじゃない?」

(あ、それはマズイ)

 教室内にブリザードが吹いた。
 周囲を見なくても周りの生徒が真っ青な顔をしているのレイラには分かった。そして、レイラの左右いる二人は教室内の空気とは対照的であった。

「なぁ……」
「確かにそうですわ」

 顔を真っ赤にして怒鳴ろうとした藤子をレイラは言葉をかぶせて止めた。更に何を言おうとしている夢乃をじっと見つめると彼女はバツが悪そうに下を向いた。
 レイラは首を振り、立ち上がると藤子と夢乃を下がらせて自分が前に出て、彩花に近づいた。

「おっしゃる通りですわ。ですが、桜華学園はご存じの通り全国の学校を見てもトップクラスに設備の整った学校ですが学費は他の私立とそこまで差はありませんわ。そして、特待生の特典をご存じですよね」
「私、特待で入っているのよ」
「そうですね。ならばよくご存じですね。ではそれが維持できるのはなぜでしょうか」
「……寄付金」
「その通りですわ」

 レイラが丁寧に1つ1つ説明するたびに彩花の顔色が変わっていった。

(さすが、特待生。学校の仕組みがわかったようだな)

「つまり、特待生の特典も学校の設備のほどんどが寄付金ということ?」

 彩花が眉を下げて恐る恐る確認した。レイラは少し考えてから彼女の耳元に口を近づけるとレイラの家である大道寺家(だいどうけ)の寄付金額を伝えた。すると、彩花は目を大きくしてレイラの顔を見た。

「え? マジで?」
「本当ですわ。桜花会に入れるほどの寄付金の場合はその額が公表されていますわよ」
「だから? “白服には逆らうな”と言われたんだ」
「あら、“さからうな”に変わったのですね。私は良いのですが他の桜花会の方ははっきり言って今の貴女の態度では反感をかってしまうと思いますわ」
「お金の力って強いよね」
「ええ、そうですわね。特にここには桜花会があります。学園の考え方はお分かりになると思うのですが……」

 レイラは口元に手をやり困った顔をした。彩花はニコリと笑った。そして……。

「郷に入っては郷に従えですね。レイラ様?」
「分かって下さって嬉しいですわ」

 レイラはそう言って周囲を見ると、両手を軽く叩いた。すると、止まっていた時が動き出したかのように教室にいる生徒たち、今の出来事がなかったかのように行動した。

(あー、言いたくねぇし、やりたくねぇけど)

 レイラは憂鬱な気持ちで彩花を見るとそれを悟り夢乃は藤子の顔を見た。

「藤子さん」

 夢乃が藤子に声を掛けると彼女は「はい」っと言って、彩花のもとに行った。それに気づいたレイラ内心“申し訳ない”と思ったが立場上そうも言えず、笑顔を浮かべて傍観していた。

「レイラ様の寛大な心に感謝しなさいよ。他の桜花会の方々でしたら明日、貴女の席はないわよ」
「そんなに?」
「そうよ」

 藤子は眉間にシワをよせてぶっきらぼうに答えた。
 その間に、レイラは席に座りパラパラと教科書を読み始めた。夢乃もレイラと同じように席にすわったが、藤子の様子が気なる様でじっと見ている。

 レイラは眉を寄せて、机に肘をついて彩花をチラリと見た。それを見た夢乃は顔を青くして藤子に“早くしろ”とサインを送った。彼女はすぐに理解して頷いた。

「それで、さっき何を聞きたかったの?」
「なんで一部の生徒だけが必死に勉強しているのですか」
「あら、まともな敬語使えるじゃない。で、勉強? あぁ、これからテストだからに決まっているでしょ」
「え? そんなの聞いていない……です」

 その言葉を聞いて目を大きくしたのは彩花だけではなかった。まわりで友達と談笑をしていた生徒も彩花と同じような表情をした。

「聞いてなくても、桜華(おうか)は例年そうなの」

 藤子は捨て台詞の様に吐き捨てるとさっさと席に戻り、前を向いた。それっきり彼女は後ろを向くことはなかった。

 しばらくすると、授業時間になり担任教師が入室してきた。その頃には全員が必死に教科書を見ていた。

「今年の生徒は優秀ですね」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...